2009-06-23

有害図書指定

Gview  先に刊行された『Murder Watcher vol.5 殺人大パニック!』が福島県教育委員会から有害図書指定を受けたと連絡があった。洋泉社でははじめてのことだという。『萌え萌えお仕置きアイテム辞典』『多重人格探偵サイコ』などと並ぶと、なんとなく達成感があるのが不思議だ。ちなみに「著しく青少年の自殺又は犯罪を誘発し、その健全な育成を阻害する恐れがある」そうである。おかしいなあ。我々としては日々健康優良不良少年の育成をめざしているのだが。

 先日開かれた編集会議では、この指定を重く受け止め、今一度初心にかえって青少年健全育成のために活動してゆくことが確認された。そのため次号は少し間をおいて年内刊行予定。福島県犯罪史を大特集する。いや、福島はいいのがいろいろあるんですよ。全六巻のすばらしい『福島県犯罪史』なんて本まであるくらいの犯罪先進県ですからね。乞うご期待!

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2009-06-11

ミステリーズ!2009/06

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 東京創元社より発行されているミステリ雑誌〈ミステリーズ!〉の2009年6月号に「バラードの死とバラード的生」と題してJ・G・バラードの追悼文を寄稿させていただきました。ミステリ雑誌になぜバラード、というところですが、バラードの翻訳を日本で一番出しているのは創元推理文庫なのですから、まあ当然でしょう。追悼文は他に山野浩一氏、増田まもる氏が寄せてらっしゃいます。山野さんがSFについて文章を書くのは久しぶりではないんだろうか。合わせてお読みいただければさいわいです。

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2009-05-24

Esquire 2009/07

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 現在発売中の〈Esquire〉2009年7月号「未来に伝えたい100のこと」で映画の未来について書きました。未来予測だけどSFじゃありません。あと、レギュラーの映画評では『レスラー』について書きました。最後なので書きたいことを思いっきり書かせてもらいました。そう、これがEsquire日本版の終刊号になります。10年以上にわたって書かせてもらい、本当にありがとうございました。

 同じく発売中の〈映画秘宝〉2009年7月号では書評欄で『ガルシア・マルケスひとつ話』(書肆マコンド)をとりあげさせていただきました。すっごくキュートな本なので、みんな読んでほしいな!

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2009-05-20

J・G・バラード追悼

 本日5/20(水)発行の朝日新聞夕刊に去る4/18に死去したJ・G・バラードの追悼文を書きました。「汚染された人間の生を予言」というタイトルで掲載されます。バラード的な世界の到来について、思うところを書きました。是非お読みください。

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2009-04-24

Esquire 2009/06

〈Esquire〉2009年6月号で『グラン・トリノ』の映画評を書きました。正直、オレごときがわかったような顔をしてイーストウッドを語るのはとても恥ずかしい。恥ずかしいのだが、もう終わりなので恥ずかしがってる場合ではなく、やらなければならない。そういうわけで、10年以上続いたEsquire連載はあと一号で終わり。既報のとおり、2009年7月号で休刊となります。

なお、エスクァイア・マガジン社の方は、とりあえず6月末までは通常通りの営業を続け、9月末までは存続することが決まっています。というわけなので拙著『シネマ・ハント』や、e/mブックスの映画監督本などで欲しい本がある人は、それまでに入手しておいた方がいいかもしれません(もちろんゾッキに出回るのを待つという手もありますが、不確実なのであまりおすすめはいたしません)。

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目白雑録3

51w2lqxnu4l_sl500_aa240_  金井美恵子のエッセイ集第三弾。実は珍しく文芸誌に書いた原稿が金井美恵子の目に留まってネタとして料理されてしまったのである。中原昌也が芥川賞候補になったときの待機宴会ルポを〈小説トリッパー〉に書いたのだが、それが「菊池寛の呪縛」と題する回で取り上げられているのだ。

むろん、「特別企画 中原昌也の現在」の二つの「芥川賞選考当日ドキュメント」は、かなり遠回しの芥川賞選考についての批判をこめた、仲間同士の友情と中原の小説に対する支持に満ちた楽しいお祭り騒ぎの集いの顛末を報告した読み物なのであり、新潮社クラブで選考結果を待って中原のために集まっている人たちは「なんらかの正義が来たりうることを期待しているよう」で、そのせいで「理由なき多幸感はいや増し、「もしもこの世に正義があるなら、天は我らに勝利を授けてくれるはず、中原昌也に芥川賞を与えてくれるはず」で「他の候補作など読んでいない(読む気もない)が、それが天の石田というくらいはぼく(柳下毅一郎のことである。引用者)にもわかる」と、不出来な翻訳のハードボイルド調というか、村上春樹のパロディ風のギャグ調になってしまうのも、理解できないわけではないし、もちろん、これはあの菊池寛の呪縛から一時解放されるための民俗学的遊戯なのかも知れない。(p.38)
不出来な翻訳のハードボイルド調」……ディスられて改めて思い知る比喩表現の巧みさ。今後もさらに金井美恵子の目にとまってさらに華麗にディスられるよう精進していきたい!と思ったが残念ながらその後中原が文学の世界から足を洗ってしまったので、ぼくがこういうところに文章を書くこともなくなってしまった。一度きりの経験を大事に胸に抱えて生きていきたい。

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2009-04-20

千里眼 キネシクス・アイ (2009)

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監督・脚本・編集 松岡圭祐 主演:奥田恵理華

 先日久しぶりにジュンク堂に行くと店頭に分厚い本が平積みになっていたのである。〈千里眼シリーズ〉十周年記念特別作品シネマ&ノベル 新作映画DVD付き! 書き下ろし最新作 。もちろん〈千里眼〉シリーズなんてこれまで一ページも読んだことない。だけど「新作映画見ろ~ 見ろ~」という声がどこからか聞こえてきたので、しかたなく買ったわけである。で、撮り下ろし映画見たんだけど、なに、これ……

 自衛隊初の女性戦闘機パイロット「イーグル・ドライバー」の岬美由紀は待機中に命令を無視して勝手に人命救助のためにヘリを飛ばして軍法会議にかけられる。こんな自衛隊やめてやらあ、と辞表を叩きつけた美由紀は臨床心理士に転身、パイロットとして鍛えた優れた動体視力のおかげで表情のわずかな変化から内心を完璧に読み取る「千里眼」となったのだ(千里眼は松岡圭祐事務所の登録商標です)。

 折しも無人のステルス戦闘機F117の編隊が各国の戦闘機を撃墜してまわる謎の事件が発生していた。日本最大のコングロマリット泰銘コンツェルン総裁の記者会見をテレビで見ていた美由紀は、総裁が嘘をついており、本日ただいま東京をステルス戦闘機が襲うことを知る。

 すぐさまアストン・マーティンを飛ばして百里基地に向かった美由紀は滑走路に侵入。ミニスカにタンクトップ一枚の姿で停まっていたF15に飛び乗ると迎撃に飛び立つ。お台場上空で三機のステルスと空中戦を演じ、見事一人の死者も出さずに撃墜した美由紀は黒幕の泰銘総帥の別荘(防府市自由が丘)に乗り込む。そこで美由紀はノン=クオリアと名乗る宗教団体による人類滅亡の陰謀を知るのだった。 ちなみにノン=クオリアとは「クオリアなんてねーよ!」と信じるアンチ茂木派の物質主義者集団のことである。しまったオレもノン=クオリアの仲間か! 泰銘総帥の別荘はSECOM入ってるにもかかわらず、裏口に鍵をかけわすれていて簡単に侵入されてしまうのには笑った。

 まあストーリーとかCGとかはしょうがないんだけど、松岡圭祐の編集が原田眞人映画をも超えるカチャカチャ編集で、なんせ二人の人物が喋っている場面で一人のセリフの中だけで五カットくらいつないでたりするんで、ほとんどポケモンフラッシュレベル。

 ちなみに小説も読んだけど映画はエピソード0なんですね。ものすごいハイテクを持ってるくせに作戦がどうしようもなくショボいノン=クオリアは今回はヨウ化銀の雨を降らせて日本沈没させるという怖ろしい陰謀をたくらんでいたよ。で、読んでたら登場人物の一人が気象予報士は当たらなくても責任とらないんだからいい商売だ、と言ったあとに「こんなに図々しい仕事はほかに、占い師と映画評論家ぐらいしか考えられない」とか言ってたよ!

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2009-04-19

丘の上のパンク -時代をエディットする男、藤原ヒロシ半生記

510htshbayl_sl500_aa240_  川勝正幸編著による藤原ヒロシ伝。ぼくは藤原ヒロシとは以前からの知り合いだが、実は彼のやっていること自体にはほとんど興味がない。ファッションにもDJにもなんにも。だが、それでもこの本はたいへん面白かった。

 多くの人の証言で藤原ヒロシのやってきたことをあぶり出していくという構成なのだが、そこから浮かび上がってくるのが80年代のクラブ・カルチャーである。ぼくが宝島編集部にいた当時の出来事だったりするので、涙が出るほど懐かしかった。なんかやたら狭い人たちの人間関係だけでできあがってるようにも見えるが、ぼくの知るかぎりでは、ほぼ当時のシーンというのはここに書いてあるとおりである。今にして思うとずいぶんちっちゃなところで回っていたんだな、とも思うが、だがシーンというのはそういうものなのだろうね。エイティーズ好きの若い人すべてにお勧め。ヒロシの本だと思って手を出さないでいると損をするよ。

 副読本として『特殊まんが-前衛-の道』(根本敬 キララ社/河出書房新社)を読めば完璧かな!

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2009-04-17

Murder Watcher 殺人大パニック!

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 大人のための本格異常犯罪研究雑誌Murder Watchersの第5号「殺人大パニック!!」が出来ました。今回はコロンバイン10周年記念スクール・シューティング大特集。最近流行の大量殺人をとりあげています。ぼくは元祖スクール・シューティング、チャールズ・ホイットマンによるテキサス・タワー乱射事件に関する記事を例によってTexas Monthlyから翻訳しました。第二特集は少年犯罪データベースの管賀江留郎氏による「浜松事件の全貌」。戦時下に起こった知られざる大量殺人ですが、たいへんな力作です。kろえのためだけに買ってもいい、というくらい。その他、ギンティ小林のライフワークであるキルドーザー・シリーズ、オーストラリア編もたいへん面白かったですね。

 連載の殺人風土記は富山・福井編。犯罪史上に残るミステリー「青毛布の男」事件をはじめ、北陸の知られざる事件てんこもりでお送りします。4/20には書店に並ぶかと思われますので、みなさまよろしくお買い求めのほど。

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2009-04-10

本の雑誌2009/05月号

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〈本の雑誌〉の連載書評コラム「柳下毅一郎の特殊な本棚」、今月は《稀代の大強盗「強盗亀」の華麗なる生涯》と題して『強盗亀捜査顛末 明治警察の秘録』(客野澄博 愛媛新聞サービスセンター)の紹介。強盗亀はあまり知られていないが明治犯罪のスーパースターの一人である。アメリカ金融危機の影響でコラム文字数が削減されてしまったおかげでとうてい書ききれなかったんだが、ここに出てくる以外でもすごいエピソードがいくらもあるので、今後とも注目していきたい。そして気になった人は是非〈本の雑誌〉もお買い求めを!

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2009-04-04

著者来店

 読売新聞3/29付け書評欄〈著者来店〉のコーナーで、『日本映画最終戦争』について著者インタビューを受けました。ついにクマちゃんの素顔が明かされる日が来た! 紙面がウェブの本よみうり堂に転載されていますのでまだごらんになっていない方は是非。しかしなんなんだろうねこの写真は。

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2009-03-24

小鷹信光「私のペイパーバック」出版記念パーティ

119644  大森望から誘われたので呼ばれてもいないのに小鷹先生に挨拶しに行く。会場は有楽町の外国特派員記者クラブというところ。廊下に上祐の記者会見の写真が飾ってあったりする。小鷹氏の新刊は見ているだけで楽しい豪華装丁のペイパーバック・コレクション本。個人的には口絵と本文用紙を同じ紙使ってるのが羨ましい。『女優林由美香』 のとき、これをやりたかったけど予算の都合で許されなかったんだよねえ。まあそこら辺は年期の違い。「70過ぎたらSFのペイパーバックの本を出すのを目標にしよう」と大森望は言ってたが、我々だとコレクションの真ん中部分がないんでたいへん妙な本になってしまう恐れが。

 二次会は滝本誠、大森望、東浩紀(小鷹氏の娘婿)、国書Tという珍しいメンツで近所の居酒屋に行く。素面の東浩紀と話すのはほとんど初めてに近いので、ここぞとばかりいろいろ言いたかったことをぶつけて絡みまくる。「宇野(略)なんとかしてください」とか「南京大虐殺のアレはないんじゃないですか」とか。そういうわけで東浩紀と大激論大会(真剣中年しゃべり場スペシャル)。東浩紀は「抑圧の大事さはわかるんだけど、ぼくは生理的にできないんですよ!」と言ってましたがやはり若いもんを甘やかし過ぎだと思います。しまいに「柳下さんは人を信じてますよ!」と言われてしまった。ヒューマニストだと言われたのは生まれてはじめてだ。でもどう考えても人を信じすぎなのは東浩紀の方だと思います! あー楽しかった。

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2009-03-13

アラン・ムーア、ラファティを剽窃する

 3/20発売の映画秘宝2009年5月号で『ウォッチメン』公開記念〈『ウォッチメン』とアラン・ムーアの世界〉という特集をやるので、いくつか原稿を書いた。たぶん『ウォッチメン』絡みでアラン・ムーアの特集をするような媒体は他にあるまいと思われるので、是非ともお目通しいただきたし。ここでは原稿にするでもない駄ネタをひとつ。

 特集のためにインタビュー本を読んでいたのだが、その中に気になる一節があった。

「Aberard Snazzを書いてたときに『そうだな、アベラードを確率計算やら掛け率やらいじくってるカジノに行かせるか』と思いついたんだ。それで奴が確率を操作する機械をカジノに持ちこんでズルをして勝つんだけど、最後にクローク係と勝負したらそいつが同じような機械を使っていて全部スってしまうという話を書いた。で、書き終えて有頂天だったんだが……しばらくしてR・A・ラファティの短編集を読んでいたとき、突然気づいてゾッとしたんだ。あのアイデアはパクリだったって!……もちろんオレは告白して謝罪してその回は絶版にした。なんせ元のラファティの話の方がずっとうまく書けていたし」

 締め切りに追われて無意識のうちにアイデアをパクってしまったって話なんだが、まさに弘法も筆の誤り。「もう二、三日あったら思い出してたはずなのに!」と悔やんでいるが、まあこれはしょうがないよね。そのあとの態度はやっぱり立派な人である。もって範としたいものだ。ちなみにここでムーアがパクったって告白してるラファティなのだが、たぶん『宇宙舟歌』のルーレッテンヴェルトのエピソードだと思われる。ムーアは実はすごいSFファンなので、インタビュー読んでるといろいろこういうネタが出てくる。

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2009-02-26

バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争-邦画バブル死闘編-2007-2008年版

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『映画秘宝』の連載「日本映画縛り首」がまとまったので単行本となりました。題して『バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争-邦画バブル死闘編-2007-2008年版』長い! タイトルだけでなく中身も意外とボリュームが出てしまい、入れるはずだった『ボディジャック』や『アディクトの優劣感』の話やら日本一忙しい女優長澤奈央の謎やらといった話は割愛せざるを得ませんでした。残念ではありますが、この研究成果もいつか発表できる日が来るでしょう。その代わりに語り下ろしおまけ鼎談に厖大な脚注までつけて316頁で1600円とサービスしておきましたんで、みなさん本屋で見かけられましたら手にとっていただけると……

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2009-02-21

モーフィー時計の午前零時

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 国書T他と毎度おなじみ底抜け飲み会。最強セクハラマシーンと化したiPhoneが大活躍したとこまでは良かったのだが、最後は例によってどやさな感じに。

 その場で見本としてあがっていた若島正編『モーフィー時計の午前零時』(国書刊行会)を受け取る。ずっしりと重い400頁。装丁に無駄に凝りまくる国書タッチは健在で表紙は赤黒二色に金箔押し! これ、普通に考えると四色より二色の方が安いだろうと思ってしまうのだが、実はそうではなくて二色の方が手間も金もかかるのである。

 帯は羽生善治。しかし何より凄いのは若島正の25頁におよぶ解説で、小説中に出てくるチェスゲームやプロブレムをすべて実際に棋譜を乗せて解説しているのだ! 本文を読む分には必要ないけれど、解説を読むときには手元にチェス盤を置いておきたい。

 小説もたいへん逸品がそろって\2800+税はお買い得だと思うのでみなさま是非とも。ちなみに拙訳のジーン・ウルフ短編は、たいへんウルフらしい傑作で、個人的にも大好きな短編のひとつ。ウルフらしいとは言っても別に面倒な叙述トリックとかあるわけではなくて、戦争の話とかが入ってくるところでふっと世界が広がる感覚を与えてくれるところかな。来週なかばくらいには本屋に並ぶかと思いますので、よろしくお目通しのほど。

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2009-02-10

SFが読みたい!

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『SFが読みたい!2009年版』で発表されたベストSF2008・海外篇において拙訳であるジョン・スラデックの『蒸気駆動の少年』が見事ベスト第二位に選出されました。なんと奇想コレクション史上最高順位を獲得! これもひとえにご協力いただいた素晴らしい訳者陣のおかげです。読者のみなさまのご支援にも深く感謝いたします。
 ちなみに上位入選を記念して、2/25発売のS-Fマガジン4月号にスラデックのパロディ短編「よろこびの飛行」を訳載します。『蒸気駆動の少年』には(奇コレの性格的に)パロディSFものは収録できなかったので、その補完という意味もこめました。合わせてお読みいただければ幸いです。

 なお、「このSFを読んでほしい!」のコーナーでは国書刊行会のところにぼくの関係タイトルがあがっていますね。それ以外にも、いくつか(あっと驚く作品も含めて)翻訳は予定されてますんで、乞うご期待!

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2008-12-24

「見せたい本棚の作り方」

Index_mainimg00  金城武が表紙のエスクァイア 2009年2月号、特集「見せたい本棚の作り方」に、祖父江慎や青山南といった人たちに混ざって我が家の本棚が取り上げられています。よりじっくり見たい方はこちらとかも。

「ヒヨコ舎が取材に来てくれない……」とぼやいていたら、なぜかうちに来てくれたのでした。なんでもリービ英雄のとこが魔窟で凄かったとか。

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2008-12-09

実録 この殺人はすごい!

Murderwatcher3  かねてより予告しておりましたMurder Watcher 2008年冬号。かなり強烈な表紙(モデル:杉浦亜紗美 デザイン:高橋ヨシキ)で12/17発売です。

 二大特集は「完全犯罪への挑戦」ということで埼玉愛犬家殺人特集と「萌える犯罪」。 ぼくは元ちゃんのルポの他に、海外の犯罪ノンフィクションも紹介しようという趣旨でテキサスであった奇妙な銀行強盗の話「カウボーイ・ボブ最後の戦い」を翻訳。あと連載の『犯罪風土記』は北陸篇その1として石川県を紹介しています。本当は石川・富山篇にするつもりだったのだけど……次号で富山・福井篇をやるんで、富山県の人許してください!

 これ書きながら思ったんですが、金沢ってどうも……金沢の女が強いのか、男がへたれなのか、その両方なのかわかりませんが、そんな傾向があるような……やっぱり犯罪にもお国柄は出ますね!

 自分の原稿以外だと、管賀江留郎さんの「二俣事件」についての記事がすごく面白かった。これは一読の価値ありかと思います。

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2008-10-15

ディッシュ追悼

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 10/11(土)に開かれた京都SFフェスティバルで「ディッシュ追悼」企画に参加してきました。パネリストはぼくの他、牧眞司と樽本周馬(国書刊行会)の三人。まあ参加者の読書レベルなぞ一切考えずに飛ばしていたので、よく考えてみたら「いさましいチビのトースター」の話が一度も出なかった! ぼくは『歌の翼に』ってゲイ小説だよね、などという話をする。あと、本来パネリストとして登壇するはずだった若島正氏が所用で欠席となったので、勝手にその代役を務めようと思い、ディッシュがナボコフファンだった証拠としてPuppies of Terraという長編の紹介をしたのだけど、あまり受けなかった……
 なお、樽本くんは「せっかくこのために復刊のネタを仕込んで『おおっ!』という反応を期待していたのに、全然客席の反応がなかった…止めちゃおうかなあ…」などとぼやいていたので、心あるディッシュファンはもっと騒いであげてください。

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2008-10-06

全文引用

Deuxmagot  既報の通り、第18回Bunkamuraドゥマゴ文学賞は中原昌也の『作業日誌2004-2007』(boid)が受賞した。本日は華々しいその授賞式。会場で配られた中原の「受賞の言葉」がたいへん素晴らしかったので、選者高橋源一郎のひそみにならって全文引用してみる。

長い間、ご愛読ありがとうございました 中原昌也

「長い間、つまらないものをわざわざお読みいただいて、本当にありがとうございました!」と逆にこちらが深々と頭を下げて、百万円を黙って、どこかの慈善団体に寄付すべきなのに…残念ながらそんな余裕はまったく持っていないし、それ以前に、そんな金があったら破綻した自分の生活を何とかすべきだ…溜まりに溜まった家賃や公共料金に(本音としてはそんなくだらないものにビタ一文も払いたくはないのであるが)。
 今回、賞金百万円もいただける立派な賞を恵んでいただき、おかげさまで、これで無意味な権威ばかりを与えられて無一文なままダラダラと延命していた、作家としての「中原昌也」の立派な弔いにはなった。
 それだけで感無量であり、もう書くべきことは何もない。
 これ以上の余計な「受賞の言葉」を書き添えるとしたら、本当に余計なことばかりを書き連ねることになってしまう。だから、このあとは掲載されないつもりで書いてみる。

 実はこのあとがさらに素晴らしいのだが、それはいずれここらへんとかで公開されるのだろうから、適当に探して読んでみていただきたい。ともかくこれで中原はもう作家活動からは足を洗うということなので、間違っても作品を期待したり芥川賞の候補にしたり2chの文学板にスレを立てたりしないように。

 二次会では例によってiphone話。阿部和重氏もiphone使いらしい。「2tch freeだけは入れてます」とのこと(笑)。

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2008-09-06

時計じかけのオレンジ 完全版

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 アントニイ・バージェスの『時計じかけのオレンジ』が〈ハヤカワ文庫の100冊〉フェアの一冊として刊行されます。ハヤカワepi文庫から出た「増補版」は、文庫としてははじめて最終章(第三部第七章)が収録された完全版。これまで最終章はバージェス全集版でしか読めなかったんですね。ぼくは解説を担当したので、そこら辺の事情も含めて書いています。本屋で見かけましたら手にとっていただければ幸い。中身はもちろん傑作ですので、そろそろキューブリックの呪縛を解かれて読むのもいいんじゃないかと思います。

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2008-08-24

S-Fマガジン2008/10

720810 〈S-Fマガジン〉2008年10月号は野田昌宏追悼特集&〈新しい太陽の書〉読本。ぼくがかかわっているのはもちろん〈新しい太陽の書〉読本の方で、「特集監修」ということで収録作の選定などをやりました。

○『地図』 ジーン・ウルフ/柳下毅一郎訳
○『葉と花の帝国』 ジーン・ウルフ/宮脇孝雄訳
○ウルフ・エッセイ・セレクション 中野善夫訳
○作家論「ナボコフ読みの目から眺めたウルフ」 若島正
○ウールス人名・地名辞典 香月祥宏=編

「地図」はウールスを舞台にして、〈新しい太陽の書〉の登場人物も出てくる外伝的作品。「葉と花の帝国」は「茶色い表紙の本」ことセヴェリアンが持ち歩いている『ウールスと天空の驚異の書』の中の一挿話(ただし、『ウールスと天空の驚異』は伝説や昔話などの集大成らしいので、これが本に書かれているままかどうかはさだかではない)。あと、エッセイはThe Castle of the Otterから。

特集解説にはいろいろ書きましたが、ぼくが取り上げたキャラクターだけでなく、どのキャラクターに注目して読んでも、実は同じようなことが書けるはずです。読者一人一人が、〈新しい太陽の書〉の中でお気に入りのキャラクターを見つけ、彼にまつわる物語を読みとっていってほしいと思います。

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2008-06-26

明治・大正・昭和・平成 実録殺人事件がわかる本

Murderwatcher 以前より予告しておりました殺人ムックMurder Watcher第一号『明治・大正・昭和・平成 実録殺人事件がわかる本』がようやく完成。洋泉社より発売になります。

二大特集は平山夢明先生の書き下ろしエッセイもある「津山30人殺しの70年」と駕籠真太郎の書き下ろし漫画&本田透の長編評論という豪 華版でお送りする「ヴァージニア工科大学銃乱射事件」さらに菅賀江留郎(少年犯罪データベース)、高橋ユキ(霞っ子クラブ)、町山智浩、深町秋生、井 土紀州ら豪華メンバーが大集結。執筆者がみんな「銃があったらオレだってやってた……」って感想を洩らす人ばっかり! どうい う本だこれは!

ちなみにぼくが書いたのは都井睦雄の墓参りレポートとシリーズ・殺人風土記の第一回「山陽~岡山・広島編」。今後、日本中をまわって過去の犯罪を発掘していくつもり。あなたの町にも行くかもしれませんよ!

世界の黒沢清も読んでいるMurder Watcher、ご自宅にも一冊どうぞ!

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2008-06-10

〈新しい太陽の書〉読本

 早川書房に出かけて打ち合わせ。ジーン・ウルフの『新しい太陽のウールス』の8/22発売にあわせ、8/25発売のS-Fマガジン 10月号で〈新しい太陽の書〉特集をやることになったのだ。題して〈新しい太陽の書〉読本。中では〈新しい太陽の書〉の外伝的な(ウールスを舞台にした)短編などを翻訳する予定。詳細については追って。

 その後洋泉社に出かけてかねてより構想中の殺人ムックMurder Watcherの表紙撮影を見物。なかなかいい感じになりそうだった。さる雑誌の表紙のパロディなのだが、なんのパロディなのかわかる人はいるのだろうか? こっちは来月には発売予定なので乞うご期待。

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2008-05-27

世界三大麻雀漫画

 岡山の古本屋をのぞいていたら、ブックオフ系の郊外古書店にサンケイコミックス版の『カラテ地獄変』(梶原一騎+中条健)が全巻揃いであるのを発見。実に定価\390以下の本はすべて\170というたいへんアバウトな値付けだったため、これは!と重たい荷物を抱えて帰ることに。この漫画、つまりは大山倍達の束縛から逃れたいとあがき、だが何度逃げようとも最後は恐ろしい父の元に戻っていく梶原一騎の物語としても読むことができる(というか、そうとしか読めない)。ダーク大山倍達とも言うべき大東徹源がおもしろすぎるのだが、中でも最高なのはこれ。

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 何者なのだ大東徹源。で、『カラテ地獄変』の隣を見たら、『新・麻雀伝説 風の雀吾』(みやぞえ郁雄+志村裕次)が上下巻揃いであるじゃないか! 以前下巻だけまんだらけで拾って、そのままになっていたものがついに揃った。知らない人のために説明すると、これは世界三大麻雀漫画のひとつとしてつとに有名な超能力麻雀漫画である。ちなみにあとのふたつは『バード 砂漠の勝負師』(青山広美)と『ノーマーク爆牌党』(片山まさゆき)。『アカギ』も『哭きの竜』も遠く及ばないトップ3(オレが決めた)。

『風の雀吾』は麻雀界の刷新を目指す夜叉連合と、彼らに父親を殺された復讐を誓う榊雀吾の麻雀対決漫画なのだが、夜叉連合の十二人の雀戦鬼たちが駆使する雀神技がすごすぎる。第三の雀神技「精霊陣」は、「まわりの木々や草花に潜む精霊があなたの手牌を教えてくれるのです」ってそれ通しなんじゃ……第七の雀神技「白魔陣」は精神能力で相手の目に映る手牌をすべて白に変えてしまう……もはや麻雀のテクニックでもなんでもない。雀戦鬼たちのリーダー、イケメンの無天児の使う「太陽陣」は太陽のエネルギーを自分のものに変える。無天児が太陽陣のエネルギーを最大にするために太陽を地球に引き寄せると、地上は灼熱地獄と化し、オーラスを待たずして雀吾は焼き殺される……ってそれ麻雀で勝ってないだろ!
Jango01_3  こんな恐ろしい漫画のくせに、雀戦鬼たちが妙にすがすがしく、彼らの言葉が胸に響くところがまたいい。無天児の

 考えてみろ、今の麻雀界に俺達若者が理想に燃える場があるというのか! ただ一時の快楽に溺れ、精神を磨滅し、二度と帰らぬ時間をただ流されるまま無意味に送っている、それが今の麻雀界の姿なのだ!

なる台詞に深く心を打たれつつ、無為な日々を過ごして精神を摩滅していた学生時代を思い出すのである。

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2008-05-21

ボスニア内戦

51o54giujol_sl500_aa240_ 朝日新聞の書評を見て購入した佐原徹哉『ボスニア内戦』(有志舎)を読む。ボスニア内戦の原因とその経緯について、すばらしくよく調べられ、簡潔にまとめられた好著。著者、ぼくと同い年なんだなあ。これを読んでしみじみ思ったのは、人間はいかに愚かなのかということである。人間は愚かで進歩を知らない生き物だ。こんな一節がある。

ジラスが村に入ると、頭を後ろから撃ち抜かれた二人の農夫の遺体が大きな梨の木の下に横たわっていた。そこでは他に六人が殺され遺体は運び去られていたが、幾つもの黒ずんだ血跡が草の上に残っていた。さらに進むと、道の真ん中に二〇人程の遺体が山になっていた。成人男性の遺体は二つしかなく残りは女性と子供たちだった。近くにはまだ温もりが残る揺りかごが転がっており、頭部を砕かれた嬰児の死体が傍らにあった。赤ん坊の左側には胸部を叩き潰され腹部がぷっくりと膨らんだ女の子の遺体があった……

 これはスレブレニツァでのセルビア人によるボスニア人虐殺を描 写した文章ではない。一九四一年、ウスタシャと呼ばれたクロアチア民族主義者たちによるセルビア人虐殺について書いたものである。第二次世界大戦中、ドイツと結託したウスタシャはセルビア人に対する猛烈な迫害をおこなった。セルビア人過激派チェトニクもまた、負けじとテロと残虐行為で応酬した。これだけの残虐行為を繰り返せば、さすがに人間、少しは利口になろうというものだ。だからこそチトー率いる新生ユーゴスラヴィアは過去の反省にのっとり、反民族主義による国民の融合をはかったのだ。だが、クロアチア大統領トゥジマン、セルビア大統領ミロシェヴィッチらが権力奪取のために反連邦主義、民族主義を煽りたてると、五十年間の聡明なるチトー主義の薫陶はもろくも崩れ去り、人々は血で血を洗う殺し合いをはじめる。

 人間は進歩しない。人は過ちをくりかえす。佐原はまず、ミロシェヴィッチの大セルビア主義が戦争と民族浄化の主因だとする国連などによる公式見解を排する。残虐行為も民族浄化もセルビア人の専売特許ではなく、三民族は競い合って残虐行為をくりひろげた。
 そもそもミロシェヴィッチもトゥジマンも権力志向のオポチュニストであり、民族主義はたまたま権力奪取に有効だったから採用されたに過ぎないのだし、内戦の過程は大いに偶然に左右された。内戦はそれぞれの民族主義ゆえに起こったわけではない。問題はむしろ彼らが共通に抱いていたジェノサイドへの恐怖と被害者意識だった。民族主義のイデオローグたちはこぞって自民族こそが歴史的に被害者だったと主張した。セルビア人もクロアチア人もボスニア人(ムスリム)も。被害者意識から生まれるジェノサイドへの恐怖から、彼らは他民族を迫害したのである。

 つまり、ボスニア内戦を戦った三つの集団は同じ文化のなかで育った人々であり、身につけた文化に規定された行動をとっていたのである。彼らは同じ言語を話し、同じメディアを受容し、同一の教育制度の中で育成され、同じ消費文化を享受し、そして、何よりも同じ体制下で七〇年以上も共に暮らしてきたのである。彼らが共通の経験をもとに類似した価値観を持っていたとしても何ら驚くべきことではない……ボスニア内戦は、異なる価値観を持つ民族集団同士の「殺し合い」ではなく、同じ価値観と行動規範を持つ「市民」が混乱状態のなかで、互いの中に他者を見いだそうとした現象であった。そして、このことがボスニア内戦のもつ現代的意味であろう。

 それこそ、我々がこの悲劇から(そしてルワンダの悲劇から)くみ取らねばならない教訓である。人間は愚かで、進歩しない生き物なのであり、いかな文明も教育も蛮行を食い止めることはできなかった。

 家族や友人を守るといった具体的な対象があるならまだしも、「国」のためなり、「民族」のためなりに命を捧げるという曖昧な「正義感」はとてつもなく危険なものである。自分の命を大切にしない者は、他人の命など虫けらほどにも思わないからだ。

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2008-04-26

恐怖の対談 映画のもっとこわい話。

Isbn9784791764051  前巻「映画のこわい話」の好評を受け、急遽登場の黒沢清対談集第二弾。なぜかぼくが秘宝でやった「インタビュー」も再録されています。ぼくの分は対談なんて立派なものではありませんが、他の方との対談はいろいろ面白いので是非お読みいただけるとよろしいのではと思います。

 登場するのは高橋洋、鶴田法男、斎藤環、手塚眞、中原昌也、青山真治、テオ・アンゲロプロス、サエキけんぞう、蓮實重彦、伊藤潤二 ですがやはり高橋+鶴田、伊藤潤二というホラー系の話がおもしろいですね。

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2008-04-19

『拷問者の影』新装版


  Gene Wolfe's The Book of the New Sun 
  Originally uploaded by Garth Yanashita.

 ついに『拷問者の影』新装版の見本が手元に届きました。本文が470ページ、旧版は422ページですから組が変わってだいぶゆるやかになりました。それよりびっくりしたのは背表紙が黒! 背表紙だけ見るとミステリ文庫みたいです。番号も新しくなってウ-6-5。でもお値段は据え置きで¥840+税とたいへんお得になっております。

 是非とも一家に一冊お買い求めを! 書店にならぶのは来週4/23となります。おっと、それから下に敷かれている白い紙の束は……

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2008-04-18

キラキラコウモリ

61sq6u8syhl_sl500_aa240_  マガジンハウスのPR誌『ウフ。』に殊能将之三年ぶりの短篇小説が掲載されているというのでわざわざ滝本誠氏に頼んで入手した。なんというか、牛刀をもちいて鶏を裂くという言葉が脳裏に……

 中身はあっと驚くことに戸梶圭太ばりの下流小説。登場人物を突き放した冷ややかな筆致は相変わらずうまいのだが、三年ぶりでこれか!と言いたくなるような小品なので、これを書けるならもっと書いて!の悲鳴が各地から……

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2008-04-11

Miracles of Life (2008)

51xoscwfcdl_ss500__2   J・G・バラードの最新作である自伝、Miracles of Lifeを読む。

 パリでは、SFはロブ・グリエやアラン・レネなど有力な作家や映画作家のあいだでも人気だったのだから、ロンドンでもそれに対応するものがあるだろう、とわたしは考えていた。これは大きな誤りだった。とはいえ、今日のSF愛好者はまったく異なる人種になった。多くが大学の学位を持っており、ジョイスやナボコフを読んで『アルファヴィル』を見ており、SFをより大きな文学的文脈に位置づけることができる。だが、奇妙なことに、同時にSFそのものが急激な衰退に見舞われつつある。ここにはなんらかの教訓があるのかもしれない。

 最終章にショッキングな癌告白が出てくるわけだけど、そこにいたる前半もすばらしくおもしろい。バラードのほとんどすべての小説の源が上海時代にあった(『ヴァーミリオン・サンズ』すらも!)ことが明かされるのは、バラードの忠実な読者にとっては大いなる喜びである。そして、このいささか人間嫌いのような印象を与える作家が、実は深く人生を愛していたことがわかるのはすばらしく感動的だ。たぶんバラードのどの本よりも暖かな読後感を与えてくれる、20世紀最大の作家が最後に残してくれた賜物である。

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2008-03-20

蒸気駆動のポップ


  Steam-Driven pop 
  Originally uploaded by Garth Yanashita.

 奇想コレクションより発売になりましたジョン・スラデック短編集『蒸気駆動の少年』。おかげさまで売れ行きも好調とのことで、これで少しでもスラデックの名前が広まってくれればいいなあ、と思うのみです。

 発売直後が恐ろしい勢いで売れていたらしいのですが、中でもよく売れていたのが紀伊国屋書店新宿南店(サザンテラス)だとか。で、行ってみたところ、こんな手書きポップがついて平台のいちばん手前に積んでありました。あきらかにバランスを失していますがそれがどうした。スラデックへの愛は人を狂わせる。

 popには「天才という人もいれば、アホだという人もいる。(中略)恐らく最初で最後のベスト短編集で、人も作品も不世出であるのは間違いない」とありました。新宿南店の店員さん、どうもありがとうございます。

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2008-03-19

クラッシュ

03828  J・G・バラードの最高傑作『クラッシュ』がついに文庫化されて創元SF文庫より発売されます。予告出してから出るまでが長かった……そして十五年前にやった翻訳を直しはじめると大変なことになるということを学びました。本が最初に出てから三十年、映画になってからも十年以上たちますが、この本がSF史に屹立する傑作であるという思いは一分たりとも揺らいではおりません。解説はこの映画と合わせて読んでいただくとよろしいかと。

 これで滞貨は一掃したので、しばらく本はありません。頑張って仕事しなくちゃ。

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2008-03-17

拷問者の影(新装版)

1  ジーン・ウルフの最高傑作、〈新しい太陽の書〉がついに新装版で再登場。第一巻『拷問者の影』は来月4/23に発売である(早川書房)。すでに既報の通り、新装版の表紙は小畑健。表紙が届いたので公開させていただきます。たぶんネット初公開、さあどうだ! まあいろいろ声はあると思いますが、ぼくは前にも言ったとおり、新しい読者が手に取ってくれるきっかけになってくれればいい、と前向きに考えています。

 第一巻の解説を書くために一巻から順に読み直していたのだけれど、やはり面白くて途中から止められなくなってしまった。昔読んだときよりも、ずっとよくわかったような気がする。たぶん細部に気をつける読み方をするようになったのと、ウルフがヒント(読み方)を入れ込むやり方に慣れてきたからだろう。解説に「今ようやくウルフを受け入れる土壌ができた」と書いたのは、決して煽りではなく本当のことだと思うのである。是非、みなさんも読んでください。

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2008-03-09

本棚


  My Bookshelf 
  Originally uploaded by Garth Yanashita.

『本棚』(ヒヨコ舎)という他人の書棚を撮った本が出ているが、誰もぼくのところには取材に来てくれないので、自分で撮ってみた。Canon Kiss DN + EFS10-22 だが、あきらかにレンズにカメラが負けている感じ。

この本棚は壁にあわせて作った自作品。といっても釘を打っただけなんだけど。その他、マニア向けに殺人本棚もアップしておきましたからご興味ある人はどうぞ。

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2008-02-27

『なぜケータイ小説は売れるのか』

41hdw78cmll_ss400_  本田透の『なぜケータイ小説は売れるのか』(ソフトバンク新書)読む。たいへんおもしろかった。この本の主張を一言でまとめてしまえば、ケータイ小説は現代の女子中・高生のあいだで民間説話のように消費されている、ということになるだろう。これはたいへん卓見で、とりわけ

 レイプや妊娠や不治の病といった不幸イベントを堪え忍んだ結果、「真実の愛」を見つければ全ての不幸なイベントがキャンセルされ、「幸福」になれるという信仰。それが、リアル系ケータイ小説を読む少女たちの心の中に存在する。だからこそ、「神様」とか「天使」とかいう宗教的概念が連発されるのだ。

 という分析には蒙が啓かれた。本田透は「恋愛資本主義」の支配を訴えていたわけだが、どうとうそれは宗教にまでいたってしまったというわけだ。「自分探し」がひとつの宗教と化している……というと、なんだか香山リカみたいだな。

 この恋愛信仰は、東京においては肥大化した資本消費主義社会のシステムと融合している。(中略)
 一方、地方都市では、恋愛信仰はもっと素朴な、ある種の民間説話的な姿を取って「空気」のように彼女たちの周囲を覆っているのだ。

 たぶんこれを地理的に分割されたものとして考えるのはかならずしも正解ではないのだろうけれど、こういう分析から学ぶところは多いね。少なくとも、これまでケータイ小説と文学をめぐって語られてきたさまざまな言葉の中では、もっとも納得できる説である。

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2008-02-22

ショック!残酷!切株映画の世界

1839469d  洋泉社から映画秘宝MOOKの『ショック! 残酷! 切株映画の世界』が発売になりました。映画における残酷表現、手や足がすぱっと切れて切り株になってしまう描写を称揚する「切株派」の美学を訴える血まみれの本です。

 ぼくは『クラッシュ』文庫化記念でデヴィッド・クローネンバーグ/J・G・バラードの『クラッシュ』メイキングについて書いた「交通事故とフェティシズムの切株世界」と『哀しみのトリスターナ』についての小エッセイを寄せています。本の中ではあきらかに浮いてますが、まあそういう原稿も一本ぐらいはあったほうがいいでしょう。『クラッシュ』論については3月に発売予定の創元SF文庫版解説とあわせて読んでいただけるとよろしいかと。

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2008-02-18

ポル・ポト ある悪夢の歴史

51cnxleymwl_ss500_ 『ポル・ポト ある悪夢の歴史』(フィリップ・ショート 白水社)を読む。

 1975年からおよそ三年のあいだカンボジアを支配し、恐ろしい粛正によって150万人の自国民を殺害したクメール・ルージュの指導者ポル・ポト(本名サロト・サル)の伝記である。徹底した秘密主義を貫きとおし、自分の本心も決してあかさなかった男の生涯を膨大な資料からあぶり出す力作。一気に読まされた。

 興味深い指摘は多々あるが、いちばんなるほどと思ったのは劣等生だったポル・ポトをはじめ、イエン・サリやキュー・サムファンといったクメール・ルージュの指導者たちが、いずれもマルクスをちゃんと読んでいなかったという話である。『共産党宣言』はともかく、『資本論』は難しすぎて読めなかった。だからクメール・ルージュの革命思想は本当にマルクス主義なのかどうかもよくわからない、というのだ。むしろカンボジア伝統の上座仏教の影響を強く受けているとされる。まあ、そう言い切ってしまうのもどうかなと思うのだが、興味深い指摘なのは事実。彼らは毛沢東思想の影響を強く受け、農民革命の思想を作りあげる。

 大衆の解放は大衆自身によってなしとげられなければならない--これがマルクス=レーニン主義の基本原理である。革命や人民による戦争は、どこであろうと、その国の大衆のなすべきことであり、まず大衆自身が実行にうつさねばならない--ほかに方法はないのである。(中略)自立の精神を忠実に守り、自国の大衆の力に頼り、たとえ国外からの物的援助がすべて絶たれても単独で戦い続けることが肝要である。(中略)結局のところ、人民の闘いを(中略)おこなうか否か(中略)は、偽の革命家と本物を見分けるのにもっとも有効な目安になるのだ。(中略)農民は帝国主義者とその追従者らに対する国家の民主主義革命の主力である。(中略)革命家が最終的な勝利に向けて歩み出す基地を地方だけが提供できるのだ。

    林彪「人民の闘いの勝利万歳!」

 クメール・ルージュは東北部の密林に根拠地を築き、解放闘争にとりかかった。プノンペン北西部の古都ウドンを占領したときには、住民を全員都市から追い出す。これは来るべきプノンペン解放の青写真となった。

 ウドンの避難民を地方に定住させるにあたって、特に大きな問題がなかったという意味ではうまくいった。町の住民たちも特に問題を起こさなかった。強制移住は、われわれの軍勢を揺るがそうという的のもくろみをくじく抜本的な解決策であり--また同時に内部政策でもあった。幹部を都市部の人間の知覚に住まわせておくと、政治的および観念的に堕落するおそれがあるからだ。かれらが都会風の新しい環境に影響を受けてしまう可能性がある。(中略)町の住民を退去させれば、その危険は回避できる。われわれの最終目標はプノンペンの解放であり、そのためには政治的および観念的立場をとぎすます必要があることを理解しなければならない。幹部たちが「ブルジョアの見かけの良い弾丸」を避けることができるように? まさにその通りだ!
--フィ・フォン 1974年3月

 そして、いまだかつてなかった革命がはじまる。都市を廃止し、貨幣を廃止し、家制度を廃止し、新しい言葉を作り、新しい民族を作りあげる。オーウェルの悪夢がついにこの世に実現する。

 いかにして共産主義革命をおこなうか? まず私有財産を破壊しなければならない。だが私有財産は物質と精神の両面に存在する。物質的な私有財産の破壊には、街の強制退去という適切な方法があった。だが精神的な私有財産はさらに危険だ。それはおまえが「自分のもの」と思うもの、自分に関連した存在と考えるもの--両親、家族、妻--すべてを指す。「わたしの……」と呼ぶものすべてが、精神的な私有財産なのだ。「わたし」と「わたしの」について考えることは禁じられている
--キュー・サムファン 1975年10月

 ぼくがいちばん興味を持っているのはこの部分である。つまり、ポル・ポトの理想はいかに実現され、その過程で百五十万人はいかにして死んでいったのか? キュー・サムファンの言葉にはぞくぞくする。本文中にはまさにこの理想を奉じて自己改造した西欧人も登場する。彼女の言葉はすばらしく興味深い。人間はいかに自我を捨てるのか? この部分をこそ知りたかったのだが、残念ながらそれほど詳しくは書かれていなかった。やはり『キリング・フィールド』とかを読むべきなのかもしれない。

 不満なのは記述があまりに英雄史観に偏っており、すべてを指導者の個人的資質に寄与させすぎなではないかと思われる点だ。伝記というかたちをとった以上、そうならざるを得ないのはわかるが、国際政治まで含め、いささか単純化しすぎな気はする(とはいえ、複雑きわまりない政治ゲームをプレイするシアヌークがきわめて魅力的な人物なのはたしかなのだが)。ヴェトナムが介入した時点で、クメール・ルージュの支配がとんでもないことになっているのは世界中でわかっていたわけで、あれを人道的な意味を持たない単なる防衛的反応として記述してしまうのはヴェトナムに対して厳しすぎる気がする。

 もうひとつ、自己批判を旨とするクメール・ルージュの教義には文化大革命からの影響が色濃いと思われるのだけど、そこにあまり触れていないのもちょっと疑問。

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2008-02-15

蒸気駆動の少年(奇想コレクション)

Steamdriven  ようやく見本ができました。結局456ページで奇想コレクション史上もっとも厚い本になってしまいました。
 全23編のラインナップはこちらの告知ページで。全23編中12編は本邦初訳となります。
 浅倉久志+伊藤典夫+大森望+大和田始+風見潤+酒井昭伸+野口幸夫+山形浩生+若島正という超豪華翻訳陣をお楽しみください。スラデック・オールスターズという感じ。来週早々には書店店頭にも並ぶ予定です。

 オリオン書房立川ノルテ店での発売記念イベントもまだ若干余裕があるようですので、迷っている方はぜひ足をおはこびください。客席の方もなかなか豪華なことになりそうです。

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2008-02-08

新装版『拷問者の影』

N32057  早川書房で打ち合わせ。4月から刊行がスタートするジーン・ウルフの〈新しい太陽の書〉新装版の第一巻『拷問者の影』の解説の件。責任重大なり。なお新装版は4月より毎月刊行で、順調に行けば8月には『新しい太陽のウールス』が刊行となります。訳者はもちろん岡部宏之氏。

 ついでに新装版の表紙も見せてもらいましたが……まあこれが発表されたら2chウルフスレは阿鼻叫喚の嵐となること請け合い。ぼくとしては、これで一人でも新しい読者が増えてくれたらいいなあ、と前向きにとらえることにします。どうせウルフ自身がイメージするセヴェリアンはTimescape版のマッチョマンだったわけだしね!

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2008-02-05

Entering Hades

41fefhq19ol_aa240_  こんな凄い話があったんだねえ。

 1976年、オーストリア人のジャック・ウンターヴェーゲルは少女を殺害し、終身刑を受ける。獄中で彼はそれまでの人生を回顧した「煉獄(Fegefeuer oder die Reise ins Zuchthaus)」という本を出し、ベストセラーとなる。“文学者”ウンターヴェーゲルへの同情はあつまり、彼は1990年に仮釈放される。

 1990年、ウィーンで謎の娼婦連続殺害事件が起きた。文壇の寵児だったウンターヴェーゲルはラジオのレポーターとして恐怖に怯える娼婦たちを取材する。91年、ウンターヴェーゲルは取材のためにロサンジェルスを訪れる。そのころ、ロサンジェルスの警察は謎の娼婦連続殺人に頭をひねっていた……

 話としてはジャック・ヘンリー・アボットなんかの件と同じパターンなのだが、スケールがでかすぎる。オーストリアではその自伝も映画化されているし、「ジャック・ウンターヴェーゲルが逮捕された日(Der Tag, an dem sie Jack Unterweger fingen)」なんてタイトルの映画もあるようだ。

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2008-02-03

凶悪犯罪の歴史 ぶんか社文庫

02963155  世界の凶悪犯罪の背景をわかりやすい絵で一発解説!

 なんだそれ、と言われるでしょうが、ぶんか社から出ている〈ズバリ図解〉シリーズの「凶悪犯罪の歴史」を監修しました。「凶悪犯罪」を〈ズバリ図解〉。この心ない感じがなかなかよろしい。監修といってもほとんどゲラを 読んであきらかな間違いをチェックしたくらいで、原稿は何も書いてないし、ほとんど何もやってません。でも読んでみるとこれが意外と面白かったりするので、コン ビニ等で見かけたら手にとってやってください。

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2008-01-05

Crash! (1971)

 J・G・バラードが小説『クラッシュ』を書いたのは1973年のことだが、もちろんあの小説は突然誕生したわけではない。バラード読みなら当然知っているが、『クラッシュ』には先行作品がある。『残虐行為展覧会』に収録されている「衝突!」crash!という短篇だ。ジェイムズ・ディーンやジェイン・マンスフィールドの事故死にまつわる強迫観念が開陳され、これがやがて『クラッシュ』に描かれる自動車最終戦争の黙示へと広がっていく。
 あまり知られていないのだが、実は本作は映像化されている。ハーレー・コークリスというBBCのディレクターが作った実験映画のようなものである。長年見たいと思っていたのだが、ひょんなことからyoutubeにあるのを発見した。

 なかなか興味深い作品である。いかにもバラード・ファンが作りそうな自主映画だ、という意味も含めて(たとえば今ぼくが映画を撮ったら、たぶんこんな感じのものを作ってしまうだろう)。監督のコークリスは、その後アメリカで何本か映画を撮っている。
 若き日のバラード本人(ナレーションも)ももちろん見所だが、注目は相手役を務めている女優。これなんと、ガブリエル・ドレイク。『謎の円盤UFO』のエリス中尉である! まさかこんなところでバラードとサンダーバードがつながるとは。ちなみに『クラッシュ』に登場する不具者ガブリエル(クローネンバーグの映画ではロザンナ・アークェットが演じた)の名は、彼女から取られているのだそうだ。

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2007-12-21

シネマ・ハント

Cinemahunt 〈エスクァイア〉で連載していた映画評が、単行本としてまとまることになりました。どうか書店で見かけましたら手にとっていただければ幸いです。
以下Amazonから転載

  『エスクァイア日本版』最長連載を誇る、柳下毅一郎氏の激辛映画批評がついに単行本化。
『アルマゲドン』、『タイタニック』、『スパイダーマン2』などの大作映画から、『ロスト・ハイウェイ』『ターネーション』など作家性の問われる作品まで、腹蔵なくソリッドに語り尽くす。およそ10年に渡って続けられてきた、この批評活動の中から101本の映画評を厳選して採録。
コンピューター・グラフィックスの導入や9.11テロ、それに続くアフガニスタンでの戦争……と、環境や社会状況が大きく変化したこの10年の間に、映画は、ハリウッド大作は、いかに変化し、そしていかにつまらなくなったのか。本書に収められた101本の映画批評を通して明らかにされる。

●批評対象作品
『ツ イスター』『インディペンデンス・デイ』『マトリックス』『ポーラX』『バッファロー’66』『トレインスポッティング』『X-メン』『マルコヴィッチの 穴』『ハンニバル』『メメント』『A.I.』『ドッグヴィル』『ロード・オブ・ザ・リング』『エレファント』『ム-ラン・ルージュ!』『ファイナルファン タジー』『呪怨』『アリ』『スター・ウォーズ エピソード2』『ファイトクラブ』『ココシリ』…など

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2007-12-05

ジャック・ケルアック 『オン・ザ・ロード』

41l6yrx94jl_ss500_  いいね! いいね! いいね!

 以前からぼくは「ケルアックはまだイケる」と言い張っていたんだけど、この新訳でようやくそれが証明されたと思う。ケルアックは良くも悪くもハ シカのように若いころにかぶれるものだと思われていて、そんなものは大人の読み物ではないから「今さらケルアックでもないだろ」と決めつけられて、そのまま読まれずじまいになっているような気がする。で も、そうじゃないのだ。たしかに『オン・ザ・ロード』に描かれている世界は過去のものとなったかもしれないが、その魂は今もなお有効だ。

 これまでの翻訳があまりにあまりだったので、単なる幼稚な自意識の垂れ流しとして理解されてしまったのかもしれないが、今回、青山南氏 の翻訳ではじめて、ケルアックがいかに繊細で生彩に富む文章をものにする優れた文章家だったかもわかるし、サルとディーン・モリアーティ(ニール・キャサ ディ)のせつない愛憎関係は腐女子のハートをわしづかみだろう。願わくば、すべての若者がこれを手にしてヒッチハイクの旅に出ますように(そう、ハシカと しての効果もやっぱりあるのだ)。

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2007-11-10

最近読んだ本

618168022_99_2 『ロリータ、ロリータ、ロリータ』 若島正 ★★★★★
『緑の影、白い鯨』 レイ・ブラッドベリ ★★
『映画のこわい話 黒沢清対談集』 ★★★
『戦前の少年犯罪』 ★★★★★
『世田谷一家殺人事件の真実』 山元泰生 ★★★★
『ブルバキとグロタンディーク』 ★★★

『ブルバキ〜』は「もいっぺんブルバキやろうかなあ」(無理!)と思わせるくらいには面白かったが、ちょっと疑問も多い。何よりもブルバキという のは一般化の鬼であり、応用を嫌い、図解によ「理解」を嫌ったからこそあんなにも面倒くさい代物になった(そして美しい)とぼくは理解しているのだが、そ のブルバキを構造主義に与えた影響において称揚しようとするのは戦略としておかしいのではないか? ブルバキは何物にも還元されないからこそブルバキなの ではなかろうか。

もうすぐ閉店の書肆アクセスで塩山芳明の『東京の暴れん坊』を買ったらサイン本で  他人の悪口はやめよう  と書いてあった。すいませんすいません。帰ると『オン・ザ・ロード』(ジャック・ケルアック)と『[ウィジェット]と[ワジェット]とボブ』(シオドア・スタージョン)が届いていた。次はいよいよ『蒸気駆動の少年』だ よ!

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2007-09-26

レッド

286657933_191 レッド 1 山本直樹 講談社

 連合赤軍ものはこれまでいろんな人が試みているがほとんど成功した作品はないのだけど--これまで面白かったのはFAプロの林由美香の奴くらいだったな--これは傑作なのではないか。

 面倒くさい革命理論の話を全部すっとばして青春群像にしてるのがひとつ。匿名性のために全員本名ではなく仮名を使っている(たぶん組織内のコードネームとかだよな?)のも大きな力になっている。
 そして最大のポイントは数字。連赤事件の結末はみんな知っているわけで、そこまでどう運ぶかにみんな腐心して(そしてたいがい失敗する)いるわけである。そこに出してきたのが数字と「あと~日」というカウントダウン。避けられない結末に向かって日を刻んでいくカウントダウン形式にして、サスペンスを引っ張るドラマにしたわけ。

 ヒッチコックが言うところのサスペンスとサプライズの違いという奴だ。連合赤軍をサスペンスで語るというのは秀逸なアイデアだと思う。しかし、このペースだといつ完結するんだ?

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2007-09-22

How to talk to girls by Neil Gaiman

Neil gaiman in Tokyo  映画『スターダスト』のプロモーションのため来日したニール・ゲイマンに会う。来日中、ひたすら取材また取材だったゲイマンたっての希望で、角川書店主宰によるサイン会が催された。これ、アメリカならたいへんなことになるところだが、日本だし告知も直近だったしでほどほどの人数でちょうどいい感じ。ただしさすがに外人が多いのと(ゲイマンに会える!というので日本中から集まってきたらしい)、女の子が多いのがさすがである。

 終了後、角川書店の方に誘われて、金原瑞人、大森望らと帝国ホテルでゲイマンを囲んでのお食事会。インタビュー(エスクァイア)ではわりとFAQ的な質問をしてしまったので、あまり記事になりそうもない話をいろいろ。

 サイン会に静岡から駆けつけたけど終了後ですれ違いだった女の子から角川書店の編集者が本を託されていると知ったゲイマン。スウェーデンで買ったという筆 ペンを出してすらすらとサインしながら、その女の子が置いていった連絡先を見ると、すかさず内ポケットから携帯を取り出し、新幹線で帰宅中の娘の携帯に電話しはじめ た!
「やあ、エマ。ニール・ゲイマンだよ」
(「うっそー! かついでるんでしょ?」)
「いやいや。冗談じゃないよ。今きみの置いていった本にサインしてるんだよ。今日は会えなくて残念だったね」

 これか! これがSF界一のモテ男の秘密なのか! まだまだ男として学ぶべきことは多いなあ、と大森望と顔を見合わせる。

 なお、ヒューゴー落ちたことについては「いや。そんなに気にしてないよ。だってもう四つ取ってるしさ。それにもし取ってても、『どうせゲイマン人 気だろ』って言われただけだろうけど、これで次回からは『作品の力で取れたんだ』って言えるだろ?」他の作家ならただの嫌味になるところだが、この人に 言われると……

 ラファティの話などして、たいへん楽しい夕べでした。角川の辣腕編集者T嬢もすっかりメロメロ。

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2007-07-07

ゴーレム降臨!

Photo  神田三省堂で滝本誠氏と『ゴーレム100』刊行記念トークショー。「〈三省堂SFフォーラム〉史上最悪のグタグタ」とか言われてしまいました……すいません……無理矢理登壇していただいた渡辺佐智江さん、若島正さん、山形浩生くんどうもありがとうございました。まあ滝本誠の知られざるSF史と自前でゴーレム・スタンプまで用意してきてくれる渡辺さんのラブリーさは伝わったと思うのでいいですよね。

 グタグタすぎて話し忘れていたネタがひとつ。ベスターがさる雑誌の副編集長をつとめていたとき、まだルポライターだったピーター・ベンチリーから持ち込みがあったという。原稿を一読したベスターはベンチリーに向かって「これは長篇の第一章じゃないか。おまえはこのまま一生ルポライター稼業を続けていくつもりか? それとも一念発起して長編小説を書いて人生を変えるか、どっちだ!」と煽り、ベンチリーがそれに応えて書き上げたのが『JAWS』。つまりスピルバーグが今あるのもベスターのおかげってことなんですね。

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2007-06-26

SFM2007年8月号

720708  SFマガジン2007年8月号〈ワールドコン特集II〉に本年度ヒューゴー賞候補作のニール・ゲイマン「パーティで女の子に話しかけるには」How to talk to girls at partiesを翻訳しました。個人的にはショート・ストーリー部門ではこれが本命なのではないかと思っています。今年の世界SF大会Nippon2007に参加される方は、SFM前号掲載分とあわせてお読みになり、そのうえでぜひともゲイマンに清き一票を! ゲイマン、日本に来ないかなあ。ぼくも今年のSF大会には参加予定です。

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2007-04-08

Kathy

3423767  新宿のIrregular Rhythm Asylumというオルタナ系CD/ブックショップに出かけ、Kathyというミニ・ジンを入手。他にCrass Storyとかも。なんかアナーキズム関係の文献とか揃っていて、こういうこと真剣にやってる若者がいるってのはとってもいいことだと思いました。

 インターネット時代の到来とともにすっかり消えてしまったかにも見える同人誌文化だけど、まだちゃんと生き残っていたのだなあ、とちょっと感慨深い。まあここら辺は同人誌というよりアメリカのzine cultureの影響が色濃いとはいえ。

 中身はミンク・ストールとゴシップというバンドのベス・ディトー、それにミランダ・ジュライという女子三名の特集。ミンク・ストールの『ダーティ・シェイム』撮影記が訳出されていたりして、なかなか読み応えあり。こういうのには頑張って欲しいんで、とりあえず応援していきたい。なおlilmag storeなんかでも買えます。

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J.G.Ballard Concordance

J.G.Ballard Concordance (from J.G.Ballard mailing list)

 どうせならバロウズでやってほしい。単語傾向の推移からカットアップの流れがわかるのではないか? 無理か?

 もうちょっとバラード的な名詞(kennedyとかcrashとかassasinとか)に絞ったらおもしろくなるかもしれない。あと「バラード的言い回し」とかも抽出できるとおもしろいかも。「わたしはすでに……だったのだ」みたいな奴。

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2007-03-10

『聖母の贈り物』ウィリアム・トレヴァー

433604816901_aa240_sclzzzzzzz_v44313487_  国書刊行会の新シリーズ“短編小説の快楽”の第一回配本。満を持して第一回に持ってくるだけのことはある力作。

 トレヴァーは一九二八年生まれのアイルランド人だが、ここに集められている作品はぼくが愛してやまないアイルランド文学--フラン・オブ ライエンやR・A・ラファティのたががはずれた奇想とユーモア--からはほど遠い。むしろその厳しい風土と貧困を背景にしたかのような辛辣で恐い小説が並 んでいる。老婆の平穏な暮らしが闖入者によって破壊される「こわれた家庭」にはよくできた実話恐怖譚の趣があるけれど、それ以上に「アイルランド便り」や「マティルダのイングランド」の底冷え するような恐怖が忘れがたい。

「マティルダのイングランド」では「戦争になったら冷酷になるのが自然なのよ」とミセス・アッシュバートンは言う。ぼくはどうも人間の無力さを描 く小説に惹かれる傾向があるんだけど(カソリック小説にはそういうところがないだろうか?)トレヴァーが描くのはまさしく宿命にとりつかれた人々の姿なのだ。

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2007-03-08

ピンク大賞特別賞受賞!

 ピンク映画専門誌〈P・G〉が選ぶ2006年度ピンク映画ベストテンにおいて『女優・林由美香』(洋泉社)が特別賞を受賞いたしました! どうもありがとうございます! もちろん、この賞はぼくのものでも洋泉社のものでもなく、林由美香さんに贈られたものです。

 授賞式は4/14(土)池袋文芸坐で開かれる〈第19回ピンク大賞〉において行われます。滅多に見られぬピンク映画が安全な環境で見られる年に一度のお祭りでもあります。特に女性の方にはふるってご参加いただければと思います。

 

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2007-03-02

『ある島の可能性』ミシェル・ウエルベック

31852157  いやーやっぱすごいわウエルベックは

「私たちが創りだそうとしているものは、まがいものの、薄っぺらな人間なの。それはもはや真面目にも、ユーモラスにもなれない人間、やけくそになって死ぬまで娯楽やセックスを求める人間よ。一生キッズでありつづける世代。私たちはそういう人間をきっと創りあげるでしょう」

「偽善くさくはあれども、世の共通認識としては、欧米社会の人口減少(そもそもそれは欧米社会に限った特徴ではない。同じ現象は国を問わず、文化 を問わず、ひとたび、ある一定のレベルまで経済が発展すると起こる)は嘆くべきことだった。それがはじめて、社会的にも経済的にも好環境にある教養のある 若者が、子供なんて欲しくない、子育てにまつわる苦労や心痛になって耐えたくない、と公言したのだった」

 このどうしようもない袋小路の突破口を見出すのがラエリアンだっていうんだぜ!? 信じられる?


 映画の日だったので『ドリームガールズ』を見に行く。やっぱりこれがアカデミー(作品)賞にノミネートされなかったのは納得いかんね。というかこれにあげたらいちばん丸くおさまったんじゃないかと思うのだがいかがだろうか。
 あと、タイトル・バックが素晴らしかった。これにアカデミー賞のタイトル部門をさしあげたい。

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2007-02-25

Harry Stephen Keeler Fan Club

Aftersports  After Sports vol.4という同人誌が送られてくる。 慶応sfcの学生が作ってるらしいんだけど、なんとハリー・スティーヴン・キーラーの特集号。
 RambleHouseのフェンダー・タッカー氏のインタビューとか、キーラー短編の邦訳とか載っている。以前、フィルムセンターで映画を見た後にいきなり学生二人組に声をかけられて、キーラーの翻訳を手渡されたことがあったけど、その学生たちの仕事らしい。 なかなか素晴らしいことであります。

 ちなみに翻訳短編は、その学生たちが作っているホームページHarry Stephen Keeler Fan Club でも読めます。

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2007-02-21

映画欠席裁判3

Cover 『映画欠席裁判3』の見本が送られてきました。FBBの『映画欠席裁判』、今回で一段落ということですが、別に解散とか喧嘩別れとかそういうことじゃないんでご心配なく(そして残念でした)! 今週中には本屋に並ぶと思いますんでよろしくおねがいします。

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2007-02-16

『大失敗』スタニスワフ・レム

433604502x01_aa240_sclzzzzzzz_v46912891_レムってなんて凄い作家だったんだろうか。

『天の声』がファースト・コンタクトものをつきつめた結果コンタクト不能な地点にまで行ってしまう反ファースト・コンタクトSFであり、『枯草 熱』が究極のミステリにして反ミステリであるように、これは究極の宇宙冒険SFであり反宇宙SFである。つまり、究極の反SFなのだ。これが最後の小説に なったのも当然のことである。

これ、SFプロパー筋からはあまり評判良くないようだけど、なぜだろう? 中盤が冒険SFになっていないということだろうか?(ぼくはそれは事実ではないと思う) 悪訳だからだろうか?(これは事実だ) ぼくにはすごく面白く、最後の方は一気読みだったのだが。あるいはこれがSFファンには受け入れがたいとすれば、これがあまりに完璧に反SFであるからかもしれない……と思うのはうがちすぎかな。

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2007-02-09

ベスト1

Drdeath 『SFが読みたい! 2007年版』でベストSF2006が発表されていますが、ジーン・ウルフの『デス博士の島その他の物語』が見事ベスト1に選出されました。恥も外聞もかなぐり捨てて自分でも票を入れた甲斐があったというものです。賞罰なしの生涯を送ってきましたが、ついにベスト1獲得とは!!! あー『デス博士』の代表訳者はあくまでも浅倉久志さんですけどね!
 なお、ジーン・ウルフのベスト1獲得を記念して、2/24発売のSFマガジン4月号でウルフの「迷える巡礼The Lost Pilgrim」を翻訳しました。お目通しいただければ幸い。

 現在発売中の文學界三月号、中原昌也の対談連載「映画の頭脳破壊」に鈴木則文監督と一緒に登場しています。一緒に京都まで行った奴です。しかし、わざわざ則文さんを引っ張りだして『大奥』と『マリー・アントワネット』を語らせるなんて、考えるまでもなく究極の無駄使いですね。まあその蕩尽ぶりが中原らしいとも言えるのだが。

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2007-02-07

日本エッセイストクラブ賞

『サッカーの上の雲』(小田嶋隆 駒草出版)読む。
 小田嶋隆のサッカー・コラム集。小田嶋隆の愛読者であり、サッカー・マニアであるぼくとしては文句なく楽しんだ一冊。唯一、欠点があるとしたら……著者が浦和ファンであることかな。
 いや、別にぼくは「レッズのくせに生意気だ」とか「ビッグクラブとか寝言言ってるんじゃねえ。点入れて喜んでる最中にキックオフされてゴールされる映像があるかぎり、浦和なんざ永遠の格下だ」とかそういうことを言いたいわけじゃない。いや少し思ってるけど、だからこの本がむかつくとかそういうことじゃない。そうじゃなく、著者が浦和サポで、コラムがここ数年のあいだに書いたものが中心だということである。つまり、浦和が強くなった時期に書いたものが多いということだ。
 誰もが知っているとおり、チームが弱ければ弱いほど、サポーターは純化され、サポート心は深まる。そしてコラムは悲哀の調子を帯びるがゆえに面白いものになる。面白いサッカー・コラムのほとんどが負けているチームについて書かれたものであるのは偶然ではない。だって、勝利については書くことなんてほとんどないからね。勝利は喜ぶものだからな。
 だから、小田嶋コラムが充実し、日本エッセイストクラブ賞を受ける日が来るためにも、レッズにはもうちょっと弱くなって欲しい、と切に願うものである。そのかわり今年こそ鹿島が十冠を達成してくれると、ぼくも嬉しい。それでぼくの書くものがつまらなくなったとしても、もともとたいしたもんじゃないんだから、人類文化の損失はほとんどないし。

『ねにもつタイプ』(岸本佐知子 筑摩書房)も読む。
 いやー、すばらしい。ぼくがとりわけ気に入ったのは「くだ」という奴。爆笑エッセイとしてはじまりながらどんどんホラーになっていく当たりの呼吸が絶妙。何度も読み返したい名品ですね。「住民録」もいい。ぼくは岸本さんとは酒の席でしか会ったことがないので、ほとんど「見知らぬおじさん」しか知りませんが。

 是非とも日本エッセイストクラブ賞を取れるよう、微力ながら努力したい。と言ってもぼくには「とれますように」って星に祈りを捧げるくらいしかできませんが。

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2007-01-10

私のハードボイルド(小鷹信光)

415208776501_aa240_sclzzzzzzz_v35251083__1 読み出したらいきなり自分の名前が出てきて仰天する。あわてて索引を見たが出てくるのはそこだけだった。ほっ。いや、なんの資料も引かず30分で書いた原 稿でも歴史に残ってしまうこともある(この本は後世に残る本だと思う)ので、文章を書くときはつねに心せよという戒めであった。

読めば読むほど小鷹信光というのはすごく変な人だなあ、と思うんだけど、自分では自分の方法論の奇妙さに気づいていないのがまたおかしい。普通の 人はこんなことはしません。某氏とそういう話をしていたら「それはカンが悪いということでもあるんだけどね。結局みっちりと外枠から埋めていかないと安心 できない。一方で片岡義男はすごくセンスがあるから、適当にやって本質を掴んでしまう」と評されていた。自分もカンが悪い方なので、これはすごくよくわか る。

で、結論としては自分はやはりハードボイルドな人間ではないなあ、ということだった。リチャード・スタークよりもウェストレイクの方が好きなんだよな 、ぼくは。

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