2009-06-14

斜陽 (2009)

監督:秋原正俊 脚本・編集:落合雪恵 音楽:黒色すみれ 出演:佐藤江梨子、高橋ひとみ、温水洋一  公式サイト

 先日、なんの気になしにAV女優のその後とかを調べていたときのことである。白石ひとみって引退後ノイズ・ミュージシャンになったんだっけ? まだやってたの?とか考えてたんだけど、カエルカフェというCDレーベルをやっているらしい。で、そこのウェブページを見てみたら「カエルカフェシネマ」の名が。え、映画作ってるの? 気がつくとこんなに作品が並んでいた

 出演者が谷村美月堀北真希ガッツ石松! どうしてこんなメンバーが集められるのか。そもそもこんなキャストで映画が作られながら、まったく話題になってないのは何故なのか。なんか既存の映画界とはまったく別の論理で作られて流通しているような気がする。

 その新作がサトエリ主演、太宰治原作の『斜陽』だという。これは見ないわけにはいくまい。

 渋谷のTheater TSUTAYAに客は10人もいなかった。まあ通常の映画流通とは別の論理で作られているので……

 物語は戦後、没落した旧貴族の家の娘と母の物語。で、箸より重たいものを持ったことのない娘・サトエリがいろいろ辛酸をなめることになるわけだが、当然自主製作レベルの予算しかないカエルカフェシネマだけにセットも小道具も大きなものは作れない。可能なかぎりサトエリと高橋ひとみの会話を多くして家の中だけで物語が進んでゆく。それでもそこかしこにほころび出てくるが、まあそれはしょうがないよな……と思って見ていたのだが弟役の伊藤陽祐が出てきたら、ジーンズにTシャツ姿。え?と思うとサトエリが恋人にケータイメールを打ってる! え、これ現代の話だったの!? だったらこのサトエリの大時代な服装は!?!

 なぜかサイレント風の演出がされていたり、突然黒色すみれのPVがはじまったり、かと思うと「ギロチン、ギロチン、シュシュルルル」は活かされていたり、謎の多い映画だった。カエルカフェ、奥が深い。

 なお、脚本と編集を担当している「落合雪恵」こそ白石ひとみその人らしい。

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2009-06-10

『あんにょん由美香』~映画館で逢いましょう

 7/11(土)公開の松江哲明監督『あんにょん由美香』blogでぼくが『あんにょん由美香』に寄せたコメントが公開されています。あいかわらず中野監督はいいこと言ってますね。実はこのコメント、iPhoneで書いてメールしたもの。iPhoneで原稿書いたのははじめてですが、はたしてサイバーなコメントになってるでしょうか!?

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2009-06-03

あんにょん由美香

〈週刊アクション〉6/16号のコラム「アクション・ジャーナル」で7/11(土)公開の映画『あんにょん由美香』のレビュウを書きました。この映画に関してはぼくはまったく他人ではなく、松江くんからインタビューを受けて出演もしています。そもそもこの映画が出来たのは『女優林由美香』のせいなのだから、その意味では主犯とも言える。林由美香に関することなのでとうてい客観視などできないので、これは素晴らしい映画だから是非見てくれ、としか言えません。



 ちなみに6/27(土)〜7/10(金)まではポレポレ東中野で関連企画として〈女優・林由美香×松江哲明監督特集上映〉がおこなわれます。ラインナップはspotted productionなどご参考に。本邦初公開の作品も含め、貴重な作品が何本も含まれておりますので是非。ぼくも日参しておりますから、劇場でお会いしましょう。近づいたら再度告知いたします。

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2009-05-30

ニコラス刑事 in バンコック・デンジャラス (2008)

監督:オキサイドー&ダニー・パン 出演:ニコラス・ケイジ

 これパン兄弟の98年作品のリメイクだったんだね。実物見るまでパン兄弟の映画だとは知らなかった。最近はすごい日本映画ばかり見ているが、世界の映画も同じくらいすごいということを教えてくれるのが怪しいタイ人監督パン兄弟。これはまちがいなくタイ版『レイン・フォール/雨の牙』だ! なんせヒロインの名前がタイ語で「雨」というのだ!

 ニコラス刑事は話は一滴のミスも許されない命中率百パーセントの凄腕殺し屋。ひとつの町では殺しは四件と決め、四件終えると次の町へと旅立つのだ。バンコクの片隅に隠れ家を構えたニコラス刑事(役名はない)はひっそりと誰にも関わらないで暮らす。いつも孤独に一人飯、だがそれにももう慣れた。だがあまり孤独だと人間が空気になってしまうので、町に出て人を見なければならない…ってカメラ片手にソイ・カウボーイかなんかに出かけて写真パシャパシャやってるどう見てもただの観光客なニコラスさん。

 ニコラスさん、たまたま怪我を負って薬局に行き、そこで聾唖者の店員に親切にされたもんでたちまち舞い上がって恋をする。でもタイ語喋れないし……とデートに誘いたいけど誘えないので店の前でうろうろしていたり。やっとデートに誘うと「タイ料理から~い」と苦笑い……いったいどこらへんが「堅気の人間とは関わらない」を家訓にしてる天涯孤独な殺し屋なのか小一時間問い詰めたい。

 しまいに使いっ走りで仕事が終われば始末するはずだったチンピラを「目に自分と同じものを見たからだろうか…」とか言い出して弟子にする始末。バンコクの雑踏の中を歩きながら
「おい、赤い服の男が見えるか?」
「え、赤い服なんかいませんよ」
「よく見ろ。町には鏡もあれば窓もある。自分の後ろの目で見るんだ!」
『レインフォール』でもキッペーがハセキョーにわけわかんない殺し屋の心得を伝授していたこれもまったく同じ! ということはこの魅力のない聾唖のヒロインはタイのハセキョーのようなものなのでしょうか?(デート中ニコラスさんが強盗に襲われてあっという間に相手を撃ち殺すが、彼女の方は耳が聞こえないので後ろで起こっている惨劇に気づかないという場面はワロタ) これが日本で公開されるというなら、ぜひ『レインフォール』も「ゲイリー・オールドマン主演の殺し屋アクション」と銘打ってタイで公開して欲しい! そしてこの映画に金を払ってしまったオレの仇をタイ人から取ってくれ!

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2009-05-28

エル・スール (1983)

 下高井戸シネマに『エル・スール』を見に行く。最近弛緩しきった日本映画ばかり見てるから、もう闇に沈んだ人物カットを見ているだけで溜息が出る。かと思うと「エン・エル・ムンド」がかかる二度の場面の素晴らしい長回しがあって、ひたすら至福。映画っていいなあ。

 昔ぴあに原稿を書いたことを思い出して探してみた。『シー・ユー・ネクスト・サタディ』に収録したが、この本ももう絶版だし、ここに載せておこう。

 スペインにも寒い土地があるんだ、と最初に教えてくれたのはビクトル・エリセの映画だった。『エル・スール』とはスペイン語で「南」という意味だが、この映画の舞台はスペインの北部である。北で生まれた主人公の少女は「南」を見たことがない。
 スペインというとつい地中海に面して暖かくラテンなところと思ってしまうのだけれど、本当は北部もあるし雪も降る。『エル・スール』ではいつも空はどんよりと曇り、決して爽快に晴れることがない。だが「南」はこんなところではないのだという。そこは冬でも雪が降らず、夏には暑くなって日陰でやり過ごす以外何もできないところなのだ。少女にとっての「南」はそんな不思議としてはじまる。だが、そのうちに「南」には新たな意味が生まれる。「南」は最愛の父親の生まれ故郷であり、そして父が捨ててきた場所なのだ。まだ見ぬ「南」は彼女が知らなかった父親の一面として、少女の前にあらわれる。「南」とはどうしても手が届かぬところにあるものすべてなのである。ついに「南」へ旅立つとき、少女は大人になるための一歩を踏みだす。南の民謡として少女が聞く「エン・エル・ムンド」のもの悲しいメロディが忘れがたい。

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2009-05-20

Il vento e le Rose ~愛するということ (2009)

監督:知らない 出演:叶恭子さま 製作:愛するということ製作委員会 公式サイト

 これ、実は恭子さまは主演ではありません。主役はよく知らないイタリア人の女子学生。よなよな湖畔の古城で剣をもった中世の騎士が立っているという北欧メタルみたいな夢に悩まされている花売り娘は、ある日、郊外のヴィラに薔薇の花束を届けるように言われる。そこには美しい女と彼女にかしづく男が住んでいるのだった。美女の奔放なセックスを見た花売り娘は我知らずおののきを覚え……

 まあ『O嬢の物語』をヌルくしたようなというか、撮影素人と違うんかちゃんと照明当てないから真っ暗だろというか、まあそういう話なのですが、特筆すべきはこれ、出演者みなイタリア人ばかりでイタリア語と英語しか使われない。で、そうなると必然的に怖ろしいことが……そう、恭子様のセリフがなくなってしまうのです! 全編で恭子さまのセリフはふたつだけ。その内のひとつは、恭子様に捨てられた男が「きみに捨てられるなら死んでやる!」というのに対して
「ん~やれば。あんたの人生だし」
と言うだけ! 言葉喋らないで、テーブルの向かいに座った男の足を蹴っ飛ばして誘ったりするだけなんで、ほとんど白痴の色情狂みたいだった。まあそのとおりだという説もありますが。

 まあこれもいいんですが、やはりここは『蜜の味』の映画化をキボンヌ。その際はもちろん恭子様にセーラー服着て高校時代を演じていただきたいものですね!

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2009-05-04

GOEMON (2009)

監督・脚本・撮影監督・編集・出演:紀里谷和明 出演:江口洋介とCGのみなさん 5/1公開

 オレにコピー書かせてくれたら「ついにPS2を超えた驚異の新世代映像!」とか「これは『GOEMON』ではない、GOUMONだ!」とかいろいろいいのを考えてあげたんだが。まさか『CASSHERN』よりもつまらない映画を作ってくるとは思わなかった。「キリキリ、おまえに底はあるのか!?」

「ぱんどらのはこ」の意味が違わねえか?とか、いまどきゲームでもあの草原はねーよとか、CGの人間が走ってるのを真横から撮るのやめようよ、ハイパーオリンピックじゃないんだから!とか、広末、光あてすぎて顔の凹凸がなくなってるよ!とかいろいろあるわけですが、いちばん言いたいのはね、キリキリ、飛び上がった人間が月にかかるのってやめようよ。それ格好いいと思ってるみたいだけど、ダサイから! 『E.T.』のときだってダサイものだったんだから!

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2009-04-27

レインフォール/雨の牙 (2009)

監督・脚本・擬闘:マックス・マニックス 出演:椎名桔平、長谷川京子、ゲイリー・オールドマン 公式サイト

 いやーこれはすごい。ぼくもいろいろすごいものを見てきたが、ひょっとしたらこれは今年ナンバー1かもしれない。それくらいすごい。どのくらいすごいかというと……

……とやかくあって、ジャズ・ピアニストの長谷川京子のコンサートに元秘密工作員の事件屋椎名桔平が訪れる。休憩時間に「実はオレはジャズ雑誌の編集者なのだが、取材させてもらえるか」と持ちかけると、ハセキョーは「えー? ハンサムな人?」などとウキウキで迎える。実はこのとき、三週間前にハセキョーの父(国交省の高級官僚)は通勤中に突然心臓発作を起こして死に、この前日には家に何者かが侵入してハセキョーの妹は射殺されているのである。そうした状況でライブやってるハセキョーってなんなの!? で、会うとキッペーはいきなり
「きみは命を狙われている、オレを信じろ」
「えーだってあなた最初から嘘ついてんじゃん。それで信じろって言われてもさー」
 そこにファンを装った殺し屋がやってきて、本当にハセキョーは襲われる。しかしキッペーが目にもとまらぬ早業で殺し屋を撃退、キッペーは殺し屋に尋問する。
「誰に雇われてるんだ?」
 だが殺し屋は
俺の方が知りたいよ……」
 と言って息絶えるのだった。いや知りたいのは客の方だっていうの!こんな脚本がありえるとは思わなかった!

「マクガフィン」というものを間違って解釈しているとしか思えない脚本のせいで、映画がはじまってから一時間半くらいするまでCIAとヤクザとキッペーが争奪戦をくりひろげるメモリースティックに何が入ってるかわからないのだが、ついに判明したその正体とは!

役人が賄賂をもらって無駄な公共事業をばらまいているので、その秘密を使ってCIAは日本政府を支配下に置こうとしていたのだ!

 ってそんなことはとっくに日本中みんな知ってるし、日本政府はとっくにアメリカのいいなりに門戸開放してるっての! 超翻訳調の脚本から怒鳴ってるだけのゲイリー・オールドマンまで、一分の隙もない大ケツ作! しかもパンフは800円!

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 新宿ミラノ2で見たんだが、男子トイレにはニコラス刑事主演『バンコック・デンジャラス』のCMステッカーが貼ってあった。
「命中率100% 完全無欠のトイレ利用者/一滴のミスさえ許されない」
 ……いいのかこれ。

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2009-04-26

アナタハン島の真相はこれだ!! (1953)

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監督:吉田とし子 出演:比嘉和子

 戦後すぐ、大いに世間を騒がせた「アナタハン島事件」という事件がある。戦時中、孤島に漂流した船の乗組員の中に一人だけ女性がいたことから、彼女をめぐって男たちが殺し合いを演じたというものだ。その女性、比嘉和子は「アナタハンの女王」と呼ばれ、愛欲渦巻く孤島での生活はさまざまな憶測を呼んだ。

 当然事件は映画のネタになり、スタンバーグの『アナタハン』をはじめとして多くの映画が作られた。その決定版とも言えるのがこの『アナタハン島の真相はこれだ!!』である。なんと比嘉和子自身が本人役を演じるという際物映画。てっきり失われた作品だと思われていたが、プラネット映画資料館がなぜか所蔵していて、フィルムセンターの「発掘された映画たち2009」で東京初上映ということになった。

「毒婦」呼ばわりされた比嘉和子が自己弁護のために出演した映画だということもあり、基本的には彼女は男たちの獣欲の犠牲者として描かれている。まあ実際美人でもない彼女が踊りとも言えない盆踊りを踊ってたりするのを見ているとイジメとしか見えないので、ある意味では意図は達成されているのかもしれない。実際、彼女が犠牲者だったのは間違いなかろう。ただ、和子の気を惹くために男たちが食い物を届けたりするのを、いい気になって煽っていたのも事実だろうと思われるのだが。

 もっぱら比嘉和子本人に注目していたわけだが、蔓ブラに腰ミノという土人スタイルでムチムチな肉体美を披露し、観客の期待にもしっかり応えているところはさすがである。あと地面を掘ってミミズ食って見せたのにはびっくりした。まったくためらいがなかったので、あれは本当にやっていたんだと思うな!

 上映はあと一度、29日(水)の13:00からあるので、ご興味ある向きはお見逃しないよう。ちなみに同時上映の『剣劇女優とストリッパー』は売れない女剣劇を立て直すためにストリッパーを舞台にあげてみる、という木に竹をそのまま接いだような話で笑った。

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2009-04-25

ミルク (2009)

 朝日新聞2009年4月17日夕刊に掲載された『ミルク』の映評が「どらく」映画散歩に再録されています。

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2009-04-18

ミルク (2008)

 朝日新聞2009年4月17日夕刊にガス・ヴァン・サントの『ミルク』の映評を書きました。なんと三週連続の登壇、今回は〈プレミアシート〉の欄なので関東版以外の読者にもお読みいただけるはずです。映画は本日より公開、ガス・ヴァン・サントにとっての『マルコムX』のような映画なので、これが評価されたのはいいことだなあ、と素直に思います。

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2009-04-15

獣の交わり 天使とやる (2009)

090227tenshi 監督:いまおかしんじ 出演:吉沢美優、尾関伸嗣 PGの紹介記事

〈シナリオ〉誌のピンク映画シナリオコンクール受賞作品。喧嘩で殴った相手を植物人間にしてしまった少年が何年かぶりに故郷の街に帰ってくると、その彼の世話をしている姉に会って……という成瀬の『乱れ雲』みたいな話。ひとつ違っているのはシナリオ題「イサク」というように、その少年が故郷に帰ってくるきっかけが神の声を聞いたからだというところにある。「会って癒せ」と命じる声を聞いた少年は、一生会わずにいようと思っていた自分の犠牲者一家に会いにいく。

「神の声」を持ち出すのは安易な気がするかもしれないが、これ、伊達や酔狂じゃなくて、かなり本気で書かれた脚本だと思われる。それを思うと、いまおかしんじの演出はちょっと違うのではないかと思うのだ。なんかいつものいまおか調マジック・リアリズムで四畳半にキリストが立ってたりするんだけど、あそこはもうちょっと荘重、というか本当に奇跡が起こる場面なんじゃないかなあ。

 いちばんいまおか調が生きていたのはヒロインが出かける教会の集会場面で、「あー、今日の集会は良かったわあ。神が降りてきたって感じ!」と言いながら「じゃー、このあと法華経があるんで、これで!」と帰ってしまうおばさんが実にいい味で笑えた。

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2009-04-11

ウォッチメン(2009)

 朝日新聞の映画評を再録。

 アメリカはヒーローの国である。悪をくじき、正義を執行するヒーローこそがアメリカの美しき理想だ。だが、その正義とはなんだろう?

「ウォッチメン」はアメリカン・コミックを原作とするヒーロー映画である。ただし「ウォッチメン」とはスーパーマンやバットマンのようなヒーローの名前ではない。タイトルはローマの風刺作家ユウェナリスの警句から取られている。すなわち「見張り番(ウォッチメン)を見張るのは誰か?」ヒーローは本当に正しいのか?

 舞台は現代とよく似た異世界。その世界にはかつて悪と戦うヒーローたちがいた。だが、超法規的な犯罪者退治を禁じる法律ができたため、彼らの活動は禁じられる。ある者は政府の紐付きで秘密工作員となり、ある者は身分を隠したまま引退する。あるいは法律を無視して非合法の自警活動を続ける者もいる。そんなヒーローの一人、ロールシャッハは一人の男の死に疑問を抱いて調査をはじめる。それが世界的陰謀につながるとも知らず……

 ヒーローとはなんなのか? それはアメリカン・コミックの、ひいてはアメリカン・カルチャー自体が問い続けた問題である。アラン・ムーアとデイヴ・ギボンズによる原作コミックは、その巨大な思考実験の成果だとも言える。世界を救うためにヒーローは何をするのか。その行為は是認されるべきことなのか? 1986年に発表された原作がアメリカ社会の現在をえぐりとってみせるのは、その問いがどこまでも根源的なものだからである。ヒーローたらんとして人間性を失っていく者に対し、あくまでも人間であることをやめないロールシャッハの叫びが尊い。(「朝日新聞」2009年3月27日号夕刊)

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2009-04-10

アライブ -生還者- (2007)

 本日発行の朝日新聞2009年4月10日夕刊に『アライブ -生還者-』のレビュウを書きました。『アンデスの聖餐』ではありません。実際にアンデス山中から帰還した人たちが現場に戻ってそのときのことを語るというもので、いろんな意味ですごい映画でした。彼らにとっても一種の絶頂体験であったということがわかります。4/11より公開。

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2009-04-02

Gelatin Silver,Love (2009)

監督・撮影:繰上和美 出演:宮沢りえ、永瀬正敏 公式サイト

 元カメラマンである永瀬正敏は謎の男に依頼されて謎の女(宮沢りえ)の家をビデオカメラで監視することになる。音のない画面に映る女の姿を見るうちにいつしか男は女に魅せられていく。ゆでたまごを食べる宮沢りえ。床でごろごろ転がる宮沢りえ。ゆでたまごを食べる宮沢りえ。股間をまさぐる永瀬正敏。ゆでたまごを……しまいにゆでたまごを食べるりえのアップを移した液晶テレビ(SONYブラビア)相手にビデオドロームしちゃったりして。

 いやあギャグならいいんだけど、これ百パーセントマジだからな。脚本は『偶然にも最悪な少年』でオレを激怒させてくれた愚スーヨン。まだ生きてたのか!

「ゆでたまごは好きですか? 美味しいゆでたまごを作るにはゆで時間は12分30秒でなければいけません。12分30秒ぴったり、一秒の誤差も許されません」と永瀬は語りかけるのだが、半熟卵作るのに12分30秒は長すぎるよ! その台詞を言って無視されたあとの永瀬の行動こそ、この映画を見てオレがやりたかった唯一のことです。

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2009-03-28

ウォッチメン(2009)

 本日公開の映画版ですが、朝日新聞2009年3月27日夕刊にレビュウを書きました(今後は可能なかぎり活字媒体掲載情報もここでフォローしていきます)。で、朝日の映画評ですが、てっきりウェブでは公開されないものと思ってましたが、たまにどらくに掲載されることがあるそうです。すいません、こんなページ、存在も知りませんでした! しかし「朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト」ということなので、オレの映画評が掲載される可能性は宝くじに当たるよりも低いのではないかと思われます。期待しないでお待ちください。

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2009-03-22

オレのベーコン数

 Kevin Bacon Numberについてはいまさら説明する必要はないだろう。何本の映画の共演者をたどればケヴィン・ベーコンにたどりつけるかという本数のことだ。Oracle of Baconにいけば、好きな人のベーコン数を教えてくれる。残念ながらこれの問題はimdbのデータを引いてるってことで、imdbに登録されていない人名は出てこない。だからオレの場合だと林由美香 ベーコン数3と『発情女刑事』で共演してるから3+1=4とか計算して満足するしかなかったわけだ。

 そんなわけだから、ある日なんの気になしにエゴサーチして、自分がimdbに登録されてることを知ったときの驚きを理解していただきたい。
 当然検索してみたとも
 ベーコン数3 これかなりいいんじゃないか?

 ついでに知り合いもいくつか探してみた。
 中原昌也 ベーコン数4
 平山夢明 ベーコン数3
 三留まゆみ ベーコン数∞
 大林千茱萸 ベーコン数3
 吉行由実 ベーコン数3

 というわけでベーコン数3は別にいい数字ではないらしいことが判明した。でも中原よりは宇宙の中心に近いらしいね!

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2009-03-18

熟女と新人巨乳 したがる生保レディ (2009)

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 40年前の小川欽也監督作を見に行くなら、2009年の小川欽也も見とかないとまずいだろう!と思って上野オークラへ出かける。 うららかな陽気で、上野公園の桜もそろそろという感じ。人出が多かった。

 話は新人巨乳生保レディ(波風きら)が業績好調なのをいぶかしんだベテラン生保レディ(友田真希)が新人リサの肉体営業を疑いはじめ……というもので、60分の内半分くらい絡みやっているが何度か眠気に襲われる……波風きらが(友田の妄想の中で)「ぱふぱふしてあげようか?」と肉体営業していたが、現在公開中『ドラゴンボール・エヴォリューション』へのオマージュなのか!? さすがは小川欽也、現代の事情にも遅れをとらない!

 ちなみにもう一本、新田栄の『牝熟女 馬乗り愛撫』(「いやらしい熟女 すけべ汁びしょ濡れ」)も見たので新田栄と小川欽也というかなり強烈な二本立てを見てしまった。こっちは亭主(久須美欽一)の浮気相手として書道教室の先生役の林由美香が出ていたので、それが唯一のオアシス。全裸書道教室でマンタクとっても上品な由美香さんはさすがとしか言いようがない。

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2009-03-13

60年代まぼろしの官能女優たち

Title  明日からラピュタ阿佐ヶ谷にてほぼ二ヶ月近いレイトショーで60年代のピンク映画を9本上映。ともかく幻すぎてタイトル聞いても全然何がなんだかという感じだろうけど、今回を見逃すとたぶん二度と見られない(もちろんビデオにもなっていないし、なる見込みもない)作品ばかりなだけに、告知と宣伝を。

 正直なところぼくもこの中で見ているのは二本だけなので、面白いかつまらないかなんてまったくわからないのだが、見たうちの一本『禁じられた乳房』はたいへんな傑作でびっくりした。いや小川欽也の映画に「傑作」なんて言葉を使う日が来ようとは思わなかったが、本当に面白いんだからしょうがない。金がないのでほぼオールロケ、それでいてあまりヌードがない(今のピンク映画と違い、ヌード自体が貴重なのだ)ため、低予算犯罪映画の趣きがある。和製B級ノワールというところか。最良のドリス・ウリッシュマンのような優れたセクスプロイテーション映画なのだ(といってもちっとも褒めているようには聞こえないが)。

 先日アメリカ版のDVDで見た『昂奮』も凄かった。なんせ1時間以上のあいだ、延々と浜辺で学生運動崩れのレイプ犯が女の子を追いかけてるだけなのである。女がつかまり、絡み合い、そこで身体をもぎ離して逃げ、またつかまえる。以下このくりかえし。二人が走るのを超ロングでとらえているカットにいたっては、ほとんど実験映画のようである。

 やはりピンク黄金時代の映画は凄いね。そういうわけでぼくも毎週通うつもりです。

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2009-03-07

Star of David: Hunting for Beautiful Girls

Starofdavid
 『堕靡泥の星 美少女狩り』米Discotek Media版DVDがついに完成。一昨年11月に収録した音声コメンタリーがようやく日の目を見ることになったというわけ。発売は三月末になるということなので、もうちょっとだけ待ってください。DVDの特典としては監督インタビューと監督はじめての音声コメンタリー、こちらはぼくが聞き手をつとめました。

 しかしできあがってきたジャケを見て唖然。下着着せられてるよ(笑)!アメ公はしょうがないなあ(なお、ジャケ裏面にはuncensored versionが入ってますんで、気になる人はそっちとさしかえるといいかと思います)。

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2009-03-02

世界傑作劇場最後の日

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 上野の漢のメッカ、世界傑作劇場が建物老朽化のためついに取り壊し決定。今日で閉館というので行ってきた。日曜日でもあり、山崎邦紀監督のトークがあったので女性客も結構多く、場内はほぼ満席であんまり閉館につきもののしんみり感はなかった。それにしてもあの人たち、今後はどうするんだろうか。張り紙には「上野オークラをご利用ください」と書いてあったけど、上野オークラに映画を見にいってる身としてはあまりご利用して欲しくないような気も。まあ同じ肩身の狭い趣味を持つ者同士、仲良くやっていくしかないのか。

 ちなみに山崎監督の新作は『仮面の宿命 ~美しき裸天使~』。初老の大学教授(牧村耕次)が初恋の男の幻想に導かれ、死の影を感じながら性の探求を続けるという物語。客層や劇場の運命を考えずにはいられなくなる佳作だ。ノンケの仮面をかぶって生きてきた男が仮面の告白をするという話なのでもちろん三島由紀夫リスペクト(褌マニア)。牧村耕次が哀感と同時に老ホモセクシュアルの狡猾さも見せつけて素晴らしい。

 映画を見たあと、上野オークラで二本見る。ロビーでかなり強烈な女装さんがお着替えあそばしていてビビった。最近は劇場側もああいう方々は二階に隔離する方針とってるのかな?

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2009-02-27

ナ・ホンジン・インタビュー

P1040503  韓国映画『チェイサー』の監督ナ・ホンジンが来日したので取材に。『チェイサー』は2004年ごろ韓国でデリヘル嬢や富豪を20人以上殺害した連続殺人鬼柳永哲事件をモチーフにしているので、これはもう当然オレたちの出番だろう!と洋泉社の田野辺くんらとでかけたわけである。クロックワークス社は現代アートのギャラリーみたいなところだった。

 ナ・ホンジン自身はあまり表情の変わらない人で、こちらの質問に対して淡々と答えていく感じなので、質問しながら(あー盛り上がらないな~今回のインタビュー失敗だったな~)などと考えていたのだが、途中、田野辺くんが発した質問(柳永哲の人肉食疑惑について)を期に空気が一変。インタビュー終了後には「おまえらすげえぜ! 一緒に写真撮ろう!」と監督の方から記念撮影を頼まれてしまった。田野辺くんの和ませ力は最強。

 インタビューは「映画秘宝」と4月発売のMurder Watcher次号に掲載予定ですので、乞うご期待。

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2009-02-21

闘う時評

 ブクマコメントでも指摘されてるんだけど、昨日の飲み会で『週刊新潮』のコラムで福田和也が『旭山動物園』を絶賛していると聞き、思わず買ってきてしまった。

 いや、福田和也が政治で人を褒めることはあるのわかってるんだけど、津川雅彦を「現役最高」とまで書いて、どういう政治的利得があるというんだ!? しかもルビッチやヒッチコックを引き合いに出してまで! ちなみに福田は「どんな監督だって、ルビッチであれ、ワイルダーであれ、ヒッチコックであれ、なかなかデビューから三作連続して傑作を世に問えるものでありません」とか書いてるわけだが、あんた、ルビッチの監督第三作って見てるの? たぶん1915年の短編一巻ものだと思われるわけですが(もちろん、ぼくは観ていません)。

「マキノ作品は、ファーストシーンが凝っていますが、今回も意表をつかれました。チリトリに死んだカブト虫を寄せていって、生きている一匹を押し入れに投げ入れる……訳が分かりませんが、観ているうちにその意味あいの深さが分かってくる、という考え抜かれたシーンです」

 これ、投げ込むのは押し入れじゃなくて隣の部屋ね。そこはカブトムシやらクワガタやらが床一杯にざわざわうごめいている昆虫屋敷で、その中に座り込んだ少年がカブトムシを手に恍惚の笑みを浮かべているという……レクター博士かジョン・ドーの少年時代か!?と思うような衝撃のサイコ・ホラー演出。これが「人間嫌いの引き籠もり少年」の描写だっていうんだからさ……

「岸部、長門はともに飼育係を演じているのですが、その演技合戦がすさまじい。ゾウとチンパンジーを担当する係を演じた長門の芝居は、ケレンがたっぷりの癖を前面に出すスタイル。それにたいして、ひたすら動物によりそう係を演じる岸部の控えめな演技は、動物と人間双方の孤独さと、その孤独を踏まえてこその絆を実感させてしまう。奥深いものでした」

 いや、それは普通演出が存在しないという。そしてここで書いてる長門の大芝居が酷いんだよ。独りよがりで思い入ればっかりのもう観てらんないレベル。それを延々長回しで撮ってるもんで……普通の監督なら全部カットだよね。 物語上はまったく必要ないし。

「マキノ雅彦がいるかぎり日本映画は大丈夫、と思わせてくれるものです」

 オレは福田和也の映画を観る目がいちばん心配だよ! オレがまったく政治的含意を読めてないだけで、実はこのコラムは褒め殺しを意図したものであるならいいんだけどね!

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2009-02-17

老人動物園 ペンギンが空を飛ぶ (2009)

監督:マキノ雅彦 出演:西田敏行、中村靖日 公式サイト

 行動展示で有名な旭山動物園のPR映画だから、当然きゃわいい動物がわんさか出てくるんだろうな……と思って暗い気持ちで見に行ったが、マキノ雅彦(津川雅彦)のボケっぷりはそんな甘いレベルではなかった! これ、基本は園長・西田敏行とその周囲の飼育係の人間ドラマなんだが、そのメンバーが凄い。長門裕之、岸部一徳、塩見三省、六平直政、榎本明……ってここは動物園じゃなくて養老院じゃないか!?と思わせる大老人大会。

 で、この面々がちっとも有能じゃなく、とりわけチンパンジーの飼育係長門裕之にいたっては、自分がチンパンジーの妊娠に成功したからって、ゴリラの飼育係岸部一徳を馬鹿にする始末。「(雌ゴリラの)マリはおまえのことを旦那だと思ってるからな!」からかわれた岸部一徳はすねてゴリラの檻に閉じこもる(子供か!)。しまいにゴリラの飼育係を降りてしまう。ふられてしまったマリ(雌ゴリラ)はハートブレイクで死んでしまうのだ!

 ついにチンパンジー出産の日が来た。産まれたぞ!と大喜びの長門裕之ははしゃぎすぎてゾウに抱きつき、踏みつぶされてしまう! 葬式では中村靖日(元ヒキコモリ)が「野生の壁を犯したから、その報いですよ!」と言い放つのだ。

 ……で、延々ダメ飼育員たちとダメ動物園を救えって市民運動(岸部一徳が着ぐるみ着てビラ配ったりする)が続くばかりで、行動展示をはじめるのは最後の五分くらいだった! ペンギンはCGで宇宙空間を舞ってたよ!

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2009-02-03

映画芸術ベスト&ワースト10

「映画芸術」#426 ベストテン&ワーストテン発表号が出ていた。立ち読みだけのつもりだったけど、あまりに酷いんで思わず買ってしまった。これは本当に酷い。衷心より申しげるが、一刻も早くこの雑誌は廃刊されるべきだ。これ以上、荒井晴彦は恥をさらすべきではない。「映画芸術」という素晴らしい雑誌の末路がこんなものになってしまったというのは、本当に残念なことである。

 荒井晴彦が嫉妬と僻み根性だけでできあがった人間なのはみなさんご存じだろうが、今年ほどそれがあからさまだったことはないのではないか。荒井晴彦はただ自分の嫉妬心を満足させるために映芸ベスト10を利用している。

 では、今年のベスト10を見ていこう。映芸ベスト10がベスト点からワースト点を引く特異な採点方法を採用しているのはご存じだろう。今年のベスト5はこうなっている。

1 「ノン子36歳(家事手伝い)」 84
2 「実録・連合赤軍」 83 (116-33)
3 「接吻」 82 (102-20)
4 「トウキョウソナタ」 81 (125-44)
5 「人のセックスを笑うな」 「PASSION」 55

 ちなみにぼくは今年のベスト邦画は「実録・連合赤軍」であり、これを一位にするのが「映画芸術」の義務だろうと思っていた。そのためなら少々の操作も許されるだろう。しかしこれは酷すぎる。

「実録・連合赤軍」のマイナス点は
荒井晴彦 -10 映芸ダイアリーズ -10 岡本安正 -5 藤元洋子 -5 中島雄人 -3
「接吻」
荒井晴彦 -10 寺脇研 -5 山下絵里 -5
「トウキョウソナタ」
荒井晴彦 -10 藤元洋子 -10 寺脇研 -10 映芸ダイアリーズ -9 中島雄人 -5

「映芸ダイアリーズ」というのは映画芸術DIARY で映画評を書いているメンバーの合評 つまり編集部お手盛り) 岡本安正は「会社員」 藤元洋子は「派遣社員」 中島雄人は「ゴールデン街鳥立ち店主」 山下絵里は「築地魚河岸の帳場さん」だ。

 いや築地魚河岸三代目が映画評を書いてもいいよ。でも、これじゃあ荒井晴彦が嫉妬した相手をおとしめるためだけにマイナス点を入れるメンバーを集めてきた、と言われても反論できまい。真面目に投票している人たちはどう思ってるんだろう? 高橋洋も渡辺武信も、こんなところに並べられてどう感じてるのか?

 そして熊切和嘉はこんな投票で一位になって、本当に嬉しいのだろうか? 「ノン子36歳」は素晴らしい映画なのかもしれない。でも、これじゃあ荒井晴彦にとって、熊切なら安心して褒められる=嫉妬を感じず、上から目線で見られる相手だって言われてるも同然じゃないか。実際には熊切監督に対しても侮辱を働いてるんだってことを、映芸の人たちはわかっているのか?

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2009-02-02

恋極星 (2008)

Upch1686 監督:AMIY MORI 出演:戸田恵梨香、加藤和樹 3/14公開 公式サイト

「ティア・マイスターたちが若手実力派女優・戸田恵梨香を迎えて贈る白くて淡い、スターダスト・ラブストーリー」

 このコピーを聞いただけで「これは見ないわけにはいかないな!」と思ってしまうオレはどこかおかしいのかもしれないが、しかしティアマイスターという言葉の響きには逆らえない。たぶんtear +meister つまり「涙の名匠」って意味だと思うんだが、そんなギルドがドイツにはあったのだろうか? そして「マイスター」の割には聞いたことのないAMIY MORIという人気女性写真家って誰なんだ!?(ていうか、綴り間違ってないか?)

 物語は小樽の町で一人知的障害の弟の面倒を実ながら暗い青春をおくっている菜月(戸田恵梨香)のところに、ある日軽いイケメンに変身した幼なじみが11年ぶりに帰ってくるところからはじまる。昔は子供同士で「けっこんしようね」とか約束したのに、自分をほっぽって勝手に外国に行ってしまって、急に帰ってきたからって馴れ馴れしくしないで!などと精一杯ツンツンする戸田恵梨香なのだが、イケメンパワーの前にすでに股間はゆるんでいたのだった……

 で、あとは例によって「奇跡なんて起こらないんだよ!」「5月6日みずがめ座イータ星流星群は13年ぶりの極大です」「Wrecking Ball 左半身失調!」と定番のティアイベントがてんこ盛りです。ティアマイスターはどうも、安っぽい音楽をだらだらと垂れ流してる以外はあまり仕事してないような気がしました。

 製作はデジタルハリウッド・エンタテインメント。デジハリって、昔高城がやってたとこだっけ?

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2009-01-28

「テレクラキャノンボール2009 賞品はまり子*Gカップ」

「テレクラキャノンボール2009 賞品はまり子*Gカップ」

ちょっと体調を壊して三日ばかり寝込んでいた。仕事をする気力もないので自堕落に一人でAV鑑賞のつもりで見始めたんだけど、そんなことを忘れさせてしまうくらい圧倒的に面白くって、最後まで一気に見てしまった。某所のショップで買ってきたんだけど、わざわざ「AVGP作品の中でいちばん面白い!」と店員の手書きポップがついていた。誰が見ても問答無用に面白いもんなあ。何よりもすばらしいのは、これがあくまでもAVじゃなきゃできない表現だってことである。

MVPは殺伐としたセックスがあまりにすばらしいバクシーシ山下ではなかろうか。狙ってもあの味は出せないものなあ。でも最後に勝ったのはまり子*Gカップだね!

ちなみにWeekday SleepersのテーマソングPassion Fruits Telecriderも素晴らしい。

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2009-01-24

一条ゆかりのプライド (2008)

監督:金子修介 出演:ステファニー、満島ひかり、及川光博 公式サイト

 みんなが大好きな、『濡れて打つ』の金子修介が帰ってきた!

 原作は一条ゆかりの音楽漫画なのだが、30年前の少女漫画みたいなプロットが凄すぎて全編大爆笑。世界的なオペラ歌手の遺児だったお嬢様(ステファニー)が、ある日いきなり父親が破産して一文無しになったんで銀座のクラブで歌手として働きはじめると、そこにホステスのアルバイトで入ってきたのが掃除婦のバイトをしながら音大に通っている苦学生(満島ひかり)。かくして本番前に出生の秘密を囁くとか、ホットチョコに何かいれるとか、女同士の華麗な戦い がはじまった! ってオペラ歌手を目指す女同士なのにクラブで闘ってんのかよ!

 そう、どっちかというと音楽映画と言うよりは『ショーガール』な感じ。で、金子修介は当然「そういうもの」として演出してるんで、求められるのはあり得ないような華麗なオーヴァーアクト。満島ひかりは合格。キッチュな役柄ほど輝くミッチーは少々抑え気味で残念。ママ役の高島礼子はこれ以上ない適役。女装ピアニストは勘違いして真剣に演じちゃってる感じ。問題はステファニーで、まあ体型はオペラ歌手だから共鳴板が必要だと納得するにしても、 まったく変わらない表情と小津映画もびっくりの棒読みセリフはどうしたものか……

 これロマンポルノだったら傑作だったのになあ。正直、二人ともロマンポルノのアイドルがちょうどいいくらいの感じだしね!

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2009-01-20

感染列島 (2008)

監督・脚本:瀬々敬久 主演:妻夫木聡、壇れい 公式サイト

三回半笑いました(半分は半笑い)

残念だ。瀬々敬久の映画は昔から見ているから応援したい。したいんだけどやっぱり笑いはこらえきれなかった。三回のうちの一回は佐藤浩市が死ぬところ。もう一度は三浦アキフミが壇れいに詰め寄るところ。もう一回は妻夫木が「フレンド!ともだち!フレンド!」って叫ぶところ。 三浦アキフミという人の出番はどこもすごかったな…ああいう役にこそ吉岡睦雄とか使えばいいのに。

まあ、新しいゾンビ映画としてゾンビ手帖の人は評価してあげるといいと思う。感染患者がゾンビになって襲ってくるところは完全に「バイオハザード」だった。あの場には銃もあったんだからばんばん撃ち殺しちまえばいいのに!と思ったよ。

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2009-01-19

2008年映画ベスト10

Hiho

 映画秘宝のベスト10発表号(2009/3)が発売になったんで、ぼくの投票を転載しておきます。

1 It is Fine. Everything is FINE! (クリスピン・グローバー、デヴィッド・ブラザース)
2 『天皇伝説・血のリレー』(08 渡辺文樹)
3 『接吻』(07 万田邦敏)
4 『VHSカフルーシャ~アラブのターザンを探して』(06 ナジーブ・ベルカーディー)
5 『イントゥ・ザ・ワイルド』(07 ショーン・ペン)
6 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道』(08 若松孝二)
7 『ミラクル7号』(08 チャウ・シンチー)
8 『LAST CITY 背徳バージョン』(08 大木裕之)
9 『ドリラー・キラー』(79 アベル・フェラーラ)(爆音上映)
10 『幽霊VS宇宙人 略奪愛』(07 豊島圭介)

今年も素晴らしい映画をたくさん見た。本当に映画的には恵まれた年だった。ただひとつの問題が、素晴らしい映画はどれもこれも自主上映や映画祭の特別上映ばかりで普通に公開されないということだ。すべての映画が解放され、クリスピン・グローバーの執念をあらゆる人が知り、渡辺文樹のアクションが誰の目にも触れる日が一日も早く訪れることを祈る。

ワーストその他は秘宝本誌を見てください。ベスト・ガイは小野寺生哉(かなざわ映画の会)だ!

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2008-12-30

K-20 怪人二十面相・伝 (2008)

監督・脚本:佐藤嗣麻子 出演:金城武、松たか子、仲村トオル 公式サイト

 映画の冒頭で「日本は米国、英国と平和条約を結びました。これで第二次世界大戦は回避されました」とラジオのアナウンスで言うのを聞いてはや脱力したが(ニュースで「第二次世界大戦」なんて言うわけがない!)、それで「1949年」って……このパラレル・ワールド設定にはなんの意味があるんだろうか? 機械式タイプライターなキーボードを出したかったって以外に? まさか「こんな二十面相は二十面相ではない!」といううるさがたの非難を退けるためではないだろうが…

 そもそも第二次世界大戦が回避された世界ってことは、日本はまだ朝鮮や満州や台湾を植民地にしてるってことだよな? 中国はどうなってるんだろう? ひょっとして金城武の不自由な日本語の裏にはそんな事情が!

 出演者では金城武はいつも通りの棒読みだが、松たか子があまりに鈍重で目を覆わんばかり。宮崎駿的な元気なヒロインを目指してるんだと思うんだが、松たか子に「良家の子女のたしなみですわ!」とか言われてもな……漫画的誇張ってもんを根本的に勘違いしてるとしか思えん。

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2008-12-27

裸身の裏側 ふしだらな愛 (2008)

New01 監督:吉行由実 出演:Amu、結城リナ、若林美保 PG

 吾郎と高校時代からつきあっていた恋人がアメリカに旅立ったが、そこへ飛行機事故のニュースが入る。彼女が死んでから三年後、吾郎は彼女とそっくりな女性に出会う……

……というわけで、吉行由実監督の新作は韓流、というか「冬ソナ」オマージュだそうで、あの手のありえないメロドラマが展開する。韓流メロ自体は ピンク映画と相性も悪くなかろうと思われるのだが、残念ながらもうひとつ盛り上がらない。二人で思い出の地に行くところなんかはそれ風で悪くないのだが、シナリオ的にはネタばらしが早すぎるのではなかろうか(もしくはどんでん返しが足りない)。あと、二人が再会のキスをするところはデ・パルマ調360度パンじゃないと。 なぜかロフトプラスワンロケ作品

 同時上映は「平沢里菜子の『テオレマ』」とでも題したい『中川准教授の淫びな日々』。平穏な家庭生活を送っていた大学教員のところへ昔捨てた恋人の娘(平沢里菜子)がやってきて、復讐のために一家をメチャメチャにしてしまうというストーリー。もうアテ書きか?と言いたくなるような平沢里菜子は素晴らしいのだが、ストーリーはもうひとつ納得しかねる。これ、まず平沢里菜子が准教授を誘惑し、娘を抱いてしまった罪悪感から男が言われるがままに破滅していく、という流れでなければなるまいと思われるのだが、最後まで近親相姦にはいかないのだ。おそらく映倫に却下されたんだろうね。でもそれならそれで、平沢里菜子が嘘ばっか言っていて、本当に娘かどうかわからない、と いう話にすればいいものを。

 なお、『裸身の裏側〜』は正月をはさんで1/8(木)まで続映。12/30 (火)3:00PM〜には上野オークラで吉行監督とAmuの舞台挨拶もあるそうです。みなさまふるってどうぞ。

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2008-12-23

第二回はくさい賞

 今年もこの季節がやってまいりました。そう、今年の最低映画を決定するはくさい賞のお時間です。喧々囂々の議論の末決まった栄えあるノミネートは以下のとおり。

最低作品賞
『少林少女』
『隠し砦の三悪人』
『ICHI』
『252 生存者あり』
『まぼろしの邪馬台国』

最低監督賞
堤幸彦(『20世紀少年』、『まぼろしの邪馬台国』、『銀幕版スシ王子!ニューヨークへ行く』)
本広克行(『少林少女』)
樋口真嗣(『隠し砦の三悪人』)
マキノ雅彦(『次郎長三国志』)
曽利文彦(『ICHI』)

最低主演男優賞
金城武(『Sweet Rain死神の精度』)
大沢たかお(『築地魚河岸三代目』、『ICHI』)
竹中直人(『まぼろしの邪馬台国』)
草彅剛(『山のあなた 徳市の恋』)
長嶋一茂(『ポストマン』)

最低主演女優賞
吉永小百合(『母べえ』、『まぼろしの邪馬台国』)
田中麗奈(『犬と私の10の約束』、『銀色のシーズン』、『築地魚河岸三代目』、『山桜』)
柴咲コウ(『少林少女』)
綾瀬はるか(『ICHI』、『僕の彼女はサイボーグ』、『ハッピーフライト』)
高山侑子(『空へ-救いの翼』)

最低助演男優賞
南原清隆(『L Change the WorLd』)
堺雅人(『クライマーズ・ハイ』)
中村獅童(『ICHI』)
窪塚洋介(『ICHI』、『まぼろしの邪馬台国』)
大沢たかお(『ラブファイト』)

最低助演女優賞
香椎由宇(『252 生存者あり』)
桜井幸子(『252 生存者あり』『ラブファイト』)
DJ KAORI(『R246 Story』)
福田麻由子(『L Change the WorLd』、『犬と私の10の約束』)
真由子(『次郎長三国志』)

 今年は駄作の層が厚く、とりわけ主演女優賞あたりは充実していて選考は熾烈を極めました。はたして『ICHI』は何部門で栄冠に輝くのか? 大沢たかおの二冠はなるのか? 発表は1/20発売の映画秘宝2009年3月号で!

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2008-12-18

私の三点

 朝日新聞12月18日朝刊文化面にて「私の三点」をセレクトしています。〈回顧2008〉と題して今年の映画界の情勢を回顧する記事に添え、今年公開映画の中で三点選んでいるわけですが、今年の三点は……

『接吻』(万田邦敏)
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道』(若松孝二)
『天皇伝説』(渡辺文樹)

 やってしまった!「連合赤軍」と「天皇伝説」を並べるという誘惑にはどうしても抗しきれなかった。それをそのまま載せる朝日新聞も太っ腹だな!山根貞男とは一本かぶっていましたが、それ以外の執筆者とはひとつもかぶらないのはいつものこと。

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2008-12-16

252 生存者あり (2008)

監督:水田伸生 出演:伊藤英明、内野聖陽、香椎由宇

 小笠原沖で地震があってメタンハイドレートが放出されていきなり中心気圧870ヘクトパスカルの巨大台風が発生! いきなり大津波が起きてお台場と新橋壊滅! フ●テレビも崩壊!(日テレ製作だから!) 気象庁の香椎由宇は「すいませんでした! 予報はずしちゃいました! もうちょっとリアルデータさえあれば!」と課長に謝るが、時すでに遅く地下鉄新橋駅には伊藤英明ら五名が閉じこめられていたのであった。

 いやー笑った笑った。後半は「252! 生存者ありいいい!」と誰かが叫ぶたびに大爆笑。別に律儀に2回-5回-2回と叩かなくったて、音さえ出せば生存者がいるのはわかると思うんだけどな。

 で、伊藤英明を救うために東京中のレスキュー隊が新橋の現場に集まって救援活動中なのをテレビで見た香椎由宇は気象庁から飛び出して現場にかけつけ「ダメです! やめてください! 二次災害の危険があります!」

 まあこれほど登場人物の言うことなす事すべて間違ってる映画も珍しい。竜巻みたいに突然発生して高潮ではなく津波を引き起こす台風もどうかと思うんだけど、レスキュー隊も全員馬鹿にしか見えないし、香椎由宇は存在自体なんの意味もないし、救出される人々もウザイ馬鹿ばっかで早く死ね!としか思えないし、タイムリミットがある救出活動なのに隊員同士で会話したり「お先にどうぞ」「いやそっちが」とかやってるのもどうかと思うしだいたいタイムリミットが迫ってるというのにスローモーション、スーローモーショーン、すうろおもおおおおしょおおおん……撮影林淳一郎って本当なのか!?

 しかしまあ、「無駄な美人」という言葉はあるが、世の中に香椎由宇の美貌ほど役に立たないものはないね。

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2008-11-20

フォーク&バレット~サヨウナラ戦争(2007)

 なんだか映画を見れば見るほどモグラ叩きの様相を呈しつつある今日この頃。一本映画を見て「いやこれは……」と思うたびに「じゃあこれは?」とさらに強烈なものが登場する。この戦いに終わりはないのか? もう、サヨウナラ戦争、と……

 苛烈な戦いの末『ボディ・ジャック』を倒したオレの前にあらわれたあらたな敵、それが『フォーク&バレット』だった!

小夜はタイクツな日々の中、淡い恋心を抱きながら、別世界を思い描く。
そこでの小夜はクローン人間たちと激しい戦闘に明け暮れる兵士だった…。
はなわが迫真の演技で二枚目を好演。新人の丹羽斐沙江をヒロインに抜擢し風間トオルなど豪華キャストで描く!!

 はなわ出演てなに!? 某筋より得た情報によればこの製作会社ミライ・アクターズ・プロモーションというのはバーニング系の俳優養成学校らしい。つまりアクターズ・スクールの生徒に「劇場用映画出演」という箔を付けるためだけの映画ということか? ということは出演者はバーニング系のヒマな俳優ということなのだろう。ENBUゼミで井口昇くんが作っていた映画のような感じだが、井口くんにはギャグにするという落としどころがあったのに対し、これはどう見てもマジ……

佐伯小夜(丹羽斐沙江)はタイクツな日々を送っていた。唯一の楽しみはバイト先のレストラン「ブバルディア」で思いを寄せる風間亮(はなわ)に会えること。 そんな小夜の別世界では、兵士としてブバルディアの仲間たちとクローン人間たちとの激しい戦いに明け暮れている姿もあった。 思いにふけっている小夜にバイト仲間の澤田美穂(本山由美)や篠崎加奈(ちかげ)、七瀬桐子(工藤華菜子)が話しかける。 その様子を微笑ましく眺めながらメニューを書いている店長の幸田総一郎(丸山桂汰)。厨房では小田哲司(木村延生)、中本和美(木川留美子)、 大野卓司(萩原直喜)が開店にあわせて仕込みをしている。その横では、二葉千秋(永田淑乃)に倉崎聡(園田真治)が怒鳴られている。 しかし、小夜の別世界では、「ブバルディア」部隊はクローン兵と戦い続けている。終わりの見えない戦い…傷つき倒れていく仲間… しかしふと我に返れば平凡な日々。いつしか現実と別世界が重なり合っていく。

 なぜこんなにキャストの名前が羅列されるのか(それは卒業制作だから)。小夜が唐突に「あたし、こんな妄想してるのよ」と言いはじめて別世界での戦争(アニメのマズルフラッシュ付き)がはじまった瞬間に意識が遠くなったのだが、気が付くとレストランの女の子たちが「そんな妄想より、もっと楽しいことしようよ!」と言っていきなり踊っていた。あーダンスのレッスンもあるからね。そしてこのやたらとかかる下手くそなJ-Popはミライ・ミュージック・エンターテイメントの生徒たちなのだね(そうではないそうです。訂正してお詫びいたします。11/21追記)。クローン兵の一人には聾唖者がいて手話で主人公たちを脅すのだが、さすがはバーニング、聾唖者も差別しないで平等に金を取る!

 怖ろしいのはこれ監督・脚本が山本淳一。『ミートボール・マシーン』とか撮ってるれっきとした映画監督。こんなん撮っても、いいんだ……ちなみに今週末からはじまる『RUN3』には青田典子が出ている。バーニングのみなさん、お勤めご苦労さんです!

 さすがにこれを越える映画はないだろう、と思ったんだが、ついさっき『十年愛』という映画が今公開中であることを……

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2008-11-06

ボディ・ジャック (2008)

 先日、映画館でチラシをチェックしていて思わず手が止まった。見たことも聞いたこともない映画--なのは別にもう驚かないが--現実とは思えないものと出くわしたのだ。タイトルを『ボディ・ジャック』という。この映画の存在、みんな知ってるのか!?
 

広告代理店に勤める中年コピーライターのテツ(高橋和也)は、元学生運動の闘士。その挫折ゆえか、社会に出てからも毎晩酒びたりの生活を送っていた。
 が、ある日を境に酔っぱらいや「独り言人間」が二重映しに見えるようになる。青白い幽霊のような気味わるい顔が、オーバーラップして見えるのだ。
 やがてテツは、自分が土佐弁をつかう侍の霊にボディ・ジャック(憑依)されていることを知る。この侍の霊(柴田光太郎)は、いったい何者なのか・・・・? なにゆえテツの肉体を必要とするのか・・・・?

「ミドルエイジの再出発〜運命のスピリチュアルストーリー〜」って!? こんなものすごい映画が作られて公開されていようとは。原作ユートピア文学賞受賞作。エルカンターレだったのか! 何より凄いのは監督の経歴だ。
 
1958年生まれ、広島県出身。少年時代、映画館で観た『ベン・ハー』(1959年アメリカ)にカルチャーショックを受け映画好きとなる。高校時代には『燃えよ!ドラゴン』(1973年香港映画)に感化され、少林寺拳法に入門。その後『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年アメリカ)や『フラッシュダンス』(1983年アメリカ)にも影響を受け、自主映画サークルを主宰。数年間のサラリーマン生活を経て、1988年単身渡仏、パリコレを経験する。

 いったい何者だこいつは。オレのゴーストが見に行けとささやく。ゴーストのささやきには逆らえないので、頑張って大森まで行ってきた。ちなみに公式サイトには「全国共通鑑賞券発売中」と書いてあるが、実はキネカ大森以外では上映が決まっていないようである(上映のための募金運動やってた)。

 さて、主人公のテツはやたら声の渋い中年男。かつて社学同の活動家だったが挫折し、今では妻と娘を放り出して酒浸りの日々だ。会社では売れっ子コピーライターな彼が作った結婚式場のCMのコピーは

いつか思い出になる恋がある
 いや、これ普通に不吉で嫌なセリフだと思うのだが、なぜか大絶賛。そんな彼はある日いきなり幻覚を見るようになる。人の顔に二重に青い色の幽霊がオーバーラップして見えるのだ。アル中の幻覚か? いや、ボディジャックだ!

 ボディジャックされたテツの目には情欲に身をとらわれた女性かキツネ顔をして見えるようになる。可愛い部下ジョーチン(安藤希……なぜ!?)も『ウィッカーマン』の村人みたいな顔でテツにせまってくる。「情欲霊にとらわれておるのじゃ」と教えるボディジャッカー。このへん、エルカンターレ臭が。

 やがてテツをボディジャックした霊は幕末の志士、武市半平太であることが判明する。武市は自分に恨みを抱いて死んでいった人斬り以蔵の霊が人間をボディジャックしてしては犯罪を重ねていることを知り、それを止めるためにテツをボディジャックしたのである。ってハル・クレメントかよ! 現代に頻発する無動機犯罪は、みな悪霊にボディジャックされたせいで犯したものなのだ。もちろん秋葉原の通り魔殺人も!(と原作者Libertyのインタビューで語っていました)

 武市の霊は「わしは修行をつんどるけん、向こうにはわからん。心配なか」などと言うのだが、実は以蔵の霊はすぐ近くに潜んで武市の動静を探っていたのだった。武市、口ばっか! その間テツの妻役の星ようこが三つ編みセーラー服姿であらわれる戦慄の回想シーンがあったり、テツの妻が相談した相手が娘をストーカーしている男だということがわかったとたん、「あー気持ち悪い! 以前から嫌な奴だと思ってたのよね」と急に手のひら返す謎の言動があったりするけど全部省略。ついに以蔵(にボディジャックされた人)はテツの妻を殺そうとしていることが判明する。家にかけつけるがすでに首筋にカッターナイフを突きつけられている妻! しかし以蔵、いくら「人斬り」だからってカッターナイフはないと思うよ。あわや!という瞬間、ストーカーに追われた娘が駆けこんできた。以蔵がそちらに気をとられた瞬間、テツが犯人に飛びつき、飛んだカッターがストーカーをぶっ飛ばして一件落着。

 だが、そのころ、霊界では以蔵と武市の戦いがはじまっていた。『ICHI』など問題にならない激しい殺陣で切り結ぶ両者。武市は以蔵を打ちのめし、「一緒に天上界へ行こう」と誘いかけるのだが、そこで以蔵が懐から取り出したのは勝海舟先生からもらった拳銃!(ちゃんと伏線はある)「もう少し、この世で遊ばせてもらうぜよ」 だがそのとき!どこから飛んできた銃弾が以蔵の手から銃をはじきとばした! そこには神々しい光につつまれた坂本龍馬先生が!(演じているのは笠知衆の孫、笠兼三)

 いやあ満腹したなあ……と思ったその瞬間、ギターを弾きながら入ってきたTAKMAのミニコンサートがはじまってしまった! とてつもないものを見てしまった。しかし大川先生もここまでやるなら全国巡業の費用くらい出してあげたらどうかね。

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2008-10-27

背徳映画祭@下北沢LA CAMERA

イメージリングスの背徳映画祭を見に下北沢LA CAMERAへ出かける。

一番楽しみにしていた吉行由実監督『空恋〜切りナイ恋物語』が、浦井崇監督吉行由実主演『愛の座礁』に差し替えになっていた。どうしたんだろう……と思いながら見ていたのだが(映画自体はまあ、面白かった)、終演後、出演していた藤原章からその理由を聞く。そういうことだったのか! それは吉行監督作品を見たいすぎる(Vシネマの仕事のせいで仕上げ時間がなくなってしまったらしい)。

しまだゆきやすの『フェリーニの京都』は宮田亜紀がちっともビッチに見えない(上品すぎる)ところが弱い。

枡野浩一の『バイバイと鳴く動物がアフリカの砂漠で昨夜発見された』は「この人とだけは関わりたくない!」と思わせてくれる粘着質の映画。つまり、作者の人となりが(たぶん……ぼくは付き合ったことがないので!)完璧に表現された傑作。

いまおかしんじの「ヘルシンキの濡れた砂」は無理矢理ないところに映画を作っている感じ。それでもとりあえずかたちになってしまうのがいまおかしんじの偉いところだけど、さしものいまおかしんじも、狙いどころをことごとくはずしつづける佐藤宏の前にはどうしようもなかったか。佐藤宏がもうちょっとものがわかってたら、最後は海辺で水のかけっこをするか、抱き合って砂浜をごろごろするかしてたはずなのに。

大木裕之の『LAST CITY』は傑作。普通に傑作。しかもここでしか上映できない映画でもある。

今回の背徳映画祭、なかなかいい映画がそろっていたんじゃないでしょうか。普通、ここまで安定してくると逆に停滞しそうなものだが、なおもアグレッシヴな作品が出てくるところがすばらしい。これで吉行監督作品が完成していたら伝説になったはずなんだが…!? まあそれは第五回に期待しましょう。

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2008-10-21

TIFF supported by TOYOTA

 東京国際映画祭にキム・ギヨンを見に行った。上映10分前になると場内の明かりが落ち、CMが始まる。次もCM…もう一本…またCM…いったい何本CMかかるんだ!? 心底あきれたんでリストアップしてみた。

競輪、SANKYO(パチンコ)、森ビル、東急、ANA、FANCL、Panasonic VIERA、大和証券、FUJISOFT、木下工務店、コカコーラ、TOYOTA Netz

 以上12本。映画祭公式上映の前にこれだけCMが! こんな映画祭、世界のどこにもないよ! どれもこれも恥を知らない企業というよりないが、中でもどうしようもないと思ったのはタイトルにまで「supported by TOYOTA」と打たせてるくせにまだCMをかけるトヨタ!それに社長が出てきて町作りがどーとか噴飯もののセリフを言う森ビル! こんなことしないと映画祭できないんだったらやめちゃえよ、もう…

 だがそんな中でも映画はすばらしかった。今日は『下女』、『水女』、『火女'82』と三本見たのだが、軍事政権のプロパガンダ映画(セマウル映画)として作られたらしい『水女』があまりにすばらしくて悶絶。ヴェトナム戦争でびっこになった傷病兵と吃音を恥じて口をきかない女とのラブストーリーなのだが、二人はひたすらエゴをぶつけて傷つけあうばかり。軍事政権の後援で作られた国策映画なのに。そしてラストには驚異の「児童憲章」で大盛り上がり! 「児童憲章」読むだけなのに映画が異様な高揚を見せて、心から感動してしまったのである。すごい。キム・ギヨンすごい。そして世界よありがとう!

 興奮冷めやらぬ篠崎誠、佐々木浩久、青山真治らと話したりしながら一日を過ごす。

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2008-10-04

アディクトの優劣感 (2007)

Addicts_flyer監督:藍河兼一 出演:青山華子 公式サイト 原作文芸社刊

 去年の終わり、この映画のチラシを見てものすごい衝撃を受けたのである。そこには「mixiで発掘された新人女優がヒロインをつとめ」と書かれてあった。mixiでヒロインを募集する映画が商業映画として普通に公開されている! 日本映画はどこまで堕ちるのか!? 以来、この映画のことが気になって気になってしょうがなかったんだが、ついにDVD化されたので手にとった。ところがそのDVDジャケを見て、オレはまだまだ甘かったんだと気がついた。そこにはこう書いてあったのだ。

刺激的映像体験! “デフォメ”が映し出すアディクトたちの世界とは…。
“デフォメ”とは--【デジタルフォトアニメーション】 高画質デジタルカメラのスチルをアニメーション化した新手法。連続撮影した実写画像を、アニメーション的に一枚一枚加工し動画化。スチルカメラのレンズが切り取る映像はハイビジョンカメラよりも高画質で奥行き感がある。従来のデジタルビデオシネマをはるかに凌駕する高画質映像が、気鋭のアニメクリエイターたちの技術力によって完成。かつて誰も見たことのない驚きの映像がここに誕生した。

 そりゃ誰も見たことないよ! ていうか映画じゃない! ただの(クリスピン・グローヴァー抜きの)スライドショーじゃないか! こんなものが映倫マークをきちんと取り、入場料金1800円でまがりなりにも上映されてしまうという恐ろしさ。

 主人公は離婚した元主婦レイカ(26)。彼女は2007年5月28日に「俺は理解しあいたいなんて思ってないんだよ!」と意味不明の言葉を叫んで出て行った恋人が死んで以来、抗鬱剤にはまりこむ日々を送っていた。一ヶ月後、薬が切れて正気にかえったレイカは恋人ヒロユキが残していったパソコンを開く(一ヶ月間、パソコンの中身も携帯も見ていなかった!)。パソコンのデスクトップには「2007/5/28」というファイル名の文章ファイルが置いてある。開いてみると、「アディクトの優劣感」と題された文章にはレイカの知らないヒロユキの一年間が記されていた……

 ま、何があったかっていうと、ヤク中のクラブ経営者のヒロユキは一回り以上下の少女ヒノコ(mixiで見いだされた青山華子)という天然系少女にふりまわされるうち、「オレ、ヒノコ中毒になっちゃった」と言いだし、しまいに「インパルスアディクトのオレに最後に残された刺激は無という存在に触れることだけだ」(無には触れられないよ!)みたいなことを言い出してオーバードーズであの世に行ってしまったっていう話である。これがパラパラ漫画で語られるわけで、いやーすごいねこれ。これは劇場で見たかったなあ。まあ絶望して「無という存在に触れたい!」と思ってしまった可能性もあるが。

 それにしても「アディクトの優劣感」というこのタイトル。もちろんこんな日本語は存在しないわけだけど、中にもまったく無意味だったのにはさすがに恐れ入った。「映画」の中では普通に「アディクトの優越感」として語られていたよ!

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2008-10-03

究極性感 恥穴えぐり(2004)

監督・脚本:山崎邦紀 出演:佐々木麻由子、佐々木基子

 山崎監督の2004年作が上野オークラで再映されているので見に行く。ヒロインの佐々木麻由子はテレビでも人気の美人セックス・カウンセラー。「女性の身体の中にも獣がいるのです。男性の言いなりになっていてはいけません」と言っているのだが、鋼鉄のペニスを持つ患者にアナルレイプされて失神してしまい、自信を失ってしまう。女性の内なるセックスの解放というテーゼが崩されてしまったのだ。そんな彼女はある日、ゴムフェチのレズビアン(佐々木基子)に出会う。「人間はコンピュータと接続してもはやサイボーグになっている。汚い人間の皮膚なんかよりゴムに取り替えるべきよ!」と主張していつもゴムを身につけている。ゴム手袋に包まれた手を見たカウンセラーは「突破口は…アナルの拡張よ!」とアナルフィストファックこそが真の快感への道だと喝破するのである。

「(アナルフィストは)男も女もゲイもレズも境界を越えてつながりあえるのよ!」と言って「女性の内なる獣」から「私たちの内なるプラグに接続する、新たなコンセント」へと進化する佐々木麻由子こそ、まさしくサイボーグ・フェミニズムなのだ! 小谷真理氏の本は読んでいませんが、たぶんそういうことだと思うな~ というか、山崎監督は確実に小谷真理(またはダナ・ハラウェイ)を読んでいるので、フェミニズムの人たちはもう少し注目してあげるべきだと思ったよ。最後はもちろんみんなでアナルフィストの輪を作って全員昇天。

 インポで「私のように金もなく男も立たない人間は、ゴミ集積場のゴミ袋に過ぎないのです」とか言ってるなかみつせいじがしみじみと素晴らしい。それにしても、これを見ながら、つくづく自分はこの手の奇想コメディが好きなんだなあ、と思ってしまったよ。

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2008-09-25

サンセバスチャン映画祭


Monte Ulgull, Donostia
Originally uploaded by Garth Yanashita.
 スペイン北部、バスク地方の小都市サン・セバスチャンに来ています(バスク語ではDonostia)。現在開催中の第56回サン・セバスチャン映画祭の取材でJapon en negroと題して日本のフィルム・ノワールを特集するプログラムがあるので、その取材ということです。「え、これがフィルムノワール?」と言いたくなるようなタイトルも散見されますが、43本を数えるかなり野心的なプログラムで、黒沢清から伊藤俊也までゲストも多彩、大いに楽しんでいるところ。

 街もこじんまりとしてきれいで治安も良く、ホテルに帰ろうとしてふらふら道を歩いてたら、いきなりバールで飲んでた連中に「映画祭で来たのか? まあ一杯飲んでけ!」てな感じで奢られてしまったりする。

 先日はなんと掟破りの逆取材、El Diario Vasco というこっちの新聞に取材されてしまいました。日本から来たジャーナリストに特集上映の感想を聞くという趣旨だったみたいだけど、カメラマンにすごいポーズをつけられて、とんでもない写真を撮られてしまいました…ちなみに記事の中では、こっちで大いに話題になっているらしいTiro en la cabezaというETAのテロリストの日常を描いた映画について「映画的な欠点はあれど、現実と切り結ぼうとすることは高く評価したい」みたいな、妙に上から目線のコメントをしています(たぶん)。

 そんな具合で大いに楽しんでおり、実に素晴らしい映画祭だと思うのですが、ただひとつだけ問題があって、実は審査員の中に原田眞人が……

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2008-09-18

カナザワ映画祭2008 フィルマゲドン

 カナザワ映画祭2008 フィルマゲドンに参加してきました。

 今年の金沢はすごかった。クリスピン・グローヴァー見たさに藤原ヒロシから殊能将之古泉智浩までが金沢に集結、映画の方もとうてい信じられないようなもので、ただただ呆然の時間だった。前のエントリにも書いたように、ぼくは字幕を担当したのだけれど、It is Fine. Everything is Fine!を見るのはこれがはじめて。話は知っていたのだが、まさかあんなイメジャリーが登場するとは思わなかった。度肝を抜かれたとはこのこと。

 It is Fine. Everything is Fine!はすさまじい情念の映画だった。一生に一本しか作れない類の映画だと思うけれど、What is it?もやはり一生に一本しか作れない映画(こちらは正しくLAアンダーグラウンドの教養にのっとった、ケネス・アンガーの正統な後継者たる作品だ)だったので、クリスピン・グローヴァーというのはつまりそういう映画作家なのかもしれない。

 ちなみにこだわるところには偏執狂的なこだわりを見せてスタッフをてんてこまいさせていたクリスピンなのだが、ファンサービスはちっとも苦ではないらしく、サイン会も全員にサインし終わるまで延々とやっていた。 サインのときには「どこから来たの? どこでこの上映のこと知ったの?」って聞いていたのだが「ぼくのサイト(ブログ)で」という返事ばっかりなので、しまいに「おまえのサイトはどんだけ読まれてるんだ? 日本でいちばんの映画サイトなのか!?」と聞かれてしまったよ! いやまあ「ビッグ・スライド・ショー」の観客の中ではぼくの知名度は100%近いだろうけどね!

 あと覆面オールナイトのことは……映画祭スタッフにはご苦労様と言うしかない! 本当にご苦労様!

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2008-09-03

カナザワ映画祭2008

20080813073051  来る9/12~9/19まで開催予定のカナザワ映画祭〈フィルマゲドン〉。ぼくはクリスピン・グローヴァーのBig Slide Showの字幕を手伝っています。ところがこれが思いがけず、というか予想通りにとんでもない仕事で……

 クロスピン・グローヴァー監督の二作なのだが、字幕台本と一緒に送られてきた映画のDVDがなんと画面を真っ黒に消してある音声だけのバージョン。なんでも以前映画祭にDVDを貸したらネットに流出したということがあって以来、たとえ映画祭ですら信用せず、誰にもビデオは貸さないのだという。いくら頼んでも貸してもらえないので、結局映画を見ないまま字幕をつけるというとんでもないことになってしまった。

 画面なしのDVDを聴きながら字幕をつけていたのだが、二本目、IT IS FINE!の方がおかしい。長さも55分しかないし、途中で重要な部分が抜けている。どうも一巻抜けてるんじゃないか? 頼むから音声トラックだけでいいから送り直してくれ(この時点では、もはや「音声トラックだけでいい」ことになっている)と頼むと、送られてきたのは……前回と同じものだった(笑)。再度頼んで、ようやくちゃんとした長さの音声が送られてきたのである。

 しかししょせんは音声トラックだけ。映画を見ないで字幕を作っていることには変わりないので、とんでもないことになっている可能性もある。やれやれ……というところに、今度はBig Slide Showのダイアローグ・リストが送られてきたのだが、これがものすごい厖大なしろもので……本当に間に合うのだろうか? もはや伝説のイベントになるのは確実だ!

 ちなみに駅前シネマオールナイトも実現すればまちがいなく伝説となるので、迷っていらっしゃる方は是非。ぼくもそのころにはすべての責任から解放され、放心状態で参加していることでしょう。

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2008-08-28

天皇伝説 (2008)

 東京発15:08のMaxやまびこ121号で福島に降り立つ。本日、世界最初の上映となる渡邊文樹監督作品『ノモンハン』、『天皇伝説』を見るためである。降りるとすでに駅前はポスターだらけで文樹世界……ではない。ポスターがない。どこにもない。文樹映画のトレードマークとなっていたポスターがどこにもない。本当に上映はあるのか……という不安は上映直前まで続いた。

 開場時間に会場の福島県文化センターに着くと、いつもの渡邊文樹が待っていた。六時半から『ノモンハン』(世界初上映)。これは実は『ザザンボ』以来の福島の土着性を感じさせる重厚な作品で、渡邊文樹の映画作家としての実力を存分に味あわせてくれる。ヒロインの黒瀬麻美が藤原紀香似の美人で、文樹映画の美人素人女優の系譜にまた一頁が加わった(ちなみにサブヒロインもなかなか可愛い)。

 だが、心底驚かされたのは『天皇伝説~血のリレー』である。延々と天皇家の血にまつわる謎が語られ、「まあ渡邊文樹の言いたいことはわかるが、映画としては……」と思っていたところへいきなり不意打ち!?! まさかこんなところで『××の××』の再現を見ようとは思わなかった。これは参った。いまどき四畳半で誰も興味を持たない自分の内面について映画を作って満足している自主映画青年たちはみんな文樹の爪の垢を煎じて飲むべき。そして高橋洋、篠崎誠、黒沢清はいかな障害があろうともこの映画を見て打ちのめされるべきである。

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2008-08-23

蟹工船 (1953)

監督・脚本・主演:山村聡 撮影:宮島義勇 音楽:伊福部昭

 3時半からの回を見ようと3時過ぎに行ったら池袋新文芸坐は満員御礼の大混雑で、ロビーにすら入れず冷房の効いていない階段に並ばされる人々。暑い中ぎゅう詰めにされて待たされる人々の姿はまるで蟹工船で働かされる労働者のようで、ついには醜い席取り争いまではじまって……

 それにしても宮島義勇の撮影するハイキーでスタイリッシュな船内工場のオートメーション作業に荘重な伊福部マーチがかかった日には、格好良すぎて、もう……宮島撮影は霧にけぶるカムサッカの海もすばらしかった。演出は手慣れた感じだけど、いきなり暴動のシーンで鮮やかなモンタージュになったりする。『ポチョムキン』とか研究しているのだろうか。

 誰もが気になる浅川監督を演じるのは平田未喜三。もう少しギラギラした感じが欲しかったが、これはインテリ山村聡の弱点かもしれない(これが山本薩夫ならな……)。このところ、映画における貧乏表現についてばかり考えているのだが、ここでもやはり蟹工船労働者たちの顔つきに見とれてしまう。今の役者であの貧乏のリアリティを出すにはどうしたらいいのだろうか(ちなみに、最近の映画でいちばんきちんと貧乏だなあ、と思ったのは『実録・連合赤軍』である)。

 ちなみに併映は『太陽のない街』。さすが“赤いデミル”山本薩夫だけあってエロありアクションありの大娯楽映画で大いに楽しむ。印刷会社の労働争議の話なのだが、ともかく権力が強大かつ悪辣すぎて労働者たちはやられまくり。ヒロインなんか闘争のせいで恋人は逮捕、妹は警察に虐殺、父親は自殺して天涯孤独の身になってしまうんだが、映画の最後、打ち振られる赤旗を見ているうちに心の中からわき上がってくる何かを感じて思わず走り出すのであった…ああ、アカっていいなあ!

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2008-07-30

いつも明日がある (1955)

Theres_always_tomorrow 監督:ダグラス・サーク 出演:バーバラ・スタンウィック、フレッド・マクマレー、ジョーン・ベネット

 PFFのサーク特集にて鑑賞。心底打ちのめされる。完璧な映画、完璧な絶望の映画である。フレッド・マクマレーは20年前に結婚して今では三人の 子持ち、玩具会社を経営する幸せな夫である。そこにある雨の夜(ほとんどフィルム・ノワールのように)20年前に突然会社を辞めた元従業員バーバラ・スタ ンウィックが訪ねてくる。彼女は今ではニューヨークで成功したファッション・デザイナーだ。無邪気に旧交をあたためていたマクマレーだが、息子が二人の仲 を勘ぐったせいで逆に雲行きがおかしくなってくる。自分の孤独を思い知らされたとき、昔の恋人と恋に落ちてしまうのだ。だが、その愛もまた報われない。別れ を告げにきたバーバラ・スタンウィックの顔に、ガラスに落ちる雨の影が落ち、まるで涙のように見える見事な場面。マクマレーは牢獄と化した家から飛び去っ ていく飛行機を見つめる。たったひとつの脱出の希望が飛びさってゆくのを。

 良妻賢母の鑑のようなジョーン・ベネットが、すべてを見通した目で「彼女は可哀想な人よ。女としての希望が何ひとつかなわなかったのだから」と見下すように言い捨てるところが怖ろしい。心の底から打ちのめされたので、『第九交響楽』は観ないで帰る。

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2008-07-20

宮崎のモアイ


  Kei'ichi Hara in Rapa Nui 
  Originally uploaded by Garth Yanashita.

宮崎映画祭に行ってきた。宮崎に行くのは数年ぶりである。すっかり東国原支配下の国になっており、すべてのみやげものには東国原知事の似顔絵がついているのだった。ちなみに県庁舎前には知事の出待ちをするおばちゃんの姿も見られ、県庁の隣には東国原グッズを売る店が出ている。店の経営者は大森うたえもんなのだそうだ。

 宮崎ではゲストだった原恵一監督(『河童のクゥと夏休み』)と一緒に遊んでいた。日南市にはサンメッセ日南という謎の巨大公園がある。さる宗教団体がバックにあるようなのだが、広大な敷地に模造のモアイが並ぶモアイ公園なのである(なんでもラパ・ニュイ長老会のお墨付きを得た、世界で唯一の公式模造品なのだとか)。一度は行ってみたかったイースター島だが、まさかこんなところでモアイと出会うことになろうとは。宮崎の抜けるような青空にモアイはよく似合う。広すぎて人影のない敷地内をカートで走りまわり、みやげにモアイまんじゅうを買って帰る。

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2008-07-17

カナザワ映画祭2008 フィルマゲドン

20080716  ついに公式ブログで内容が告知されました。今年9/12〜19の日程で開催されますカナザワ映画祭2008フィルマゲドン。詳しくはブログの方を見ていただきたいのですが、一本たりとも見逃せない超強力なラインナップにはもう脱帽。クリスピン・グローヴァーのBig Slide Showは今年最大の映画的事件といっても過言ではない。釜山とか東京国際映画祭とかあるのかもしれないけれど、心ある映画ファンは金沢に集合せよ! そして心胆のみならず地球をも寒からしめよ!

 告知されているように、ぼくはクリスピン・グローバーの通訳および翻訳をつとめるつもりです。Big Slide Showを見たときの話はこちら。グローヴァーは完璧に狂っているので、いったいどういうことになるのか、当日までわかりません! 乞うご期待!

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2008-07-05

インフェルノ 蹂躙 (1997)

14 監督:北川篤也 脚本:高橋洋 音楽:トルステン・ラッシュ 出演:立原麻衣、由良よしこ

 洋泉社でMurder Watcherの次号に関して田野辺くんと打ち合わせ。最近の殺人事件あれこれについて論じている中で、アフリカケンネル(関根元)について話していたときに、電話があって、出ると高橋洋さんからだった。
「今日『狂気の海』見に来てくれるんですよね?じゃあトークお願いしてもいいですか?」
 快諾してユーロスペース2に出かけると、同時上映の『インフェルノ 蹂躙』はまさしくアフリカケンネルを舞台にした映画だったのだ……

 物語はまるで『サイコ』のようにはじまり、まるで『悪魔のいけにえ』のように終わる。ジャネット・リーが出かけた先がアフリカケンネル(関根元)だったというわけなのだが、つまりこの映画が語っているのはベイツ・モーテルもレザーフェイスが住むシャッターの向こうもアフリカケンネルも実は同じひとつの場所なのだということである。そこはこの世の条理が通用しない場所、そこに行ったらすべてが終わってしまう異界だ。埼玉県のどこかには地獄へ通じる穴が開いていた。だからこの映画でもっとも素晴らしいのは実は美術なのかもしれない。殺人鬼夫婦の住む家の荒涼たる風景を見ただけで、そこにはあってはならないものが現出しているとわかるのだから。

 即席のトークでそんなようなことを喋ると、お客さんで来ていた俳優さんから「実は今度月蝕歌劇団で〈津山三十人殺し 幻視行〉というのをやるんです……」と言ってポスターをもらった。ほら、やっぱり地獄はつながっている……

 で、それとは(たぶん)無関係なのですが来週7/7(月)には『狂気の海』緊急臨時トークということで中原昌也vs高橋洋のトークがあるそうです。急に決まったことで告知もあまり行き届いてないようですが、みなさま是非お運びください。

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2008-06-26

ORANGING '79 (1979)

監督・脚本・撮影:今関あきよし 主演:三留まゆみ

フィルムセンター小ホールで「ぴあフィルムフェスティバルの軌跡」という特集上映がおこなわれているのだが、そこでなんと 『ORANGING'79』が!これを文芸坐ル・ピリエで見たのはいったいいつのことだろうか。上京してきてからだから、1982年以降であるのはまちが いないのだが。『フルーツ・バスケット』と一緒に見たのかな?

ほぼ30年ぶりに見る『ORANGING'79』だが、としまえんで遊ぶ三留まゆみ! 踊る三留まゆみ! 並木座に行く三留まゆみ! 水着の三留 まゆみ! と三留まゆみづくし。当時日本中の童貞少年に三留萌えを流行らせた映画だが、破壊力は健在というべきか。まあしかしいちばん怖ろしいのは三留まゆみ が30年たっても少しも変わっていないということだろうね。

いまだ三留まゆみの魔力を知らない人のために、エンディングだけ貼っておこう!

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2008-06-22

温泉サギ師~湯けむり、グルメ、やっちゃうからあ!(1986)

1 監督:鈴木則文 出演:萩原健一、佐藤浩市、萬田久子

「温泉みみず芸者」「温泉スッポン芸者」に続く鈴木則文監督の温泉シリーズ第三弾はショーケン+佐藤浩市の「温泉サギ師」。86年の大晦日に、紅白歌合戦の裏番組として TBS系で放映された底抜けTVドラマ。以前から見たいと思っていたのだが、ファミリー劇場で放映されたのを頼んで録画してもらう。個人的には、これをもって今回 の則文特集の〆とする。

 ショーケンと佐藤浩市のダメ詐欺師コンビが温泉街で一働きしようとしたところ、自殺しようとしてた萬田久子に会って……という話なのだが、ほとん どただのバラエティショーでやりたい放題。いきなり吐きけがするとサルトル『嘔吐』が写るとか、ショーケンと佐藤浩市の名前がそれぞれ阿南と森(この年の 日本シリーズは広島vs西武!)だとか。

「二人とももうルビコンを渡ったのよ!」
「いえぼくロリコンじゃないですから」

「相変わらずケチな商売してるなあ、スティービー・ワンダー!」
(ここには書けないギャグ)

CCB! 塩沢トキ! ポール牧! シスター!

 ロケは修善寺温泉から熱海。ちゃんと観光映画になっており、最後は画面の向こうから二人が視聴者に向かって「あけましておめでとうございます!」と挨拶しておしまい。アジアの正月映画はやっぱこれだね!

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文学賞殺人事件 大いなる助走 (1989)

Oinaru 監督:鈴木則文 出演:佐藤浩市 シネマヴェーラ渋谷にて。

 鈴木則文祭り最終日。やはり最後に「大いなる助走・完」と出て全上映が終了というのは堪えられんなあ……と思ったので最終日最終回を見に行くこ とにした。まあもう何度も見てる映画だし……と思っていたのだが、見始めたらもうおもしろくておもしろくてしょうがなかった。素晴らしくテンポが良く、石 橋蓮司のねっとりしたイヤミっぷりに腹を抱えているうちにとんとん拍子で物語が進んでゆく。今やこれだけ芸達者な脇役が揃っているのを見るだけでもすでに 眼福。出てくる女の子がみんなちゃんと脱ぐのもポイント高い。甲斐えつ子がたいへん美乳で良かったですね。最近、何してるんだろう?

 鈴木則文映画はいつもそうなんだけど、これも元気になる、というか明日に向かうモチベーションを与えてくれる映画だった。

「われわれのしていることは社会から見ればそもそもまだ何もしていないと同じであり、せいぜい何かをするための準備に過ぎないのではないか。そし てほとんどはそのままに終わってしまうのだ。跳躍台なきわれらが永遠の助走、呼び出されることなきこの大いなる待機が、はたして何の役に立っているのか」

まあぼくの仕事など、なんの役にも立たないと思いますが、でもやるんだよね!

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2008-06-21

神様のパズル (2008)

監督:三池崇史 脚本:NAKA雅MURA 公式サイト

なんだこれ。

ぼくは原作は読んでないわけですが、絶対にこんな話ではないことだけはわかる(笑)。なんつーか、三池崇史とNAKA雅MURA(脚本)が原作を 読んで、「わかんねーYO! 理屈ばっかぐちゃぐちゃ言ってんじゃねえよ! 数学できんで何が悪いとや!」と勢いだけで脚本書いてみたという感じだ。谷村 美月の巨乳にごまかされがちだが、キャストは異常に安い。とくにマドンナ役の松本莉緒って何あれ。

まあ無駄に勢いだけはあったんで、そんなにつまらなくはなかった(ていうか三池はちゃんと作れば作るほど駄目だからね)。やたら女の子が濡れまくる映画でした。別に濡れなくていい女性まで濡れる。

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2008-06-19

デスペア~光明への旅 (1978)

Despair_2_einh 監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 脚本:トム・ストッパード 原作:ウラジミール・ナボコフ ドイツ文化センターライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭2008にて。

 ナボコフ原作、ファスビンダー監督というオレ的には夢の一本。ビデオでは見ているけれど、ようやくスクリーンで見ることができて大感動。

 これ、原作を読んでいる人はご存じのとおり、主人公の亡命ロシア人である「私」が、退屈な日常と愚かな妻にうんざりしているところで自分にそっくりの男と出会い、自分の身代わりにそいつを殺そうと考えるという物語である。ナボコフお得意の分身テーマに「信用できない語り手」が加わり、きわめて眩惑的な物語が構築される。ファスビンダーがこの物語をどう処理したかというと、もちろん鏡とガラス。自宅は家の中にすりガラスの迷宮ができており、主人公(ダーク・ボガード)はつねにガラスごしに人と言葉を交わす。決して人と直接目を合わさず、一枚皮膜をはさんだ向こうから現実を見つめている。主人公はまったく現実が見えていないので(そのせいでとんでもない結末にいたるのだが)それがガラスの迷宮として表現されているのだ。

 美術は超絶的で、主人公のオフィスには、中に秘書が入るガラス張りのキュービクルがある。まったく意味不明ながらすごい、超現実主義もきわまれりという感じ。そんな物語なので主人公にはまったく感情移入ができず、あまり受けなかったというのもわからないでもないけれど、映画としては本当に素晴らしいなあ。

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2008-06-09

すいばれ一家 男になりたい (1971)

2222 監督:鈴木則文 主演:山城新伍 シネマヴェーラ渋谷にて。

 多くの人の協力を得てついに実現した『すいばれ一家 男になりたい』ニュープリント上映。個人的にはこうやってファンの力でニュープリントを焼くことは必ずしも正しいこととは思わないんだけど、そうであろうと時にはやらずにはいられないときもある。矛盾しているけど、人間とはそういうものだ。

 本作は山城新伍の初主演作。なんせ監督御自身も初号以来一度も見ていないという幻の作品なので、いったいどんなものが出てくるのか戦々恐々だったのだが、かなりとんでもない映画だった。アナーキーな単発ギャグの積み重ねで、幻の傑作というよりは怪作というべきかもしれないが、やはり大いに笑う。宮園純子の「固めの杯」というギャグが強烈で、監督は「(宮園は)艶技が下手だから」とおっしゃっていたが、あまりエロ映画に出る女優ではないというだけでもう感動。よくこんな役やったなあ。あと、小池朝雄の寝室のセットがまるでブニュエルの映画のようですごかった。

 打ち上げでは中原昌也の二代目山城新伍(勝手に)襲名と内藤館主の東映買収計画が決定。あと、九月の金沢映画祭にちょっとばかり手を貸すことになった。金沢、すごいことになりそうだから、みんな行きましょう!

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2008-06-07

Bohachi Bushido: Code of the Forgotten Eight (1973)

5161vee8qcl_sl500_aa240_  石井輝男監督丹波哲郎主演『ポルノ時代劇 亡八武士道』が米国DiscotekからDVD化。日本でもDVDは出ていますがアメリカ版は特典満載。ひし美ゆり子、杉作J太郎のインタビューの他、杉作J太郎+中野貴雄のかなりアナーキーな音声解説、原作漫画が一部収録というわりとフリーダムな仕様になっております。ぼくはプロデューサーのMarc Walkowに頼まれてひし美ゆり子のインタビューをしたほか、音声解説にも出演を依頼されたのでそこは……と辞退してかわりに中野貴雄を送りこむなど、特典のレベルアップに大いに貢献した自負しております。いや、ぼくが辞退したおかげで音声解説がだいぶおもしろくなったのはまちがいないのですが、これがアメリカでどのように受け止められのかは大いに不安。

 ちなみにぼくの本当の仕事はこのあと出るはずの『堕靡泥の星 美少女狩り』の方なんだけど、はたしていつになるかは……

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2008-06-05

コレラの時代の愛 (2007)

Img_1089238_51484995_1 監督:マイク・ニューウェル 原作:ガブリエル・ガルシア=マルケス 出演:ハビエル・バルデム 公式サイト 8月公開

 フェルミーナの心変わりの理由は原作にもはっきり書いてあるわけではないんだけど、この映画だと、文通していたころはイケメン少年だったのに、大人になって再会してみたらキモいハビエル・バルデムになっていたので「あー、恋してると思ってたけど、手紙と現物は違うわね」と振ってしまったかのように見える。ハビエル・バルデムが演じているだけで見事なキモメン映画になってしまった。アカデミー賞取ってもキモメン。現実は厳しい。

 これはつまり恋するというのは病気にかかるようなものであり、まともなことではないのだと主張する物語なのだ。だから「恋のことしか考えない」フロレンティーノ(ハビエル・バルデム)は実はただの異常者なのであり、そのことに気づいたからフェルミーナはフロレンティーノを捨てるのだ。でも、映画にすると、普通にロマンチックな物語としても見れてしまう。いっそのことウルビーノ医師の話はばっさりカットして、幻想の恋愛生活に生きるフロレンティーノの話だけで映画にしてしまっても良かったかもね。その方が、最後の「きみに純潔を守りとおしたよ」のセリフが生きたかもしれない。

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2008-06-02

トリコン!!! リターンズ (2008)

 横浜の万国橋ビルまで佐々木浩久監督の新作『トリコン!!! リターンズ』の撮影現場を見学に行く。前作はイケメン三人がやってる探偵事務所の話だというので、個人的にはまったく興味皆無で、長いつきあいの佐々木監督作品だというのにスルーしてしまった。でも今回は三輪ひとみがゲスト出演と聞いて現場に遊びに。オレって本当に現金。

 今回、三輪さんはハードボイルド映画の悪女役ということで、『チャイナタウン』のフェイ・ダナウェイみたいなものかな。ともかくえらく美人さんになっていて、これまでの出演作でも最高ではないかというくらいきれい。思わずモニターに見とれてしまった。なんか今風のイケメンたちと並ぶと、一人違う映画に出ているのではないかという感じの演技がおかしい。今こそ三輪ひとみ主演の和製ゴシック・ホラーを作るべきだ!と(何度目かわからないが)強く主張する。

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2008-05-16

ひぐらしのく頃に (2008)


  屑映画撲滅祈願 
  Originally uploaded by Garth Yanashita.

監督・脚本:及川中 出演:前田公輝、飛鳥凛、松山愛里 公式サイト

 ちかごろの若い人たちはみんなこのゲームをプレイしては鉈で斬り合っているのだという。なんか知らないが、おもしろいことになっているようなので、映画が来るのをきっかけに講談社BOX版を二冊読んでみた……え、これ全体の八分の一なの!? 最近のオタクはみんなしてこんな代物を延々と読みつづけてるわけ!? これが「ゼロ年代の記念碑的一大ムーブメント」なのだとしたら、ゼロ年代ってみんな脳死してるとしか言いようがないね!(ぼくがこの“小説”と最悪の出会い方をしていることくらいはわかっている。しかし、ゲームだったら絶対に前半で放り出しているね)

 さて、映画の方だが、予想通りにダメ小説をそのまま映画化した普通のダメ映画。物語前半部分のまったり世界がないので、ごく普通の駄目ホラーでしかない。最後は圭一くんが「全部わかった……」と言ってがくっと倒れるんだけど、「こっちは何もわからねえよ!」と思った瞬間「映画版続編、企画中!」の文字が出るという……勝手にしてくれよ。

 唯一斬新だと思ったのは、同級生たちの変な語尾が(「かな? かな?」とくりかえすとか)が萌えでもなんでもなくて、単なるキチガイ台詞になっているという点。普通ああいう言葉使いで喋る人がいたら、頭の弱い人だもんなあ。そういう意味では原作ファンの期待は裏切っているのかもしれないが、ぼくにはゼロ年代のことはよくわからないので……劇場はガラガラだったが。

 前売り券購入特典で古手神社の絵馬がついてきたので、「この世からクズ映画が一本でも減りますように」と願をかけてきた。

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2008-05-14

隠し砦の三悪人 (2008)

 重たい腰をあげて見に行ったが、休憩時間に流れている主題歌を聴いた段階ですでに死亡。これはなんかのギャグなのか!?

 別に黒澤版と同じものを作れとは言わないが、オリジナルからの改変部分があまりに幼稚で泣けてきた。なんでこんな幼稚な映画しか作れないのか。しかもパクリ(これをオマージュとは言うまい)。独自要素はすべて『ロード・オブ・ザ・リング』と『スター・ウォーズ』からのパクリ(音楽までハワード・ショア風)。何が悲しくてダースベーダーを出さなければならないのか。大画面で『スター・ウォーズ』ごっこをするのが樋口の夢だったのか。だとしたらあまりに志が低すぎる。

 阿部ちゃんはまともな監督につけばちゃんと殺陣もできそうだった。だが刀がぶつかりあったところにCGで火花を足せば格好良くなると思ってるような監督ではなあ。宝の持ち腐れとしか言いようがない。

『どろろ』もそうなんだけど、要するに今の映画の作り手にとっては時代劇っていうのはすでにファンタジー世界なんだろうね。だからこういう幼稚きわまりない「戦国世界」が作れてしまうんだろうな。でも、残念ながらぼくは日本人なので、本物の時代劇の世界もちょっとは知っているのだ。

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2008-05-08

ねらわれた学園 制服を襲う (1986)

監督:渡邊元嗣 出演:橋本杏子、田口あゆみ

 新宿国際名画座で渡邊元嗣の幻の傑作を上映中だというので見に行く。気がつくと、最近ピンク映画しか見とらんなあ。

「あれは二月の寒い夜、ちょうど14になったころでした……」と未来(橋本杏子)のナレーションではじまると、中学生の橋本杏子と優しい教師との 初体験場面。だが未来が絶頂に達するや、教師は悲鳴をあげて悶絶。そう、父親の復讐の道具とされていた未来は「三段締め名器養成ギプス」によって交わった 男のペニスをへし折る脅威のマンコの持ち主になっていたのだった……その麻宮未来が不良女子高「愛染学園」に転校してきたところから物語ははじまる。

 というわけで展開するのは南野陽子の『スケバン刑事』シリーズの完全パロディ。何がすごいって劇中の効果音はおろか主題歌まで同じだ(ノンクレ ジットのキルビル方式)。深作のバカ息子が作った奴なんかより、はるかにきちんと愛にあふれるオマージュになっている。未来が最後の決戦に向かうと、行く手にライバル だった不良少女が待っていて、真っ赤な唐傘を広げて相合い傘になるときには、アイドル映画と東映任侠映画が奇跡的な合体を果たすのだ。

 当時20歳だった橋本杏子の美少女ぶりに萌える。なお、m@stervisionが愛にあふれすぎたレビューを書いているので、詳しくはそっちを。
 
 その後またもサッカーバー・フィオーリに出かけてACL クルンタイバンク戦。ダニーロ二得点にはなぜか店内で笑みがこぼれる。ダニーロは人を幸せにするなあ。

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2008-05-06

OP映画祭り2008 第三日

174okura0023115  さすがにGW三日つぶして連日上野オークラに通っていると、いかがなものかという気がしないでもない。なんだかものすごいダメ人間になったような気がする。映画は9本全部見たけど、さすがに箸にも棒にもかからないような映画はなかったか(内2本は再見)。旧作では2002年の荒木太郎作品、新作では加藤組が一番良かった。

 本日の上映作品は 『悩殺占い 巨乳摩擦(濡れ巨乳なぶり)』(98 小川欽也) 、『妻失格 濡れたW不倫』(06 渡邊元嗣)、『不純な制服 悶えた太もも』(08 竹洞哲也)の三本。竹洞組の新作は冒頭の疾走感は買うものの、そのあとは思いつきをいかせぬまま失速という印象。だってヤクザの金を奪ったカップルが北の海に逃げるってさあ……二人を追いかける「生け捕り屋」の設定に新味は出ているものの、それだけではきつい。俳優は全員好演。渡邊元嗣監督の『妻失格 濡れたW不倫』については以前書いたとおり

 小川欣也の98年作品は『悩殺占い 巨乳摩擦』の新版。風間今日子のピンク・デビュー作なのかな? 映画は小川監督がときどき作ってしまう素っ頓 狂なファンタジーで、稗田オンまゆらがカザキョンを操る「この世の者ならぬ」タロット魔女(なんかタランチュラの化身か何からしい)を怪演している(唐沢俊一がそれに対抗する陰陽師)。ものすごい怪演 で、クライマックスは稗田オンまゆらの絶叫とカザキョンVS杉本まことの獣のようなSEXがカットバックするのだ。何をやりたいのかはわからないながら無駄にド迫力。

 舞台挨拶では御年73歳の小川欣也監督の話がおもしろすぎる。きちんと話を記録に残しておかないとなあ。

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2008-05-03

OP映画祭り2008 第一日

New02 上野オークラでOP映画まつり2008と題してGWの新作ショーケース一大イベント。本日は新作含む三本上映+女優三名も登場するイベントということで場内も超満員の入り。

 本日の上映作品は
変態奥様 びしょ濡れ肉襦袢』(2002 山崎邦紀)、『 性犯罪捜査 暴姦の魔手』(2008 関根和美)、『女復縁屋 美脚濡ればさみ』 (2008 加藤義一)の三本。山崎邦紀監督の2002年作品は俳句ピンク(!)。『触覚』という句会を主催する変態俳師が弟子の女性をくすぐり責めにかけたり、スパンキングしたりしては「尻腫れて 輪廻転生 スペルマッ」みたいな謎の俳句を詠むというコメディ。面白いのだが、落としどころを間違っている印象。

 ピンク大賞受賞第一作となる加藤義一の新作『女復縁屋~』は大いに楽しむ。映画としてはどうということはないただのピンク映画で、脚本ももうちょっと練って欲しいところではある。たとえ ば平沢里菜子の役をただの悪女ではなく、コミカルなキャラクターにしていればもっと映画に厚みが出ただろう。それでも主演の村上里沙がとても魅力的に撮られてい て、佳作といっていい出来だった。まったく女優としてのタイプは違うのだが、なぜか林由美香のことを思い出してしまった。そういう演出をしているのだろうか? 平沢里菜子は相変わらず素敵に可愛い。そう言えばピンク大賞のときはブリブリな格好をしていて、ちがう!この女の本性はこんなんじゃないん だ!と思いながらも萌え萌え。

 加藤義一、好調を持続。なお、このイベントは5/7(水)まで(舞台挨拶は5/4まで)続いておりますので、みなさんお誘い合わせの上是非。ぼくもできるだけ通うつもり。

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2008-04-29

砂時計 (2008)

1006633_01 監督・脚本:佐藤信介 出演:松下奈緒、夏帆 公式サイト

 これ、主演松下奈緒のように宣伝されているのだが、話の八割は夏帆が出てくる過去の島根の話。夏帆の田舎暮らしか~と『天然コケッコー』を思い出してぽわわわとしているあなた、残念それは孔明の罠だ!

 時は一九九五年、事業に失敗した父親と別れた母に連れられて杏(夏帆)は田舎に帰ってくる。だがもともと繊細だった母は離婚のショックと閉鎖的 な田舎暮らしのプレッシャーで鬱病に。ついにある日ぶらりと山に出かけ、帰らぬ人になってしまう。以来杏は心を閉ざし、何かあるたびに不安に怯えて暮らす ようになる。友人がふらっと家出すると「お母さんのときと一緒だ!」と恐怖に震え、いきなり地面に沈み込むような不安の発作に襲われて卒倒してしまう。遠 くの方でピントの合わない黒髪の少女がゆらゆらしてる、とか完全にホラー映画の演出。恐怖のつるべ打ちにすでに夏帆の神経はボロボロ、完全なメンヘル女と 化して……

「こわい……わたしはきっと大悟(恋人)を堕としてしまう……」

 やがて大人(松下奈緒)になった杏だが、どうしても過去の恐怖から逃れられず、ついに婚約者から捨てられてしまう。思い出の島根の浜辺に一人立つ杏は、鞄から割れてしまった思い出の砂時計のかけらを手に、左手首をざっくりと……

 松下奈緒は駆けつけた昔の恋人大悟(ヤンデレにとりつかれたせいで人生を棒に振ってしまった男)に救われてプロポーズされるわけだが、どう見ても完全な共依存です。本当にありがとうございました。

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2008-04-27

少林少女 (2008)

1006139_01 監督:本広克行 出演:柴咲コウ 公式サイト 池袋シネマサンシャシンにて。

 初日にもかかわらず、客は50人ばかり。配給東宝、製作フジテレ ビ、監督本広克行、主演柴咲コウという最強の(最悪の)布陣でこの入り……本格的に邦画バブルの終わりを感じずにいられない。それともドラゴンの祟 りだろうか。劇中、一度でもブルース・リーの映画を見たことがある人にはとうてい許し難いシーンがあるので、思わずブルース・リーを舐めるな! と呟いてしまったのである。

 この映画、カンフーを舐めてるだけじゃなく、ラクロスに対してもたいがい失礼だと思われる(ゲームのルールすらわからない)。こんなのに協力しているラクロスU- 19日本代表チームこそいい面の皮だ。しかしそれよりもまず話の意味がわからない。これ、最大の敵が仲村トオル演じる悪の学校長なのだが、彼は「今時、売り物になるのは美だけだ!」とか言って、富士山麓にある大学の宣伝のために ラクロス部を強化しようとしているのである。で、素人ばかりのラクロス部(ここがすでに意味不明なのだが)に、少林寺で修行を積んだ柴咲コウが入部してくる(学生ですらないのに!)。彼女はものすごいパワーの持ち主だが、個人プレーに走ってチームは崩壊し てしまう。チームメイトに和の大事さを教えられた柴咲コウが何をするかといと…… 壁打ち

 それで協調性が身に付くのだろうか!? そしてチームが連戦連勝をはじめるや、仲村トオルが悪の本性を発揮して「あの女の大事にしているものをすべて壊せ!」と道場を焼き、師匠(江口洋介)を ぶちのめし……って柴咲コウが活躍すれば大学の宣伝になるんじゃないのかよ!

 あー、頭が痛い。終わったあと、前に座っていたカップルの男が「あー面白かった」と言ったのには本当に力が抜けた。これほど誰にも勧められない映画も珍しい。映画を見て怒りを感じるのが 明日への活力になるという人にだけお勧めします。

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2008-04-22

白衣いんらん日記 濡れたまま二度、三度 (1997)

Vol05 監督:女池充 脚本:小林政広 ポレポレ東中野のR18 Love Cinema Chowcase vol.5にて。

 なんという童貞ぶり(笑)。女池充のデビュー作だが、実に清々しいほどの童貞映画である。しみじみと思ったが、女池充って本来はまったく別の資質を 持った監督だったんじゃなかろうか。でも四天王世代の(というかサトウトシキの)強烈な抑圧によってなんか全然違う方に行ってしまったんだろう。この映画も なかなかいいところがあって、妙ちきりんな窓越しのダンスなんか、まさしく童貞的に泣ける名シーンである。あのまま童貞なラブロマンスで作ればなかなかの佳作になったんじゃないかと思うんだけど、なんかそこから本田菊次朗の話になっちゃって、サトウトシキの出来の悪いイミテーションみたいな……

 なんとなくわかってきた。ピンクの童貞映画時代はどうやら「七福神」世代からはじまるらしい。だがこの世代には四天王の抑圧が強かったから、どうしても童貞映画は作れなかった。抑圧がいい方に向いたのがいまおかしんじで、変に働いてしまった代表格が女池充なのではないか。そのあとの世代ののびのびとナイーブな青春童貞ピンクを見ていると、強くそう思わずにはいられない。

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銀幕版 スシ王子!~ニューヨークへ行く (2008)

監督・脚本・原作:堤幸彦 主演:堂本光一 公式サイト

 新宿ミラノ1で鑑賞。観客は30人ぐらい。なぜか老人が多かった。ミラノ座(定員1064名)で30人の老人と一緒にこの映画を見るというのがどんなものか、ちょっと想像してみていただきたい。

 映画を見ているあいだは本当に辛く、見終わったときには心底落ち込んだ。この映画が何を目指して作られたものなのか皆目わからなかったからだ。カンフー映画? しかし型を決めてポーズを作る合間はすべて早送りで飛ばしてまったく動きがわからない映像のどこにカンフーの快楽があるのだろう? 寿司の美学? アメリカ風のゲテもの寿司よりも江戸前の方がうまいってだけなら、映画なんか作るまでもない。コメディ? え、ひょっとして、あれギャグだったの?

 この無力感はほとんど『大日本人』を見たときに匹敵する。しかしあれはまだ松本氏の作家性の発露ではあったわけで、これはいったいなんなんだろうなあ。こんなもんが作られてしまってミラノ座でかかっていることに、誰も疑問を持たない映画界の現状にはほとほと頭が痛くなる。

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2008-04-21

第三回ガンダーラ映画祭

Chimpom  前日朝まで飲んでいたので眠い目をこすりながら下北沢LA CAMERAへ。

 今回、見ていちばんびっくりしたのがアート集団Chim↑Pomのビデオ。Death of Blackってパフォーマンスでは拡声器からカラスの鳴き声を流して群れを呼び集め、バイクの後ろに乗った少女が頭上高くにカラスの剥製を掲げて走ると、その群れが後からついてくる。騒がしく喚きながら飛ぶカラスの群れを引きつれ、東京の街を疾走する美少女! これは格好良かった。ついにカラスは日本政治を動かす影のフィクサーの……
 ピカチューも良かった。オレもピカチュー欲しい。

 その他の作品では松江哲明の『セックスと嘘とビデオテープとウソ』がもはや風格さえ感じさせる出来だった。松江母が作っていたレバー炒めが旨そうだったな。

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2008-04-05

四十路の蜜つぼ 男好きな肉体 (2008)

080404mitsutsubo 監督:荒木太郎 出演:浅井舞香、淡島小鞠、佐々木基子

 このところ煮え切らない作品が続いている荒木太郎だが、久々の快作か?と思わされる。冒頭、路上でいきなり全裸になって車を停める女→ダンプの上(文字通り上!)でのセックス→その女が足立区のガソリンスタンドで働きはじめるまでの五分くらいはまるでラス・メイヤー映画かと思うような強烈なテンションでいやがうえにも期待は高まるのだが、そのあとがどうもいけない。野上正義の父親に荒木太郎、淡島小鞠の兄妹三人でやっている家族経営のガソリンスタンドに女が波紋を引き起こす、という物語がどうもままごとみたいに見えてしまって……

 思うに最大の問題は熟女淫乱AV嬢である浅井舞香のキャラと、荒木太郎が書いた設定との齟齬にある。女は会う人ごとに「丈って男を知らない?」と問いかけ、あるいは「あたしは三十五の時に狂ったのよ……男狂いにね……」とひとりごちてみたり、あきらかにセックスの魔に魅入られて身を持ち崩してしまった女として描かれている。ならば身体の疼きがおさえられず片っ端から男をくわえこむにしても、それは嫌々流されるようなかたちであるべきだ。

 だけど実際のセックスシーンでは、あきらかに浅井舞香の方が楽しんでエロの空気を発散しているのである。おかげで女が流れていく話にどうも説得力がない。ぼくは浅井のAVは見たことがないのだが、これはどう見ても本人の資質の問題なので、結局のところ、荒木太郎には彼女のキャラクターを扱いきれなかったということになるだろうか。浅井舞香としてはもっとキャンプな映画の方が向いていると思われるので、ここは旦々舎を推薦しておきたい。浜野佐知さんとは気が合うのではなかろうか。

 今回、100円パンフが堀内満里子さんではなくなっていた。できたら次回作は堀内満里子にやってほしいんだけどなあ……

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2008-03-28

Girl Boss Revenge (1973)

51rcqt7cyyl_ss500_  鈴木則文監督作品『女番長』がアメリカでDVD化。昨年、監督のインタビュー取材をお手伝いしました。インタビューは20分ほどで、まあわりと一般的な話を語っています。聞き手がアメリカ人なんで、日本の則文マニアなら絶対に出てこない質問とか出てくるのがおかしいですが。ぼくが聞いていていちばん面白かった話(劇中の衣装はすべて池玲子はじめ出演者の少女たちが自分たちで買いそろえたもの)が入ってないのはちょっと残念でした(のでここでフォロー)。

 特典映像のプロデューサーは再度来日して、今度は松竹ものDVDの特典製作作業をしている。ぼくもボランティアで通訳などする羽目に。

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2008-03-25

人妻社長秘書 バイブで濡れる (2001)

Hitozuma 監督:渡邊元嗣 出演:時任歩、林由美香

『女優林由美香』を作りながら「ああこの映画見たい!」と思うことは多々あったのだが、中でももっとも見たかった一本。渡邊元嗣監督から提供されたスチルが実に素晴らしく、スチルだけで「どうしてもこの由美香さんを見たい!」と思わされた作品だ。衛星劇場で放映されていたので念願かなって鑑賞。

ヒロインは社長秘書の時任歩。リストラされた旦那はインポになってしまって、すっかり女を忘れた日々が続いている。そこに現れたのがメリー・ポピンズよろしくチャイナドレスにピンクの雨傘をさした謎のセールスウーマン福俵満子(林由美香)。「潤いを忘れていませんか?」と妙なバイブを押しつけて……

インポの旦那を回春させるため、満子は旦那の憧れの女優の姿で家を訪れる。旦那の憧れだった女優、それはもちろん1989年デビュー当時のブリブリアイドルAV嬢だったころの林由美香だ(ちゃんと当時の雑誌が登場する)。当時と少しも変わらぬ美しさで林由美香は旦那を誘惑する。これほど林由美香への愛に満ちたシーンがあるだろうか? 渡邊元嗣監督が「(はじめて会ったとき)世の中にこんなに可愛い女の子がいるのかと思った」と言っていたことを思いだす。つい昔のグラビアを引っ張り出してしばし回想にふけってしまった。

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2008-03-24

ドリラー・キラー (1979)

Drillerk31x1 監督、編集、主演:アベル・フェラーラ 出演:トニー・コカコーラ&ルースター

 吉祥寺バウスシアターの爆音オールナイト〈爆音聴力破壊〉に出かける。中原昌也セレクションで、『要塞警察』、『13回の新月のある年に』、『ゾンビ(アルジェント版)』の四本立て。だが、爆音上映にもっともふさわしいのは「最大音量で見るように」の注意書がついた『ドリラー・キラー』だろう。

 ビデオが出ればビデオで、DVDが出ればDVDで、これまでもあらゆるメディアで見てきた『ドリラー・キラー』だが、こんな大画面で見るのははじめて。感動した! 今日のイベントはほぼこれに尽きるというくらい素晴らしかった。ドリルを持った伊達男フェラーラが格好良すぎる。赤パンツでドリルを構えてポーズをつけるところが最高にお洒落。そしてドリルをぶちこむ前に、必ずきゅんきゅんと軽くまわして動作をたしかめ、タイミングをはかるところがまた最高。

 ホームレスだらけのニューヨークの風景はおそらく実景の隠し撮りで、そのドキュメンタリー的な迫力に主人公のささくれだった心情(電話代が払えないとか……!)がかぶってくるあたりに異様な迫力がある。売れないアーティストだったフェラーラの鬱屈がぶちまけられる破壊衝動に興奮するのは言うまでもないのだが、同時にどのシーンにも妙なユーモアがあったり(ホームレスとだらだらくっちゃべってるところとか)、あるいは巧みな日常描写(主人公とGFのまったく無意味な会話とか)も忘れがたい。初期衝動とユーモラスな演技が同居してるからこその傑作なのだと再確認した。

 なお、昼夜分かたず下手くそな演奏をつづけて、フェラーラがホームレスをドリる原因を作る二階のパンク・バンドを演じているのはトニー・コカコーラ&ルースターという謎のバンドなのだが、この日は山崎ナオコーラも見に来ていた。

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2008-03-19

VHSカフルーシャ (2006)

Vhs 監督:ナジーブ・ベルカーディー 出演:モンセフ・カフルーシャ 公式サイト 草月ホールのアラブ映画祭2008にて鑑賞。

 カフルーシャはチュニジア第三の都市、スースに住む45歳のペンキ屋。だが、彼には夢があった。憧れのクリント・イーストウッドのような格好いいアクション映画を作るのだ! カフルーシャは近所のビデオ屋(結婚式の撮影が専門)を雇い、行商のおばさんやアル中の浮浪者を集めてアクション映画を自作自演する。最新作は『アラブのターザン』だ!

 これはチュニジア版『アメリカン・ムーヴィー』とでも言うべき映画に狂った馬鹿を追いかけるドキュメンタリーである。カフルーシャの“映画”にはもちろん特撮もスタントもなく、すべてカフルーシャの自作自演だ。はくせいのヤギと格闘するカフルーシャの姿を笑うのはたやすい。だがカフルーシャがやっていることはすべて本物である。走行中の車によじ登るヤキマ・カヌットばりの大スタント。血糊の必要なシーンになると自分の腕を切って血を垂らし、悪党がヒロインの家を襲うシーンでは本当に家に火をつけて駆けつけた消防車を撮影する! ほとんど狂気に近い執念。

 カフルーシャ曰く。「憧れの国はイタリアだね! イタリアは素晴らしい映画の大国だからね。クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、バッド・スペンサー……」それは全部マカロニ・ウェスタンだ! 映画の製作者たちは実際にカフルーシャの映画をイタリアに持って行くのだが……この顛末は泣けるよ。

 上映はもあと一回、23日(日)の11:30からドイツ文化会館でありますのでお見逃しなく。

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2008-03-07

ヘアピン・サーカス (1972)

監督:西村潔 シネマヴェーラ渋谷にて。『弾痕』がプリント不良で『薔薇の標的』に差し替えになってしまったので、はからずも封切り時の二本立てが再現されることに。岡田英次がナチス第四帝国復活を願って加山雄三を殺し屋としてスカウトするという『薔薇の標的』も十分凄い映画だが、やはりここは『ヘアピン・サーカス』。

 自動車教習所の教官をつとめている元花形レーサーが、走り屋の小娘との出会いによってついにハンドルを握る……というシンプルなストーリー。主役を演じるのは本物の元レーサーだし、芝居らしい芝居もなく見せ場はほぼすべてカーレースなのだがもうこれが! 昔の映画を見ると「どうやったらこんな撮影ができるんだろう?」と思わされることがよくあるが、『ヘアピン・サーカス』も例外ではない。高速で車のあいだをぶんぶん抜いていくタイトル・バックにもう息を呑んでいたが、クライマックスでは横浜市内でカーチェイス、どうやったらこんな撮影ができたものか。ラスト、菊地雅章のジャズ・スコアが鳴り響く中で延々と続く公道カーチェイス。最初は教育的指導のつもりではじめたレースだが、やがて主人公とヒロインのレースは求愛のダンスのようになり、車は踊り、舞い、時空を越えて舞い上がる。永遠に続く刹那の幸福。

『デスプルーフ』でオマージュを捧げられた『バニシング・ポイント』のことを思い出さずにはいられないのだが、実際、単なる同時代性だけではなく通じる何かがあると思う。タランティーノに見せてやりたかったね。

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2008-02-20

三十路兄嫁 夜這い狂い (2000)

3a1  まあなんかの間違いで見てしまうということはあるだろう。あるいはピンク映画、または映画はすべて見るという欲望に駆られて見に行く人もいるかもしれない。でも、わざわざこんなものを見ようと思って劇場に出かけるような酔狂はぼくぐらいしかおるまい。日本でただ一人? いや、ということは世界でもぼく一人なのか? なんかすごいことをしているような気がしてきたが、たんに時間の無駄をしているだけのことである。

 前振りが長くなってしまったが、池袋シネロマンに『兄嫁の夜這い すすり泣く三十七歳』を見に行った。2000年の関良平監督『三十路兄嫁 夜這い狂い 』の改題版。『わいせつ女獣』を見てからというもの関良平作品の奇怪なる魅力から離れられなくなってしまったのである。その期待にたがわず、映画はすさまじくシュールな展開を見せる。

 ヒロインはフィリピン人ホステスのような顔をした寸胴の女、鈴木エリカ。なぜか片言の関西弁で喋る。ものすごく下手な主題歌があるのだが、ベッド際にレコジャケが飾ってあったところを見るとこの鈴木エリカが歌っているらしい。歌手でもあるのだろうか? 是非全曲聞いてみたいものだ。

 ミサ(鈴木エリカ)は相模原あたりのログハウスに住んでいる。ある日黙ってバスに乗って出過桁ミサは謎の男と抱き合っている……かと思うと家に帰ってきてネギを刻んでいる。実は「おっちゃん」と呼ぶ中年男の貞淑な妻なのだ。この映画、自由自在に登場人物の妄想と過去と現在とが切り替わるので、見ていてもそれが現実に起こっていることなのかただの妄想なのかまったくわからない(「現実」部分にもリアリズムはかけらもないので、すべてが妄想でもおかしくない)。きわめて難解きわまりない映画なのである。

「おっちゃん」はミサに、三年ぶりに弟が帰ってくると告げる。ミサと弟アキラとはかつて過ちを犯したことがあり、アキラはそのために家を出てしまったのだ。ところでミサの旦那は最後まで「おっちゃん」としか呼ばれないので、名前があるのかどうかもわからない。弟からさえ「おっちゃん」と呼ばれるのだ!

 ミサと弟を家におき、出かけた「おっちゃん」は高校生と援交の真っ最中。「どこか静かなところに行きましょ」と誘われた「おっちゃん」は車で河原に向かう(なぜだ!)。ひとりきり石投げして遊んだあと、今度は森の中で追いかけっこ。腹の出た「おっちゃん」が息を切らしてひいひい言ってると、女子高生は立ち止まってパンツを脱ぎはじめる。「あれ、おしっこしたいの?」(違うだろ!)さっしの悪すぎる「おっちゃん」も顔を胯間に押しつけられるとようやくその気になっていきなりその場ではじめる。「おっちゃん」と女子高生のセックスはカットが変わるたびにやってる場所が変わるシュールなシークェンスで、テトラポッドにつかまってやってたかと思うと神社に飛び、最後は稲刈りの済んだ田圃で超ロングの騎乗位。なんだかラス・メイヤー映画のようだった(編集・関良平)。

 そのころ、最初にミサと浮気していたバーテンは巨大な蝶々のイヤリングをつけた女をバーカウンターの上に横たえ、セックスの真っ最中だった。
「あの関西弁の女はどうなったの?」
「どうなろうとおまえには関係ないし、俺にも関係ない」
「だからあなたと付きあうと人は変わってしまうのね……あの女もいずれは」
 ロブ=グリエそこのけの茫漠とした会話を交わしていると、アキラとの再会で情欲に火がついたミサから電話がかかってくる。「ねえ、テレホンセックスしてくれない?」
「いいとも。今、ちょうど他の女を抱いているところだ」
……ってクンニしながらテレホンセックスは無理だから!

 ああ、謎のセックス・シーンとか奇妙なカメラ・アングルとか不思議な母乳とかに触れているヒマがなくなってしまった。ドリス・ウィッシュマン+ラス・メイヤーともいうべき、ある意味今年見た中でいちばん凄い映画である。ぼくがピンク映画を見始めたきっかけのひとつ、他のどこにもない映画表現を求める探究心はまちがいなく満たしてくれる映画であった。

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2008-02-19

21世紀の日本映画

07198540  アエラムック『ニッポンの映画監督(AERA MOVIE)』で、アンケートを依頼された「21世紀の日本映画」ベスト10が発表されています。ぼくの投票は以下の通り。

  1. 『回路』(2001 黒沢清)
  2. 『たまもの(熟女・発情 たましゃぶり)』(2004 いまおかしんじ)
  3. 『IZO』(2004 三池崇史)
  4. 『理由』(2004 大林宣彦)
  5. 『変態未亡人 喪服を乱して』(2003 山崎邦紀)
  6. 『害虫』(2002 塩田明彦)
  7. 『恋する幼虫』(2003 井口昇)
  8. 『人斬り銀次』(2003 宮坂武志)
  9. 『ロスト・ヴァージン やみつき援助交際』(2002 サトウトシキ)
  10. 『LOFT』(2005 黒沢清)

コメント
 なぜかこのアンケートが実写作品に限定されているので挙げられないが、21世紀の邦画を語りたいならまず何よりも挙げられるべきは『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001 原恵一)である。

 全体の結果についてはムック本誌の方で。

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2008-02-09

地獄のローパー 緊縛・SM・18才 (1986)

監督・脚本:片岡修二 出演:下元史朗、早乙女宏美

 片岡修二のたぶん最高傑作であるところの一本。『SMクレーン宙吊り』と改題されて浅草世界館で上映中なので見に行く。

 下元史朗演じるは“悪魔のサディスト”地獄のローパー、投げロープでどんな女もあっという間に亀甲縛りにとらえ、吊して引っ張ったロープをピン!とはじくと女はたちまち喘いで陥落……どんな女もたちどころに調教するアイパッチをした最強のサディストなのである。ローパーはさる男の依頼を受け、女暴走族“ボンバーズ”のアジトに潜入する。ボンバーズのリーダー、真知子にさらわれて監禁逆レイプされていた恋人を救い出すためだ。ローパーは難なく少年を救いだすが、真知子はローパーの調教が忘れられず彼の元を訪れて……

 もう片岡修二も下元史朗もノリノリで撮ってたのがよくわかる一本で、いきなり聖書を引用してみたり(「欲孕みて罪を生み、罪成りて死を生む!」)、さる名作のパロディがはじまったり、ギャグもやりたい放題なのだが、どれも滑らないあたりが絶好調時の勢い。クライマックスはタイトルにもなっている「クレーン宙吊り」なのだが、もはやSMの興奮などどこにもなく、『ビックリ日本新記録』でも見ているかのようなあっけらかんとした感動に包まれる。記録、それは儚い……

 その後『やりたがる女4人』(07 深町章)を見てあまりのことに死亡。気がついたら場内にいたのはオレ一人だった……

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2008-02-08

ポストマン (2008)

Photobig_11 日本のすべての郵便局員に捧げる -- 一茂

監督:今井和久 主演&製作総指揮:長嶋一茂 公式サイト 三月公開

 一茂、何がおまえをそうさせるのか? なぜかいきなり製作総指揮まで勤めてお送りする日本郵政株式会社PR映画。ケビン・コスナーは出てきませんが西川善文日本郵政社長は出演しています。

 長嶋一茂は房総半島の先の方の郵便局の一配達員、雨の日も槍の日も、「会えなくても、郵便さえあればつながっている」の思いを胸に、愛用のバタンコ(配達用自転車)を駆って郵便を届けつづける。三年前に妻を亡くし、中学生の娘(北乃きい)と息子の三人暮らしだ。職場ではダラダラ仕事をする今時の新人に「ゆうメイト」の心得を叩きこむ。「俺たちが届けるのは、郵便だけじゃない、その人の気持ちも運んでるんだ……!」

 そんなある日、毎週かならず青い封筒で決まった相手に手紙を出す老人(犬塚弘)の家に行った一茂は、老人が倒れているのを発見する。窓ガラスを叩き割って老人を救い出し、病院にかつぎこんだ一茂は、老人の書いた今週の手紙が出されずじまいになっていることを知る。「…手紙が来ているうちは無事だって証拠だからね…」老人の言葉を思い出した一茂は…「この手紙が届けば、あの人は死なない!

 一茂は小田原の宛先住所へ向かって一路バタンコを駆る! 走れ、一茂!

 …と書くとてっきり冗談だと思うでしょうが、本当にこういう映画です。世の中にはいろいろな映画がある。

 それにしても原沙知絵の代用教員、トレーナーの勉強するために米国留学するとか言ってたが、それより一茂の異常な体力の謎を研究した方がいいと思うよ!

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2008-01-27

Welt am Draht (1973)

Weltamdraht2 監督・脚本:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 出演:クラウス・レーヴィッチェ

 原作はダニエル・F・ガロイの『模造世界』。エメリッヒが作った『13F』と同じ原作に基づく(リメイクではない)。ファスビンダーがドイツのテレビ局で作ったSFドラマで、前後二回シリーズで四時間という代物。以前から見たいと思っていたのだが、最近ようやく入手できた。

 スーパーコンピュータでシミュレーション社会を作る実験をしていた研究所長ヴォルマーが急死した。後をついだスティラー(クラウス・レーヴィッチェ)の目の前で、警備局長ラウセが突然姿を消す。だが、ラウセなんていう人間は最初からいなかった、と研究所の人々は声を揃えるのである。

 SFXを使わない、いわば『アルファヴィル』タイプのSFなので、出てくるのは普通の街角。やたらと鏡を使いまくり、鏡の反射と実像で切り返したりするファスビンダー流の映像マジックが全開する。すべてが反射で実像は存在せず、人はつねに鏡や窓の枠の中に入っている。もちろんそれはこの物語が人造社会、人の作った模造世界の話だからである。

Weltamdraht_neu  物語自体は後半ただのアクションものになってしまい、主人公の実存不安まで行かないところが残念。広いカフェやオフィスを借り切って、人がいない中で延々と長回しの芝居を撮っているのを見ていると、なんとも贅沢な撮り方だな……という気がしてくるのは倒錯しているのだろうか。たぶん今ならCGを使って短いカットで細切れの映画を作る方が、はるかに安くあがってしまうはずだ。

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2008-01-23

すみれ人形 (2007)

05 監督・脚本:金子雅和 公式サイト

 映画美学校の卒業制作として作られた自主映画作品。行方不明になった妹を追い求める腹話術の男。二人羽織のストリップが妖しくも美しい。

 正直なところ、まだ整理が足りないんじゃないかと思えてしまう部分もあるのだが、いくつかのキー・イメージはすばらしく鮮烈。できたら16ミリで撮ってほしかった(撮影が大変頑張っているのはわかるだけになおさら)。是非とも畸形への偏愛を突き詰め、日本のホドロフスキーを目指していただきたい。

 今週末からアップリンク・ファクトリーでレイトショー公開

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2008-01-22

銀色のシーズン (2008)

0_36858300_1175791450 監督:羽住英一郎 出演;瑛太、田中麗奈 公式サイト

これ、実際に見ないかぎりとうてい信じられないような物語。そういうわけなんでネタバレします。 嫌な人は読まないでください。



 さて、瑛太が演じているのはモーグルの元ワールドカップ選手だったが、ジャンプの失敗で大怪我を負って以来競技を離れてゲレンデで当たり屋をやってい る山猿雪猿。彼の住む桃山村は村おこしのために氷ブロックでチャペルを建て、「ホワイトウェディング」として売り出そうとしている。ホワイ トウェディング第一号としてやってきたのが田中麗奈。スキーマニアの婚約者が申しこんだというのだが、自分は雪を見るのもはじめて。えっちらおっちら下手 くそな練習してるところを瑛太に目をつけられ、個人レッスンを受けることになる。

 さて、そんなある日、白馬の山頂からスキーで滑りたいと思った瑛太は、バズーカ砲(!)を取り出して向かいの山に向けて射撃する。表層雪崩を起こして、そのあとを滑ろうとい う寸法だ。だが、その弾は見事氷のチャペルに命中! チャペルは崩壊して結婚式はできなくなってしまう。村人たちは慌てて田中麗奈の実家に連絡するが、実 は田中麗奈の婚約者は半年前に死んでいたことが判明する。田中麗奈は「すいませんでした…」と大金置いて姿を消す。

 最後は瑛太が隣のスキー場で開かれた大会に参加し、飛び入りで滑って転けてでも立ち上がって (半年前に死んだ婚約者が忘れられず偽の結婚式までしようとした)田中麗奈とラブラブになっておしまい。いやーすごかった。ちなみに瑛太が自分が破壊した チャペルに行って、直すのかと思ったら残骸の氷レンガを投げ捨てたのには笑った。村おこしの費用がすべてパーになってしかもキャンセル料その他で大 借金を背負ったであろう桃山村が倒産するのは間違いないことでしょう。

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2008-01-19

2007年映画ベスト10

映画秘宝のベスト10発表号が発売になったんで、ぼくのベスト投票をここに転載しておきます。

  1. 〈グラインドハウス〉(07 クエンティン・タランティーノ+ロバート・ロドリゲス)
  2. 〈ラザロ〉(06 井土紀州)
  3. What is it? (05 クリスピン・ヘリオン・グローヴァー)
  4. 『狂気の海』(07 高橋洋)
  5. 『高麗葬』(63 キム・ギヨン)
  6. 『ブラックブック』(06 ポール・バーホーベン)
  7. 『コロッサル・ユース』(06 ペドロ・コスタ)
  8. 『転校生~さよならあなた』(07 大林宣彦)
  9. 『アポカリプト』(メル・ギブソン)
  10. 『奴隷』(07 佐藤吏)

 タランティーノに映画の魂を見た。なぜ70年代の低予算アクション映画があんなに我々の心をとらえるのか、その答えをタランティーノが教えてくれた。あの性急さと御都合主義、生々しい肉体活劇の中にこそ映画の本質である何かが眠っている。〈ラザロ〉や『狂気の海』もまた、低予算であるがゆえに映画の魂を掴みえたのだ。まこと金持ちが天国に入るのは難しい、とイエスが言うとおりである。

 ワーストやらは本誌の方を見てください。全体投票は、なぜ〈グラインドハウス〉の票をまとめなかったのかわかりません。梅澤くん(童貞二号)の驚異の大躍進に笑う。

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2008-01-17

ラスト、コーション (2007)

監督:李安 主演:トニー・レオン、湯唯

脇毛、がっかりおっぱい、麻雀……あとなんだろ。反日? まあそういう感じの映画。

これ、よく考えたらマゾヒズムの話なんだなあ。主演がトニー・レオンだったりするので、なんとなく「男の虚無的な影に惹かれ……」みたいな印象に なっているけれど、原作では「狐のような顔をした男」つまりれっきとしたキモメンらしい。売国奴のキモメンにスパイとして身を捧げる女スパイがマゾヒスト としての本性にめざめる……という話なのだろう。でも、アン・リーって本質的に変態じゃないから、どうもそこの勘所がわかってないよね。

この映画もどうやら『汚名』をイメージしているようで、実際劇中に『断崖』のポスターが出てきたりするんだけど、ヒッチコックはまごうことなき変態で、『汚名』は完全にマゾヒストの映画だからね。

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2008-01-06

鬼輪番 (1974)

監督:坪島孝 出演:近藤正臣、荒牧啓子、佐藤慶 原作:小池一夫

 ラピュタ阿佐ヶ谷の〈岸田森特集〉にて。タイトルは「おにわばん」と読む。地獄の特訓で鬼神のように強くなった「お庭番」のこと。小池一夫イズムだなあ。

 近藤正臣はじめ五人の少年少女は地獄の特訓で鬼と化す。これ、90分ないくらいの映画なのだが、鬼になるまでで三分の一以上使っている。どう考えても長いのだが、こ れが全然ダレない。毎回スーパーヒーロー映画を見るたびに「スーパーヒーローものにオリジンは要らない(=ヒーローになったところから話をはじめればい い)」と言っているのだが、オリジンと特訓は違う。映画には特訓がなければならない!

『あずみ』そこのけの特訓で仲間はどんどん死んでゆき、最後に残ったのは五人。卒業試験は忍者であるからして当然セックスだ。「おまえたち は攻、防の術は学んだ。あとは探の術じゃ!」というわけで五人の紅一点小坊師は処女を奪われた上、童貞だった仲間四人に次々に犯される。童貞喪失した兄弟 たちは切れぬ絆を結んで「親鬼」たちに反抗するのだ……これぞ小池イズムというものだ! 『あずみ』ももうちょっと小池イズムがあれば面白くなったのにね。

 ちなみに五人の「鬼」は紀州公の謀反の根を断つために陰謀を紀州に潜入するのだが、「裏の裏をかくのだ」と言っていちばんバレやすいやりかたで侵入を試みる。いやそれ隠密行動の意味何もないから!

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2007-12-27

日本映画縛り首大賞

『映画秘宝』で好評連載中の「日本映画縛り首」で、年末を迎えるにあたって今年のワースト邦画を決めようということになった。少なくとも『週刊文春』の「きいちご賞」よりはきちんと(駄目)邦画を見ている自信がある我々だが、激論の末決定した本年度最悪邦画ノミネートは以下の通り。

第1回 はくさい映画賞(田野辺尚人命名) ノミネート作品

[最低作品賞]

  • 『大日本人』
  • 『ミッドナイト イーグル』
  • 『どろろ』
  • 『恋空』
  • 『ラストラブ』

[最低監督賞]

  • 原田眞人(『伝染歌』『魍魎の匣』)
  • 行定勲(『遠くの空に消えた』『クローズド・ノート』)
  • 塩田明彦(『どろろ』)
  • 愚・スーヨン(『THE 焼肉 MOVIE プルコギ』)
  • 北野武(『監督・ばんざい!』)

[最低主演男優賞]

  • 大沢たかお(『ミッドナイト イーグル』『Life~天国で君に逢えたら』)
  • 田村正和(『ラストラブ』)
  • 織田裕二(『椿三十郎』)
  • 堤真一(『ALWAYS 続・三丁目の夕日』『魍魎の匣』)
  • 松田龍平(『THE 焼肉 MOVIE プルコギ』『伝染歌』)

[最低主演女優賞]

  • 伊東美咲(『ラストラブ』『Life~天国で君に逢えたら』)
  • 竹内結子(『ミッドナイト イーグル』『クローズド・ノート』『サイドカーに犬』)
  • 柴咲コウ(『どろろ』『舞妓Haaaan!!!』)
  • 黒木瞳(『怪談』『魍魎の匣』)
  • 安藤サクラ(『風の外側』)

[最低助演男優賞]

  • 高橋ジョージ(『恋空』)
  • 石黒賢(『未来予想図』『ミッドナイト イーグル』)
  • 伊勢谷友介(『伝染歌』『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』)
  • チャン・チェン(『遠くの空に消えた』)
  • 津川雅彦(『蒼き狼 地果て海尽きるまで』)

[最低助演女優賞]

  • もたいまさこ(『めがね』)
  • 木村佳乃(『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』『伝染歌』)
  • 桃井かおり(『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』)
  • 長谷川京子(『愛の流刑地』)
  • 鈴木杏(『監督・ばんざい!』『椿三十郎』)

 厳しい競争を負けぬいたより抜きのノミネートから、最悪映画に選ばれるのはいったいどれなのか!? 受賞作は2008年1月21日発売の『映画秘宝』3月号で発表!

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2007-12-25

Sayuki Matsumoto in Hideo Azuma's "Chocolate Derringer"

監督・脚本 杉作J太郎 原作 吾妻ひでお 主演 松本さゆき、ロマン優光

制作 男の墓場プロダクション

 土曜日深夜、中原昌也と飲んでいたらギンティ小林から電話が入る。
「柳下さん、明日昼間空いてますか?」
「いやまあ空いてるけど……」
墓場へようこそ!
……というわけで松本さゆき主演吾妻ひでお原作墓場超特作『チョコレート・デリンジャー』に出演することになってしまった。大部屋の一人として阿呆面をさらしております。撮影には二日ほど参加したけれど、脚本は思いがけずに面白く、松本さゆき嬢はチョーかわゆく、ロマン優光は吾妻ひでおが描いたとしか思えないキャラを体現、杉作監督の大蔵貢イズム(「テスト一回、ハイ本番」)もますます冴えわたり、墓場プロ最高傑作となるのは間違いない。映画は来春にも完成、公開予定なので乞うご期待!

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2007-12-18

変態穴覗き 草むらを嗅げ (2007)

Kusamura 監督・脚本 山崎邦紀  出演 香咲美央、荒木太郎、風間今日子 あらすじ

 ヘロドトスの『歴史』に登場するリュディア王カンダウレスがモチーフ。カンダウレス王は自分の妻があまりに美人だったので他人に自慢したくな り、王妃が服を脱ぐところを護衛のギュゲスに覗かせる。恥辱を感じた王妃に命じられたギュゲスは王を殺し、新たにリュディア王の地位を継ぐ。ちなみにここ から転じて自分の恋人が他人とセックスするのを見て悦ぶ倒錯を「カンダウリズム」というそうです。今風に言えば「寝取られ萌え」か。

 まあヘロドトスをモチーフにしたピンク映画という時点ですでにありえない話なわけだけど、それにパンストフェチで着ぐるみを着ているレズビアン (里見瑤子)が加わって物語はさらに混沌と化す。気になったのは窃視症であるカンダウリズムと、触覚を求めるフェティッシュとは基本的に食い合わせが悪 いのではないかということである。その疑問は最後まで解消されないまま終わってしまった。

 ヒロインの香咲美央はなかなかキュートでよろしかった。あと、オーピー出演の吉岡睦雄をはじめていいと思ったな。あのケーハクそうなところをうまく使っていて。

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2007-12-16

魍魎の匣 (2007)

05 原作京極夏彦 監督・脚本原田眞人 公式サイト

 まず言っておきたいが、原作のファンにはお勧めできない。実相寺監督への供養として見に行こうとか思ってる人にもお勧めできない。しかし原作を読んだことがない人にも別にお勧めできないというのが怖いところ。

 どういう人にお勧めできるかと考えてみたが

1)阿部寛が赤いビュイックを駆って颯爽と事件を解決するハードボイルド探偵ものを見たい人
2)堤真一と椎名桔平がドタバタコメディを演じるところを見たい人
3)カットがカチャカチャ変わって目がチカチカするのが楽しい人
4)阿部寛、椎名桔平、堤真一が熱く語り合う男の友情ものが見たい人
5)エンディング・テーマの東京事変が好きな人
6)目眩坂が階段になっているのが斬新だなあと思える人

……はおもしろいと思う可能性があるかもしれない。あくまでも可能性だが。

 前から言っているのだが、シリーズものを一本目から作るというのは間違っている。そもそも『うぶめ』が作られたときから、『魍魎』を実相寺監督で やるべきだとぼくは主張していた。それで映画がヒットしたらはじめて昔にさかのぼって一作目を作ればいいのだ。もちろん企画した側も『魍魎』を実相 寺に撮らせるつもりだったんだろう。でも、まず第一にやりたいことをやっておかないと駄目なんだよ。それをしないからこんなことになってしまうんだっつー の! 

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2007-12-14

マリッジリング (2007)

Main 監督 七里圭 脚本 七里圭、西田直子 公式サイト

 これ、試写に行きそびれてしまったらビデオが送られてきたので、ラッキー!とビデオを見はじめたのだが、30秒くらい見て「これはヤバイ!」 と思ってやめた。これは劇場で見ないとまずいだろう。それくらい繊細な撮影をしていたからである。そういうわけなので公約通りちゃんと劇場に行って見まし た。シネパトス銀座。

 撮影は実に素晴らしい。主役の心情をモビールをはじめとする小道具で表現する演出も悪くない。全体にたいへん丁寧に撮られてはいるし、クリシェを避けようとする意志は強く感じられて好ましい のだが……ピンク映画なら傑作と言っていいだろう。ただ、このレベルで突出するものがあるかというと微妙なところである。もちろん『愛の流刑地』なんかよりはるかに上質な映画であるのはまちがいないが、じゃあこういう映画によってすぐにステップアップしていけるのかといえば、そうなっていないのが今の日本映画界。まあ今後ともめげずにこの丁寧な仕事を続けていけば、いつか報われる日が来る。あとは成瀬とかしっかり勉強してください。

『眠り姫』を直前に見ていたの で、あれをこう使うのか……とか見えていろいろ面白かった。

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2007-12-11

国辱ってのはこういうことさ

Midnighteagle  ただいま『ミッドナイト・イーグル』がLAで公開中。Los Angeles Timesには映画評も載ってます。

This is a stupor-inducing, would-be thriller from Japan whose sporadic action and inept storytelling is as generic as its title. Based on a reportedly popular novel by Tetsuo Takashima, the film patches together a plot so faux it would be laughable if the whole thing wasn't so terribly humorless. A photojournalist who witness the crash of a U.S. stealth plane and is embroiled in the search for its lethal payload and the global implications that accompany it.

スリラーと称する眠くなるような日本映画で、思い出したように起こるアクション・シーンとぎくしゃくした語りは凡庸なタイトル同様退屈きわまりない。タカシマ・テツオのベストセラー(らしい)を原作にした物語はあまりに嘘くさく、映画にユーモアのかけらでもあれば立派なコメディになって いただろう……

「邦画史上最大スケールの本格山岳サスペンス・アクション」か……

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What is it ? (2005)

Whatisit_2  映画がらみの取材でLAに来ている。取材も終わったんで今日は映画でも見るか……と新聞を開くと、なんとAmerican Cinemathequeクリスピン・グローヴァーの監督デビュー作、What is it ? を上映しているではないか! しかも昨日は三部作の第二作、It's fine! Everything is fine.(すでに不吉きわまりないタイトル)を上映していた!!! 後悔先に立たずとはこのこと。しかし一作目だけでも行かないわけにはいかないのです べての予定をふっとばして見に行く。

 映画はダウン症の患者たちがくりひろげる愛と憎しみのドラマにグローヴァー自身が演じるシャーリー・テンプル=神=auteurが君臨する地獄世 界がからむというストーリーを説明しろと言われても困るのだが面白いかと訊ねられるとこんなに面白いものはないという強烈きわまりない映画。加えてマイケル・ ジャクソンになりたいミンストレル役者とかカタツムリ虐待とかナチのシャーリー・テンプルとか全裸の悪魔女とか出てくる。音楽はアントン・ラヴェイと チャーリー・マンソン&ヒズ・ファミリー・コーラス。

 要するに (ケネス・アンガー+ルイス・ブニュエル+ヴェルナー・ヘルツォーク)*∞ = ??? という驚くべき作品なのである。ちなみに上映の前にはグローヴァーのスライド・ショーがつき、終了後はグローヴァー本人のQ&Aセッション。一 言の質問にノンストップで30分喋り続けるグローヴァーは完膚無きまでに狂いまくっていた。ちなみに第二作は髪フェチの不具の女たらしの話で、マルギッ ト・カルステンセンとか出てるらしい。予告編だけ見たが、すでにして傑作まちがいなし。

 DVD化の予定はいっさいないので、狂えるグローヴァーのライブ公演を見る以外に見る可能性はないという渡辺文樹のような状況になっているらしい。こうなったらなんとしても第二作も見なければ。三部作完結のときにまとめて見るかな。

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2007-11-30

短篇調査団・性の巻

Nara2  短篇調査団・性の巻@neoneo座 「リクエストにお応えしての三本立て」とあるけれど、すいません、リクエストしたのは何を隠そうこのオレです。

『人間の性』 、『小学生と性-子と親の相談室-』、『性のめざめ』 の三本はそれぞれ東映教育映画、学研、国映ビデオの製作だったのだが、三者三様に面白かった。東映の『人間の性』はさすがに東映だけあって大久保清逮捕の実写映像とか 入ってる。学研のは養護教諭のところに性の悩みを抱えた生徒たちが相談に来る話なんだけど、登り棒にしがみついたときにイっちゃった新井くんがヤバイ。妹 の寝乱れ姿を見て「妹っていうより、どこかのかわいい女の子のような気がして……」と興奮して相談しに来たのだった。いやー性犯罪者の資格バリバリだよ。

 オレのお目当ては最後、国映ビデオ製作の一本だったのだが、これがなんと奈良林祥オンステージ。ひたすらHow to Sexの奈良林先生が喋りまくる40分間。奈良林先生の名言がいくつもフリップで出る

「セックスは人間形成を遂げてゆくうえで欠くことのできないエネルギーである」
男の恋は精子がささやく
女の子の自慰は人生のアクセサリー。男の子の自慰は健全で健康な人間形成を遂げるための必須科目」
大学生からでは遅すぎる
「自慰はママの引力圏を離れるためのロケット」

 などなど。奈良林先生飛ばしまくり。オナニー害悪論に反駁するのはともかく、女性の性についてはまったく考えにない感じ(結婚してから旦那に開発 してもらえばいい、と言いたげ)なのが時代を感じさせる。というかこれ、まったく学校の教材には使えそうもない感じだったんだけど、いったいどこで上映し たんだろうなあ?

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2007-11-29

『ファーストフード・ネイション』 (2006)

『ファーストフードが世界を食いつくす』の映画化。脚本も原作者が書いている。  公式サイト

『ダーウィンの悪夢』のDVDに収録されているフーベルト・ザウパーのインタビューで「別にナイルパーチが悪いわけじゃない。これをダイヤモンド に替えても、ウランに替えても、同じ話は成立するだろう」と語っている。舞台をアメリカに置き換えてもやはり成立するわけだ。つまり、ここではグレッグ・ キニア演じるマーケティング部長が主人公となって“ミッキー・バーガー”のパテに牛糞が混入している疑惑を追及するわけだけど、それは『ダーウィン』にお ける武器密輸疑惑と同じでたんなるマクガフィンである。大事なのは南北格差から生まれる搾取のシステムというわけだ。

でも、もちろんリンクレイターは聡明であるから、それが我々自身が望んで生みだしている世界だということも承知している。そこが問題で、ドキュメ ンタリーならそのまま結論を投げてしまってもいいのだが、劇映画だとなんらかのカタルシスをつけないわけにはいかない。そこらへんが難しいところではあ る。『いのちの食べかた』との比較も含め、いろいろ考えさせられた。

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2007-11-28

ALWAYS 続三丁目の夕日 (2007)

 人間ドックで生まれてはじめて胃カメラを飲んできたのだが、恐れていたほどきつくはなかった。鎮静剤を入れてもらったおかげでほとんど寝ていたからである。薬が抜けきらないでぼーっとした頭のまま、ユナイテッドシネマ豊洲で『ALWAYS 続三丁目の夕日』を見たのだが、どうもそのくらいでちょうどよかったような気がする。前作は見て 発狂しそうになるくらい怒り狂ったわけだが、頭に麻酔をかけていたおかげで今度はそれほどでもなかった。

 とは言っても別に面白かったわけではないが。

 今回、頭がくらくらしたのはクライマックスとなる茶川龍之介(吉岡秀隆)の芥川賞待機宴会のシーンで、まあ待機宴会ってああいうもんじゃないよと かそういう突っ込みはメッタ斬りの人々にまかせるとしても、そこで待っていた人々が次々に本を取り出して「すごくいい話なんだ!」「オレは三回読んで、三 回泣いた!」「すんごく心がじんとすますたわあ」とか口々に言うシーン、どいつもこいつも「素晴らしい」とか「泣けた」とか抽象的な誉め言葉を言うだけで 具体的にどんな話しなのかちっともわからない。どうしようもねえな。だいたい文学は「泣ける映画」じゃねえだろ……と思っていたが違う!この山崎なんとかは描写すべきじゃないところまですべてセリフ で説明しないと気が済まない脳が麻痺した人なのだった! というのはそこでカットバックしてその本を開く車中の小雪のシーンになって、小雪がページを開い て読み出すとタイトルは『踊り子』という。おいおいと思う間もなく吉岡くんの朗読がかぶさって「……逢いたい、ただひたすらきみに逢いたい……」おめーそ れただのエッセイだろ! それが芥川賞候補作かよふざけんなこら。そんなもん文藝賞の一次選考も通らねえよ!

 だいたい茶川龍之介ってペンネーム使ってる時点で芥川賞候補にはならないよ!

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2007-11-26

堕靡泥の星 美少女狩り

Norifumi Suzuki

 鈴木則文監督作品『堕靡泥の星 美少女狩り 』が米国でDVD化されることになり、監督のインタビューを撮りにアメリカからスタッフが来日。その手伝いをした。

『女番長』と『堕靡泥の星 美少女狩り 』DVD用にそれぞれビデオ・インタビューを収録。さらには『堕靡泥の星 美少女狩り 』には音声コメンタリーもつくということで、無理を通して鈴木監督に音声コメンタリーのお願いをしました。監督の音声コメンタリーはもちろんはじめて。というか、東映監督の音声コメンタリー自体史上初なのではなかろうか? ビデオ・インタビューも監督がサービス精神を発揮していただいたおかげで素晴らしいものができたので、日本のファンも必見!

 DVDは『女番長』がMedia Blastersから来年2月に、『堕靡泥の星 美少女狩り 』はDiscotek Mediaから来春には発売予定。楽しみにお待ちを。

 追記:DVDプロデューサー(『恐怖奇形人間』のDVDプロデューサーでもある!)のblogはこちら

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2007-11-15

ベオウルフ/呪われし勇者 (2007)

623213608_253 公式サイト 12/1公開

どんなものかなあ……とあまり高い期待は抱かず見に行ったのだが、思いの外面白かった。これで監督がピーター・ジャクソンなら傑作になったのではないだろうか。いや監督ゼメキスのままでも、あの気持ち悪いCGでさえなければ……いやそれは言うまい。

その功績は一に脚本(ニール・ゲイマン&ロジャー・エイヴァリー)のおかげだ。てっきりエイヴァリーが骨子を作って、そこにゲイマンがセリフ回し やら神話的彩りをつけたものだと思っていたが、プロダクション・ノートを読むかぎり、どうやら話のメイン・アイデアもゲイマンのもので、エイヴァリーは清 書しただけらしい。すげえなゲイマン。

プレスの表紙にまでなっていてすっかり主演みたいなアンジェリーナ・ジョリーはもちろんはまり役。ていうかこの役はどう見てもアテ書き。あとクリ スピン・グローヴァーもアテ書き。まあそれはいいんだが、最後までジョリーの役が「グレンデルの母」でしかなく、名前がついてないのはいかがなものか。嘘でもいいから名前ぐらいつけとけ、と。

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2007-11-12

恋空 (2007)

061030mobile01 公式サイト 新宿バルト9にて。超満員。

「ヤバイ! マジチョー泣けた!」--高校生(16歳)
(本当にこう言っている女子高生がいた)

やっぱYoshi様は偉大だなあ。美嘉ごときではまだまだ超展開が足りない。たんに普通のつまらない映画である。16歳女子高生がセックスし て妊娠してレイプされて流産する話を「普通」と言えればの話だけど。もともとつまらない原作(なんとハードカバー上下巻なのである。読んだよそれも)をさらにおとなしく改変していたのでいっそう地味になってしまっ た。最後に原作からはなれた部分でちょっとびっくりしておお!と思ったのだが、残念!それは『オトナ帝国』のパクリ。

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2007-11-07

おれについてこい!(1965)

 シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞。ニチボー貝塚の女子バレーボールチーム、すなわち「東洋の魔女」を率いた「鬼の大松」の自伝に基 づく伝記映画である。東京オリンピック女子バレーボール決勝戦、宿敵ソ連との決戦を前にしたバレーボールチームのメンバーが、ここにいたるまでの日々を回想す る…という構成である。大松監督役はハナ肇、大松から「馬」呼ばわりされる主将の河西に白川由美。

 何が素晴らしいって女優たちがみんなバレーボールやってるところである。猛特訓の場面、今だったらきっとカット割ってごまかしてしまうんだろうが、ひたすらボールを左右に投げつづけるハナ肇の背中から左右にレシーブ練習を続ける選手の姿をワンカットでとらえるカメラ。白川由美は本当に練習し、本当に回転レシーブしているのだ。ど んなに細かくカットを割ろうともこの感動は得られない。いったいどのぐらい練習したのかしらないが、今の映画にはない贅沢とはこのこと だ。映画はまちがいなく退化している。特訓さえあれば、試合のシーンなんかなくても映画は十分成立するのだ。

 同時にこんな気の狂ったスパルタ特訓ができなくなったのだから、日本社会はまちがいなく進歩している。なんせタコ部屋みたいなところに閉じ込めて、一年360日、毎日12時過ぎまで練習させるのだ。この練習に耐えられるんなら世界一にもなるよ!

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ノートに眠った願いごと (2006)

C0b48a8f   公式サイト 『バンジージャンプする』で世界を、いやオレを震撼させたキム・デスン監督作品。韓国版『クローズド・ノート』みたいな売られ方をしているが、しかし『バンジージャンプする』の監督であるからしてそんな甘いものではなく…

 司法修習生のキョヌ(ユ・ジテ)とTVプロデューサーのミンジュ(キム・ジス)は結婚も間近な恋人同士。だがキョヌが検事局での修習に忙しいので ミンジュはちょっとおかんむりだ。今日も一緒に新居の家具を見に行くはずだったのに、キョヌは会議で抜けられず、「悪い!先行って見といて!」会議を終 わったキョヌがようやくかけつけ、信号を待ってデパートに入ろうとした瞬間 ガラガラドッシャーン! と目の前でデパートが崩壊した!

 ってこんな映画、韓国でしか作れねえ! まーそのあとは『クローズド・ノート』的展開を見せるわけで、『バンジージャンプする』ほどの衝撃はない ものの十分おもしろかった。最後にミンジュが「新しい舗装の下には古い思い出が埋まっているのね。古い思い出の上に新しい道を造って走って いけばいいと思うわ」とかポエムを言ってみんな幸せっぽい終わり方になってしまうのがなんともはや。ちなみにこの二本のあいだには『血の涙』という映画がある そうなんですが、これも見ないとなるまい。

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2007-11-01

ビキニ娘、波の数だけイカせて(1999)

Sh_100000810_m  上野オークラで渡邊元嗣監督特集を見る。いわゆる「作家」としてアテネ・フランセやポレポレ東中野で特集上映が組まれるタイプの監督ではなく、当たり前 のエロ映画を作りながらその中で作家性を発揮すると言うタイプの渡邊元嗣だけに、こうしたかたちで特集が組まれるのは嬉しいことである。

 三本それぞれに面白かったが、いちばん楽しかったのは1999年の『ビキニ娘、波の数だけイカせて』(『痴漢海水浴 ビキニ泥棒』の改題作 品)。これ、タイトル・ロールの「ビキニ娘」は黒田詩織が演じている東京で働いているイメクラ嬢の方なんだけど、映画の中での主役はその姉で旅館「汐風 荘」をやっている未亡人の姉、西藤尚の方なのだ。夫が死んでからはや七年、一人で旅館を守っているが…という役どころ。

 話的には妹の方に行ってもいいのだが、途中からすっかり西藤尚の方にカメラが向きっぱなしになってしまう。またこの西藤尚がすばらしく可愛く撮 られて魅力的なのである。惚れた女優は可愛く撮る、渡邊元嗣の良さが発揮され、映画自体のバランスの悪さとかは忘れてしまえる。

 三本のセレクションには、一応ジャンルを分けたりとかの考慮があったようだけど、このさい惚れた女優で三人並べた方が良かったんじゃないかな あ。その方がよりナベ的セレクションになったんじゃないか。あと、80年代の作品はやらないのかなあ、と思ったが、よく考えたら初期作 品はみな新東宝だったのか。今度は国映=新東宝でも特集をよろしく。

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2007-10-30

ソウル忠武路映画祭

The Sentimental Bloke  ソウル忠武路映画祭に行ってきた。

 ソウル随一の繁華街、明洞を通っている忠武路。映画祭はその周辺の映画館10スクリーンを使って開催される。韓国の映画祭と言えばもはやアジア 映画の新作ショーケースとなった釜山映画祭があるわけだけど、ここは釜山に対抗してか映画史的視点を強く押し出した映画祭になっている。だもんで映画保 存協会の「映画の里親プロジェクト」にお金を出して旧作の復元までしているのだ。韓国の映画祭が日本映画の復元をするのである。えーと、東京国際映画祭って、何か役に立つことしたことあったっけ?

 レトロスペクティヴはパトリック・タムとかジョン・ブアマンとか。あまり滞在時間も長くなかったので、ブアマンのレトロスペクティヴで『殺しの分け前/ポイント・ブランク 』だけ見る。

 連日野外上映があるというのも素晴らしい。ソウルのど真ん中で野外上映なのである。本日は清渓広場(長年どぶ川としてソウルの汚濁の代名詞だったが、最近になって再生された清渓川にある公園)でオーストラリア の無声映画The Sentimental Bloke(1919)の上映(生演奏つき)だったのだが、これが素晴らしかった! オーストラリア訛りの一人称の字幕、「そこでおいらは言ったんだよ。『こんばん わ』って。それ以上は喉につまっちまって、一言も出てきやしねえんだよ」みたいな調子で語られる物語も独特で素晴らしかったが、さらに素晴らしかったのは 演奏。三人グループなのだが、それぞれ三つぐらいの楽器をあやつり、全員が次々と楽器を取り替えて演奏するのだ。バイオリンを弾いていたと思えば縦笛にな り、かと思うと歌をうたう。最後は観客も含めてのsing-a-longで大盛り上がり。感動の一夜であった。

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2007-10-25

いのちの食べかた (2005)

1131278738587498x280topleft 公式サイト 日本版サイト 森達也の本ではなくて、大規模集約農業の世界を描いたドイツのドキュメンタリー。最近、ドイツのドキュメンタリーばかり見ている。

ニワトリが、牛が、豚が、まるで工場のようにオートメーションで育成され収穫され解体されるまでがナレーションも何もないまま淡々と写されていく。画面がとても美しい(撮影はかなり凝って構図を決めている)おかげもあって、まるで工場製品を作る工場のようである。

これを見て、工場のように管理される大規模集約農業の現状について疑問を抱く人も多いのだろうと思うけど、ぼくは逆に人類文明の進歩ってすごいな あ……と思っただけだった。唯一、人力が手放せないのは果物や野菜の収穫。キュウリやトマトは相変わらず労働者がひとつずつもいでいる。これからの課題は野 菜の収穫の機械化だよなあ。

11月上旬よりシアター・イメージフォーラムにて公開予定

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2007-10-21

高麗葬 (1963)

1049193690e473cf44df5e6d15d6 金綺泳監督 東京国際映画祭にて鑑賞

韓国の「怪物」と言われる金綺泳監督作品だったがこれは凄い! 物語自体は『楢山節孝』みたいな韓国の姥捨て山伝説なのだが、ともかく描写が濃く、人間の醜さをこれでもかと描き出す。

主人公のグリョンは子供のころに義兄(十人兄弟)に毒蛇をけしかけられ、片足が不自由になってしまったために一生「ビッコ」と蔑まれる人生を送ることになる。グリョンは足を引きずりながら一人、母を養うために働きつづける。だが好きになった女カンナキには「片輪者の嫁にはなれない」と振られてしまい、やっともらった嫁は聾唖者。しかもその嫁は十人兄弟に誘拐され、強姦されてしまう。嫁は復讐のため、十人兄弟の長男を誘い出して殺すが、その代償としてグリョンは嫁の命を差し出さなければならなくなる。そして十五年……

すでに三年続く干魃で、村は飢えきっていた。水場を独占している十人兄弟は芋と水の交換を要求するなどやりたい放題。グリョンが不自由な足で井戸を掘り当てると、死体を投げ込んで水を腐らせてしまう。カンナキはついに娘たちを飢えさせまいとグリョンに身を売る決心をする。一方、村を支配する巫堂の女は神におうかがいをたてるための人身御供を求める。子供を殺してその魂をセト様にすれば、神のお告げを聞けるというのである。カンナキの娘、アバタ面の醜いヨンは「飢えるくらいなら死んだ方がマシだ」と巫堂の元に向かう。巫堂のお告げははたして「孝行息子のグリョンが母を背負って捨てに行けば、神は雨を降らしてくれる」と告げるのだ……

ついに到達する姥捨て山の壮絶な光景。執拗に描写される母と子の別れ。人々の差別と心の醜さ、そして残酷さ(グリョンもまったく善人ではなく、十人兄弟への恨みは決して忘れることがない)。強烈すぎるスプラッター描写。何もかもが濃厚な大傑作。

人々は厳しい大自然の中で飢えに苦しみ、宿命に縛られて生きる。ウィリアム・トレヴァー短編集の読後感を思い出した。

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2007-10-16

極右と極左は通じあう

2642740standard 山形ドキュメンタリー映画祭で見損ねたドイツ特集〈交差する過去と現在〉をドイツ文化センターに見に行く。

本日は『あるドイツ人テロリストの告白』と『反逆者』の二本立て。これが組み合わせの妙もあり、非常に面白かった。

『あるドイツ人テロリストの告白』は国際テロリスト、カルロスとともにOPEC本部襲撃事件を起こしたドイツ人極左テロリスト、ハンス・ヨアヒ ム・クラインについてのドキュメンタリー。彼はパレスチナで軍事訓練を受けてテロに参加するが、エンテベ空港襲撃事件の際にバーダー・マインホフ集団の残 党がユダヤ人とそれ以外を選別して人質にしていたというのを知り、「これじゃナチスと同じじゃないか」と疑問を抱いて運動を離脱する。

『反逆者』の方は米軍に爆弾テロ闘争をしかけて多数の死傷者を出したケッヘル=ヘップ集団のリーダーであるネオナチ、オットフリート・ヘップについ てのドキュメンタリー。ヘップはもともとネオナチとして活動していたのだが、バイエルンで活動していた極右カール=ハインツ・ホフマンとかかわったことか らホフマンの国際運動に抜擢され、レバノンに渡ってベイルート郊外の軍事キャンプでPLOから都市ゲリラの訓練を受けるのだが、キャンプで内ゲバ殺人が あったことからほうほうのていで脱出し……ヘップはその後反米爆弾闘争をやったり東ドイツに理想のファシズム世界を見出して東ドイツ秘密警察のスパイに なったりと波瀾万丈すぎる人生を送るのだが、それはさておき

この二つ、まったく同じではないか! 極右も極左もPLOの訓練を受けてユダヤ人を殺すのがドイツのテロリズムなのか! となると、ここでの「右」とか「左」とかってなんなの? 質疑応答でもそういう話で大いに盛り上がる。

ちなみに連合赤軍ばりのネオナチ内ゲバ殺人なんだけど、なぜそんなことになったかというと、原因は喫煙。ナチだから禁煙禁酒の健康志向なのだ。これが本当の禁煙ファシズムだ!

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2007-09-30

不倫中毒 官能のまどろみ(2007)

Yumi Yoshiyuki 監督 吉行由実 脚本 吉行由実、樫原辰郎 出演 薫桜子、なかみつせいじ ストーリー

 文芸雑誌〈さざなみ〉を舞台にした愛欲ドラマなのだが、〈さざなみ〉編集部として使われているのが実は洋泉社映画秘宝編集部。というわけでぼくも撮影 見学に行き、ついでにエキストラ出演までしてきた。見てみたらクレジットに名前が入っていてびっくり。ぼく自身は画面の隅の方にチラチラ写ってい るだけなので、さして目障りではないはずなのでご心配なく。

 映画は後半どんどんSMポルノっぽくなっていくのが興味深い。この物語では性の解放とヒロインの自己実現とが重ね合わされている のだけれど、これは吉行作品ではあまりなかったパターンのような気がする。吉行由実のヒロインって性を嫌悪するタイプが多かったように思えるのだ。その分、通常の ポルノに近づいているとも言えるのだが。正しくフェミニスティックなポルノ映画ではある。

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理容店の女房 夜這い寝間 (2007)

8a1 監督 新田栄 脚本 岡輝男 出演 瀬能司、平沢里菜子、風間今日子 ストーリー

 酒屋の主人が「理容店の女房に髪を切られると福を招く」という噂を流して、彼女を忙しくさせて昼行灯の旦那が釣り三昧してるうちに女房と浮気……っていうストーリーなんだけど、これ、根本的に間違ってないか? どう考えてもその噂を流すべきは旦那の方だろ! 噂によって女房が忙しくなるのを狙って、髪結いの亭主として浮気三昧……じゃないのか。新田/岡コンビの考えることはわからんなあ。

 平沢、風間とお気に入り女優が二人も出てたんで見たわけだが、風間今日子の出番が凄かった。見合いに30回も失敗している三十路の処女なんだけど、今度ばかりは失敗できない!というので噂を信じて奥さんに髪を切ってもらいに来る。でも髪はすでにセット済みなので下の毛を切ってくれというのだ(剃毛シーンあり)。
 で、そのおかげで見事に見合いに成功してそのままラブホに雪崩こむ。何もない胯間を見た見合い相手は「ちゃんと手入れしてるんだね」ってそうじゃないだろ! しかもセックス後「気持ちよかった……もうバイブは捨てるわ」とか言ってるし。このコンビの考えることはわからん。

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2007-09-25

第三回背徳映画祭

 本日最終日だということに気づいて、慌てて見に行った。以下、思いつくままに感想。

 いまおかしんじの『金鮎の女』に爆笑する。「佐藤宏。をプロデュース」というか。鬼才いまおかが下流社会の真実をえぐるドキュメンタリー!だった。いや ドキュメンタリーじゃないけど。いまおかしんじの佐藤宏サーガがはじまってしまったような気がする(第一作は『かえるのうた』のDVDについてるアレ)

 前田弘二の『遊泳禁止区域』は下北沢で撮るべきだったんじゃないか?と思う。まるでラ・カメラを出てぶらぶら歩いてる人たちを撮ったようだったからだ。

 村上賢司の『フジカシングルデート』について言えば、あれは絶対に最後の女の子との出会いを8ミリで撮らなければならなかった。いや9/13と日 付が入っていて9/14公開なんだからそんなことはありえないんだが、でもなぜか8ミリで撮られている。それが「8ミリを回せば奇跡が起こる!」ってことなんだと思うの だ。

 吉行由実の『ミルキィ♡オーディション』はあまりに凄すぎて唖然。何が彼女をさうさせたか、と。 まあいちばん監督本人の生理に忠実に撮られた一本ではある。

 しまだゆきやすの『京都借ります』はハイビジョンで撮れ! 臍ピアスの穴まで写せ!という感じ。他作品も含め、とりあえずヌードが出てくるので金返せという気にならないのが美点か。

 吉行作品を見た人は誰もが聞きたくなる曲……ある意味吉行由実のテーマソングだな……まさに不思議東京シンデレラだよ!

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2007-09-19

村木のいない名美

Main 『人が人を愛することのどうしようもなさ』(監督・脚本 石井隆 主演 喜多嶋舞)を見る。

 ヒロインが名美なのだが、村木は出てこない。実際には村木役の男はいるのだが、名前が村木じゃないのである。たぶん村木にするとネタバレしてしまうので、竹中直人と津田寛治のどっちが「村木」な のかわからなくしているのだろう。
 物語を転がす仕掛けは他にもいくつもあって、それが複雑な入れ子構造であったり喜多嶋舞のおっぱいだったりする。だけど、そういう仕掛けを入れれば入れるほどに逆にメインストーリーが弱くなってしまう。「名美」と「村木」の話ではなくなってしまうのだ。物語を補強するためにサービスをぶちこめばぶちこむほど物語が弱くなってしまう。その方法論自体は『花と蛇』で見出したもので間違っていないのだろうけど、仕掛けあればあるほど逆にメロドラマとしての軸の弱さを感じさせてしまう。難しいものだ。
 喜多嶋舞は大いに健闘しているし、「名美」にふさわしく汚辱の中での気高さもよく表現している。でもそのままで村木との物語にするには、まだもうひとつ足りない。

 それでもなおこれは近年の石井隆作品の中では出色の出来であり、結構傑作ではないかと思った。『サンセット大通り』になるところではちょっぴり戦慄さえし た。自作を取り込むメタフィクショナルな構成も好ましく、ほとんど『マルホランド・ドライブ』というか『インランド・エンパイア』のような映画なのだが、リンチにとってのノイズにあたるものが喜多嶋舞のおっぱいなんだから、これはいいに決まっている。『花と蛇2』も悪くないという話なので、今度見てみようと思った。

 実は写真集も買ってしまった…

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2007-09-16

カナザワ映画祭2007 青いオトコの則文祭り

Kanazawa Film Festival 2007 カナザワ映画祭2007〈青いオトコ祭り〉に招かれて行ってきた。14日(金)は前夜祭として金沢城公園で『トラック野郎 望郷一番星』の野外上映。翌15日(土)は『シルクハットの大親分 チョビ髭の熊』、『伊賀野カバ丸』、『堕靡泥の星 美少女狩り』、『大阪ど根性物語 どえらい奴』の四本(最後の『徳川SEX禁止令 色情大名』はパス)。15分休憩でぶっ続け上映というスケジュールはさすがに厳しすぎて疲弊。トークショーの出来も危ぶまれたがなんとかこなす。

 ニュープリントの『堕靡泥の星 美少女狩り』は圧倒的迫力で、これ一本でお腹いっぱいな感じ。残念ながらプリント状態の良くなかった『ちょび髭の熊』はというとギャグも冴え渡った傑作。これはきれいなプリントで見たい。お竜さんの殺陣が『緋牡丹博徒』よりも血なまぐさい感じがした。『どえらい奴』はビデオで見てはいたのだが、スクリーンで見ると全然印象が違う。加藤泰の弟子なんだなあ、とあらためて思わされる佳作。

 いちばん驚いたのは実は『伊賀野カバ丸』で、すっかり忘れていたのだが、ラストの「アクション5番勝負」の最後の一戦、「カーロデオ」って『デスプルーフ』の元ネタではないか! タランティーノ、これ見てるだろ!

 金曜日の前夜祭、天気予報は雨で心配されたのだが、最後まで天候はもって上映は無事大成功。『トラック野郎』は実に野外上映にふさわしい映画だった。あのどこまでも突き抜けて飛んでゆくような野放図な脳天気が野外上映の解放感によく似合う。野外上映ではスクリーンサイズはあまり気にならないということを学んだ。

『望郷一番星』のラスト、札幌へとひた走る桃次郎(菅原文太)をカムチャッカ(梅宮辰夫)指揮下のトラック野郎たちが寄ってたかって助け、バケツリレーで水をまく。「あれこそが人民の海だ!」(則文談)あの場面を見ているうち、われ知らず目頭が熱くなる。なんでこんなに感動的なのだろう? 無私の団結だ。それが映画である。上映のために九時間かけて群馬からやってきた一番星号のオーナー、ボランティアとして上映を手伝っていた北陸のトラック野郎たち、『堕靡泥の星 美少女狩り』のニュープリントのために一万円を寄付してわざわざ北海道から見に来てくれた美女。無名のトラック野郎たちが桃次郎のために汗をかくように、みんなが映画のために身を捧げている。それがこの映画祭でいちばん感動的だったことである。

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2007-09-14

スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ (2007)

Sukiyaki_western__django_rgb 監督:三池崇史 主演:伊藤英明、伊勢谷友介他たくさん 公式サイト

 それで、これを見てしみじみ思ったのは、三池崇史には映画的教養がない。それはもう、ものの見事に何もない。まあそのこと自体は別にハ ンデでもなんでもなくて、三池は映画的教養など必要としない映画しか作らないからだ。だから、これがちっともマカロニ・ウェスタンではないとしても、三池 にマカロニ魂がかけらもなかったとしても、それはしょうがないことなのだろう。

 もうひとつ、しみじみ思うのは三池崇史の才能は徹頭徹尾破壊の才能だということである。構築はできないんだよね。だから三池のコメディ があまりに冴え渡っているにもかかわらず、馴染んだジャンル以外のことをやろうとするととたんに滅茶苦茶になってしまうのもそういうことだ(コメディはどうなんだ……と言われるかもしれないがコメディに必要なのは破 壊の才能なのである)。この映画の場合、無国籍で時代も定かでないSF設定、セリフはすべて英語に……と無意味な破壊は次から次へと繰り出してくるのだ が、ではその舞台での愛と死をいかに構築するか……という部分ではいきなり立ち止まってしまうわけである。

 ギャグに関してはさすがに冴えているところもあって、佐藤浩市が演じている清盛のキャラには悔しいけどちょっと笑ってしまった。「今日から俺はヘンリー だ。ヘンリーと呼べ!」とか。ただこれやってるのが佐藤浩市なんで……ちゃんと芸達者な人が演じてたらもうちょっと面白かったんじゃないのって気がするがね え。

 あとねえ、木村佳乃がねえ。もうほんの、これっぽっちでも色気があれば許せたんだが……この役に脱げない踊れない色気もない女優をキャスティングするのってどういうんだろうなあ。

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2007-09-08

未来予想図 (2007)

出演 松下奈緒、竹財輝之助 監督 蝶野博 公式サイト 10/6公開

 これ何かというと、ドリカムの同名曲にインスパイアされた映画だそうです。映画になるくらいだからすごくヒットした国民的名曲なんだろうけれど、ぼくは知らなかった。映画の中で二回流れたんだけどもう忘れた。

 なんで忘れちまうのかっていうと、歌詞に具体性がないからなのである。たとえに出すのが正しいかどうかよくわからないんだけど(爺さんの言うことだと思って許していただきたい)、ユーミンだって中島みゆきだってつねにシチュエーションを想起させるために具体的な名詞がある。でもそういうものがいっさいなくて「時々二人で開いて見るアルバム/どれくらい同じ時間、二人でいたかしら」てな調子なんだよ。固有のシチュエーションがなくて、ただ抽象的なイメージだけなのだ。

 この具体性の無さは曲だけではないのではないか? たとえば松下奈緒の演じているOLは「編集者になりたい!」って学生時代からの夢をかなえるために、転職しようと面接を受けるのである。
「で、きみは編集者になって何をしたいの?」
「自分の好きなものをみんなに伝えたいと思います」
「きみの好きなものをみんなが好きだとはかぎらないよ? きみは何が好きなの?」
「人の人生ですね」
「人生? どういう意味?」
「夢をもって生きている人の人生は素晴らしいと思うんです」
「ふうん。で、きみの夢はなんなの?」
「…編集者になることです」
 落ちる! こんな奴を採用する編集部はこの世のどこにもありません! オレが面接官でも落とす! しかるに松下奈緒はしっかり試験に合格し、マガジンハウス社でTickleという異常に広告の入っていない女性誌に勤め、毎日パンプスにブランドもののワンピ着て縦ロールの髪で編集者稼業をがんばっちゃうのであります。あ、転職したとたんに学生時代からの恋人を捨てちゃうけど、三十路が近づいてきたらふと思い出して会いに行ったり「もうこんな仕事、やめちゃおうかな……」なんて思ったりなんかして。

 死ね! 今すぐ死ね! この映画に限っては難病解禁!

 なお、監督はこれがデビュー作で、長らく平山秀幸とかの助監督をやっていた人らしい。まあ有能な助監督だったのかもしれないし、監督としてもそんなに無能ではないのかもしれない。でも、この企画を引き受けてる時点で駄目だよね。こんな映画を見て、「俳優の演技は地獄のようだし脚本は白痴だし歌は酷いし、そもそも観客は誰も見に来ないだろう。でも演出だけは良かった」なんて言ってくれる人は絶対にいないので。たとえ念願の本編を取るチャンスだったとしても、企画を断る勇気を持っていただきたい、と思った。そしてぼくには、こんな映画は見に行かない勇気が欲しかった。

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2007-08-29

Life~天国で君に逢えたら (2007)

Family 監督 新城毅彦 主演 大沢たかお、伊東美咲 公式サイト

 実話の映画化でよくあるのが、映画の最後、クレジットのところで本人の写真が出る奴だ。あれを見るとたいてい、まあ映画だから美化されてるよなあ、と思うことになる。『俺は、君のためにこそ死にに行く』みたいなどうしようもない映画だって、ただの食堂のおばさんが岸恵子だ。だいぶ美化されている。それで、この映画の場合、クレジットで本物の飯島夏樹の写真が出たとき、「あ、この人って魅力的な人だったんだろうなあ」と思った。すごくいい顔してるんだよ。同時にそこまで二時間見せられてきた大沢たかおと伊東美咲はなんだったんだという思いに……

まあ伊東美咲の演技があまりに壮絶でね……実際、客もとくに入ってる様子がないわけだが、いったい誰がなんのためにこういう映画を作ってるんだろうなあ。電通様はこの映画を作ってどんだけ儲かったのだろうか。

その後『伝染歌』を見てさらに死亡。伊勢谷の出る映画に凡作なし(それ以下の駄作しかない)の法則は健在だった。

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2007-08-25

〈グラインドハウス〉USAバージョン

Deathproof_003 〈グラインドハウス〉の米国公開版第一回上映を見るため悪の塔ロポンギルズへ向かう。入りはちょぼちょぼ。絶望した!本年ナンバー1の傑作が一週間しか見られないというの百人ほどしか集まらない映画マニアに絶望した!

 まあ木曜日の深夜12時からの上映では人が来ないのもしょうがない。しかし公開初日にみんな集まって大騒ぎ、みたいな習慣ももうなくなってるってことなんだろうね。来ているのは知り合いばかり。別に示し合わせたわけでもないのに来ている鷲津義明とかも含め、半分近くが友人知人だったような気がする。映画の世界は狭いなあというか、タランティーノが閉じてるだけなのか…

 しかし映画は素晴らしかった。『デスプルーフ』は、実は単独公開版(『デスプルーフinグラインドハウス』)とは編集もまったく違っていて、ほとんど別の映画になっている。出来はあきらかに締まった編集になっている〈グラインドハウス〉版の方が上だろう。でもぼくは単独公開版の方が好きだ。タランティーノの女性への優しい(助平な)視線がより強く出ていて、バタフライのキャラがちゃんと立っているからだ。

 ところで『デスプルーフ』については、ぼくのような人間が素晴らしさを語れば語るほど客を遠ざけてしまうのではないかというジレンマを感じずにはいられない。『デスプルーフ』の面白さを語るとなると、どうしてもダッジ・チャレンジャーが出てきたりフィルムに汚しを入れたりFeature Presentationの音楽を聴いただけで泣けてくるというようなフェティッシュな部分を語ってしまうわけだけど、あの映画はそれだけではない。『デスプルーフ』が素晴らしいのはどこか映画の魂に触れてしまっている部分があるからなのだ。驚異のアクションからゾーイ・ベルが箱乗りして「いっけー!」とおたけびをあげ車が走りだす瞬間の高揚、あの場面は何度見ても泣けてしまうのだが、それはなぜなのか。これは決して「フェティッシュな部分もあるが、それだけではなくて映画の魂に触れている」のではなく、「フェティッシュを突き詰めたがゆえに映画の魂に触れてしまった」ということなのだと思う。あくまでもグラインドハウス映画ゆえの感動なのだ。

 グラインドハウス映画の奥底、低予算とひどい演技とやっつけの演出の底には映画の魂が潜んでいる。『キル・ビル』でも一瞬つかみかけていたのだが、今度こそタランティーノは見事それをつかみとって見せたのだ。

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2007-08-19

童貞オールナイト

041031  シネマ・ロサの『童貞。をプロデュース』公開記念〈童貞オールナイト〉に呼ばれてトークする。上映作品中では自然『パンツの穴』について多くを語ることになったんだけど、『アイデン&ティティ』について大事なことを言いそびれてしまった。つまりあの映画が童貞映画なのは、麻生久美子が童貞の考える理想の女性像だ、ということである。公開時も「あんな都合のいい女いるわけない」という批判が散見されたけど、最初からいるわけないんだって! あれは理想化された女性像なのだ。麻生久美子はそういう空っぽな理想像を演じさせたら最高なのであって、オタクの女神様たる麻生久美子のベスト・パフォーマンスだと言える。東の麻生久美子、西のパトリシア・アークェットと言われるゆえんだ。

 それ以外は、『童貞。をプロデュース』における松江くんの童貞へのまなざしの変化(つまり、あの映画は松江くんの成長小説として読むべきなのだ)も指摘したし、まずまず満足のいくトークだったんじゃないかな。朝まで映画を見るという人々と別れ、一人終電で帰宅

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2007-08-18

ヘアスプレー (2007)

Travolta_hairspray  ジョン・ウォーターズの1988年作品がミュージカル舞台になり、その映画化作品。ちなみにぼくはミュージカル舞台は見ていない。10月公開 公式サイト

 映画はというとすっかり今のミュージカルになっていて、歌も踊りも全然レイト・フィフティーズ風じゃなかった。あとカットが細かく、やたらとバストアップとク ローズアップばっかりで、下半身がうつらない。だから全然ステップ踏んでるように見えない。今風のミュージカル映画ってこういうものなのか? ミュージカルというと ミドル・ショットで全身を入れてワンカットで撮るものだろうと思っている老人にはちょっと厳しい。

 そのせいなのか、主役の子も全然踊れてるように見えない。なんだかリッキー・レイクの方が踊れてたような気がした。でも、もちろんそんなはずはない。だって、この子はミュージカル女優なんでしょ? リッキー・レイクは、当時、たんなるタレント志願の小デブちゃんだったわけだし。

 気になったので帰ってからオリジナル版を見直したが、どう見てもオリジナル版の方がちゃんとミュージカルである。リッキー・レイクもちゃんと踊れていた。ジョン・ウォーターズって本当に立派な人だと 思うんだけど、どうしてもカイエ派の人には認めてもらえないね。ぼくの今後の目標は蓮實重彦にジョン・ウォーターズを認めさせることだな。

 全体に真面目で、茶目っけが少なすぎる。おかしかったのはクリストファー・ウォーケンとジョン・トラヴォルタが踊るとこくらいかなあ。ジョン・ ウォーターズ本人の出演には笑ったが、本当にウォーターズにオマージュを捧げるならペニーの母親役をミンク・ストールにやらせるべきではないかとも思った。

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2007-08-14

痴漢電車 びんかん指先案内人 (2007)

Binkan 監督:加藤義一 出演:荒川美姫、なかみつせいじ PGのあらすじ

『痴漢電車 快感!桃尻タッチ』他コメディの快作を連発し、オーピーの若手エース的存在となった加藤義一監督。林由美香がいなくなったあと、ちょっと迷いを感じることが多かったのだが、脚本に城定秀夫を迎えた本作は必見の傑作。舐めるように荒川の局部をアップにする濡れ場のキャメラが素晴らしい。

荒川美姫演じるヒロ子は引っ込み思案の性格と嫌なことを断れない気の弱さのせいで、どんどん転落の人生を歩むことになる。いわば『嫌われ松子の一生』なのだが、その彼女が駄目サラリーマン(なかみつせいじ)に痴漢されてはじめて自分を見出すというお話。風俗で働いても「サービスは真面目にやるが人見知りして愛想がない」ので人気は出なかった……というあたり、『嫌われ松子』にはないリアリズムの力である。

役者は全員好演だが中でも目につくのはサラリーマンの妻を演じる佐々木基子。いつも山崎邦紀作品で快刀乱麻な口上を述べる役ばかり見ていたが、これは無口な、生活に疲れた妻の役。真面目で、ちょっとくたびれた専業主婦で、夫の浮気にもひたすら耐えている。普段は女を封印してるだけど、濡れ場になればちゃんと色気もかもしだす。こういう役に佐々木基子を持ってくるところが抜群。

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2007-08-08

SとMと故郷と里菜子 (2006)

2a96e58es 監督・撮影・編集:松江哲明 出演:平沢里菜子

アップリンク・ファクトリーの〈松江哲明のセキララで嘘つきなドキュメント選集〉にて鑑賞

楽しく見た。楽しくは見たんだが、まあこれは松江くんもわかってると思うんだけど失敗作である。なぜかというと平沢里菜子に出会ったところで終 わってしまうから。松江くんが手練のかぎりを尽くして勝負をかけたら、いきなり相手の手札からエースが三枚出てきて、残り二枚はまだ晒してもいない、みた いな。

いろいろ喋ったんだけど、やっぱりそこで引いて平沢里菜子の登山をドキュメントするだけじゃいけないような気もするんだよな。松江くんには負ける とわかっていてももう一度里菜子山脈登攀に挑戦していただきたい。無事頂上をきわめたとき、そのときこそついに松江くんは童貞スーツを脱ぎ捨てることがで きるだろう。松江くんは「何気楽なこと言ってるんですか!」と文句をいうんだろうけど、やはり登攀に挑戦できる身なんだから登るべき。まあもちろん入山拒否の可能性はあるわけですが。

打ち上げでは松江、平沢、ナヲイらと楽しく飲み、大いに笑う。上映には切通理作さんもいらしてましたが、やはり里菜子ストか。

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2007-08-06

さよならジュピター (1983)

4988102261238 フィルムセンターの〈逝ける映画人を偲んで 2004-2006〉で25年ぶりくらいに再見。

あのころ、ぼくはこの世でいちばんダサイものは日本のSF映画だというくらいだったので、こんな映画が作られること事態が国辱だと思っていたけれど、まあそれからいろいろダメ映画も見尽くしてちょっとやそっとのことでは驚かなくなったし、キャンプなものへの理解も深まったし、最近のSF映画のダメさと来たら底なしだし、今見たら結構見られたりして…と思って行ったが……

…ジュピター教団のダサさだけはガチだった(しかもユーミンの歌が!)。いつ見ようと何度見ようとダメなものはダメだということを再確認しただけであった。いちばん古びてないのがミニチュアワークだったような気がする。

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2007-08-05

狂気の海 (2007)

186354857_116  佐藤佐吉プロデュース『そんな無茶な!』の試写を見る。完成度的には井口昇の第二話「おばあちゃんキス」がダントツ。安定して見られる(まあノ ンケのおばあちゃん同士のレズものを「安定して見られる」ってのは凄い話だが)。インパクト的には真利子哲也監督の「アブコヤワ」が一番か。いやまあどう考えても反則なんですが。

 終わって帰ろうとしたら、ちょうど来ていた中原翔子さんに呼び止められて、高橋洋監督作品『狂気の海』を見てかないか、と誘われる。渡り に船で映画美学校の編集室で作業中の高橋洋氏のところへ殴りこみ、編集中の作品を見せてもらう。いやこれは凄い! 高橋氏の「太平洋の亡霊」への妄執が こんなかたちで炸裂するとは思いもよらなかった。今年見た邦画では『ラザロ』に匹敵する社会派エンターテイメントの傑作である。早く完成品を見たい(9月頭の美学校映画祭で上映予定とのこと)。なお、富士帝国の女王コスプレの中原さんはなかなかに素晴らしく、誰かフィギュアとか作ってくれないかと思った。

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2007-07-17

キース・キャラダインのこと

Photo_altman_bowie  PFFのアルトマン特集。『ボウイ&キーチ』を見に出かけると佐々木浩久監督とばったり。個人的にはアルトマンの中で(『ナッシュビル』を除いて)どれ か一本となると『ボウイ&キーチ』なのだが、それは佐々木監督も同じだったらしい。なぜなんだ? という話になったんだけど、ぼくの理由はわりとはっきり していて、ひとつにはキース・キャラダインが好きだったからである。

 キース・キャラダインのファンになったのは『北国の帝王』を見てからである。え? 『北国の帝王』のキース・キャラダインは脇役ではないのか? そのとおりだ。あの映画を見て、ぼくがしたたか打ちのめされたのは、 「ぼくはリー・マーヴィンではない!」ということだった。ぼくはキース・キャラダイン演じる若造の方だった。わかったような気になって、口だけは 達者な小生意気な若造。最後には河に叩き込まれて「おまえは何もわかってねえ!」と怒鳴られる小僧。あれこそがぼくだ。ぼくはリー・マーヴィンにはなれない世代だっ たのだ。あの中途半端さ、乗り遅れた感じこそが自分のものだった。

 アルトマン映画も、だからキース・キャラダインがいちばん好きだった。キース・キャラダインのあの軽み、ニューシネマ的と言えば言えようが、ニューシネマの自己陶酔した悲劇は一切無縁の軽みが自分にはいちばんぴったり来たのである。久しぶりに見た『ボウイ&キーチ』はやっぱり悲痛なラブストー リーで、でも悲劇になりきれないところがたいへん好ましく、シェリー・デュヴァルのおどおどした感じが実にいい。悲劇になりきれない世代の悲劇という意味で、自分にとっては『地獄の逃避行』と並ぶ一本なのである。

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2007-07-15

そのときは彼によろしく (2007)

 もう何がなんだかよくわかんなくなってきたんで、自分なりに整理してみた

長澤まさみ→『世界の中心で愛を叫ぶ』
山田孝之 →『電車男』
北川景子 →『Dear Friends』
和久井映見→『椿山課長の七日間』
市川拓司(原作)→『いま、会いに行きます』
平川雄一郎(監督)→テレビ
柴咲コウ(主題歌)→『世界の中心で愛を叫ぶ』『黄泉がえり』

 こういうメンバーが集まったところに北野武先生がやってくる。
「今日はみなさんに殺し合いをしてもらいます」
 えー!
「武器は……難病です!」
 というわけで
「うっ……心臓が」
「ああっバイクが事故った!」
「ボ、ボク…水草がす、好きなんです」
「人と人とは物理の教科書には出てこない強い力で結びあっているんだよ」
 てな調子で人がバタバタと死んでいく。恐ろしい世界だ。

 中でも最強の武器を持ってるのはもちろん長澤まさみで、この人は「眠ったらそのまま目覚めない」という奇病にかかっているのだ。眠り姫かよ! だからいつもシャブをキメてギンギン。「眠るな! 眠ったら死ぬぞ!」

 まあどうせファンタジーだからなんでもいいんですよ。映画が終わって灯りがつくと場内はハンカチを手に「こんなに泣けるとは思わなかった……」と言い合う女子だらけでした。早く関東大震災が起きてみんな死んでしまえばいい、と思いました。でも、どうせすぐ黄泉がえってくるんだけどね!

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2007-07-12

思い出がいっぱい(「美少女図鑑 汚された制服」) (2004)

Omoide02 監督:竹洞哲也 脚本:小松公典 出演:吉沢明歩

ポレポレ東中野 R18 Love Cinema Showcase vol.3にて鑑賞

 2004年の林由美香出演作。これは傑作だった。ヒロインである吉沢明歩の濡れ場を最後まで引っ張って溜めに溜めるんだけど、そこまで濡れ場を引っ張るのがもっぱら林由美香嬢。言ってしまえばただの濡れ場要員なのだが、そこでエロ映画的魅力を存分に発揮して映画をダレさせない。ラストのラブシーンも気持ちが入ってなかなか泣かせる。

 もう一本、『恋味うどん(悩殺若女将 色っぽい腰つき)』も再見。最初に見たときは「『短距離TOBI-UO(ホテトル嬢 癒しの手ほどき)』の方がいいかな?」と思ったのだが、再見してだいぶ印象が変わった。いや、これはうまい。なかみつせいじと吉沢明歩の濡れ場を引っ張るために繰り出す手練手管には感服した。正しく大船調の映画だなあ。女優陣では下着姿でストリップダンスを踊る倖田李梨がスタイルも良くてとっても格好いい。昼間グラインドハウスのイベントをやったせいもあり、「グラインドハウスっぽくていいなあ……」と見惚れてしまった。

 気になったのは舞台挨拶で、ああいう斜に構えたようなトークはもう本当にやめませんか? ピンク大賞でならそれでもいいんだろうけど、せっかく一般観客にアピールするチャンスなんだから、正攻法できちんと訴えて欲しいね。それだけの力はある映画だったと思うし。

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2007-07-07

舞妓Haaaan!!! (2007)

監督水田伸生 脚本宮藤官九郎 公式サイト

 予告を見たときには死んでも見たくない映画の一本だったんだけど、某筋から強く勧められたこともあり見に行った。驚いたことに楽しかった。いやマジで。途中、球団をはじめるあたりはマジで傑作かも!?と思ったんだが、どうもその後がよろしくない。クドカンって毎回そうなんだけど、これも話のまとめ方を間違ってる気がする。きっちり伏線を回収して落とす能力があれば最強なんだがなあ。クドカンさんには黄金期ハリウッド映画の脚本を分析してみることをお勧めする。

 これ、無責任シリーズをイメージして作られてるんだな。だからこれが植木等の遺作だというのは、ある意味正しいことだったのではないかと思う。ともあれ、真矢みきが歌って踊るミュージカルシーンは素晴らしいので殊能将之さんにはお勧め。

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2007-06-26

林由美香三周忌


  Yumika Hayashi resting 
  Originally uploaded by Garth Yanashita.

 林由美香さんが死んだのは2005年6月26日、二年前の今日だ。今日は由美香さんの三周忌である。はるばる西高島平のお墓まで行ってご挨拶してきた。

シネロマン池袋林由美香三周忌特集を見る。『変態オヤジ 四十路熟女の色下着』(05)、『裏の後家さん 張<バイブ>形に夢中!』(04)、『飼育のレズ部屋 熟れすぎた恭子』(04)の三本。エクセスの後期作品なので、どれも林由美香の代表作とは言えない。二番手、三番手の助演格である。

 林由美香が二番手、三番手で助演している作品の問題点というのは、つまり、どう見てもライバルor濡れ場要員として登場する林由美香の方がヒロインより若々しく、美人で、可愛らしいので、「普通そっちに転ぶだろ!」と思ってしまうところにある。今回の三本で、それがいちばん顕著なのは