2010-12-17

異形の愛

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 茅場町・MAREBITOに〈阿部一徳のちょっといい話してあげる〉を聞きに行く。ク・ナウカの阿部一徳のソロプロジェクトで、文学作品を語り下ろすというもの。実はこのレパートリーの中にキャサリン・ダンの『異形の愛』があるというので、以前から一度見てみたいと思っていたのだ。

『異形の愛』は「フリークス版『ホテル・ニューハンプシャー』」とも言われた史上最強のフリーク家族小説で、ぼくの翻訳の中でも最高傑作のひとつだと思っている。今はなきペヨトル工房から出版された。そう、『村崎百郎の本』にも書いたとおり、村崎=黒田一郎くんの担当編集本であり、ぼくも彼もこよなく愛した一冊だった。すでに絶版になって久しいが、こうして忘れずに朗読劇で再演してくれる人もいる。

 長大な原作を二時間弱の語りにまとめなければならないので、いろいろはしょられている部分も多く、双子やチックの話が短くなってしまったのはちょっと残念。でも阿部氏が朗々と語るアーティの説教は迫力だった。オレの翻訳も悪くないじゃん、と思いながらもちょっと赤入れたくなっちゃったりして。最後は他人事のように普通に感動していた。今回の公演は三回とも完売らしいけれど、人気ネタだということなので再演の機会もあるでしょう。その際にはみなさま是非足をおはこびください。

 ちなみに入場チケットは薔薇の押し花。素敵なオマージュだ。

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2010-04-15

『忍びの卍』ニュープリント寄付のお願い(終了)

 鈴木則文監督の初の著書『トラック野郎風雲録』が5月末、国書刊行会より刊行されます。これを記念して池袋新文芸坐にて「鈴木則文映画まつり 『トラック野郎』全10作上映!」を開催さしていただくことになりました(5月15日~24日。29日にオールナイト)。この中で上映予定の『忍びの卍』は原作山田風太郎+監督鈴木則文という垂涎の組み合わせにもかかわらずプリントが存在せず、ビデオもDVDも出ていない幻の作品です。

 この作品を今回上映する為に、シネマヴェーラの上映で『すいばれ一家』のニュープリントを焼いたのに続き、またしても有志の寄付をつのってニュープリントを焼こうということになりました。今回は国書刊行会の樽本さんが音頭をとってくれておりますので、国書刊行会主催になります。

 今回は一口5000円で40口を目標に募集しています。例によって寄付によってもプリントにはいっさい権利は生じません。新文芸坐から招待券が一枚出ますが、それだけです。その旨をご理解の上、それでもご協力ねがえるという方は、是非ご寄付をお願いしたいと思います。

 たいへん申し訳ありませんが、ご協力いただける方はお名前・ご住所を明記の上、直接、tarumoto1@gmail.comまでご連絡ください。みなさまのご支援を期待しております。

(4/18追記 期日を前にして、寄付がほぼ目標に達しましたので、募集をしめきらせていただきます。本当にありがとうございました。では文芸坐でお会いしましょう!)

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2009-09-21

遠藤賢司 「第二回純音楽祭り」@Club Quatro

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 どうもこのところくさくさしているので、こういうときはエンケンだ!と活を入れてもらいに出かける。渋谷は秋祭りで、御輿も出て、いかにもエンケンにふさわしい祭りの雰囲気。二日連続だが前日はアコースティックで今日はエンケンバンド。ここはバンドだろうやっぱり! 最初はエンケンの弾き語りで「夜汽車のブルース」から。エンケン曰く「『二十世紀少年 完結編』見た?  あれは日本映画史に残る作品だと思うね! 特にマタギの人が…」 まあエンケン映画史には残るかもしれない。『ヘリウッド』の次くらいにね!

 ゲストはZAZEN BOYSと頭脳警察。頭脳警察は三人編成でメロウな曲中心なんだが、これがたいそういい。だがそれより、最初にTOSHIが出てきたときあまりに普通に老人なんでびっくりしてしてしまった。いやプレイは昔のままなんだが、見た目が完全にただの老人。まあエンケンの若さが異常なんだけどね。最近エンケンがバンドじゃなくてソロ中心なのはTOSHIの体力問題があるんじゃないか!?などとなかば本気で考えてしまった。

 ひさびさに聴く遠藤賢司バンドはやっぱり最高。アラカンの人に元気もらってるようじゃいけないわけだが、エンケンもデビュー四十周年。いきなり「不滅の男」で燃える。アンコールはもちろんお祭りだから「東京ワッショイ」。全員登場してワッショイの大盛り上がりのあと、エンケン一人のアコースティックで「夢よ叫べ」。

 新譜を買い、エンケンにサインをもらう。あと四十年はやってほしいね。

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2009-07-18

No.1 in Heaven

 高田馬場のステレオタイプ事務所に出かけて、安田理央責任編集のSUPER INDEPENDENT ADULT DVD MAGAZINE(自主製作エロDVD)「No1 in HEAVEN」Vol.1を受け取る。

 安田理央さんがtumblrに触発されて発作的に作りはじめたというエロDVDマガジンである。ぼくも「柳下毅一郎と『ヱヴァンゲリヲン破』を観に行って、飲み屋で感想を聞く」という企画で協力している。エロ雑誌のモノクロページ、というか文化人枠。思い立ったが吉日という勢いでほんの二週間で作ってしまったというだけあって、実に熱っぽくて楽しいビデオである。安田さんが実に楽しそうに作っているのだが、その楽しさはしっかり画面にあらわれている。

 この楽しいビデオを見ていて、いちばん思ったのは、ぼくらの好きな「おもしろいエロ」--それはかつての平野勝之やバクシーシ山下のAVだったり、SODが作ってる馬鹿企画AVだったり、HMJMの自主製作AVだったりする--は、たぶん「AV」というジャンルに属すべきものではないのかもしれないということだった。今、そういう「おもしろいエロ」は売れないものとしてAVの世界からは排除されてしまっている。でも、それは決して求める人がいないということではないと思うのだ。

 そうした作品の困難は、AVの流通回路によって売られてしまっていることそのものにあるのではなかろうか。AVショップに行って平野の作品を買うのは、いろんな意味で難しい。AVショップに入るのも大変だし、そこで面白いエロを選ぶのも困難だ。でも、あるいはAVでもないし、一般映画でもない、もうひとつの流通回路があれば、こうした作品のファン、ちゃんとお金を払って見たいと思っている人のところに届けることも可能なのかもしれない。No.1 in Heavenも、そんな回路を作ろうとする試みではなかろうか、などと思ったのである。

 ところで"SUPER INDEPENDENT"とあるのは伊達や酔狂ではなくて、これ本当に一枚ずつ安田さんが手焼きして作っている。それも古いDVDレコーダーだもんで、一枚焼くのに一時間くらいかかる(笑)。ぼくは事務所で二時間ほどくっちゃべっていたが、その間に二枚しか完成しなかった。そういうわけなんで、欲しいと思っている人は積極的に攻めの姿勢で買い求めにいかないと、「どうせタコシェに入るからいいだろ……」みたいな態度だといつ入手できるかわからないよ!

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2009-07-05

遠藤賢司 純音楽の友@吉祥寺スターパインズ・カフェ

 最近、何につけてもいつまで見られるのかわからないんだから見られるときに見ておかなければならない、と思わされることが多いので、とりあえず見ておきたいものがあったら何をうっちゃっても行くことにしている。そんなひとつがエンケン。今日は「純音楽の友」。ゲストはあがた森魚。一曲目が『史上最長寿のロックンローラー』で、もうこの時点でやられている。

 あがた森魚は『赤色エレジー』をはじめ数曲。オレの中では『女番長ゲリラ』のときのとっつぁん坊や的イメージが抜けないので、どうも不思議な感じ。エンケンと並ぶとよけいにそうだ。エンケンがあまりに老けないからね。40年前、二人が最初に出会ったときの話が面白かった。北海道から上京してきて悶々としていたあがた青年は、ある日、電柱に貼られた「ロックはバリケードを目指す」というライブのビラを見つける。出演者は「早川義夫、遠藤賢司、ばれんたいん・ぶるーほか」会場はお茶の水の全電通ホール……て今SFセミナーの会場になってるとこじゃないか!
 早川義夫には「なんじゃこりゃ?」という感想だったあがた青年だが、ステージに座り込んでギターを奏でるエンケンにはいたく感銘を受けたらしい。で、トイレに立ったらたまたまそこにエンケンがいたので、連れションしながら「あんた、なかなかいいなあ!」と激励したのがなれそめ(ここはアシモフに「なってねえなあ!」と声をかけるハーラン・エリスンの声色で読んでください)。

 その後レコーディングが終わったばかりという新譜『君にふにゃふにゃ』から何曲か。ラブソングがメインのアルバムらしくて、どれもたいへんいい感じ。『とても言えないこんな夢』は「由利徹に捧げる曲なんだ…かっこいいよね、あの人」で、とても可愛いラブ・ソング。やっぱりエンケンはいいなあ。

 アンコールで「みんな、ちゃんとしてたよね」と言う。

 清志郎もさ…マイケルも…前、野音で二人とも金色のブーツはいてたことがあったんだ。顔見合わせて照れ笑いしたっけ…マイケルの最後のビデオってやってたよね? てっきりヘロヘロなんだろうと思ったけど、ちゃんとやってたんでびっくりした。やっぱりみんなちゃんとやってたんだよ。ダンスが好きで、歌うのが好きでさ…痛かったろうと思うんだよ、でもやっぱり歌が好きだったからちゃんと歌うんだよね…オレもちゃんとやんなきゃと思ったんだ…

 曲は『夢よ叫べ』。泣いた。

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2008-08-26

〈津山三十人殺し〉幻視行

Tsuyamajashuumini  ザムザ阿佐ヶ谷に月蝕歌劇団公演を見に行く。題して「〈津山三十人殺し〉幻視行」! 都井睦雄ブームはおさまらず、ついに高取英まで参入したというわけだ。音楽はもちろんJ・A・シーザー。

 物語はいきなり鬼となった睦雄(胸のナショナルランプは再現されていたが、頭の懐中電灯は天井向き)が虐殺をはじめるところから。村人を殺し尽くそうとする睦雄の前に三人の男があらわれ、「おまえのあこがれの人に会わせてやろう」と持ちかける。「あこがれの人」それは阿部定で あった。

 阿部定と都井睦雄を結びつけた芝居は実は前にもあった。燐光群の『阿部定と睦夫』 である。高取英もこれを見ているのではなかろうか。ただ、もちろん月蝕だけにここからの展開はまるっきりオリジナルで、なんとその三人は睦雄の書いた小説の登場人物であったことが判明する。さらに睦雄の驚異の戦闘力に目をつけた大日本帝国陸軍もスカウトに…

 なかなかおもしろうございました。高取英っていつの間にか時代に追いついていたのかなあ、とかやくたいもない感想を抱いた(ていうか、時代の方が「月蝕」的なものに近づいたのかな) 。ちなみにいちばんびっくりしたのは「おばやん」役が佐倉萌だったことである。

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2007-05-06

ヴェネツィア激震!

17469778_213s_1  新宿レッドクロスドラびでおpresentsヴェネツァ・ヴィエンナーレ プレコンサート。
今年度のヴェネツィアビエンナーレに招待された日本人アーテスト5名

 ドラびでお、山川冬樹、MASH、Optrum!)!)の四組が出演。個人的にはドラびでおが興 味の中心だったんだけど、アヴァンギャルド・ホーメイ歌手という山川冬樹がたいへん格好良かった。胸にピックアップをつけて鼓動を拾い、そのリズム に合わせて電球を明滅させる仕組みを作ってるんだけど、その状態で歌ったりギターをノイジーにかき鳴らしたりしながら、心拍を自在にコントロールして見せ るわけ。

 Optrum!)!)は蛍光灯をギターみたいに抱えて弾いてみせるノイズ・バンドで、これも良かったんだけど、なんかビデオで見た方が効果的なんじゃないか?と思える部分があり、いささか考える。 つまり、人間の目はたいへん性能がいいので、蛍光灯がつくとすべてがありありと見えてしまうのである(一方、ビデオ画面だとまるで光の棒を抱えているように見える)。とりあえず、ビデオがあったら見てみたいね。

 ヴェネツィアではほぼ同じようなセットでやるようですな。

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