アテナイ人の行政組織と慣習
高橋源一郎×SEALDsの『民主主義ってなんだ?』という本を読んだ。国会前に集まっている学生たちの主張が聞ける本で、なかなか興味深いものだった。これ読むと、少なくとも彼らはものすごくものを考えてることがよくわかる。ほとんどの批判者はここまで考えてないよね。もうちょっと応援していきたい、という気にはなる。
だが、ぼくがこの本を読んでいて気になったのは、まったく別な部分である。この中で、高橋源一郎が、古代ギリシアの直接民主制について語っている。アテナイの民会では
「いわゆる憲法はなかったんだけど、基本法みたいなものはあった。だから、提出した議案がその基本法から外れていると認定されたら、裁判にかけられる。民衆裁判所という所に送られて、最高で死刑。つまり、議案を出すとき真剣にやらないと死刑になっちゃう。違憲の法案を提出したら古代ギリシアじゃ死刑(笑)。
(中略)
民会は国会だけれども、いわゆる行政を専門とする人たちがつくる政府はない……では役人とか官僚とか、そういう行政を担当する人間はどうするか。これは有名だけど、くじ引きなんだよね。すべてのアテナイの市民にその可能性があって、その上でざっくり資格審査がある。そしてものすごい数の有資格者の中からくじ引きで選んで、任期も一年でおしまい。なぜかというと、金や接待による癒着を防ぐため」
え、これってカミロイ人ではないか! カミロイ人というのはR・A・ラファティの「カミロイ人の初等教育」「カミロイ人の行政組織と慣習」(『九百人のお祖母さん』)所収)に登場する宇宙人たちである。
「一般世論が愚劣と認めた法律に、三つまで名を連ねた公民は、一年間公民権を失うの。二度公民権を失ったものは切断の刑にあい、三度目には殺される。この規制は行き過ぎじゃないわ。それまでに、その公民は九つの愚劣な法律に関係しているわけだもの。それだけでもう充分でしょう?」
--「カミロイ人の行政組織と慣習」
カミロイ星というのはアテナイのことだったのか! ラファティのことだから、これはたぶん知ってて書いたんだろうなあ。ひとつ利口になった。
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