Fashion Beast
なんとアラン・ムーア&マルコム・マクラーレン作!というFashion Beastだが、これはなかなかに奇妙な経緯をたどって世に出ることになった。もともとはムーアがマクラーレンに誘われて映画企画に参加、二人の原案でムーアが脚本を書いた。当然のことながらこの企画は頓挫し、脚本もどこかへ消えてしまった。ところが最近になってその脚本が浮上。ムーア自身はほとんど興味をなくしていたのだが、コミックへの脚色は拒まなかった(たぶん税金問題とかそのへん)…というわけでムーアの脚本がアントニー・ジョンソン&ファカンド・ペルシオによるコミカライズとして帰ってきたわけである。本当はムーアの脚本を読みたかったんだけど、これでもまあ、だいぶ感じはつかめる。
舞台はひきこもりの天才ファッション・デザイナー、セレスティーヌが君臨する「館」。誰も姿を見たことのないセレスティーヌは暴君として君臨し、その意志を伝えるのは双子の老婆。フリークだらけのファッションの館に、クラブのクローク係をクビにされた“ドール”が単身乗りこんで…
閉じた話である。登場人物はドールとセレスティーヌ、下働きの少年など片手で数えられるほど。現在ムーアが製作中のJimmy's End Cycleを見ていても思うのだが、ムーアが映画脚本を書くと急に世界が閉じてしまう。コミック脚本のときはむしろ遠心的に広がっていくので、この違いは興味深い。たぶん映画の限界(予算の限界)をわかっているのと、ちゃんとたためない風呂敷は広げないという性格の問題なんだろうな。なお、主人公を「男の子のように見える女の子と、女の子に見える男にしよう」と提案したのはマクラーレンだとのこと。
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