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2013-11-01

ウォーターズとキューブリック

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 ジョン・ウォーターズのエッセイ集『クラックポット』に「恥ずかしい娯しみ」という章がある。おおっぴらには言えないが実は愛している芸術映画について書いた項目だ。で、ファスビンダーとかイングマル・ベルイマンとかロベール・ブレッソンとか当然の面子に混ざって、一本だけ聞いたことのない映画が入っていた。

「八月の冷たい風」(一九六一、アレグザンダー・シンガー、日本未公開)  ぼくの覚えている最初のカルト映画。『八月の冷たい風』は、アメリカ以外ではカルト的な地位にたてまつられていないかもしれない。だが、ぼくの育ったボルチモアでは、それはしょっちゅう上映されていた。名画座で入りの悪い映画が出たりすると、劇場側はそれとばかりに引っぱりだし、再上映するのだ。最近では『ハロルドとモード』が、似たような待遇を受けている。

 これを読んだっきり、どんな映画か気にはなっていたんだが、監督もスターも聞いたことないし、そのまま放置していつしか忘れてしまったのである。ところが先日、スタンリー・キューブリックの評伝を読んでいて、ふとこの名前に出くわした。

(アレクサンダー・)シンガーは芸術映画にのめり込むようになり、エイゼンシュテイン、プドフキンや初期のドイツ人映画作家の作品、フランスの実験映画によく使われていたシュルレアリズムなどを発見した(中略) 「僕はキューブリックにこういったものを見せて回った。彼にとって僕は数々のことを発見するきっかけを与えた人間だろうな……『アレクサンドル・ネフスキー』(一九三八年)に連れていったときのことだ。水上の戦いのシーンで流れたプロコフィエフのBGMが忘れられなかったらしく、サウンドトラックを買って妹バーバラの気がふれそうになるまで聞き続けたらしい」(『映画監督スタンリー・キューブリック』ヴィンセント・ロブロット)

 キューブリックに映画を教えた高校の先輩というのがシンガーだったのだ。よくわからないがジョン・ウォーターズとキューブリックがつながった!気になったので探すとMGMのオンデマンドDVDで売っているのを発見、さっそく取り寄せて見た。映画はすばらしく面白い、早すぎたニューヨーク・インディーズ。セックス・シーンがものすごく濃厚で、まあそのせいでカルト映画になったんだろうね。


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