The League of Extraordinary Gentlemen: Century #3 2009
アラン・ムーア/ケヴィン・オニールのLeague of Extraordinary Gentlemenシリーズがついに完結。第三部Centuryは三分冊で、20世紀における「リーグ」たちの冒険をたどる。とはいえ、時代を経るうちにメンバーは一人欠け、二人欠けして、最後まで残ったのはミナ・ハーカーとアラン・クォーターメイン、それにオーランドーの三人のみとなってしまった。前巻1969ではカウンターカルチャー華やかなりしスウィンギング・ロンドンが舞台になったが、時代はついに現代にいたって2009年。
前巻のラスト、ハイド・パークのコンサートで錯乱したミナは精神病院に放り込まれてしまう。彼女を見失い、絶望したアラン・クォーターメインはドラッグに耽溺し、オーランドーは刺激を求めて戦争に出かけてしまう……それから40年が過ぎた。イラク戦争で殺戮機械と化したオーランドーは勲章を手に一人英国に戻ってくる。突然、彼の前にプロスペローがあらわれる。「リーグ」は任務に失敗し、反キリストはすでに誕生してしまった。なんとしても反キリストを見つけ出さなければならない。40年ぶりにオーランドーに救い出されたミナは思い出す。ハイド・パークでロック・スターに乗り移ろうとして失敗したオリヴァー・ハッドは「イギリスの北の方の学校で魔術を教えている」という若い男に憑依したではないか。というわけでミナとオーランドーはキングズ・クロス駅から魔法の機関車に乗って例のあの学校に出かけるのだが、そこは見るも無惨な……
三部作の完結編なのだが、物語は暗く、ヒーローたちはこれまで以上に弱い。ミナは精神病院で薬漬けだし、アランはドラッグ中毒のホームレスになっている。ミナは現実世界の荒廃は荒れ果てた魔法世界に反映しているのではないかと考える。あるいはその逆も成り立つのではないか?つまり荒廃した想像力は、現実をも貧しくしているのではないだろうか?
これはアラン・ムーア自身の声のようにも思われる。フィクション世界はあまりに凡庸でつまらぬものになってしまった、とムーアは述懐する。これまで以上にペシミスティックなストーリーからは、ムーアの厭世観を感じずにいられない。こんな凡庸な現代に、ヒーローたちの生きる場所はあるのだろうか?
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