源氏物語 千年の謎 (2011)
監督:鶴橋康夫 出演:中谷美紀、生田斗真 公式サイト
冒頭、夜の神社を紫式部(中谷美紀)が一人で歩いている。と、向こうから貴族の男が一人あらわれる。顔色を変え、慌てて逃げる紫式部。男は走って追いかけ、十二単のすそを踏んづけて式部をとらえる。花畑でバックから荒々しく紫式部を犯す男。男は言う。「オレは何をやっても許されるのだよ、この世をあまねく照らす光だからな。いつか、おまえの書く男と女の物語を読んでみたいものよ」
その男とは藤原道長、我が世を欠けることなき満月にたとえる男であった。
このオープニングを見ながら、ぼくの心をよぎっていた思いはとうてい筆舌に尽くしがたいのだが、あえて一言にすれば「道長アオカンしない」であった。いや、最近の考古学の進歩で道長は実はアオカンしていたというのが証明されたのかもしれない。ともかく以後、藤原道長(東山紀之)はと言えば「おまえの胸であったまりたいのうウヒヒ」などとナベジュンも顔負けのセクハラ攻撃。華麗にかわす紫式部だが、あの一夜が忘れられず、その思いは作中、思い人に受け入れられぬ六条御息所に注ぎこまれてしまう。「あの女は不吉です。殿を滅ぼしまぞ」との安倍晴明(窪塚洋介)の忠告も聞き入れず、ますます年増女にのめりこんでいくヒガシ……!
映画は同人誌執筆中の腐女子みたいな中谷美紀の日常と、『源氏物語』の劇中劇とが交互に進む構成になっているのだが、劇中劇は紫式部の怨念が塗り込また六条御息所(田中麗奈)が主役ではないかと思ってしまうようなホラー展開。葵の上をたびたび襲う御息所の生き霊。加持祈祷も効かず、苦しむ中に颯爽とあられた安倍晴明が印を切って霊を祓い……!?
またしても、粗筋を語っているだけなのに誰にも信じてもらえない映画を見てしまった。ちなみにタイトルにある「千年の謎」とは冒頭の字幕でも煽られる「なぜ紫式部は源氏物語を書いたのか? それが最大の謎である」なのだが、映画ではアオカンの次のシーンで藤原道長が紫式部に「天皇に受ける物語を書け! そんでもって天皇が続き読みたさで彰子のところに足繁く通ってくるようになれば世継ぎができてオレの天下だ!」と命令するので、十分で千年の謎は解けた。
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