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2011-11-14

The Inner Man

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 ジョン・バクスターはもともとSF作家で、テッド・カーネル時代のNew Worldsにも寄稿していたらしい。作家としてはいまいち芽が出なかったのだが、その後映画評論家として有名になり、キューブリックやスピルバーグの評伝を書いたりしている。ビブリオフィルとしても有名で、「ある愛書狂の告白」ってビブリオフィル日記も翻訳されている。バクスターはバラードのファンだったので、バラード関係の書物も収集するようになる。その中には『クラッシュ』のオリジナル原稿などもあった。そういうわけで、当然のことながら、バクスターはバラードの評伝を執筆することになったのだ。

 ある意味、これはぼくが読みたかったゴシップ満載の伝記である。バラードの女性関係もすべて暴露されており、ご丁寧にお相手の写真まで載っている。ちなみに名指しされているのはジョン・ブラナーの妻マージョリー、パメラ・ゾリーン、ジュディス・メリルら。エマ・テナントがスラデックとマイケル・ムアコックの恋人だったとか、かなり凄いことがいろいろ書いてある。スラデックとディッシュのニューウェーヴ青春期とか、読んでみたかった。そこらへんのことが書かれた回想録ってないのかなあ。ムアコックには自伝的なものはないのだろうか。

 バラードは性的にはサディストであり、親友といえる存在はムアコックくらいしかいない孤独な人間だったとされる。『クラッシュ』のオリジナル原稿が現在のものより三割ほど長く、ケープの編集者によって削られたとか、なかなか興味深い記述も多い。ただ、全体としてはエピソードの羅列になってしまっている感は強い。最終的に作品の内実にまでは踏み込めていないのではないか。バラードがどんな作家だったか、と問われて「広告代理店出身なんでコピーがうまかった。メディア・スターのベストセラー作家になりたかった」というのはやはり違うと思わざるを得ない。シュルレアリスト作家としてのデビューから内宇宙、濃縮小説時代、そしてテクノロジカル・ランドスケープとバラードの主張は移り変わっていくのだけれど、最終的には実存主義作家としての位置に落ち着くのではないか。そんなことを考えさせられる本だった。

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