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2011-06-12

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監督:山下敦弘 脚本:向井康介 出演:妻夫木聡、松山ケンイチ 公式サイト

 川本三郎の自伝的エッセイの映画化で、東都ジャーナル(朝日ジャーナル)編集者だった妻夫木くんが松ケン演じる革命家の男にまきこまれて運命を狂わせていく…というお話。丁寧な作りで、なかなか好感が持てる映画である。ただ、二時間半近い上映時間はあまりに長い。見ていて違和感があったのが、松ケンたち革命家集団のアジトでの生活が描かれるところで、それまで一貫して妻夫木視点で来てるのに、なんでいきなり妻夫木くんが見てもいないことが描かれるのかなあ……原作どうなっているのだろう?とひどく疑問だったのである。てかむしろこの場面ない方がよくね?

 と思っていたら、これは原作にはなくて、映画オリジナルの描写なんだな。これには考えさせられてしまった……ぼくがこの映画を見ながら思っていたのは、まさしく 公式サイトで脚本家が語っている「梅山の原型になったKという人物の背景は描かない。赤邦軍も描かない。新聞社と、そこへたまにやってくる青年の話にしようと思ったんですね。原作を90分くらいにまとめるのは、方法論としていいんじゃないかと」という映画だったのだ。脚本家は「腕がなくてまとめられなかった」と言うんだけど。

でも、ぼくの思うに、それを作れなかったのは、能力とかそういう問題ではなく、梅山(松ケン)に妻夫木くんが思い入れてしまうのが理解できなかったからじゃないのだろうか。ネタバレとして書いてしまうと、これは朝霞自衛隊員刺殺事件の話である。今の視点で見ると、松ケンはただのテロリスト、殺人者でしかなく、なんで妻夫木くんが必死で松ケンを守ろうとするのか理解できないだろう。でも、これは連赤事件の前の出来事なのだ。暴力革命路線にもある程度のリアリティはあった。いや、少なくとも妻夫木くんはそれを信じていたのだと思う。でも、その思いは今の観客には共有されないかもしれない。だから松ケンの方の話を作りたくなるのだろう。でも、それはやっぱり蛇足なんだ。

 あと、映画が長くなってしまうのは山下監督の演出手法のせいもあって、長回しで俳優の芝居をじっくり撮ろうとするんで、どうしても切れない。しかも芝居どころを作りたくなる。アジトの場面とか、まさしく芝居どころなのである。だから俳優にとってはいい監督なんだろうというのはよくわかる。松ケンが出来る子だっていうのはわかってたけど、妻夫木くんもすごく良かった。ほぼベスト・アクトと言ってもいいんじゃないか(ただし松ケンは完全なサイコパスとして造形されてると思うので、「これで本物になれるんだ」みたいなセリフは不要)。

 そういうわけで、いろいろ構造的な問題を感じてしまう映画だったよ。

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コメント

妻夫木くんはこの映画のイベントでTV局主導の映画製作について苦言を
呈してましたね。

バッドムービーアミーゴスに加入させてもよいのでは!?

投稿: aa | 2011-06-12 02:00

先週観てきました。
悪くはないが長い…って感じでした。

妻夫木くん、よかったですよね。
大根主役役者(褒めてます)だと思ってましたが、ちょっと見直しました。
個人的に松ケン(の役?)は全然魅力がなかったですが。
忽那汐里が無茶苦茶上手くてびっくりしました。

投稿: szk | 2011-06-12 16:44

はじめまして。私は庵野さんの作品を見て自分自身のことだとわかりました。自分がとても大きな力を持っていることも。みんな私の力で幸せになっていってます。今頃になってすごい力なのだということがわかりました。
庵野さんに伝えてほしいのです。すみません!

投稿: 恵里 | 2011-06-16 18:20

上の方がおっしゃっている意味がまったく分かりません。
誰か分かる方、教えてください。

投稿: 四月 | 2011-06-26 08:23

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