ランウェイ☆ビート (2011)
監督:大谷健太郎(『NANA』) 脚本:高橋泉(『ソラニン』) 出演:瀬戸康史、桜庭ななみ、IMALU 公式サイト
ある意味完璧な布陣。ここまで地雷臭がただよう映画もそうはない。当然見に行ったよ。オレは『ハート・ロッカー』だからな!(と言ったら「『ランウェイ☆ビート』は誰がどう見たって地雷なんだから、それはカンボジア国境の地雷原に特攻するような行為で、誰の役にも立たない」と意見されてしまった。やっぱりただのアドレナリンジャンキーだったのか!)
メイ(桜庭ななみ)は月島商店街の床屋の娘。漫然と月島高校に通い、クラスの女王様的存在であるカリスマモデルミキティの元ヒッキーのダブリ高校生ワンダ(犬田という名前なのでこういう渾名)へのイジメを傍観しているのだが、そこに腰にスカートを巻いたメトロセクシャルなビート(溝呂木美糸という名前……てかDQNネーム!)が転校してくる。ビートの指導で韓流っぽいイケメンに変身したワンダにミキティはいきなりデレはじめる。「ちょっとの勇気があれば、人は変われるんだ……」とクラスみんなで団結し、ファッションショーを開くことになるのだった……
まあそういうわけなんで、母の死に目に会えなかった父親! 白血病の幼なじみ! 引き籠もりが実はコンピュータの天才! 学校の廃校が決定! 盗作疑惑! といった誰でも想像できる要素がてんこ盛り。ビートは元天才デザイナーでアパレル界のカリスマである田辺誠一の息子なのだが、母親が死んだときに病室に付き添わず自分のショーの指揮をとっていたことで父を恨んでいる。だが最後には仲間とやるファッションショーのために幼なじみの手術をほっぽりだしてしまうビート。手術がうまく行ったからいいようなものの、やってることは父親と一緒だから!
何よりもヤバイのは父親の会社のチーフ・デザイナーをつとめる吉瀬美智子。やもめの田辺誠一にかいがいしく尽くしていたのだが、ビートのデザインを見て「あなたのデザインを最初に見たときみたいなときめきを感じたんです!」とか言いだし、ビートのファッションショーに協力する。どう見ても三十路女が若い男に乗り換えるの図で、ビートくんと並ぶとマダムとツバメにしか見えないのだった。
IMALUはもんじゃ屋の跡取り娘で女子高生DJ。庶民風なところは合ってるんだが、問題はラストのファッションショーで、なぜかモデル体型勢揃いのクラスの中で、ビートくんデザインの服を着るといろんな意味で涙が………この話、「ほんの少し勇気があれば、自分は変えられる。世界だって変えられる」というのがテーマらしい。ワンダは大学に進んでカリスマモデルの彼女もゲット、ビートはロンドンでのファッションショーに向けて足踏みミシンを漕ぐ日々(デザイナーってそういうもんなのか?)でめでたしめでたしなのだが、問題は語り手のヒロイン。結局高校を出て就職もせず家事手伝いって、おまえはビートとの出会いで何も学んでないのかー!
だが、オレがいちばん戦慄したのはそのどれでもなく原作者原田マハである。『カフーを待ちわびて』で第一回日本ラブストーリー大賞を受賞した人なんだが、その経歴が「早稲田大学第二文学部卒、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経てフリーのキュレーター」この華麗な経歴でこれ! MOMAってなんなんでしょうね……
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
柳下さんの寸評でまた笑わせてもらいました、元気出ました。
投稿: ponk | 2011-03-21 10:07
ジャッカスやライト、世界侵略なども公開延期になり本当に残念です。
日本映画は普通に上映している様な気がするには、僕の気のせいでしょうか。
縛り首って復活しないんですか?
投稿: MrSATAN | 2011-03-21 20:40
>だが最後には仲間とやるファッションショーのために幼なじみの手術をほっぽりだしてしまうビート。
幼なじみじゃなくて妹だと思ってました!じゃあなんで田辺誠一が手術室に駆けつけてきたんだろう?
投稿: じゃが | 2011-03-22 08:54
>幼なじみじゃなくて妹だと思ってました
そうなんですよ!映画だけ見てると絶対妹だと思いますよね。ぼくもあとから資料を見てはじめて幼なじみの恋人だったと知ったという…なんなんだろうあの描写。
投稿: garth | 2011-03-22 11:59