人魚伝説(1984)
監督:池田敏春 出演:白都真里 シネマヴェーラ渋谷にて
初公開時以来の再見。学生時代にもっとも強烈に影響を受けた映画の一本である。もう一本はジャン=ジャック・ベネックスの『ディーバ』。どちらも「青い」映画だ。つまりそれは説話的ではなく審美的な映画だということであり、そして(蓮實重彦の薫陶によれば)審美的な映画は排されなければならなかった。というのも審美的な映画はつねに退廃するからである。実際、ベネックスも池田敏春も退廃してしまった。だが、にもかかわらず、この一本は永遠だ。白都真里のあまりに美しい潜水シーンも、ラストの強烈なスプラッター・アクションも、おそらくは(説話的な機能から言えば)過剰すぎ、だがそれゆえに歴史に残ったのだ。過剰さこそが映画だ。そのことを改めて教えてくれたのが『人魚伝説』だった。
舞台が伊勢志摩だったことも、白都真里が逃げる先が渡鹿野島であることも、見直すまで忘れていた(というより、学生時代には渡鹿野島のことなどわかっていなかった気がする)。昨年末、我らの世代にとっての最良の映画監督が身を投げたのはこの海だった。いろんなことを思わずにいられない。本多俊之の美しいテーマを聞き、物思いにふける。
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コメント
ああ、なんだかラストシーンのイメージで、勝浦のような印象が残っていたが、そういえば伊勢志摩だったねえ。
本当にあれは大傑作でした。
投稿: 山形 | 2011-02-02 11:56
三重県と聞くと、どうしても3人の女性が忽然と姿を消した奇妙な場所になってしまう。映画の主人公が一時期潜伏する別名売春島が関係しているのでしょうか?監督は自殺ではなくて、行方不明事件と売春島の関係についてルポしていて殺害されたのでしょうか?
投稿: さあちゃん | 2013-02-25 15:52