エリックを探して(2009)
監督ケン・ローチ 出演スティーヴ・エヴェッツ、エリック・カントナ 公式サイト
『ベッカムを恋して』とかにも通じるんだけど、これ邦題がちょっとミスリーディングで、別にエリック・カントナを探しに行く話じゃない。「きみの心にもカントナはいる」という話なのだ。『いつも心にカントナを』とかってタイトルにした方が良かったかもね(余計わけらんか)。
主人公のエリックはマンチェスターに住む冴えない中年郵便局員。再婚した妻に逃げられ、血のつながらない子供を二人育てている。不良の仲間入りをした子供からは馬鹿にされ、今でも最初の妻のことが忘れられない。彼のことを心配した局員仲間が自己啓発本の聞きかじりで、「自分の尊敬する人を思い浮かべるんだ。エリック、おまえは誰が?」「エリック・カントナ! ザ・キング、世界最高のフットボーラーだ!」その夜、息子の隠していたマリファナたばこを一服したエリックの前にカントナがあらわれたのだ。「カントナさん、ぼくはどうしたらいいんですか?」「心の襟をたてろ!」
仲間の一人がグレイザーのユナイテッド買収に抗議してサポをやめ、まわりから「裏切り者」って言われてパブで喧嘩になったりするあたりのくすぐりがおかしい。ローチもマンチェスター出身なのか、彼の映画ってユナイテッドネタが多い気がする。もちろんマンチェスター・ユナイテッドじゃなくてFC United of Manchesterサポになった仲間もマンUのことが気になっていて、パブの外からじっと試合を見てたりする。
ここのカントナは主人公にアドバイスをする心のヒーローという位置づけなんで、『トゥルー・ロマンス』のエルヴィス・プレスリーみたいな感じである。だから、とくにカントナに思い入れがなくとも、サッカー好きの中年なら堪えられないものがある。もちろんカントナのスーパープレーはバンバン出てくるんで、そっちのファンは二倍嬉しいはずだ。誰の心にもカントナはいるのである。
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