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2010-11-26

村崎百郎の本

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 アスペクトから刊行された『村崎百郎の本』に「黒田くんのこと」と題したエッセイを寄稿させてもらった。わかったようなことを書いているけれど、村崎=黒田くんがどんな人間だったのかなんて、ぼくなんかにわかるわけがない。彼が本当に何を考えて、何をやっていたのか、わかっていたのは本人だけだ(いや、本人にだってわかってなかったかもしれない)。ここに文章を寄せている人たちも、みな、外から見て適当なことを言っているだけなのだ。どんなに親しかったとしてもね。ただ、根本さんだけは内側に入りこめているような気がする。まあ、人徳かな。いや因果者だからか。

 何よりも一番嬉しかったのは村崎百郎の文章が再録されていることである。人は死ぬかもしれない。でも、作品を読みかえせば、何度でも本人と出会うことはできる。GON!に載っていた「隣の美女が出すゴミ!」も懐かしかったが、処女小説「パープル・ナイト」が懐かしくも感動的だった。中に、交通事故現場の「お花畑」に行く場面が出てくる。最初のうちこそ花も毎日供えられているが、やがて数も減り、お花畑はいつのまにか枯れてゆく。

 死んだ人間はそうやってゆっくりと忘れられていく。薄情なようだけどそのほうが健全だと思う。いつまでも他人の死を悼み続けるのはどうあったって不健康だし。

 不健康かもしれないね。でもぼくは忘れないよ。絶対に忘れない。

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2010-11-11

Kiss the Rod

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 Dodgem Logicというのはアラン・ムーア先生が責任編集するアナーキズム・マガジンなんだけど、なんせノーサンプトンの地方誌なんで近所のチーズ屋さんの広告が載ってたりする。なんだけど中身は異常にクオリティが高くて、ムーア先生渾身のカプレットとか、ムーア先生のSF論(ちゃんとノーサンプトンからはじまる!)とかが毎号載っていてたまらない。

 その第五号にIain SinclairがKiss the Rodというエッセイを寄稿していた。前にも書いたことがあるが、シンクレアというのは個人的にはムーアとJ・G・バラードをつなぐミッシング・リンク的存在である。『人生の奇跡』の中にもバラードが認める数少ない若手作家の一人として登場する。Dodgem Logicに書いているのはBrigid Marlinという画家のインタビューである。この人、なんとバラードの肖像画を描いていて、National Portrait Galleryに所蔵されているのである。その肖像画を描くにいたった経緯がまた面白い。実はバラードが(最愛の画家である)ポール・デルヴォーの失われた絵の再現をマーリンに依頼し、彼女がその交換条件としてバラードの肖像画を描かせてもらったのだという。

 バラードは落ち着きがなく、モデルとしては最悪だった、とマーリンは語る。すぐ飽きてしまってポーズを変えたり、喋りはじめたりするのだという。『人生の奇跡』でもそうだったが、どうもこの人、思索家としてのイメージのわりには落ち着きのない言動が目立つ。頭が良すぎて空回りしてるんだろうか?

 なお、マーリンは「あたしの名前を勝手に『女たちのやさしさ』に使った!」と立腹していたとか。さて、どこに出てたのかね。しかし、『人生の奇跡』を読んだあとだと、あの女たらしっぷり、どこまでが事実なのか気になる!

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