監督:ハンス・カノーザ 出演:堀北真希、松山ケンイチ 公式サイト
予告編とタイトルから「ある日階段から落ちて記憶喪失になってしまったわたし。でもどこかに誰とも知れない相手とした甘いキスの感触だけは残ってる。あの相手は誰なのかしら? わたしのまわりにちらつくイケメンのどれか? それにしても学園いちのイケメンってことになってるこの外人って何者?」というストーリーだと誰もが思うだろう。もちろんそれはおおまちがい!
そんな幻のキスなんてどこにもないし、堀北のまわりにいるのはキモ男ばかりなのだった。今カレの外人(アントン・イェルチン…って誰よ!)はテニス部のエースでジョックス、会うとすぐ「セックスしようぜ!ホームカミング・デイの日予約な!」と言い出す。事故に遭った堀北を助けてくれた松ケンはメンヘラーで手首に傷多数、ストーカーの過去あり。YearBook編集仲間の手越裕也(眼鏡男子)は何かっていうとMixCDを作ってプレゼントしてくるオタク。こういうキモイ男たちが「これは退屈な日常と戦うための鎧なのだよ」「それはそれは。よく練った戦略のようだねえ」などと超翻訳調の台詞をはきながら堀北の愛を求めて競いあうのである。
中でも一番突出しているのはもちろん松ケンで、映画マニアでなんとファスビンダー・ファン。堀北を『ヴェロニカ・フォスのあこがれ』の上映に誘って、ローゼル・ゼッホの歌を聞きながらキスをする! ファスビンダー・ファンにとっての夢のシーンである。その後USCへの入学が決まり、LAへ旅立った松ケンはいきなり堀北に電話して「エアチケット取ったから明日の朝こっち来て!」父親にも言わず一人LAに飛ぶ堀北だが、メンヘルの松ケンからはサンタモニカのビーチに半日放置のプレイをくらう。やっと戻ってきた松ケンは「サーフボードを取りに家に帰るつもりだったんだけど、気がついたらマリリン・モンローのお墓の前に立ってたんだ。モンローのお墓だけは桃色になってるんで、なんでだろうと思ったんだよ……よく見たら、みんながキスしたり撫でてったりするから、モンローの墓石だけは変色してるんだ。愛されてるからなんだ。だからぼくは(死んだ自分の)お兄さんのお墓の色も変えてあげようと思って探したんだけど、どこにあるのかわかんなくて…」
って自分でも忘れてるんじゃねえか! そして行ったことある人は知ってると思うけど、モンローの墓に「墓石」はありません! 誰が書いたんだこの台詞。
一方で眼鏡のオタクもキモさでは負けてない。入院した松ケンの見舞いに行こうと堀北に誘われると、「クレイジーな彼氏の見舞いに行く旅のBGM」と題したMixCDを作ってくるんだが、「尾崎とかニルヴァーナとか入れといたから!」と嫌み満載。こんな男とは付き合いたくない!
堀北が事故にあって性格が一変、前の自分ってどんなだったの?と悩むという話なんだと思うのだが、事故以前の性格もわからないしどう変わったかもちっとも描かれていないので、ひたすら男に流されまくる優柔不断な尻軽女にしか見えない。パンフ読んだら堀北自身が「監督の演出を受けるなかでどんどん崩れていって、結局どんな女の子なのかよくわからないまま撮影していきました」って言ってる。全部監督が悪いんじゃないか! ていうか誰だったんだよこの監督!
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