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2010-04-20

「トラック野郎風雲録」出版記念 鈴木則文映画まつり

 来る5/15(土)~5/24(月)、池袋新文芸坐におきまして〈「トラック野郎風雲録」出版記念 鈴木則文映画まつり〉と題する一大特集上映が催されます。国書刊行会から5月刊行予定の鈴木則文監督初の著書、『トラック野郎風雲録』出版を記念しての上映会です。先に協力をお願いしておりました『忍びの卍』ニュープリント上映を含む全24作(オールナイト含む)。スケジュールはここ。みなさまふるってご参加下さい。

 なお、開催にちなみ、鈴木則文監督をお迎えしてのトークショーを二度おこないます。ぼくは5/22(土)、『発狂する唇』の佐々木浩久監督とともにお話をおうかがいする予定です。「日本一『トラック野郎』を愛している映画監督」佐々木浩久さんですから、きっと楽しい話になることでしょう! なお、当日は『徳川セックス禁止令 色情大名』と『忍びの卍』が上映予定です。


5/22(土)
『徳川セックス禁止令 色情大名』(1972/東映/R18+) 11:20/15:35/19:00
『忍びの卍』(1968/東映/★ニュープリント) 9:40/13:05/17:20/20:45(終映22:15)
14:45より 鈴木則文監督、佐々木浩久監督、柳下毅一郎によるトークショー

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2010-04-17

誰かが私にキスをした (2010)

監督:ハンス・カノーザ 出演:堀北真希、松山ケンイチ 公式サイト

 予告編とタイトルから「ある日階段から落ちて記憶喪失になってしまったわたし。でもどこかに誰とも知れない相手とした甘いキスの感触だけは残ってる。あの相手は誰なのかしら? わたしのまわりにちらつくイケメンのどれか? それにしても学園いちのイケメンってことになってるこの外人って何者?」というストーリーだと誰もが思うだろう。もちろんそれはおおまちがい!

 そんな幻のキスなんてどこにもないし、堀北のまわりにいるのはキモ男ばかりなのだった。今カレの外人(アントン・イェルチン…って誰よ!)はテニス部のエースでジョックス、会うとすぐ「セックスしようぜ!ホームカミング・デイの日予約な!」と言い出す。事故に遭った堀北を助けてくれた松ケンはメンヘラーで手首に傷多数、ストーカーの過去あり。YearBook編集仲間の手越裕也(眼鏡男子)は何かっていうとMixCDを作ってプレゼントしてくるオタク。こういうキモイ男たちが「これは退屈な日常と戦うための鎧なのだよ」「それはそれは。よく練った戦略のようだねえ」などと超翻訳調の台詞をはきながら堀北の愛を求めて競いあうのである。

 中でも一番突出しているのはもちろん松ケンで、映画マニアでなんとファスビンダー・ファン。堀北を『ヴェロニカ・フォスのあこがれ』の上映に誘って、ローゼル・ゼッホの歌を聞きながらキスをする! ファスビンダー・ファンにとっての夢のシーンである。その後USCへの入学が決まり、LAへ旅立った松ケンはいきなり堀北に電話して「エアチケット取ったから明日の朝こっち来て!」父親にも言わず一人LAに飛ぶ堀北だが、メンヘルの松ケンからはサンタモニカのビーチに半日放置のプレイをくらう。やっと戻ってきた松ケンは「サーフボードを取りに家に帰るつもりだったんだけど、気がついたらマリリン・モンローのお墓の前に立ってたんだ。モンローのお墓だけは桃色になってるんで、なんでだろうと思ったんだよ……よく見たら、みんながキスしたり撫でてったりするから、モンローの墓石だけは変色してるんだ。愛されてるからなんだ。だからぼくは(死んだ自分の)お兄さんのお墓の色も変えてあげようと思って探したんだけど、どこにあるのかわかんなくて…」

 って自分でも忘れてるんじゃねえか! そして行ったことある人は知ってると思うけど、モンローの墓に「墓石」はありません! 誰が書いたんだこの台詞。

 一方で眼鏡のオタクもキモさでは負けてない。入院した松ケンの見舞いに行こうと堀北に誘われると、「クレイジーな彼氏の見舞いに行く旅のBGM」と題したMixCDを作ってくるんだが、「尾崎とかニルヴァーナとか入れといたから!」と嫌み満載。こんな男とは付き合いたくない!

 堀北が事故にあって性格が一変、前の自分ってどんなだったの?と悩むという話なんだと思うのだが、事故以前の性格もわからないしどう変わったかもちっとも描かれていないので、ひたすら男に流されまくる優柔不断な尻軽女にしか見えない。パンフ読んだら堀北自身が「監督の演出を受けるなかでどんどん崩れていって、結局どんな女の子なのかよくわからないまま撮影していきました」って言ってる。全部監督が悪いんじゃないか! ていうか誰だったんだよこの監督!

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Je t'aime, je t'aime (1968)

監督:アラン・レネ 脚本:ジャック・ステンベルク 音楽:クシシュトフ・ペンデレツキ 日仏学院のアラン・レネ全作上映にて。

 30年間見たかった映画をついに見た! 大袈裟に聞こえるかもしれないが、この映画のことを最初に知ったのはSFマガジンの映画紹介のコーナー。そこで紹介されているのを見て観たい!と思ったのはたぶん中学生のころである。当時、ゴダールは『アルファヴィル』を、トリュフォーは『華氏451』を作った。なぜかヌーヴェルバーグでSFが流行っていたのである。しかるにわが最愛の監督だったレネの本作だけはなぜか日本公開されず、見る機会もないまま現在にいたったのである(今回見てわかったが、これ、FOXの製作だったんだね。おそらくそのせいで日本の会社が買えなかったものと思われる)。それが、ついに!

 自殺未遂をしたところを救われた主人公クロードは研究所で時間旅行の実験に志願する。四分前の過去に戻るはずだったが、機械の故障でクロードは痙攣的に過去を飛びまわることになる。過去を追体験する中で、クロードは自殺の原因となったカトリーヌとの破滅的恋愛をも再生する……

 映画として見るとどうしても『スローターハウス5』を思い出してしまうのだが、あちらは1972年。影響関係についてはよくわからないのだが、おそらくはレネもヴォネガットも共にこういう時間感覚を持っていたのだろう。ヌーヴェルバーグらしくセットのないSF映画で、ひたすら過去のフラッシュバックが続くので、話が見えてくるまでにだいぶ時間がかかる。久しぶりに脚本読みたい!と思う映画に出会ったよ。音楽ペンデレツキ。素晴らしい。

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2010-04-15

『忍びの卍』ニュープリント寄付のお願い(終了)

 鈴木則文監督の初の著書『トラック野郎風雲録』が5月末、国書刊行会より刊行されます。これを記念して池袋新文芸坐にて「鈴木則文映画まつり 『トラック野郎』全10作上映!」を開催さしていただくことになりました(5月15日~24日。29日にオールナイト)。この中で上映予定の『忍びの卍』は原作山田風太郎+監督鈴木則文という垂涎の組み合わせにもかかわらずプリントが存在せず、ビデオもDVDも出ていない幻の作品です。

 この作品を今回上映する為に、シネマヴェーラの上映で『すいばれ一家』のニュープリントを焼いたのに続き、またしても有志の寄付をつのってニュープリントを焼こうということになりました。今回は国書刊行会の樽本さんが音頭をとってくれておりますので、国書刊行会主催になります。

 今回は一口5000円で40口を目標に募集しています。例によって寄付によってもプリントにはいっさい権利は生じません。新文芸坐から招待券が一枚出ますが、それだけです。その旨をご理解の上、それでもご協力ねがえるという方は、是非ご寄付をお願いしたいと思います。

 たいへん申し訳ありませんが、ご協力いただける方はお名前・ご住所を明記の上、直接、tarumoto1@gmail.comまでご連絡ください。みなさまのご支援を期待しております。

(4/18追記 期日を前にして、寄付がほぼ目標に達しましたので、募集をしめきらせていただきます。本当にありがとうございました。では文芸坐でお会いしましょう!)

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2010-04-07

ViVA! Kappe (2010)

監督:植田尚 出演:西尾舞生、伊藤友樹 制作:ウィズユー求人シネマ 公式サイト

 世の中にはいろいろな映画がある。いやそんなことはもうとっくにわかっているのだが、しかしこれはどうなんだ? ちなみに水戸市政百二十周年記念作品。どうなのよ水戸市民!と言いながらもこのタイトルを見たオレの足は否応なしにシネマ・アンジェリカに向かっていたのだった……

 花子は「栄光だっぺ!」とか言いながら故郷、水戸を捨てて上京、文化デザイナー学院で勉強してスタイリストのアシスタントになり、カリスマデザイナーにデザインスケッチを見せると「あんた、男知らないでしょ」の一言で却下。しょうがないので処女を捨ててみたが男に捨てられただけで終わり。しかたないので故郷に帰ってきたが家のあった場所は田んぼになっていた!(ここまではじまってから5分)呆然と立ちつくす花子をひろってくれたのがイケメンの農家の跡取り、太郎であった。

「え?家が無くなった?大丈夫どっかで生きてるわよ」などとアバウトに納得したまま有機農法にいそしむ恩田農場で働くことになった花子。「わー堆肥って臭くないんですねえ」「ちゃんと発酵してれば臭いなんだよ。ほら触ってみ」「わーあったかーい」などという説明的科白を交わしているんでてっきり有機農法とオーガニック料理のPR映画なのかと思っていたが(キンキンがオーガニック・レストランの店主役で出てきてびっくり。店は普通のチェーン・レストランで、天丼とか出してるわけだが)花子は文化で学んだファッションセンスを発揮、カッペな農民たちにファッション指導して垢抜けさせ、さらには農作業のかたわら描いたデザイン画でカリスマデザイナーの主催するファッション・コンテストでグランプリを獲得する!「あたしはこのファッションで、若者に農業の素晴らしさをわかってもらいたいんです!」

 話がどんどん明後日の方に転がっていくのでどうなることかと思った。最後まで無くなった家と行方知れずの両親のことをすっかり忘れているというのが凄い。しかしお洒落モンペのKappeブランドとか本当にありそうで怖い。ちなみに登場人物はみな普通の会話の中で「足跡に自分を刻め、自分らしさは後からついてくる」とか「泥はいつまでたっても泥だけど、いつかわたしに実をつけてくれる!」とか名言botみたいな発言を連発する名言映画。

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