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2010-01-31

サヨナライツカ (2009)

監督・脚本:イ・ジェハン 出演:中山美穂、西島秀俊 原作:辻仁成

 航空会社のエリートサラリーマン、西島秀俊は東南アジアの航路を開拓すべくバンコクを訪れた。同僚のマギー(って誰ですかこの人)がもよおしてくれた歓迎会にはなぜか美人を呼んでいるという。「もうノーブラで乳首なんかたっちゃってこんな!」とマギーが力説するミステリアスなノーブラ美女、それが真中杳子(中山美穂)であった。

 西島くんはパンナムとの航空会社対抗草野球に出場する。ちなみに「新聞見ました? アメリカがヴェトナムに負けたんですよ」なんてセリフがあることから(まあそんな無理矢理なセリフを入れないと時代がわからないというところにそもそもの……)1975年の物語と思われる。パンナムは世界の空を支配する巨人で、西島くんの勤める日本の航空会社はその牙城に切り込まんとしてるわけ。「好・青・年! 好・青・年!」のコールを受けてバッターボックスに入る西島くん。彼はあらゆる人から「好青年」と呼ばれており、「がんばれ好青年」みたいなゲーフラまであります。九回裏、監督(支社長)は送りバントのサインを出すが、西島くんはそれを無視して思い切り振り切ってホームラン! 西島くんはホームランか凡フライの二択の男なのだ。それを観客席で見ている中山美穂。

 翌日、西島くんがシャワーを浴びていると、家にいきなりみぽりんが訪れる。いきなり中に入ってくると、ものも言わずパンツを脱ぎ出すみぽりん。ちなみに出会ってからここまで二人は一言も言葉を交わしていません。西島くんもたまらず襲いかかって二人は獣のようなセックスを! 終わったあと中山美穂は「欲しかったルイ・ヴィトンのバッグを手に入れた気分よ」ヴィトンのバッグかよ! 鞄にたとえられても怒らないのが好青年。

 中山美穂はマンダリン・オリエンタルの「サマセット・モーム・スイート」に住んでいる金持ちの美女。で、その彼女に真面目な西島くん(婚約者あり)が翻弄されるって話らしいんだけど、最初から西島くんが色と欲に生きる黒い男にしか見えない。しかも中山美穂は全然「ミステリアスな美女」を演じられず、素のまま。1975年のバンコクってのがどんな町なのかも全然わからないんで、ほとんど高級ホテルでノーパンノーブラで歩きまわってる痴女にしか見えないのである。これ、みぽりん何歳の設定なんだろうか。映画で見るかぎりどう見ても西島くん(29歳の設定)より年上なのだが。

 ま、珍描写はいろいろあって、西島くんがメルセデス・ベンツ500kのオタクでカタログ・スペックをペラペラ暗唱するとか、二人でその車に乗って空港に突入し、勝手に駐機している飛行機のコックピットにあがりこむとか、西島くんが妄想する未来世界の社長の椅子とか、西島くんの婚約者石田ゆり子が異常に黒いとか、まあいろいろあるんだけど、これ実は韓国映画なのである。スタッフは完全に韓国で固められてるし、製作もCJ entertainment。なので韓流ならではの珍描写と超展開と思えば腹も立たない。

 みぽりんと別れた西島は無事販路拡大に成功し、本社で順調に出世する。そして二十五年後、新たな提携交渉のために初老の西島くんは思い出のマンダリン・オリエンタルに泊まる。するとそこのフロント係に昔と変わらぬ姿で立っている中山美穂が!「あなたがいらっしゃると知って、ずっとお待ちしておりました」 思い出は遠い日の花火ではない……ってこれは「黄昏流星群」か!? 原作弘兼憲史の間違いじゃねえのか!

 まあ、いろいろと面白い映画であった。コメディとしてはちょっとテンポが悪いのだが、みぽりんの痴女プレイを楽しみたい人と韓流の超展開が好きな人にはお勧め!

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2010-01-30

iSad

 iPad、どうやらタブレットPCの決定版ではないらしい、ということでiSadとかiBadとか言われているのだった。曰く「フラッシュが見られない」「USBすらつながらない」「カメラがない」「この額出すならネットブックが買える」などなど。いやすべてごもっとも。

 だが、たぶんこうした批判は本質を見誤っている。ジョブズが「まったく新しいカテゴリーの製品」だと言っているのはただのセールストークではない。タブレットPCを期待した方が間違っているのだ。私見では、これはiPodが音楽についてやったことを映像において実現する端末である。いつでもどこでも写真と映画とニュースが見られるようになるビュウアーだ。アメリカでは当然新聞がiPadに来る。ということは朝起きたらまず起動してiPadで新聞を読み、video podcastで朝のニュースを見て、iTunesで買った連続ドラマを見る。映画ももちろんiTunesでレンタルだ。すべてソファに寝っ転がったまま。

 初代iPodが出たときに、みなが「こんなもん今時出すとはついにジョブズもヤキが回ったか?」とか言ったものである。だが、iTunes+iPodの組み合わせはまちがいなく音楽消費行動を変えた。それと同じことがiPad + iTunes Storeのビデオ販売で起こるような気がする。kindleを叩き潰すのは行きがけの駄賃みたいなもので、ジョブズの本音はそっちにあるんじゃなかろうか。その意味で、本当にiPadを恐れるべきは出版業界ではなく、テレビとTSUTAYAではないかという気がするよ(アメリカのネットワーク局はすでに想定・対応済みだと思うけどね)。

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2010-01-24

S-Fマガジン 2010年3月号

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 二号続けての五十周年記念特大号が続いたSFマガジン、通常号に戻っての〈2009年度英米SF受賞作特集〉号に掲載された「オールタイムSF映画ベスト50」を決める座談会に参加しています。他のメンバーは高橋良平、添野知世ほか。侃々諤々の議論の末、決まったベスト1は……まあこれは万人の認めるところでしょう。ただしそれ以外はいろいろ異論がありそう(アニメが少なすぎるとか)。個人的ベスト50も載っておりますので、ぜひお目通しください。ちなみに個人的オールタイムベストSF映画は『メトロポリス』です。

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2010-01-20

かいじゅうたちのいるところ

 朝日新聞1/15日付けに掲載した『かいじゅうたちのいるところ』の映画評が「朝日新聞がビートルズ世代に贈る、こだわりエンターテインメントサイト」どらくに掲載されています。お出かけ前にご一読のほどを。

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2009年映画ベスト10

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 映画秘宝のベスト10発表号(2010/3)が発売になったんで、ぼくの投票を転載しておきます。


1 『われわれは夜に彷徨い歩こう、そしてすべてが火で焼き尽くされんことを』(1975 ギー・ドゥボール)
2 『空気人形』(2009 是枝裕和)
3 Antichrist (2009 ラース・フォン・トリアー)
4 『グラン・トリノ』(2009 クリント・イーストウッド)
5 『仮面の宿命~美しき裸天使』(2009 山崎邦紀)
6 『麻瘋女』(1939 馬徐維邦)
7 『クリーン』(2004 オリヴィエ・アサイヤス)
8 『マラドーナ』(2008 エミール・クストリッツァ)
9 『アナタハン島の真相はこれだ!!』(1953 吉田とし子)
10 『劇場版 虫皇帝』(2009 新堂冬樹)

 山崎邦紀の傑作があまり見られていないのは残念なことである。コメントその他は本誌を参照してください。それにしてもベスト・ガールに選ばれたペ・ドゥナの写真が載ってないとはどういうことだ!

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2010-01-18

『鈴木×鈴木』ー鈴木則文監督特集

 山口情報芸術センターにて『鈴木×鈴木』と題して鈴木清順、鈴木則文というダブル鈴木の特集上映がおこなわれます。我らが鈴木則文特集は2/4(木)~2/21(日)まで、『比牡丹博徒 一宿一飯』から『文学賞殺人事件 大いなる助走』まで全十五本という豪華なプログラムですが、この中で監督を交えてのトークショーが予定されています。


『鈴木×鈴木』ー鈴木則文監督特集  トークイベント
日付/時間 :2010-02-13 (土)16:10
場所 :スタジオC /
料金 :無料

ゲスト
鈴木則文(映画監督)
青山真治(映画監督・小説家)
柳下毅一郎(映画評論家・特殊翻訳家・殺人研究家)

 鈴木監督に関門海峡を渡って参戦の青山真治監督も加えての豪華なトークショーとなります。みなさまお誘い合わせの上ご来場ください。

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2010-01-14

Momento

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 iPhoneのアプリでひさびさにこれはヤバイ!と言いたくなるものと出会った。Momentoという。appbankでの紹介はこちら。twitter、facebook、flickr、Last.fmといったソーシャルメディアへの投稿をまとめて表示させるカレンダーである。言ってみればそれだけ。apiを通してアクセスしてるだけだから、別に技術的にものすごいことをしているわけじゃない。なのだか、この使用感は革命的だ。はじめてlifelogという言葉を実感できた。生活のすべてがtwitterに集約され(これは実はすでにされている--読書メーターやらiTunesからの投稿やらで)、それがカレンダーと紐づけられることで毎日の記録が残っていく。これは快感だ。2007年からのtwitterの全logが残っていてくれればなあ。

 ネット社会(コンピュータ社会)はプライバシーをなくす方向に向かって進んでいる、というのはぼくの持論である。人は自分のことが好きなのであり、自分のことをみんなに知ってほしがっている。コンピュータは不特定多数にそれを知らせるための道具だ。twitterでは誰もが頼まれもしないのに自分のプライバシーを暴露しつづける。Momentoがヤバイ!のはここに自分の人生がまとめられていくのがあまりに快感なので、言わなくてもいいことまでtwitしてしまいそうなことである。同時に、flickrなんかとのつきあい方まで変わっていきそうだ。これまではわりと写真を厳選してアップしていたのだが、むしろ撮った写真をすぐアップするライブ的な使い方になっていきそう。

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2010-01-09

痴漢電車 夢指で尻めぐり (2010)

監督:加藤義一 出演:かすみ果穂、紺野和香、ほたる(葉月蛍)、倖田李梨 PG

 ひさびさに上野オークラ。三本見るのも久しぶり。オークラの正月映画で二週上映、女優も豪華に四人使いである。

 わりと実験的な作風で、主要登場人物四人(男女優それぞれ二人ずつ)のモノローグをかぶせて話をつなげてゆく。「そのときにわたしの時間は止まった」「止まった時間を動かそうとぼくは電車に乗った」てな調子。結果、ほぼ60分間全編ダイアローグという映画ができあがった。脚本的にはしてやったりなのかもしれないが、さすがにこれでは芝居どころがなさすぎ、作られた筋を見ているだけという印象になってしまった。

 あと痴漢プレイに目覚めてしまう妻を演じた紺野和香が「来夏は地味な格好で、下着も地味な女だったが……」と言われてもいるにもかかわらず、どう見てもケバいキャバ系なのが違和感ありすぎる。なにやらキャスティング上でトラブルがあったのか?とつい裏事情を想像してしまう。 主役の二人(かすみ果穂と津田篤)以外の話が放りっぱなしなのもいかがなものか。

 残りは竹洞組の吉沢明歩がかわいいうどん屋ものとサトウトシキの1997年作品『団地妻 白昼の不倫』。これがやっぱ一番良かった。脚本の小林政広もちゃんと仕事をしてるし(ただし旦那の浮気疑惑についてははっきりさせないままにしておく方が効果的なのではないか)。葉月蛍が浮気相手(最後まではやってない)とホテルから出てきたところで旦那と出くわし、「何やってんだ!」「……買い物」というところでつい吹き出してしまった。

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