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2009-10-02

London Orbital

5625  わが想像力をとらえてやまない二人の英国人作家がいる。J・G・バラードとアラン・ムーアである。だが、現代の黙示者バラードと19世紀に生きる魔術師ムーアのあいだにどんな共通点があるというのだろう? 実はこの二人をつなぐ存在がいる。イアン・シンクレアである。

 詩人/作家/評論家/建築史家のシンクレアはロンドンの文学と歴史について該博な知識をたくわえ(元古本屋だったというが、どうやらそのころに大量のネタを蓄えたものらしい)、ロンドンの心理地理学地図を描いてみせる。シンクレアこそが『フロム・ヘル』の元ネタであるWhite Chappell, Scarlet Tracingsを書き、ニコラス・ホークスムアの教会建築にまつわる秘密を探り出した人物であり、またバラードに深く私淑してクローネンバーグの『クラッシュ』について素晴らしい小冊子を書いている。クリス・ペティット(『レディオ・オン』)と一緒に映画を何本か作っているが、その中にはアラン・ムーアもJ・G・バラードも登場する。シンクレアは秘められた歴史、隠された秘密、おぞましき罪を掘りかえし、その土地の暗き地霊を呼び起こそうとするのだ。

 London Orbitalでシンクレアが挑むのはロンドンを取りかこむ外環状高速道路M25である。空っぽなロンドン郊外を走る道路の意味を見いだすため、シンクレアは全長二百マイル(=320キロ)以上の道路を自分の足で歩いてみることにする。KLFのビル・ドラモンド(100万ポンドを焼いた男)、画家ローレンス・ビックネル、J・G・バラードら様々な人と語らいながら、シンクレアは歴史などないと思われているロンドン郊外のランドマークをめぐっていく。R・D・レインが働いた国立精神医学研究所、ヒースロー空港、ニコラス・ホークスムアの忘れられた墓、巨大ショッピング・モール〈ミレニアム・ドーム〉、自然公園、精神病院、ゴルフ・コース……そこではサッチャーがテープカットをし、亡命中のピノチェト元大統領がゴルフを楽しみ、ロナルド・クレイが入院し、ウェルズの火星人が地球に襲来した。やがてシンクレアはM25こそロンドンの新たな防壁、二十一世紀のロンドン・ウォールであることを発見するのである。

 そう言えば、昔、ペヨトル工房からシンクレアのRadon Daughtersの翻訳を依頼されたことがあったのを思い出した。到底ぼくなどの手に負える本ではないので断ってしまったのだが、今ならどうだろうか? なんだかぼく自身もシンクレアのまわりをぐるぐる回っているような気もする。

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コメント

お蔭様で『フロム・ヘル』堪能しております。有難うございます。
ご多忙の事とは思いますが、I・シンクレア著作の翻訳、機会がありましたら是非、お願い致します。

投稿: conno | 2009-10-09 19:14

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