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2009-09-30

Three Miles North of Molkom... (2008)

 久しぶりのロンドン。主目的は『フロム・ヘル』出版前に切り裂きジャックを再訪しようということだったんだけど、当然それだけで済むわけもなく、映画と書店三昧。Three Miles North of Molkomというドキュメンタリー映画を見る。

 Mollkomというのはスウェーデンの田舎町なのだが、そこから三マイル北にいった森の中で毎年数千人のヒッピーが世界中から集まってくるNo Mind Festivalなるヒッピー祭りが開かれるのだ。そこでは自然を愛し、自分の身体について学び、タントラ・セックスを学ぶ。つまりフリーセックスなのである。別にそれを推奨してるわけではないんだろうけど、男女が裸でゴロゴロしてればやることはやるわな。おそらくそれ目的で来てる奴もいると思われるが、大多数は真面目なヒッピーで、森に入って木を抱きしめて自然と交感したりしている。いかにも馬鹿馬鹿しい……だが、これがなかなかどうして面白いのだ。

 ドキュメンタリーにはフェスティバル参加者である七人の男女が登場する。世界中から集まってきたバックグラウンドもさまざまな男女が、ワークショップを経験していく中でどう変化していくかが描かれるのだ。オーストラリアから来た元ラグビー選手は「あなたの痛みを愛するだって?こんなくそヒッピーな戯言はねえよ!」とか毒づいているが、火渡り(Firewalk)の儀式を経験してからはすっかりハマりこんでグループの優等生になる。人生でつねに負け組だったというスウェーデン人の元ソーシャルワーカーだかの中年女が、上から目線が鼻持ちならないグループのリーダー「シッダルタ」についに反抗する場面は痛快だ。その「シッダルタ」が実は非モテだったと判明する場面は泣ける。

 外気功で吹き飛ばされて痙攣してみせるインストラクターを嗤うのはたやすい。だが、「やる側が本気で信じてないと気功は効かないんだ」というインストラクターの言葉は多分本当だ。信仰体系としてはこれは何ひとつ間違っていないのだ。ワークショップの過程で参加者はかならず何かしら神秘体験をし、何かしらの悟りを開く。頭で考えているとただくだらないだけで、なぜこんな戯言にみんなひっかかるんだろうとか思ってしまうだろう。だが頭でどんなに馬鹿にしても肉体的鍛錬は裏切らない。そして神秘体験はつねに肉体的なものなのである。人間がそういう存在である以上、このヒッピーたちが見ているものもやはり「真実」なんじゃないか、と思うのだ。

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2009-09-27

FBB秋の『イングロリアス・バスターズ』大予習会!

10/16(金) @新宿Loft+1

遂にやって来るタランティーノ最新作『イングロリアス・バスターズ』! 気がつけばなんやかんやでタラ公の映画イベント皆勤賞のFBBがお送りする先取り予習イベント。ここでしか聞けない元ネタ裏ネタ盛り沢山! ネタバレは(極力)しません!

【出演】
ファビュラス・バーカー・ボーイズ(町山智浩+柳下毅一郎)
高橋ヨシキ(デザイナー)
田野辺尚人(映画秘宝)

【司会】
多田遠志(+1、ライター)

OPEN18:00/START19:00

予約\2000/当日\2300(共に1ドリンク付)
予約はリンク先よりお一人様2枚までとさせていただきます。

  前回は立ち見酸欠の大騒ぎになった反省から予約制になりました。参加ご希望の方はお早めに!

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2009-09-26

「フロム・ヘル」の併読作家

 みすず書房の特設ブログで『フロム・ヘル』予約アンケートの結果が発表。いろいろあるけど、やはり興味深いのは「好きな作家は?」のところだろう。詳しくはサイトの方を見てほしいが、全体にSF/幻想/現代文学系の読書家が飛びついてる感じである。ぼくのサイト経由で行ってる人が多いようなんでJ・G・バラードジーン・ウルフといった名前はそういう意味での偏りか。

 意外だったのは 荒俣宏松岡正剛澁澤龍彦 の名前がなかったこと。ぼくの印象だと『フロム・ヘル』の読後感にいちばん近いのはここら辺なのだが、もはやこういうところでは挙がらないような名前になってしまったのだろうか。まあ、その意味では高山宏種村季弘がいちばん納得のいくところではある。いちばん「一本取られた!」と思ったのは牧逸馬

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2009-09-21

遠藤賢司 「第二回純音楽祭り」@Club Quatro

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 どうもこのところくさくさしているので、こういうときはエンケンだ!と活を入れてもらいに出かける。渋谷は秋祭りで、御輿も出て、いかにもエンケンにふさわしい祭りの雰囲気。二日連続だが前日はアコースティックで今日はエンケンバンド。ここはバンドだろうやっぱり! 最初はエンケンの弾き語りで「夜汽車のブルース」から。エンケン曰く「『二十世紀少年 完結編』見た?  あれは日本映画史に残る作品だと思うね! 特にマタギの人が…」 まあエンケン映画史には残るかもしれない。『ヘリウッド』の次くらいにね!

 ゲストはZAZEN BOYSと頭脳警察。頭脳警察は三人編成でメロウな曲中心なんだが、これがたいそういい。だがそれより、最初にTOSHIが出てきたときあまりに普通に老人なんでびっくりしてしてしまった。いやプレイは昔のままなんだが、見た目が完全にただの老人。まあエンケンの若さが異常なんだけどね。最近エンケンがバンドじゃなくてソロ中心なのはTOSHIの体力問題があるんじゃないか!?などとなかば本気で考えてしまった。

 ひさびさに聴く遠藤賢司バンドはやっぱり最高。アラカンの人に元気もらってるようじゃいけないわけだが、エンケンもデビュー四十周年。いきなり「不滅の男」で燃える。アンコールはもちろんお祭りだから「東京ワッショイ」。全員登場してワッショイの大盛り上がりのあと、エンケン一人のアコースティックで「夢よ叫べ」。

 新譜を買い、エンケンにサインをもらう。あと四十年はやってほしいね。

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2009-09-19

S-Fマガジン 2009/11

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〈S-Fマガジン〉2009/11号ができました。今号はJ・G・バラード追悼特集号。諸般の事情で少し遅くなってしまいましたが、お待たせした甲斐はあると思います。ぼくはMyths of the Near Future所収の傑作中編「太陽からの知らせ」を訳載。あとバラードのコメントつきリストを作成。97年3月号のバラード特集に載ったものの増補改訂版です。他に新訳短編二篇と「コーラルDの雲の彫刻師」の再録。追悼エッセイではムアコックのものが泣け、伊藤典夫さんのエッセイはバラード以上に伊藤さん自身について多くを語っているような気がしますが、これまた必読。みなさま、これを機会に今いちど「二十世紀最大の作家」のページを繰ってみてください。リストを見ていただくとわかりますが、ぼくもだいぶ宿題を抱えているので、できるだけ早くに返せるように頑張っていきたい。

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2009-09-18

映画秘宝2009/11

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〈映画秘宝〉2009/11月号が発売になりました。今号では、是枝裕和監督に『空気人形』についてインタビューしています。是枝さんの語るダッチワイフの哀しみは必読。日本映画縛り首では『HACHI』その他。日本映画じゃないではないか!と言われそうだが今月は駄目映画は少なかったんでしょうがない(でも『HACHI』に感動したのは本当)。その分、来月は充実しすぎて死にそうです……

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2009-09-14

しんぼる (2009)

監督・脚本・主演:松本人志 公式サイト

 かなり積極的に見たくなかった映画である。なぜかというと松本さんのファンの人はたいそう粘着質にしつこいからだ。左カラムの「最近のコメント」を見てもらうとわかるように、いまだに『大日本人』と『ひぐらし』についての記事だけはファンから執拗にコメントがつくのだ。もういい加減にみんな忘れようよ!オレはもう『ひぐらし』のことなんかとっくに忘れたよ!

 ある日「ぼく」が目覚めるとそこは真っ白な部屋だった。壁からは小便小僧のちんこみたいなものが突き出している。「ぼく」がちんこを押すと、きゅっという音がして、壁からタイプライターが飛び出した。「ぼく」はタイプに向かって助けを求める手紙を打ちつづける……

 あーごめん。途中で「リスの檻」(トマス・M・ディッシュ『アジアの岸辺』所収)が混ざってしまった。というか、こういう話はそういうかたちにしか着地しようがないんですよ。もちろん松本さんはディッシュなんか読んでるわけないんで、おそらく『CUBE』かなんか見て思いついたんだろうけどさ。問題はだね、松本さんはこれが40年前のニューウェーヴ小説だってことに気づいておらず、作りながらこれが自分の話だってことを発見してるんですね。だから物語は壮大なスケールで創作者の苦悩と喜びを訴え……

 ……セカイ系ってこういうことかなあ、などと思いました。やっぱりこの手の話に必要なのはディッシュの含羞であって、間違っても松本さんのナルシシズムじゃないのよ。

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2009-09-07

コミックで世界を解く── 魔術師アラン・ムーアの世界

『フロム・ヘル』刊行記念としてジュンク堂新宿店にてトークショーを催すことになりました。お相手はライムスター宇多丸さん。みなさまふるってご参加ください。定員が限られておりますので、電話予約 TEL03-5363-1300 をお勧めします。※ジュンク堂HPに一部間違いがありますが、10/23(金)開催です。

A・ムーア×E・キャンベル『 フロム・ヘル 』日本語版(みすず書房)刊行記念

コミックで世界を解く── 魔術師アラン・ムーアの世界
柳下毅一郎(翻訳家)× 宇多丸(ラッパー)

■2009年10月23日(金)18:30~

鬼才ムーアの傑作グラフィック・ノベル『フロム・ヘル』の日本語版刊行を記念して、訳者であり気鋭の評論家である柳下毅一郎氏と、アイドル、映画など何を語らせても慧眼・妙句の人として幅広い分野から注目されているトークの達人ライムスター宇多丸氏が、アラン・ムーア、『ウォッチメン』、そして『フロム・ヘル』の魅力について語り尽くす。
『ウォッチメン』を読み込んでグラフィック・ノベルの魅力に開眼したという宇多丸氏と、『フロム・ヘル』の舞台でもあるホワイトチャペルをはじめ、世界各地の実録犯罪の現場を"巡礼"した経験まであるという柳下氏の顔合わせ。ただでさえ魔術的なムーアの世界をテーマに、二人がどんなふうにわれわれを幻惑してくれるのか、ご期待ください!

【講師紹介】
柳下毅一郎(やなした・きいちろう)
英米文学翻訳家・映画評論家。出版社勤務ののち、映画評論家に。訳書に、J・G・バラード『クラッシュ』(東京創元社)、ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』(国書刊行会)、ジョン・スラデック『蒸気駆動の少年』(河出書房新社)ほか多数。著書に『興行師たちの映画史』(青土社)など。編書に『女優林由美香』(洋泉社)など。多摩美術大学非常勤講師。

宇多丸(うたまる)
ヒップホップ・グループ「ライムスター」のラッパーとして活躍するかたわら、ラジオや雑誌、トークショーを通じて映画、アイドル、本から時事ネタまで幅広いテーマを鋭く語るトーク・マスター。メイン・パーソナリティーを務めるTBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」で、第46回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞を受賞。著書に『ライムスター宇多丸の「マブ論 CLASSICS」 アイドルソング時評 2000~2008』(白夜書房)、ほか。

☆会場…8階喫茶にて。入場料1,000円(1ドリンクつき)
☆定員…40名
☆受付…7Fカウンターにて。電話予約承ります。

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2009-09-01

フロム・ヘル公式サイト

Bk_img2_bigBk_img1_big  アラン・ムーア×エディ・キャンベルのグラフィック・ノベル『フロム・ヘル』の発売がいよいよ10/10に迫ってまいりましたが、本日公式サイトがオープンしました。なんと独自ドメイン! 予告編つき! と驚きばかりですが、最大の驚きは9/10より開始の事前予約。アンケートに答えた人のみの予約特典として500円の図書カードがついてきますので、実質一割のキャッシュバックということになります。これはお得ではないかと思いますので、購入をご検討中の方は是非ともみすず書房公式サイトよりお求めください。先着200名限定ですのでお忘れなく。

 出版記念イベントなどの情報も適時出てきますので、定期的にご訪問を。

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