« 審理 (2009) | トップページ | 『童貞放浪記』公開記念イベント »

2009-08-19

ムーアとニューウェーブ

Page01

 アラン・ムーアがウィリアム・バロウズから強い影響を受けているのは、たとえば『ウォッチメン』にNova Expressっていう左翼雑誌が出てくることからもわかるわけだけど、ムーアが六十年代の英国にいたSF小僧だったことを考え合わせると、ムーアのバロウズ趣味はNew WorldsとJ・G・バラード経由なのではないか?と想像される。ムーアもニューウェーヴ少年だったのでなかろうか?

 Mustardというイギリスのコメディ雑誌に載ったムーアのインタビューを読んでいたら、思いがけぬところでその答えを見つけた。League of Extraordinary Gentlemenの第三巻Centuryの第二部についているおまけ小説の話である。なんでもおまけ小説は月世界でのパルプSF風冒険譚になるらしい。で、それを掲載するのに

今回はそれが六十年代のSF雑誌、マイク・ムアコックの素晴らしいNew Worldsに載っていたことにしようと思ってる。New Worldsが性的な内容をめぐってWH.Smith書店とトラブルになったとき、ブライアン・オールディスが、誌名をLewd Worlds(みだらな世界)に変えればいいって言ったという。だから我々のMinions of the Moon(月世界兵団)はLewd Worlds of Science Fictionに連載されている--編集長はジェイムズ・コルヴィン、これはムアコックのペンネームなんだけど、六十年代後半の(New Worldsの)編集後記で、掲載拒否原稿の詰まったファイリング・キャビネットに押しつぶされて死んだって書かれていたんだよ。それから作者の名前には「ジョン・トーマス」というのを使う。わが最愛のNew Worlds作家の一人であるジョン・スラデックが昔使っていたペンネームだよ。

 正しくはジョン・スラデックとトマス・ディッシュの共作ペンネームだが、こんな誰もわからないようなネタを必死に考えているムーア先生のNW少年っぷりがすばらしい。そしてムーア先生もジョン・スラデックのファンだったとは。オレ、間違ってなかったなあ。

 なお、このインタビュー、他にも

...I don't even know if I've got a copy of Watchmen in the house, or V for Vendetta. I've not got any copies of Swamp Thing.
 なんて爆弾発言があったり、『ウォッチメン』の映画がらみでワーナー・ブラザーズに不快な思いをさせられたので「呪ってやったぜ(プロフェッショナル的な意味で)」と言ってたり、全編翻訳したいくらいのおもしろさ。新作小説Jerusalemの話はまたいずれ紹介します。

|

« 審理 (2009) | トップページ | 『童貞放浪記』公開記念イベント »

コメント

「汝の意志するところを行え。これこそ法の全てとならん」(アレイスター・クロウリー)ですね。流石!>「呪ってやったぜ(プロフェッショナル的な意味で)」

投稿: 冬の蠅 | 2009-08-20 21:07

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ムーアとニューウェーブ:

« 審理 (2009) | トップページ | 『童貞放浪記』公開記念イベント »