海よおいらの歌に泣け(1961)
監督:田口哲 出演:白根一夫、万里昌代、天知茂 TCC試写室での自主上映会にて
出演者も監督もまったく無名の作品。1961年、新東宝の配給で公開された幻の映画が自主上映で復活。というわけでさっそく駆けつける。主演の「白根一夫」もまったく知らなかったんだが、東芝からデビューしていた歌謡歌手らしい。物語はフェリーの船員をやってる主人公が美声をかわれてバンドの歌手にスカウトされるが、父の猛烈な反対にあい(「おまえを夜学にやったのは人前で歌わせるためじゃない!」)、飛び出すように家を出る……という筋立て。
もちろん最後にはめでたしめでたしになるのはわかっているのだが、そこまでの苦労の描写が酷すぎて笑った。海岸で歌っていた彼の声を聞いた東芝の部長がその声に惚れこむのだが、名前を聞きそびれたせいで以下どうしようもないすれ違いドラマが演じられる。ひたすら歌手と部長がひたすら「きみの名は!」とすれ違い続けることで物語を引っ張るのである。主人公がまったく演技できないせいで、何があってもただ黙って突っ立ってるだけだというのは笑うしかない。
猫型女優としておなじみ万里昌代はバンドが居候するバーの娘(でもちろん主人公に恋をする)。特別出演の天知茂は落ちぶれて流しをしている主人公の声を聞いて「こんなところで流しをするような人間じゃないはずだ!」と助けの手を差し伸べようとする顔役でワンシーンだけの顔見せ。格闘シーンでは天知がカメラに向かって拳を振りまわす!(殴られる側の主観ショット) 残念ながら天知の善意はすれ違い攻撃の前には無力なのであった。
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