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2009-04-28

「bpm的」ザ・プラモ・メーデー

 5/1(金)、ゴールデン街のbar plastic modelの六周年記念イベント 「bpm的」ザ・プラモ・メーデー にゲストでお邪魔することになりました。

●「bpm的」ザ・プラモ・メーデー 日時:5月1日(金)夜19:00~朝5:00まで 会場:新宿ロフトプラスワン チケット:前売1500円/当日1800円(ともに飲食別)      ロフトプラスワン店頭、及びbpm店頭にて絶賛発売中!

トークゲスト:川勝正幸(エディター)
       柳下毅一郎(特殊翻訳家)
       モリタタダシ(MJJ/Homesize)
       and more... まだまだ呼びます!

ライヴ:串田アキラ!

TVゲームショウ:和田プロ

DJ:ミッツィー申し訳((有)申し訳ないと)
   永田一直(FANTASTIC EXPLOSION)
   福田タケシ(8-bits)
   東高円寺のん(bpm)
   関根圭(マスターbpm/8センチャーズ)
   and more... こっちもまだまだ呼びますよ!

(敬称略)

5/1(金)はアルジェント・トークの日。ダブルブッキングじゃねーか! というところですがロフトプラスワンでの出番は10時過ぎということなのでハシゴで参ります。いろいろと忙しいですがみなさまふるってご参加のほどを。

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2009-04-27

レインフォール/雨の牙 (2009)

監督・脚本・擬闘:マックス・マニックス 出演:椎名桔平、長谷川京子、ゲイリー・オールドマン 公式サイト

 いやーこれはすごい。ぼくもいろいろすごいものを見てきたが、ひょっとしたらこれは今年ナンバー1かもしれない。それくらいすごい。どのくらいすごいかというと……

……とやかくあって、ジャズ・ピアニストの長谷川京子のコンサートに元秘密工作員の事件屋椎名桔平が訪れる。休憩時間に「実はオレはジャズ雑誌の編集者なのだが、取材させてもらえるか」と持ちかけると、ハセキョーは「えー? ハンサムな人?」などとウキウキで迎える。実はこのとき、三週間前にハセキョーの父(国交省の高級官僚)は通勤中に突然心臓発作を起こして死に、この前日には家に何者かが侵入してハセキョーの妹は射殺されているのである。そうした状況でライブやってるハセキョーってなんなの!? で、会うとキッペーはいきなり
「きみは命を狙われている、オレを信じろ」
「えーだってあなた最初から嘘ついてんじゃん。それで信じろって言われてもさー」
 そこにファンを装った殺し屋がやってきて、本当にハセキョーは襲われる。しかしキッペーが目にもとまらぬ早業で殺し屋を撃退、キッペーは殺し屋に尋問する。
「誰に雇われてるんだ?」
 だが殺し屋は
俺の方が知りたいよ……」
 と言って息絶えるのだった。いや知りたいのは客の方だっていうの!こんな脚本がありえるとは思わなかった!

「マクガフィン」というものを間違って解釈しているとしか思えない脚本のせいで、映画がはじまってから一時間半くらいするまでCIAとヤクザとキッペーが争奪戦をくりひろげるメモリースティックに何が入ってるかわからないのだが、ついに判明したその正体とは!

役人が賄賂をもらって無駄な公共事業をばらまいているので、その秘密を使ってCIAは日本政府を支配下に置こうとしていたのだ!

 ってそんなことはとっくに日本中みんな知ってるし、日本政府はとっくにアメリカのいいなりに門戸開放してるっての! 超翻訳調の脚本から怒鳴ってるだけのゲイリー・オールドマンまで、一分の隙もない大ケツ作! しかもパンフは800円!

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 新宿ミラノ2で見たんだが、男子トイレにはニコラス刑事主演『バンコック・デンジャラス』のCMステッカーが貼ってあった。
「命中率100% 完全無欠のトイレ利用者/一滴のミスさえ許されない」
 ……いいのかこれ。

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2009-04-26

アナタハン島の真相はこれだ!! (1953)

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監督:吉田とし子 出演:比嘉和子

 戦後すぐ、大いに世間を騒がせた「アナタハン島事件」という事件がある。戦時中、孤島に漂流した船の乗組員の中に一人だけ女性がいたことから、彼女をめぐって男たちが殺し合いを演じたというものだ。その女性、比嘉和子は「アナタハンの女王」と呼ばれ、愛欲渦巻く孤島での生活はさまざまな憶測を呼んだ。

 当然事件は映画のネタになり、スタンバーグの『アナタハン』をはじめとして多くの映画が作られた。その決定版とも言えるのがこの『アナタハン島の真相はこれだ!!』である。なんと比嘉和子自身が本人役を演じるという際物映画。てっきり失われた作品だと思われていたが、プラネット映画資料館がなぜか所蔵していて、フィルムセンターの「発掘された映画たち2009」で東京初上映ということになった。

「毒婦」呼ばわりされた比嘉和子が自己弁護のために出演した映画だということもあり、基本的には彼女は男たちの獣欲の犠牲者として描かれている。まあ実際美人でもない彼女が踊りとも言えない盆踊りを踊ってたりするのを見ているとイジメとしか見えないので、ある意味では意図は達成されているのかもしれない。実際、彼女が犠牲者だったのは間違いなかろう。ただ、和子の気を惹くために男たちが食い物を届けたりするのを、いい気になって煽っていたのも事実だろうと思われるのだが。

 もっぱら比嘉和子本人に注目していたわけだが、蔓ブラに腰ミノという土人スタイルでムチムチな肉体美を披露し、観客の期待にもしっかり応えているところはさすがである。あと地面を掘ってミミズ食って見せたのにはびっくりした。まったくためらいがなかったので、あれは本当にやっていたんだと思うな!

 上映はあと一度、29日(水)の13:00からあるので、ご興味ある向きはお見逃しないよう。ちなみに同時上映の『剣劇女優とストリッパー』は売れない女剣劇を立て直すためにストリッパーを舞台にあげてみる、という木に竹をそのまま接いだような話で笑った。

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2009-04-25

ミルク (2009)

 朝日新聞2009年4月17日夕刊に掲載された『ミルク』の映評が「どらく」映画散歩に再録されています。

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2009-04-24

Esquire 2009/06

〈Esquire〉2009年6月号で『グラン・トリノ』の映画評を書きました。正直、オレごときがわかったような顔をしてイーストウッドを語るのはとても恥ずかしい。恥ずかしいのだが、もう終わりなので恥ずかしがってる場合ではなく、やらなければならない。そういうわけで、10年以上続いたEsquire連載はあと一号で終わり。既報のとおり、2009年7月号で休刊となります。

なお、エスクァイア・マガジン社の方は、とりあえず6月末までは通常通りの営業を続け、9月末までは存続することが決まっています。というわけなので拙著『シネマ・ハント』や、e/mブックスの映画監督本などで欲しい本がある人は、それまでに入手しておいた方がいいかもしれません(もちろんゾッキに出回るのを待つという手もありますが、不確実なのであまりおすすめはいたしません)。

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目白雑録3

51w2lqxnu4l_sl500_aa240_  金井美恵子のエッセイ集第三弾。実は珍しく文芸誌に書いた原稿が金井美恵子の目に留まってネタとして料理されてしまったのである。中原昌也が芥川賞候補になったときの待機宴会ルポを〈小説トリッパー〉に書いたのだが、それが「菊池寛の呪縛」と題する回で取り上げられているのだ。

むろん、「特別企画 中原昌也の現在」の二つの「芥川賞選考当日ドキュメント」は、かなり遠回しの芥川賞選考についての批判をこめた、仲間同士の友情と中原の小説に対する支持に満ちた楽しいお祭り騒ぎの集いの顛末を報告した読み物なのであり、新潮社クラブで選考結果を待って中原のために集まっている人たちは「なんらかの正義が来たりうることを期待しているよう」で、そのせいで「理由なき多幸感はいや増し、「もしもこの世に正義があるなら、天は我らに勝利を授けてくれるはず、中原昌也に芥川賞を与えてくれるはず」で「他の候補作など読んでいない(読む気もない)が、それが天の石田というくらいはぼく(柳下毅一郎のことである。引用者)にもわかる」と、不出来な翻訳のハードボイルド調というか、村上春樹のパロディ風のギャグ調になってしまうのも、理解できないわけではないし、もちろん、これはあの菊池寛の呪縛から一時解放されるための民俗学的遊戯なのかも知れない。(p.38)
不出来な翻訳のハードボイルド調」……ディスられて改めて思い知る比喩表現の巧みさ。今後もさらに金井美恵子の目にとまってさらに華麗にディスられるよう精進していきたい!と思ったが残念ながらその後中原が文学の世界から足を洗ってしまったので、ぼくがこういうところに文章を書くこともなくなってしまった。一度きりの経験を大事に胸に抱えて生きていきたい。

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2009-04-23

「サスペリア・テルザ」トークイベント

4/25(土)よりシアターN渋谷にてロードショーとなるダリオ・アルジェント監督『サスペリア・テルザ 最後の魔女』公開にちなんでトークショーを行います。

5/1(金)19:10の回上映前
高橋ヨシキ(アートディレクター/ライター)×田野辺尚人(「映画秘宝」編集部)×柳下毅一郎(特殊翻訳家)

ふるってご参加ください。

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2009-04-20

J・G・バラード逝去

 BBCのニュース

Cult author JG Ballard dead at 78

The author JG Ballard, famed for novels such as Crash and Empire of the Sun, has died aged 78 after a long illness.
His agent Margaret Hanbury said the author had been ill "for several years" and had died on Sunday morning.
Despite being referred to as a science fiction writer, Ballard said his books were instead "picturing the psychology of the future".
His most acclaimed novel was Empire of the Sun, based on his childhood in a Japanese prison camp in China.

 バラードは昨年2月に発表した自伝Miracles of Lifeの中で末期前立腺癌であり、すでに骨髄にも転移していることを告白していた。だから遠からずこの日が来ることはわかっていた。だがどんなに覚悟していても、20世紀最大の作家を失ってしまった悲しみはどうしようもない。R.I.P.

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千里眼 キネシクス・アイ (2009)

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監督・脚本・編集 松岡圭祐 主演:奥田恵理華

 先日久しぶりにジュンク堂に行くと店頭に分厚い本が平積みになっていたのである。〈千里眼シリーズ〉十周年記念特別作品シネマ&ノベル 新作映画DVD付き! 書き下ろし最新作 。もちろん〈千里眼〉シリーズなんてこれまで一ページも読んだことない。だけど「新作映画見ろ~ 見ろ~」という声がどこからか聞こえてきたので、しかたなく買ったわけである。で、撮り下ろし映画見たんだけど、なに、これ……

 自衛隊初の女性戦闘機パイロット「イーグル・ドライバー」の岬美由紀は待機中に命令を無視して勝手に人命救助のためにヘリを飛ばして軍法会議にかけられる。こんな自衛隊やめてやらあ、と辞表を叩きつけた美由紀は臨床心理士に転身、パイロットとして鍛えた優れた動体視力のおかげで表情のわずかな変化から内心を完璧に読み取る「千里眼」となったのだ(千里眼は松岡圭祐事務所の登録商標です)。

 折しも無人のステルス戦闘機F117の編隊が各国の戦闘機を撃墜してまわる謎の事件が発生していた。日本最大のコングロマリット泰銘コンツェルン総裁の記者会見をテレビで見ていた美由紀は、総裁が嘘をついており、本日ただいま東京をステルス戦闘機が襲うことを知る。

 すぐさまアストン・マーティンを飛ばして百里基地に向かった美由紀は滑走路に侵入。ミニスカにタンクトップ一枚の姿で停まっていたF15に飛び乗ると迎撃に飛び立つ。お台場上空で三機のステルスと空中戦を演じ、見事一人の死者も出さずに撃墜した美由紀は黒幕の泰銘総帥の別荘(防府市自由が丘)に乗り込む。そこで美由紀はノン=クオリアと名乗る宗教団体による人類滅亡の陰謀を知るのだった。 ちなみにノン=クオリアとは「クオリアなんてねーよ!」と信じるアンチ茂木派の物質主義者集団のことである。しまったオレもノン=クオリアの仲間か! 泰銘総帥の別荘はSECOM入ってるにもかかわらず、裏口に鍵をかけわすれていて簡単に侵入されてしまうのには笑った。

 まあストーリーとかCGとかはしょうがないんだけど、松岡圭祐の編集が原田眞人映画をも超えるカチャカチャ編集で、なんせ二人の人物が喋っている場面で一人のセリフの中だけで五カットくらいつないでたりするんで、ほとんどポケモンフラッシュレベル。

 ちなみに小説も読んだけど映画はエピソード0なんですね。ものすごいハイテクを持ってるくせに作戦がどうしようもなくショボいノン=クオリアは今回はヨウ化銀の雨を降らせて日本沈没させるという怖ろしい陰謀をたくらんでいたよ。で、読んでたら登場人物の一人が気象予報士は当たらなくても責任とらないんだからいい商売だ、と言ったあとに「こんなに図々しい仕事はほかに、占い師と映画評論家ぐらいしか考えられない」とか言ってたよ!

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2009-04-19

丘の上のパンク -時代をエディットする男、藤原ヒロシ半生記

510htshbayl_sl500_aa240_  川勝正幸編著による藤原ヒロシ伝。ぼくは藤原ヒロシとは以前からの知り合いだが、実は彼のやっていること自体にはほとんど興味がない。ファッションにもDJにもなんにも。だが、それでもこの本はたいへん面白かった。

 多くの人の証言で藤原ヒロシのやってきたことをあぶり出していくという構成なのだが、そこから浮かび上がってくるのが80年代のクラブ・カルチャーである。ぼくが宝島編集部にいた当時の出来事だったりするので、涙が出るほど懐かしかった。なんかやたら狭い人たちの人間関係だけでできあがってるようにも見えるが、ぼくの知るかぎりでは、ほぼ当時のシーンというのはここに書いてあるとおりである。今にして思うとずいぶんちっちゃなところで回っていたんだな、とも思うが、だがシーンというのはそういうものなのだろうね。エイティーズ好きの若い人すべてにお勧め。ヒロシの本だと思って手を出さないでいると損をするよ。

 副読本として『特殊まんが-前衛-の道』(根本敬 キララ社/河出書房新社)を読めば完璧かな!

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2009-04-18

ミルク (2008)

 朝日新聞2009年4月17日夕刊にガス・ヴァン・サントの『ミルク』の映評を書きました。なんと三週連続の登壇、今回は〈プレミアシート〉の欄なので関東版以外の読者にもお読みいただけるはずです。映画は本日より公開、ガス・ヴァン・サントにとっての『マルコムX』のような映画なので、これが評価されたのはいいことだなあ、と素直に思います。

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2009-04-17

Murder Watcher 殺人大パニック!

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 大人のための本格異常犯罪研究雑誌Murder Watchersの第5号「殺人大パニック!!」が出来ました。今回はコロンバイン10周年記念スクール・シューティング大特集。最近流行の大量殺人をとりあげています。ぼくは元祖スクール・シューティング、チャールズ・ホイットマンによるテキサス・タワー乱射事件に関する記事を例によってTexas Monthlyから翻訳しました。第二特集は少年犯罪データベースの管賀江留郎氏による「浜松事件の全貌」。戦時下に起こった知られざる大量殺人ですが、たいへんな力作です。kろえのためだけに買ってもいい、というくらい。その他、ギンティ小林のライフワークであるキルドーザー・シリーズ、オーストラリア編もたいへん面白かったですね。

 連載の殺人風土記は富山・福井編。犯罪史上に残るミステリー「青毛布の男」事件をはじめ、北陸の知られざる事件てんこもりでお送りします。4/20には書店に並ぶかと思われますので、みなさまよろしくお買い求めのほど。

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2009-04-15

獣の交わり 天使とやる (2009)

090227tenshi 監督:いまおかしんじ 出演:吉沢美優、尾関伸嗣 PGの紹介記事

〈シナリオ〉誌のピンク映画シナリオコンクール受賞作品。喧嘩で殴った相手を植物人間にしてしまった少年が何年かぶりに故郷の街に帰ってくると、その彼の世話をしている姉に会って……という成瀬の『乱れ雲』みたいな話。ひとつ違っているのはシナリオ題「イサク」というように、その少年が故郷に帰ってくるきっかけが神の声を聞いたからだというところにある。「会って癒せ」と命じる声を聞いた少年は、一生会わずにいようと思っていた自分の犠牲者一家に会いにいく。

「神の声」を持ち出すのは安易な気がするかもしれないが、これ、伊達や酔狂じゃなくて、かなり本気で書かれた脚本だと思われる。それを思うと、いまおかしんじの演出はちょっと違うのではないかと思うのだ。なんかいつものいまおか調マジック・リアリズムで四畳半にキリストが立ってたりするんだけど、あそこはもうちょっと荘重、というか本当に奇跡が起こる場面なんじゃないかなあ。

 いちばんいまおか調が生きていたのはヒロインが出かける教会の集会場面で、「あー、今日の集会は良かったわあ。神が降りてきたって感じ!」と言いながら「じゃー、このあと法華経があるんで、これで!」と帰ってしまうおばさんが実にいい味で笑えた。

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2009-04-11

ウォッチメン(2009)

 朝日新聞の映画評を再録。

 アメリカはヒーローの国である。悪をくじき、正義を執行するヒーローこそがアメリカの美しき理想だ。だが、その正義とはなんだろう?

「ウォッチメン」はアメリカン・コミックを原作とするヒーロー映画である。ただし「ウォッチメン」とはスーパーマンやバットマンのようなヒーローの名前ではない。タイトルはローマの風刺作家ユウェナリスの警句から取られている。すなわち「見張り番(ウォッチメン)を見張るのは誰か?」ヒーローは本当に正しいのか?

 舞台は現代とよく似た異世界。その世界にはかつて悪と戦うヒーローたちがいた。だが、超法規的な犯罪者退治を禁じる法律ができたため、彼らの活動は禁じられる。ある者は政府の紐付きで秘密工作員となり、ある者は身分を隠したまま引退する。あるいは法律を無視して非合法の自警活動を続ける者もいる。そんなヒーローの一人、ロールシャッハは一人の男の死に疑問を抱いて調査をはじめる。それが世界的陰謀につながるとも知らず……

 ヒーローとはなんなのか? それはアメリカン・コミックの、ひいてはアメリカン・カルチャー自体が問い続けた問題である。アラン・ムーアとデイヴ・ギボンズによる原作コミックは、その巨大な思考実験の成果だとも言える。世界を救うためにヒーローは何をするのか。その行為は是認されるべきことなのか? 1986年に発表された原作がアメリカ社会の現在をえぐりとってみせるのは、その問いがどこまでも根源的なものだからである。ヒーローたらんとして人間性を失っていく者に対し、あくまでも人間であることをやめないロールシャッハの叫びが尊い。(「朝日新聞」2009年3月27日号夕刊)

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2009-04-10

アライブ -生還者- (2007)

 本日発行の朝日新聞2009年4月10日夕刊に『アライブ -生還者-』のレビュウを書きました。『アンデスの聖餐』ではありません。実際にアンデス山中から帰還した人たちが現場に戻ってそのときのことを語るというもので、いろんな意味ですごい映画でした。彼らにとっても一種の絶頂体験であったということがわかります。4/11より公開。

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本の雑誌2009/05月号

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〈本の雑誌〉の連載書評コラム「柳下毅一郎の特殊な本棚」、今月は《稀代の大強盗「強盗亀」の華麗なる生涯》と題して『強盗亀捜査顛末 明治警察の秘録』(客野澄博 愛媛新聞サービスセンター)の紹介。強盗亀はあまり知られていないが明治犯罪のスーパースターの一人である。アメリカ金融危機の影響でコラム文字数が削減されてしまったおかげでとうてい書ききれなかったんだが、ここに出てくる以外でもすごいエピソードがいくらもあるので、今後とも注目していきたい。そして気になった人は是非〈本の雑誌〉もお買い求めを!

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2009-04-04

著者来店

 読売新聞3/29付け書評欄〈著者来店〉のコーナーで、『日本映画最終戦争』について著者インタビューを受けました。ついにクマちゃんの素顔が明かされる日が来た! 紙面がウェブの本よみうり堂に転載されていますのでまだごらんになっていない方は是非。しかしなんなんだろうねこの写真は。

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2009-04-02

Gelatin Silver,Love (2009)

監督・撮影:繰上和美 出演:宮沢りえ、永瀬正敏 公式サイト

 元カメラマンである永瀬正敏は謎の男に依頼されて謎の女(宮沢りえ)の家をビデオカメラで監視することになる。音のない画面に映る女の姿を見るうちにいつしか男は女に魅せられていく。ゆでたまごを食べる宮沢りえ。床でごろごろ転がる宮沢りえ。ゆでたまごを食べる宮沢りえ。股間をまさぐる永瀬正敏。ゆでたまごを……しまいにゆでたまごを食べるりえのアップを移した液晶テレビ(SONYブラビア)相手にビデオドロームしちゃったりして。

 いやあギャグならいいんだけど、これ百パーセントマジだからな。脚本は『偶然にも最悪な少年』でオレを激怒させてくれた愚スーヨン。まだ生きてたのか!

「ゆでたまごは好きですか? 美味しいゆでたまごを作るにはゆで時間は12分30秒でなければいけません。12分30秒ぴったり、一秒の誤差も許されません」と永瀬は語りかけるのだが、半熟卵作るのに12分30秒は長すぎるよ! その台詞を言って無視されたあとの永瀬の行動こそ、この映画を見てオレがやりたかった唯一のことです。

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