レインフォール/雨の牙 (2009)
監督・脚本・擬闘:マックス・マニックス 出演:椎名桔平、長谷川京子、ゲイリー・オールドマン 公式サイト
いやーこれはすごい。ぼくもいろいろすごいものを見てきたが、ひょっとしたらこれは今年ナンバー1かもしれない。それくらいすごい。どのくらいすごいかというと……
……とやかくあって、ジャズ・ピアニストの長谷川京子のコンサートに元秘密工作員の事件屋椎名桔平が訪れる。休憩時間に「実はオレはジャズ雑誌の編集者なのだが、取材させてもらえるか」と持ちかけると、ハセキョーは「えー? ハンサムな人?」などとウキウキで迎える。実はこのとき、三週間前にハセキョーの父(国交省の高級官僚)は通勤中に突然心臓発作を起こして死に、この前日には家に何者かが侵入してハセキョーの妹は射殺されているのである。そうした状況でライブやってるハセキョーってなんなの!? で、会うとキッペーはいきなり
「きみは命を狙われている、オレを信じろ」
「えーだってあなた最初から嘘ついてんじゃん。それで信じろって言われてもさー」
そこにファンを装った殺し屋がやってきて、本当にハセキョーは襲われる。しかしキッペーが目にもとまらぬ早業で殺し屋を撃退、キッペーは殺し屋に尋問する。
「誰に雇われてるんだ?」
だが殺し屋は
「俺の方が知りたいよ……」
と言って息絶えるのだった。いや知りたいのは客の方だっていうの!こんな脚本がありえるとは思わなかった!
「マクガフィン」というものを間違って解釈しているとしか思えない脚本のせいで、映画がはじまってから一時間半くらいするまでCIAとヤクザとキッペーが争奪戦をくりひろげるメモリースティックに何が入ってるかわからないのだが、ついに判明したその正体とは!
役人が賄賂をもらって無駄な公共事業をばらまいているので、その秘密を使ってCIAは日本政府を支配下に置こうとしていたのだ!
ってそんなことはとっくに日本中みんな知ってるし、日本政府はとっくにアメリカのいいなりに門戸開放してるっての! 超翻訳調の脚本から怒鳴ってるだけのゲイリー・オールドマンまで、一分の隙もない大ケツ作! しかもパンフは800円!
新宿ミラノ2で見たんだが、男子トイレにはニコラス刑事主演『バンコック・デンジャラス』のCMステッカーが貼ってあった。
「命中率100% 完全無欠のトイレ利用者/一滴のミスさえ許されない」
……いいのかこれ。
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コメント
「レインフォール/雨の牙」は予告編を見ただけで「GOEMON」同様の地雷臭がするし、GWは「グラン・トリノ」「スラムドック・ミリオネア」etc・・・と見たい洋画がいっぱいあるので、僕は最初から除外している。つまらない映画とわかっているのに見るのはお金と時間が勿体無いから。
映画評論家とはいえ、わざわざこんな地雷映画を踏みたくないでしょう。心から同情します。
それからポール・ナッシーの本を読んで思ったのですが。
今のつまらない邦画ってポール・ナッシーのつまらない映画とは質が違うような気がするんですよね。どう違うのは僕の悪い頭では言葉にできないのがもどかしいのですが。なんだろう。ナッシーのつまらない映画は無邪気だから許せるけど、つまらない邦画は悪質のポリープみたいで看過できるもんじゃなくなっているということかなぁ。
投稿: 通りすが郎 | 2009-04-28 00:06
ゲイリー・オールドマンが出る必然性はないような気がします。
それと、トイレのステッカーはニコラス・刑事のリアルフェイス具合とキャッチコピーに、放尿しながら爆笑しました。しばらく腹の痙攣が収まりませんでした。
投稿: ウーリー | 2009-04-30 01:17
>通りすが郎さま
まさか邦画界の現状の話から、ナッシーに話題が及ぶとは!感慨無量です。
ところで、B級駄作王として知られるナッシーですが、傑作もあります。イタリア製作のジャッロもの、『Sette cadaveri per Scotland Yard』です。
ナッシーが脚本と主演を務めた、「切り裂きジャック」ものの思わぬ拾い物です。ナッシーも捨てたものではありません。
投稿: 謎のタヌキ団 | 2009-04-30 05:50
椎名桔平もセリフ棒読みで、予告編でI can't do this anymoreと自分で申しておりました。
ハハハハ
ゲイリー・オールドマンは、キャリアに傷がついてしまいましたね。
投稿: Evermore | 2009-05-04 17:41