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2008-10-27

背徳映画祭@下北沢LA CAMERA

イメージリングスの背徳映画祭を見に下北沢LA CAMERAへ出かける。

一番楽しみにしていた吉行由実監督『空恋〜切りナイ恋物語』が、浦井崇監督吉行由実主演『愛の座礁』に差し替えになっていた。どうしたんだろう……と思いながら見ていたのだが(映画自体はまあ、面白かった)、終演後、出演していた藤原章からその理由を聞く。そういうことだったのか! それは吉行監督作品を見たいすぎる(Vシネマの仕事のせいで仕上げ時間がなくなってしまったらしい)。

しまだゆきやすの『フェリーニの京都』は宮田亜紀がちっともビッチに見えない(上品すぎる)ところが弱い。

枡野浩一の『バイバイと鳴く動物がアフリカの砂漠で昨夜発見された』は「この人とだけは関わりたくない!」と思わせてくれる粘着質の映画。つまり、作者の人となりが(たぶん……ぼくは付き合ったことがないので!)完璧に表現された傑作。

いまおかしんじの「ヘルシンキの濡れた砂」は無理矢理ないところに映画を作っている感じ。それでもとりあえずかたちになってしまうのがいまおかしんじの偉いところだけど、さしものいまおかしんじも、狙いどころをことごとくはずしつづける佐藤宏の前にはどうしようもなかったか。佐藤宏がもうちょっとものがわかってたら、最後は海辺で水のかけっこをするか、抱き合って砂浜をごろごろするかしてたはずなのに。

大木裕之の『LAST CITY』は傑作。普通に傑作。しかもここでしか上映できない映画でもある。

今回の背徳映画祭、なかなかいい映画がそろっていたんじゃないでしょうか。普通、ここまで安定してくると逆に停滞しそうなものだが、なおもアグレッシヴな作品が出てくるところがすばらしい。これで吉行監督作品が完成していたら伝説になったはずなんだが…!? まあそれは第五回に期待しましょう。

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2008-10-21

TIFF supported by TOYOTA

 東京国際映画祭にキム・ギヨンを見に行った。上映10分前になると場内の明かりが落ち、CMが始まる。次もCM…もう一本…またCM…いったい何本CMかかるんだ!? 心底あきれたんでリストアップしてみた。

競輪、SANKYO(パチンコ)、森ビル、東急、ANA、FANCL、Panasonic VIERA、大和証券、FUJISOFT、木下工務店、コカコーラ、TOYOTA Netz

 以上12本。映画祭公式上映の前にこれだけCMが! こんな映画祭、世界のどこにもないよ! どれもこれも恥を知らない企業というよりないが、中でもどうしようもないと思ったのはタイトルにまで「supported by TOYOTA」と打たせてるくせにまだCMをかけるトヨタ!それに社長が出てきて町作りがどーとか噴飯もののセリフを言う森ビル! こんなことしないと映画祭できないんだったらやめちゃえよ、もう…

 だがそんな中でも映画はすばらしかった。今日は『下女』、『水女』、『火女'82』と三本見たのだが、軍事政権のプロパガンダ映画(セマウル映画)として作られたらしい『水女』があまりにすばらしくて悶絶。ヴェトナム戦争でびっこになった傷病兵と吃音を恥じて口をきかない女とのラブストーリーなのだが、二人はひたすらエゴをぶつけて傷つけあうばかり。軍事政権の後援で作られた国策映画なのに。そしてラストには驚異の「児童憲章」で大盛り上がり! 「児童憲章」読むだけなのに映画が異様な高揚を見せて、心から感動してしまったのである。すごい。キム・ギヨンすごい。そして世界よありがとう!

 興奮冷めやらぬ篠崎誠、佐々木浩久、青山真治らと話したりしながら一日を過ごす。

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2008-10-20

とうじ魔とうじ生誕50年祭

 下北沢ラ・カーニャにて。

 サウンド・パフォーマとうじ魔とうじ(特殊音楽家)の生誕50年祭に出かける。友情出演ゲストは寺岡佐和子(アコーディオン)、新藤武吉(限界狭間アーティスト)、山中カメラ(特殊写真家)、吹雪ユキエ(フォーク)、賃貸人格(テルミン)、あと石川浩司他。名前を知っていたのは山中カメラぐらいだけど、さすがとうじ魔とうじだけあってどれも尖っていて面白かった。いきなり70年代フォークな吹雪ユキエがなかなかいい感じ。あとテルミン弾き語りの賃貸人格。「わたしの歌は暗い歌ばかりなんですけど、今日はとうじ魔さんの誕生日なんで明るい曲をやります」と言って歌いはじめた曲が…!

 ちなみにイベントの最中、スタッフの一人が倒れて救急車で運ばれる騒ぎに。いろいろ波瀾万丈なイベントだったとさ。

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Bloodhag "Hell bent for Letter"

Bloodhag

 暇検索をしていた発見したSF文芸スラッシュメタルバンド。うーむ。ライブ映像を見るとあからさまにSFヲタなデブが絶叫しているのであった。探したら、iTMSにもあった。やはりGene WolfeとThomas M Dischだけでも買うべきか?

 公式サイトはここ。

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2008-10-15

ディッシュ追悼

22b
 10/11(土)に開かれた京都SFフェスティバルで「ディッシュ追悼」企画に参加してきました。パネリストはぼくの他、牧眞司と樽本周馬(国書刊行会)の三人。まあ参加者の読書レベルなぞ一切考えずに飛ばしていたので、よく考えてみたら「いさましいチビのトースター」の話が一度も出なかった! ぼくは『歌の翼に』ってゲイ小説だよね、などという話をする。あと、本来パネリストとして登壇するはずだった若島正氏が所用で欠席となったので、勝手にその代役を務めようと思い、ディッシュがナボコフファンだった証拠としてPuppies of Terraという長編の紹介をしたのだけど、あまり受けなかった……
 なお、樽本くんは「せっかくこのために復刊のネタを仕込んで『おおっ!』という反応を期待していたのに、全然客席の反応がなかった…止めちゃおうかなあ…」などとぼやいていたので、心あるディッシュファンはもっと騒いであげてください。

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2008-10-06

全文引用

Deuxmagot  既報の通り、第18回Bunkamuraドゥマゴ文学賞は中原昌也の『作業日誌2004-2007』(boid)が受賞した。本日は華々しいその授賞式。会場で配られた中原の「受賞の言葉」がたいへん素晴らしかったので、選者高橋源一郎のひそみにならって全文引用してみる。

長い間、ご愛読ありがとうございました 中原昌也

「長い間、つまらないものをわざわざお読みいただいて、本当にありがとうございました!」と逆にこちらが深々と頭を下げて、百万円を黙って、どこかの慈善団体に寄付すべきなのに…残念ながらそんな余裕はまったく持っていないし、それ以前に、そんな金があったら破綻した自分の生活を何とかすべきだ…溜まりに溜まった家賃や公共料金に(本音としてはそんなくだらないものにビタ一文も払いたくはないのであるが)。
 今回、賞金百万円もいただける立派な賞を恵んでいただき、おかげさまで、これで無意味な権威ばかりを与えられて無一文なままダラダラと延命していた、作家としての「中原昌也」の立派な弔いにはなった。
 それだけで感無量であり、もう書くべきことは何もない。
 これ以上の余計な「受賞の言葉」を書き添えるとしたら、本当に余計なことばかりを書き連ねることになってしまう。だから、このあとは掲載されないつもりで書いてみる。

 実はこのあとがさらに素晴らしいのだが、それはいずれここらへんとかで公開されるのだろうから、適当に探して読んでみていただきたい。ともかくこれで中原はもう作家活動からは足を洗うということなので、間違っても作品を期待したり芥川賞の候補にしたり2chの文学板にスレを立てたりしないように。

 二次会では例によってiphone話。阿部和重氏もiphone使いらしい。「2tch freeだけは入れてます」とのこと(笑)。

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2008-10-04

アディクトの優劣感 (2007)

Addicts_flyer監督:藍河兼一 出演:青山華子 公式サイト 原作文芸社刊

 去年の終わり、この映画のチラシを見てものすごい衝撃を受けたのである。そこには「mixiで発掘された新人女優がヒロインをつとめ」と書かれてあった。mixiでヒロインを募集する映画が商業映画として普通に公開されている! 日本映画はどこまで堕ちるのか!? 以来、この映画のことが気になって気になってしょうがなかったんだが、ついにDVD化されたので手にとった。ところがそのDVDジャケを見て、オレはまだまだ甘かったんだと気がついた。そこにはこう書いてあったのだ。

刺激的映像体験! “デフォメ”が映し出すアディクトたちの世界とは…。
“デフォメ”とは--【デジタルフォトアニメーション】 高画質デジタルカメラのスチルをアニメーション化した新手法。連続撮影した実写画像を、アニメーション的に一枚一枚加工し動画化。スチルカメラのレンズが切り取る映像はハイビジョンカメラよりも高画質で奥行き感がある。従来のデジタルビデオシネマをはるかに凌駕する高画質映像が、気鋭のアニメクリエイターたちの技術力によって完成。かつて誰も見たことのない驚きの映像がここに誕生した。

 そりゃ誰も見たことないよ! ていうか映画じゃない! ただの(クリスピン・グローヴァー抜きの)スライドショーじゃないか! こんなものが映倫マークをきちんと取り、入場料金1800円でまがりなりにも上映されてしまうという恐ろしさ。

 主人公は離婚した元主婦レイカ(26)。彼女は2007年5月28日に「俺は理解しあいたいなんて思ってないんだよ!」と意味不明の言葉を叫んで出て行った恋人が死んで以来、抗鬱剤にはまりこむ日々を送っていた。一ヶ月後、薬が切れて正気にかえったレイカは恋人ヒロユキが残していったパソコンを開く(一ヶ月間、パソコンの中身も携帯も見ていなかった!)。パソコンのデスクトップには「2007/5/28」というファイル名の文章ファイルが置いてある。開いてみると、「アディクトの優劣感」と題された文章にはレイカの知らないヒロユキの一年間が記されていた……

 ま、何があったかっていうと、ヤク中のクラブ経営者のヒロユキは一回り以上下の少女ヒノコ(mixiで見いだされた青山華子)という天然系少女にふりまわされるうち、「オレ、ヒノコ中毒になっちゃった」と言いだし、しまいに「インパルスアディクトのオレに最後に残された刺激は無という存在に触れることだけだ」(無には触れられないよ!)みたいなことを言い出してオーバードーズであの世に行ってしまったっていう話である。これがパラパラ漫画で語られるわけで、いやーすごいねこれ。これは劇場で見たかったなあ。まあ絶望して「無という存在に触れたい!」と思ってしまった可能性もあるが。

 それにしても「アディクトの優劣感」というこのタイトル。もちろんこんな日本語は存在しないわけだけど、中にもまったく無意味だったのにはさすがに恐れ入った。「映画」の中では普通に「アディクトの優越感」として語られていたよ!

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2008-10-03

究極性感 恥穴えぐり(2004)

監督・脚本:山崎邦紀 出演:佐々木麻由子、佐々木基子

 山崎監督の2004年作が上野オークラで再映されているので見に行く。ヒロインの佐々木麻由子はテレビでも人気の美人セックス・カウンセラー。「女性の身体の中にも獣がいるのです。男性の言いなりになっていてはいけません」と言っているのだが、鋼鉄のペニスを持つ患者にアナルレイプされて失神してしまい、自信を失ってしまう。女性の内なるセックスの解放というテーゼが崩されてしまったのだ。そんな彼女はある日、ゴムフェチのレズビアン(佐々木基子)に出会う。「人間はコンピュータと接続してもはやサイボーグになっている。汚い人間の皮膚なんかよりゴムに取り替えるべきよ!」と主張していつもゴムを身につけている。ゴム手袋に包まれた手を見たカウンセラーは「突破口は…アナルの拡張よ!」とアナルフィストファックこそが真の快感への道だと喝破するのである。

「(アナルフィストは)男も女もゲイもレズも境界を越えてつながりあえるのよ!」と言って「女性の内なる獣」から「私たちの内なるプラグに接続する、新たなコンセント」へと進化する佐々木麻由子こそ、まさしくサイボーグ・フェミニズムなのだ! 小谷真理氏の本は読んでいませんが、たぶんそういうことだと思うな~ というか、山崎監督は確実に小谷真理(またはダナ・ハラウェイ)を読んでいるので、フェミニズムの人たちはもう少し注目してあげるべきだと思ったよ。最後はもちろんみんなでアナルフィストの輪を作って全員昇天。

 インポで「私のように金もなく男も立たない人間は、ゴミ集積場のゴミ袋に過ぎないのです」とか言ってるなかみつせいじがしみじみと素晴らしい。それにしても、これを見ながら、つくづく自分はこの手の奇想コメディが好きなんだなあ、と思ってしまったよ。

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