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2008-09-30

京都SFフェスティバル

 10/11(土)〜12(日)に京都教育文化センターで開催される京都SFフェスティバルに参加します。

 ぼくが出演するのは本会15:50〜の「ディッシュ追悼」 樽本周馬、牧眞司の三人で本年7月に死去したトマス・M・ディッシュについて語ります。難解と言われがちなディッシュだけど、今読みなおすとすごくシンプルでわかりやすい小説のような気がする。ディッシュのアウトサイダー性とか、そんなことを話す予定です。みなさまよろしければ京都観光がてらご参加下さい。

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2008-09-25

サンセバスチャン映画祭


Monte Ulgull, Donostia
Originally uploaded by Garth Yanashita.
 スペイン北部、バスク地方の小都市サン・セバスチャンに来ています(バスク語ではDonostia)。現在開催中の第56回サン・セバスチャン映画祭の取材でJapon en negroと題して日本のフィルム・ノワールを特集するプログラムがあるので、その取材ということです。「え、これがフィルムノワール?」と言いたくなるようなタイトルも散見されますが、43本を数えるかなり野心的なプログラムで、黒沢清から伊藤俊也までゲストも多彩、大いに楽しんでいるところ。

 街もこじんまりとしてきれいで治安も良く、ホテルに帰ろうとしてふらふら道を歩いてたら、いきなりバールで飲んでた連中に「映画祭で来たのか? まあ一杯飲んでけ!」てな感じで奢られてしまったりする。

 先日はなんと掟破りの逆取材、El Diario Vasco というこっちの新聞に取材されてしまいました。日本から来たジャーナリストに特集上映の感想を聞くという趣旨だったみたいだけど、カメラマンにすごいポーズをつけられて、とんでもない写真を撮られてしまいました…ちなみに記事の中では、こっちで大いに話題になっているらしいTiro en la cabezaというETAのテロリストの日常を描いた映画について「映画的な欠点はあれど、現実と切り結ぼうとすることは高く評価したい」みたいな、妙に上から目線のコメントをしています(たぶん)。

 そんな具合で大いに楽しんでおり、実に素晴らしい映画祭だと思うのですが、ただひとつだけ問題があって、実は審査員の中に原田眞人が……

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2008-09-18

カナザワ映画祭2008 フィルマゲドン

 カナザワ映画祭2008 フィルマゲドンに参加してきました。

 今年の金沢はすごかった。クリスピン・グローヴァー見たさに藤原ヒロシから殊能将之古泉智浩までが金沢に集結、映画の方もとうてい信じられないようなもので、ただただ呆然の時間だった。前のエントリにも書いたように、ぼくは字幕を担当したのだけれど、It is Fine. Everything is Fine!を見るのはこれがはじめて。話は知っていたのだが、まさかあんなイメジャリーが登場するとは思わなかった。度肝を抜かれたとはこのこと。

 It is Fine. Everything is Fine!はすさまじい情念の映画だった。一生に一本しか作れない類の映画だと思うけれど、What is it?もやはり一生に一本しか作れない映画(こちらは正しくLAアンダーグラウンドの教養にのっとった、ケネス・アンガーの正統な後継者たる作品だ)だったので、クリスピン・グローヴァーというのはつまりそういう映画作家なのかもしれない。

 ちなみにこだわるところには偏執狂的なこだわりを見せてスタッフをてんてこまいさせていたクリスピンなのだが、ファンサービスはちっとも苦ではないらしく、サイン会も全員にサインし終わるまで延々とやっていた。 サインのときには「どこから来たの? どこでこの上映のこと知ったの?」って聞いていたのだが「ぼくのサイト(ブログ)で」という返事ばっかりなので、しまいに「おまえのサイトはどんだけ読まれてるんだ? 日本でいちばんの映画サイトなのか!?」と聞かれてしまったよ! いやまあ「ビッグ・スライド・ショー」の観客の中ではぼくの知名度は100%近いだろうけどね!

 あと覆面オールナイトのことは……映画祭スタッフにはご苦労様と言うしかない! 本当にご苦労様!

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2008-09-13

「秘宝系」って誰のことだ?

誰が渡辺文樹を駄目にしたのか? で

ここははっきり書きますけど、柳下さんなどももう渡辺を追い掛けない方がいいと思う.。
と書かれていた。どうやらこの人は
一般のジャーナリズムや映画関係者が渡辺に無関心となり、秘宝系の人たちしか相手にしなくなってから、あの人はどんどん自分で自分を追い込んでいますよ。
「秘宝系の人たち」が無責任に煽り立てるせいで渡辺文樹はどんどん過激なテーマを追いかけるようになったのだ、と考えているらしい。「秘宝系の人たち」というのが誰を意味しているのかよくわからないが、秘宝まわりで渡辺文樹の追っかけをしているのはぼく一人なので、とりあえずぼくに対して言われているのだと考えて話を進める。

 ぼくは無責任に渡辺文樹の無法を煽りたてているだろうか? 過激であればあるほどいい、というような態度を取っているだろうか? ぼくは渡辺の『腹腹時計』を見にわざわざ清水まで行ったが、その経験はわが映画観に深く影響をおよぼしている。それは『興行師たちの映画史』にもはっきり書いたとおりだ。渡辺こそ映画草創期の巡回興行師たちへの先祖返りなのであり、映画とはまさしく渡辺文樹が上映するようなもののことなのだ。だから、ぼくは渡辺の映画をどこまでも追い続ける義務があると思っている。それが自分にとっての映画体験だからだ。

 そもそも

一般のジャーナリズムや映画関係者が渡辺に無関心となり、秘宝系の人たちしか相手にしなくなってから、あの人はどんどん自分で自分を追い込んでいますよ。
が本当ならば(ぼくはそうは思わないが)、責められるべきは「一般のジャーナリズムや映画関係者」の方ではないのか? 具体的に名を挙げればさっさとケツをまくった四方田犬彦が責められるべきではないのか? その責任を問わず
もちろんこれが、『天皇伝説』を上映させないための逮捕だったのは事実かもしれない。しかし「上映を前に右翼団体などによる妨害行為が懸念されてい」た状況下で、もし上映が行われていたら渡辺自身の身も危なかった可能性がある。渡辺はこの逮捕のお陰でむしろ命拾いしたと考えるべきだ。また一般観客も遊び半分で出掛けて危ない目に遭わずに済んだと思うべき。
と公安の予防拘禁を良しとする神経が理解できない。

 だいたい渡辺文樹の映画を見もせずに

誰にも追い掛けられなくなれば、あの人も自然と映画を撮るのは辞めるでしょう。
と言うあたりでお里が知れている。『天皇伝説』を見ればわかるように、渡辺文樹はどんな思想をも凌駕して映画小僧である。『天皇伝説』のアクション性は昨今の「アクション映画」など顔色なからしめるほどに濃厚なものなのだ。そもそもぼくが『天皇伝説』についてのエントリ
高橋洋、篠崎誠、黒沢清はいかな障害があろうともこの映画を見て打ちのめされるべきである。
と書いたのはなんのためだと思っているのだろう? 重要なのは政治思想などではなく、肉体アクションとしての渡辺映画なのである。その意味もわからず、『天皇伝説』をただ反天皇制を訴える思想映画だと思っている時点で、上っ面だけを報じて映画を見ない『週刊新潮』と同レベルだと言うべきである。

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2008-09-11

頗る非常! 怪人活弁士・駒田好洋の巡業奇聞

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『頗る非常!』(前川公美夫 新潮社)を読む。これはたいへんな労作。

 駒田好洋とは日本における弁士の草分けで、派手な巡業隊を仕立てて日本中津々浦々まで巡回興行にまわったことで知られている。本書は都新聞に連載された駒田の巡業記の復刻なのだが、これがもう抜群におもしろい。いまだ映画が産業化されておらず、中央集権も確立されていない時代のことゆえ、各地をしきる興業のボスも山師やヤクザの親分みたいな連中ばかりだし、そういう輩と口八丁で渡りあい、夜逃げ朝逃げをくりかえす駒田の巡業行はほとんど痛快な冒険譚のノリである。北海道に呼ばれて、利尻島のヤクザの賭場で映画を上映する話なぞとても実話とは信じられないようなおもしろさ。

 この本がすごいのは、ただ駒田の巡業記を復刻するだけではなく、日本中の市町村に問い合わせ、新聞の広告をしらべて、当時の劇場や興行主の名前、巡業経路までをも確認していること。ものすごい手間をかけたおかげで、かけがえない本ができた。著者は元北海道新聞編集委員だそうで、なるほどこれは新聞記者の仕事である(映画評論家ではこんな本は作れまい)。

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2008-09-06

時計じかけのオレンジ 完全版

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 アントニイ・バージェスの『時計じかけのオレンジ』が〈ハヤカワ文庫の100冊〉フェアの一冊として刊行されます。ハヤカワepi文庫から出た「増補版」は、文庫としてははじめて最終章(第三部第七章)が収録された完全版。これまで最終章はバージェス全集版でしか読めなかったんですね。ぼくは解説を担当したので、そこら辺の事情も含めて書いています。本屋で見かけましたら手にとっていただければ幸い。中身はもちろん傑作ですので、そろそろキューブリックの呪縛を解かれて読むのもいいんじゃないかと思います。

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2008-09-03

カナザワ映画祭2008

20080813073051  来る9/12~9/19まで開催予定のカナザワ映画祭〈フィルマゲドン〉。ぼくはクリスピン・グローヴァーのBig Slide Showの字幕を手伝っています。ところがこれが思いがけず、というか予想通りにとんでもない仕事で……

 クロスピン・グローヴァー監督の二作なのだが、字幕台本と一緒に送られてきた映画のDVDがなんと画面を真っ黒に消してある音声だけのバージョン。なんでも以前映画祭にDVDを貸したらネットに流出したということがあって以来、たとえ映画祭ですら信用せず、誰にもビデオは貸さないのだという。いくら頼んでも貸してもらえないので、結局映画を見ないまま字幕をつけるというとんでもないことになってしまった。

 画面なしのDVDを聴きながら字幕をつけていたのだが、二本目、IT IS FINE!の方がおかしい。長さも55分しかないし、途中で重要な部分が抜けている。どうも一巻抜けてるんじゃないか? 頼むから音声トラックだけでいいから送り直してくれ(この時点では、もはや「音声トラックだけでいい」ことになっている)と頼むと、送られてきたのは……前回と同じものだった(笑)。再度頼んで、ようやくちゃんとした長さの音声が送られてきたのである。

 しかししょせんは音声トラックだけ。映画を見ないで字幕を作っていることには変わりないので、とんでもないことになっている可能性もある。やれやれ……というところに、今度はBig Slide Showのダイアローグ・リストが送られてきたのだが、これがものすごい厖大なしろもので……本当に間に合うのだろうか? もはや伝説のイベントになるのは確実だ!

 ちなみに駅前シネマオールナイトも実現すればまちがいなく伝説となるので、迷っていらっしゃる方は是非。ぼくもそのころにはすべての責任から解放され、放心状態で参加していることでしょう。

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