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2008-08-28

天皇伝説 (2008)

 東京発15:08のMaxやまびこ121号で福島に降り立つ。本日、世界最初の上映となる渡邊文樹監督作品『ノモンハン』、『天皇伝説』を見るためである。降りるとすでに駅前はポスターだらけで文樹世界……ではない。ポスターがない。どこにもない。文樹映画のトレードマークとなっていたポスターがどこにもない。本当に上映はあるのか……という不安は上映直前まで続いた。

 開場時間に会場の福島県文化センターに着くと、いつもの渡邊文樹が待っていた。六時半から『ノモンハン』(世界初上映)。これは実は『ザザンボ』以来の福島の土着性を感じさせる重厚な作品で、渡邊文樹の映画作家としての実力を存分に味あわせてくれる。ヒロインの黒瀬麻美が藤原紀香似の美人で、文樹映画の美人素人女優の系譜にまた一頁が加わった(ちなみにサブヒロインもなかなか可愛い)。

 だが、心底驚かされたのは『天皇伝説~血のリレー』である。延々と天皇家の血にまつわる謎が語られ、「まあ渡邊文樹の言いたいことはわかるが、映画としては……」と思っていたところへいきなり不意打ち!?! まさかこんなところで『××の××』の再現を見ようとは思わなかった。これは参った。いまどき四畳半で誰も興味を持たない自分の内面について映画を作って満足している自主映画青年たちはみんな文樹の爪の垢を煎じて飲むべき。そして高橋洋、篠崎誠、黒沢清はいかな障害があろうともこの映画を見て打ちのめされるべきである。

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2008-08-26

〈津山三十人殺し〉幻視行

Tsuyamajashuumini  ザムザ阿佐ヶ谷に月蝕歌劇団公演を見に行く。題して「〈津山三十人殺し〉幻視行」! 都井睦雄ブームはおさまらず、ついに高取英まで参入したというわけだ。音楽はもちろんJ・A・シーザー。

 物語はいきなり鬼となった睦雄(胸のナショナルランプは再現されていたが、頭の懐中電灯は天井向き)が虐殺をはじめるところから。村人を殺し尽くそうとする睦雄の前に三人の男があらわれ、「おまえのあこがれの人に会わせてやろう」と持ちかける。「あこがれの人」それは阿部定で あった。

 阿部定と都井睦雄を結びつけた芝居は実は前にもあった。燐光群の『阿部定と睦夫』 である。高取英もこれを見ているのではなかろうか。ただ、もちろん月蝕だけにここからの展開はまるっきりオリジナルで、なんとその三人は睦雄の書いた小説の登場人物であったことが判明する。さらに睦雄の驚異の戦闘力に目をつけた大日本帝国陸軍もスカウトに…

 なかなかおもしろうございました。高取英っていつの間にか時代に追いついていたのかなあ、とかやくたいもない感想を抱いた(ていうか、時代の方が「月蝕」的なものに近づいたのかな) 。ちなみにいちばんびっくりしたのは「おばやん」役が佐倉萌だったことである。

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2008-08-24

S-Fマガジン2008/10

720810 〈S-Fマガジン〉2008年10月号は野田昌宏追悼特集&〈新しい太陽の書〉読本。ぼくがかかわっているのはもちろん〈新しい太陽の書〉読本の方で、「特集監修」ということで収録作の選定などをやりました。

○『地図』 ジーン・ウルフ/柳下毅一郎訳
○『葉と花の帝国』 ジーン・ウルフ/宮脇孝雄訳
○ウルフ・エッセイ・セレクション 中野善夫訳
○作家論「ナボコフ読みの目から眺めたウルフ」 若島正
○ウールス人名・地名辞典 香月祥宏=編

「地図」はウールスを舞台にして、〈新しい太陽の書〉の登場人物も出てくる外伝的作品。「葉と花の帝国」は「茶色い表紙の本」ことセヴェリアンが持ち歩いている『ウールスと天空の驚異の書』の中の一挿話(ただし、『ウールスと天空の驚異』は伝説や昔話などの集大成らしいので、これが本に書かれているままかどうかはさだかではない)。あと、エッセイはThe Castle of the Otterから。

特集解説にはいろいろ書きましたが、ぼくが取り上げたキャラクターだけでなく、どのキャラクターに注目して読んでも、実は同じようなことが書けるはずです。読者一人一人が、〈新しい太陽の書〉の中でお気に入りのキャラクターを見つけ、彼にまつわる物語を読みとっていってほしいと思います。

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2008-08-23

蟹工船 (1953)

監督・脚本・主演:山村聡 撮影:宮島義勇 音楽:伊福部昭

 3時半からの回を見ようと3時過ぎに行ったら池袋新文芸坐は満員御礼の大混雑で、ロビーにすら入れず冷房の効いていない階段に並ばされる人々。暑い中ぎゅう詰めにされて待たされる人々の姿はまるで蟹工船で働かされる労働者のようで、ついには醜い席取り争いまではじまって……

 それにしても宮島義勇の撮影するハイキーでスタイリッシュな船内工場のオートメーション作業に荘重な伊福部マーチがかかった日には、格好良すぎて、もう……宮島撮影は霧にけぶるカムサッカの海もすばらしかった。演出は手慣れた感じだけど、いきなり暴動のシーンで鮮やかなモンタージュになったりする。『ポチョムキン』とか研究しているのだろうか。

 誰もが気になる浅川監督を演じるのは平田未喜三。もう少しギラギラした感じが欲しかったが、これはインテリ山村聡の弱点かもしれない(これが山本薩夫ならな……)。このところ、映画における貧乏表現についてばかり考えているのだが、ここでもやはり蟹工船労働者たちの顔つきに見とれてしまう。今の役者であの貧乏のリアリティを出すにはどうしたらいいのだろうか(ちなみに、最近の映画でいちばんきちんと貧乏だなあ、と思ったのは『実録・連合赤軍』である)。

 ちなみに併映は『太陽のない街』。さすが“赤いデミル”山本薩夫だけあってエロありアクションありの大娯楽映画で大いに楽しむ。印刷会社の労働争議の話なのだが、ともかく権力が強大かつ悪辣すぎて労働者たちはやられまくり。ヒロインなんか闘争のせいで恋人は逮捕、妹は警察に虐殺、父親は自殺して天涯孤独の身になってしまうんだが、映画の最後、打ち振られる赤旗を見ているうちに心の中からわき上がってくる何かを感じて思わず走り出すのであった…ああ、アカっていいなあ!

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2008-08-17

その後のiPhone 3G

 相変わらず最強の「大人のおもちゃ」でありつづけているiPhone 3G。versionも2.0.1にあがって、欠点もいくつか解消された。2.1になったら、かなりいけるんじゃないか? 我が家ではいつの間にかWinterBoardが動いていたりするけど……早くiDic来ないかなあ。

 AppStoreのアプリでびっくりしたのがSimplify Media。これ、母艦のiTunesをファイルサーバーにして、iTunesに登録されている楽曲をiPhoneに向けてストリーミング配信するソフト(共有も可)。どういうことかというと、これによって、こと音楽に関してはiPhoneの容量問題は完全に解消されてしまう。我がMacminiには40Gばかし音楽ファイルが入っているのだが、いつでもストリーミングできるなら同期なんかしなくたってかまわない。なんの設定もしなくとも、3Gでまったく問題なく聞けるというのが凄すぎる。ちなみに歌手情報などはLast.fmあたりから勝手に引っ張ってくるようだ。
 ただし、母艦がスリープしているときはもちろんストリーミングできない。つまり外出中はWONで母艦を起こしてやる必要がある。で、探すとSleepoverというアプリがあった。この組み合わせで世界中どこからでも我が家のマックのHD内の音楽が聴けるというわけだ。今度、海外旅行するときに、是非試してみよう。

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2008-08-04

Collection: World Killers


  Collection: World Killers 
  Originally uploaded by Garth Yanashita.

 ワンフェスに行こうと思いたち、10時半ごろにビッグサイトに着いたのだが、入場がえらい大行列。しょうがないんでサイゼリアで時間つぶして、12時前くらい、ようやく行列がなくなったころに入ったのだが、そのころ、場内では大惨事が……

 まあ、ぼくが入ったころには、すでにそんな痕跡もなくて(ていうか、事故のことも知らなかった)、ただエスカレーターがすべて止まっていたのと冷房がなくて灼熱地獄だったということだけ……いやあ暑かった。歩いてる途中で足が吊りそうになってもう年だなあ、と思ったのだが、よく考えるとあれは脱水症状を起こしかけていたのでは? オタクは強いな。たぶん地球温暖化にも最後まで生き延びるのはオタク。

 わざわざ出かけたのは麻草郁(絶叫機械)くんが〈世界の殺人鬼シリーズ〉を作ると聞いたから。これを入手しないわけにはいかないだろう。いやあ素晴らしい。これは世界に売れるね! その他、気になったものの写真などはflickrの方に。

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アキバ通り魔事件をどう読むか!?

51jvtoanhul_sl500_aa240_  洋泉社から出た本の中で、“電波男”こと本田透くんと対談をしています。お互い、たいしたことを言ってるわけじゃないですが……

 その場でひさびさに再会したから、というわけではないのだが、本田くんが引っ越したというので、中野の新居に遊びに行く。最近のオタク事情の取材も兼ねて。

 なぜ老巨匠の最後の作品を看取るのはつねに所ジョージなのか?とかいろいろ話し、最近のアニメを見せてもらったりとか。いちばん笑ったのは「今いちばん狂っているアニ メ」ということで見せてくれた『ストライク・ウィッチーズ』。いやーすごい。何ひとつ意味がわかりません。作画が無駄にしっかりしているのがなおさら 「なんだこれ?」感を増幅させる。あれ、履いてさえいれば、まだ普通に駄目オタクアニメだったような気がするのだが、「履いてない」せいでアウトサイダー・アートのよう に不可思議なものになってしまった。 あまりに脳溶けで、つい続きを見てしまいそう。怖ろしい……

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