蟹工船 (1953)
監督・脚本・主演:山村聡 撮影:宮島義勇 音楽:伊福部昭
3時半からの回を見ようと3時過ぎに行ったら池袋新文芸坐は満員御礼の大混雑で、ロビーにすら入れず冷房の効いていない階段に並ばされる人々。暑い中ぎゅう詰めにされて待たされる人々の姿はまるで蟹工船で働かされる労働者のようで、ついには醜い席取り争いまではじまって……
それにしても宮島義勇の撮影するハイキーでスタイリッシュな船内工場のオートメーション作業に荘重な伊福部マーチがかかった日には、格好良すぎて、もう……宮島撮影は霧にけぶるカムサッカの海もすばらしかった。演出は手慣れた感じだけど、いきなり暴動のシーンで鮮やかなモンタージュになったりする。『ポチョムキン』とか研究しているのだろうか。
誰もが気になる浅川監督を演じるのは平田未喜三。もう少しギラギラした感じが欲しかったが、これはインテリ山村聡の弱点かもしれない(これが山本薩夫ならな……)。このところ、映画における貧乏表現についてばかり考えているのだが、ここでもやはり蟹工船労働者たちの顔つきに見とれてしまう。今の役者であの貧乏のリアリティを出すにはどうしたらいいのだろうか(ちなみに、最近の映画でいちばんきちんと貧乏だなあ、と思ったのは『実録・連合赤軍』である)。
ちなみに併映は『太陽のない街』。さすが“赤いデミル”山本薩夫だけあってエロありアクションありの大娯楽映画で大いに楽しむ。印刷会社の労働争議の話なのだが、ともかく権力が強大かつ悪辣すぎて労働者たちはやられまくり。ヒロインなんか闘争のせいで恋人は逮捕、妹は警察に虐殺、父親は自殺して天涯孤独の身になってしまうんだが、映画の最後、打ち振られる赤旗を見ているうちに心の中からわき上がってくる何かを感じて思わず走り出すのであった…ああ、アカっていいなあ!
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コメント
この話題の作品で、共産党が勢いずいているというジョ-クまででていますが、読むだけで十分だろ、と思っていますが、
「蟹工船労働者たちの顔つきに見とれてしまう」という一文で、気が変わりました(笑)!
投稿: 蟹工船、立ち読みしました | 2008-08-31 15:00