いつも明日がある (1955)
監督:ダグラス・サーク 出演:バーバラ・スタンウィック、フレッド・マクマレー、ジョーン・ベネット
PFFのサーク特集にて鑑賞。心底打ちのめされる。完璧な映画、完璧な絶望の映画である。フレッド・マクマレーは20年前に結婚して今では三人の 子持ち、玩具会社を経営する幸せな夫である。そこにある雨の夜(ほとんどフィルム・ノワールのように)20年前に突然会社を辞めた元従業員バーバラ・スタ ンウィックが訪ねてくる。彼女は今ではニューヨークで成功したファッション・デザイナーだ。無邪気に旧交をあたためていたマクマレーだが、息子が二人の仲 を勘ぐったせいで逆に雲行きがおかしくなってくる。自分の孤独を思い知らされたとき、昔の恋人と恋に落ちてしまうのだ。だが、その愛もまた報われない。別れ を告げにきたバーバラ・スタンウィックの顔に、ガラスに落ちる雨の影が落ち、まるで涙のように見える見事な場面。マクマレーは牢獄と化した家から飛び去っ ていく飛行機を見つめる。たったひとつの脱出の希望が飛びさってゆくのを。
良妻賢母の鑑のようなジョーン・ベネットが、すべてを見通した目で「彼女は可哀想な人よ。女としての希望が何ひとつかなわなかったのだから」と見下すように言い捨てるところが怖ろしい。心の底から打ちのめされたので、『第九交響楽』は観ないで帰る。
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