Welt am Draht (1973)
監督・脚本:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 出演:クラウス・レーヴィッチェ
原作はダニエル・F・ガロイの『模造世界』。エメリッヒが作った『13F』と同じ原作に基づく(リメイクではない)。ファスビンダーがドイツのテレビ局で作ったSFドラマで、前後二回シリーズで四時間という代物。以前から見たいと思っていたのだが、最近ようやく入手できた。
スーパーコンピュータでシミュレーション社会を作る実験をしていた研究所長ヴォルマーが急死した。後をついだスティラー(クラウス・レーヴィッチェ)の目の前で、警備局長ラウセが突然姿を消す。だが、ラウセなんていう人間は最初からいなかった、と研究所の人々は声を揃えるのである。
SFXを使わない、いわば『アルファヴィル』タイプのSFなので、出てくるのは普通の街角。やたらと鏡を使いまくり、鏡の反射と実像で切り返したりするファスビンダー流の映像マジックが全開する。すべてが反射で実像は存在せず、人はつねに鏡や窓の枠の中に入っている。もちろんそれはこの物語が人造社会、人の作った模造世界の話だからである。
物語自体は後半ただのアクションものになってしまい、主人公の実存不安まで行かないところが残念。広いカフェやオフィスを借り切って、人がいない中で延々と長回しの芝居を撮っているのを見ていると、なんとも贅沢な撮り方だな……という気がしてくるのは倒錯しているのだろうか。たぶん今ならCGを使って短いカットで細切れの映画を作る方が、はるかに安くあがってしまうはずだ。
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