Crash! (1971)
J・G・バラードが小説『クラッシュ』を書いたのは1973年のことだが、もちろんあの小説は突然誕生したわけではない。バラード読みなら当然知っているが、『クラッシュ』には先行作品がある。『残虐行為展覧会』に収録されている「衝突!」crash!という短篇だ。ジェイムズ・ディーンやジェイン・マンスフィールドの事故死にまつわる強迫観念が開陳され、これがやがて『クラッシュ』に描かれる自動車最終戦争の黙示へと広がっていく。
あまり知られていないのだが、実は本作は映像化されている。ハーレー・コークリスというBBCのディレクターが作った実験映画のようなものである。長年見たいと思っていたのだが、ひょんなことからyoutubeにあるのを発見した。
なかなか興味深い作品である。いかにもバラード・ファンが作りそうな自主映画だ、という意味も含めて(たとえば今ぼくが映画を撮ったら、たぶんこんな感じのものを作ってしまうだろう)。監督のコークリスは、その後アメリカで何本か映画を撮っている。
若き日のバラード本人(ナレーションも)ももちろん見所だが、注目は相手役を務めている女優。これなんと、ガブリエル・ドレイク。『謎の円盤UFO』のエリス中尉である! まさかこんなところでバラードとサンダーバードがつながるとは。ちなみに『クラッシュ』に登場する不具者ガブリエル(クローネンバーグの映画ではロザンナ・アークェットが演じた)の名は、彼女から取られているのだそうだ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
素晴らしい作品でした。クローネンバーグ監督作品では、『戦慄の絆』に次ぐ傑作であると思います。ともすると、原作を超えられない作品が、多い中に、これほどの、変態ムービーが、あったであろうか?(『変態』とは、オイラの褒め言葉です。)『裸のランチ』は、如何なものか?σ(^◇^;)。。。
投稿: 中園朋彦 | 2008-05-25 14:52