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2007-12-27

日本映画縛り首大賞

『映画秘宝』で好評連載中の「日本映画縛り首」で、年末を迎えるにあたって今年のワースト邦画を決めようということになった。少なくとも『週刊文春』の「きいちご賞」よりはきちんと(駄目)邦画を見ている自信がある我々だが、激論の末決定した本年度最悪邦画ノミネートは以下の通り。

第1回 はくさい映画賞(田野辺尚人命名) ノミネート作品

[最低作品賞]

  • 『大日本人』
  • 『ミッドナイト イーグル』
  • 『どろろ』
  • 『恋空』
  • 『ラストラブ』

[最低監督賞]

  • 原田眞人(『伝染歌』『魍魎の匣』)
  • 行定勲(『遠くの空に消えた』『クローズド・ノート』)
  • 塩田明彦(『どろろ』)
  • 愚・スーヨン(『THE 焼肉 MOVIE プルコギ』)
  • 北野武(『監督・ばんざい!』)

[最低主演男優賞]

  • 大沢たかお(『ミッドナイト イーグル』『Life~天国で君に逢えたら』)
  • 田村正和(『ラストラブ』)
  • 織田裕二(『椿三十郎』)
  • 堤真一(『ALWAYS 続・三丁目の夕日』『魍魎の匣』)
  • 松田龍平(『THE 焼肉 MOVIE プルコギ』『伝染歌』)

[最低主演女優賞]

  • 伊東美咲(『ラストラブ』『Life~天国で君に逢えたら』)
  • 竹内結子(『ミッドナイト イーグル』『クローズド・ノート』『サイドカーに犬』)
  • 柴咲コウ(『どろろ』『舞妓Haaaan!!!』)
  • 黒木瞳(『怪談』『魍魎の匣』)
  • 安藤サクラ(『風の外側』)

[最低助演男優賞]

  • 高橋ジョージ(『恋空』)
  • 石黒賢(『未来予想図』『ミッドナイト イーグル』)
  • 伊勢谷友介(『伝染歌』『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』)
  • チャン・チェン(『遠くの空に消えた』)
  • 津川雅彦(『蒼き狼 地果て海尽きるまで』)

[最低助演女優賞]

  • もたいまさこ(『めがね』)
  • 木村佳乃(『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』『伝染歌』)
  • 桃井かおり(『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』)
  • 長谷川京子(『愛の流刑地』)
  • 鈴木杏(『監督・ばんざい!』『椿三十郎』)

 厳しい競争を負けぬいたより抜きのノミネートから、最悪映画に選ばれるのはいったいどれなのか!? 受賞作は2008年1月21日発売の『映画秘宝』3月号で発表!

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2007-12-25

Sayuki Matsumoto in Hideo Azuma's "Chocolate Derringer"

監督・脚本 杉作J太郎 原作 吾妻ひでお 主演 松本さゆき、ロマン優光

制作 男の墓場プロダクション

 土曜日深夜、中原昌也と飲んでいたらギンティ小林から電話が入る。
「柳下さん、明日昼間空いてますか?」
「いやまあ空いてるけど……」
墓場へようこそ!
……というわけで松本さゆき主演吾妻ひでお原作墓場超特作『チョコレート・デリンジャー』に出演することになってしまった。大部屋の一人として阿呆面をさらしております。撮影には二日ほど参加したけれど、脚本は思いがけずに面白く、松本さゆき嬢はチョーかわゆく、ロマン優光は吾妻ひでおが描いたとしか思えないキャラを体現、杉作監督の大蔵貢イズム(「テスト一回、ハイ本番」)もますます冴えわたり、墓場プロ最高傑作となるのは間違いない。映画は来春にも完成、公開予定なので乞うご期待!

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2007-12-21

シネマ・ハント

Cinemahunt 〈エスクァイア〉で連載していた映画評が、単行本としてまとまることになりました。どうか書店で見かけましたら手にとっていただければ幸いです。
以下Amazonから転載

  『エスクァイア日本版』最長連載を誇る、柳下毅一郎氏の激辛映画批評がついに単行本化。
『アルマゲドン』、『タイタニック』、『スパイダーマン2』などの大作映画から、『ロスト・ハイウェイ』『ターネーション』など作家性の問われる作品まで、腹蔵なくソリッドに語り尽くす。およそ10年に渡って続けられてきた、この批評活動の中から101本の映画評を厳選して採録。
コンピューター・グラフィックスの導入や9.11テロ、それに続くアフガニスタンでの戦争……と、環境や社会状況が大きく変化したこの10年の間に、映画は、ハリウッド大作は、いかに変化し、そしていかにつまらなくなったのか。本書に収められた101本の映画批評を通して明らかにされる。

●批評対象作品
『ツ イスター』『インディペンデンス・デイ』『マトリックス』『ポーラX』『バッファロー’66』『トレインスポッティング』『X-メン』『マルコヴィッチの 穴』『ハンニバル』『メメント』『A.I.』『ドッグヴィル』『ロード・オブ・ザ・リング』『エレファント』『ム-ラン・ルージュ!』『ファイナルファン タジー』『呪怨』『アリ』『スター・ウォーズ エピソード2』『ファイトクラブ』『ココシリ』…など

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2007-12-18

変態穴覗き 草むらを嗅げ (2007)

Kusamura 監督・脚本 山崎邦紀  出演 香咲美央、荒木太郎、風間今日子 あらすじ

 ヘロドトスの『歴史』に登場するリュディア王カンダウレスがモチーフ。カンダウレス王は自分の妻があまりに美人だったので他人に自慢したくな り、王妃が服を脱ぐところを護衛のギュゲスに覗かせる。恥辱を感じた王妃に命じられたギュゲスは王を殺し、新たにリュディア王の地位を継ぐ。ちなみにここ から転じて自分の恋人が他人とセックスするのを見て悦ぶ倒錯を「カンダウリズム」というそうです。今風に言えば「寝取られ萌え」か。

 まあヘロドトスをモチーフにしたピンク映画という時点ですでにありえない話なわけだけど、それにパンストフェチで着ぐるみを着ているレズビアン (里見瑤子)が加わって物語はさらに混沌と化す。気になったのは窃視症であるカンダウリズムと、触覚を求めるフェティッシュとは基本的に食い合わせが悪 いのではないかということである。その疑問は最後まで解消されないまま終わってしまった。

 ヒロインの香咲美央はなかなかキュートでよろしかった。あと、オーピー出演の吉岡睦雄をはじめていいと思ったな。あのケーハクそうなところをうまく使っていて。

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2007-12-16

魍魎の匣 (2007)

05 原作京極夏彦 監督・脚本原田眞人 公式サイト

 まず言っておきたいが、原作のファンにはお勧めできない。実相寺監督への供養として見に行こうとか思ってる人にもお勧めできない。しかし原作を読んだことがない人にも別にお勧めできないというのが怖いところ。

 どういう人にお勧めできるかと考えてみたが

1)阿部寛が赤いビュイックを駆って颯爽と事件を解決するハードボイルド探偵ものを見たい人
2)堤真一と椎名桔平がドタバタコメディを演じるところを見たい人
3)カットがカチャカチャ変わって目がチカチカするのが楽しい人
4)阿部寛、椎名桔平、堤真一が熱く語り合う男の友情ものが見たい人
5)エンディング・テーマの東京事変が好きな人
6)目眩坂が階段になっているのが斬新だなあと思える人

……はおもしろいと思う可能性があるかもしれない。あくまでも可能性だが。

 前から言っているのだが、シリーズものを一本目から作るというのは間違っている。そもそも『うぶめ』が作られたときから、『魍魎』を実相寺監督で やるべきだとぼくは主張していた。それで映画がヒットしたらはじめて昔にさかのぼって一作目を作ればいいのだ。もちろん企画した側も『魍魎』を実相 寺に撮らせるつもりだったんだろう。でも、まず第一にやりたいことをやっておかないと駄目なんだよ。それをしないからこんなことになってしまうんだっつー の! 

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映画『夜顔』公開記念 【ルイス・ブニュエルナイト】

 マヌエル・ド・オリヴェイラ監督作『夜顔』公開記念のブニュエル・オールナイトでトークショーやります。残念ながら映画はすべてプロジェクター上映です。

【日  時】 2007年12月22日(土)22:00~ トークショー
【場  所】 銀座テアトルシネマ
【ゲ ス ト】 柳下毅一郎×中原昌也さん
【上映作品】 『それを暁と呼ぶ』(P)
       『ビリディアナ』(P)
       『皆殺しの天使』(P)
       『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(P)
【チケット】 ・当日券のみ\2,500均一 
       ・12/17(月)より先行販売開始
       ・全席指定。定員になり次第、受付終了。お立見はございません。

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2007-12-14

マリッジリング (2007)

Main 監督 七里圭 脚本 七里圭、西田直子 公式サイト

 これ、試写に行きそびれてしまったらビデオが送られてきたので、ラッキー!とビデオを見はじめたのだが、30秒くらい見て「これはヤバイ!」 と思ってやめた。これは劇場で見ないとまずいだろう。それくらい繊細な撮影をしていたからである。そういうわけなので公約通りちゃんと劇場に行って見まし た。シネパトス銀座。

 撮影は実に素晴らしい。主役の心情をモビールをはじめとする小道具で表現する演出も悪くない。全体にたいへん丁寧に撮られてはいるし、クリシェを避けようとする意志は強く感じられて好ましい のだが……ピンク映画なら傑作と言っていいだろう。ただ、このレベルで突出するものがあるかというと微妙なところである。もちろん『愛の流刑地』なんかよりはるかに上質な映画であるのはまちがいないが、じゃあこういう映画によってすぐにステップアップしていけるのかといえば、そうなっていないのが今の日本映画界。まあ今後ともめげずにこの丁寧な仕事を続けていけば、いつか報われる日が来る。あとは成瀬とかしっかり勉強してください。

『眠り姫』を直前に見ていたの で、あれをこう使うのか……とか見えていろいろ面白かった。

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2007-12-11

国辱ってのはこういうことさ

Midnighteagle  ただいま『ミッドナイト・イーグル』がLAで公開中。Los Angeles Timesには映画評も載ってます。

This is a stupor-inducing, would-be thriller from Japan whose sporadic action and inept storytelling is as generic as its title. Based on a reportedly popular novel by Tetsuo Takashima, the film patches together a plot so faux it would be laughable if the whole thing wasn't so terribly humorless. A photojournalist who witness the crash of a U.S. stealth plane and is embroiled in the search for its lethal payload and the global implications that accompany it.

スリラーと称する眠くなるような日本映画で、思い出したように起こるアクション・シーンとぎくしゃくした語りは凡庸なタイトル同様退屈きわまりない。タカシマ・テツオのベストセラー(らしい)を原作にした物語はあまりに嘘くさく、映画にユーモアのかけらでもあれば立派なコメディになって いただろう……

「邦画史上最大スケールの本格山岳サスペンス・アクション」か……

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What is it ? (2005)

Whatisit_2  映画がらみの取材でLAに来ている。取材も終わったんで今日は映画でも見るか……と新聞を開くと、なんとAmerican Cinemathequeクリスピン・グローヴァーの監督デビュー作、What is it ? を上映しているではないか! しかも昨日は三部作の第二作、It's fine! Everything is fine.(すでに不吉きわまりないタイトル)を上映していた!!! 後悔先に立たずとはこのこと。しかし一作目だけでも行かないわけにはいかないのです べての予定をふっとばして見に行く。

 映画はダウン症の患者たちがくりひろげる愛と憎しみのドラマにグローヴァー自身が演じるシャーリー・テンプル=神=auteurが君臨する地獄世 界がからむというストーリーを説明しろと言われても困るのだが面白いかと訊ねられるとこんなに面白いものはないという強烈きわまりない映画。加えてマイケル・ ジャクソンになりたいミンストレル役者とかカタツムリ虐待とかナチのシャーリー・テンプルとか全裸の悪魔女とか出てくる。音楽はアントン・ラヴェイと チャーリー・マンソン&ヒズ・ファミリー・コーラス。

 要するに (ケネス・アンガー+ルイス・ブニュエル+ヴェルナー・ヘルツォーク)*∞ = ??? という驚くべき作品なのである。ちなみに上映の前にはグローヴァーのスライド・ショーがつき、終了後はグローヴァー本人のQ&Aセッション。一 言の質問にノンストップで30分喋り続けるグローヴァーは完膚無きまでに狂いまくっていた。ちなみに第二作は髪フェチの不具の女たらしの話で、マルギッ ト・カルステンセンとか出てるらしい。予告編だけ見たが、すでにして傑作まちがいなし。

 DVD化の予定はいっさいないので、狂えるグローヴァーのライブ公演を見る以外に見る可能性はないという渡辺文樹のような状況になっているらしい。こうなったらなんとしても第二作も見なければ。三部作完結のときにまとめて見るかな。

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2007-12-05

ジャック・ケルアック 『オン・ザ・ロード』

41l6yrx94jl_ss500_  いいね! いいね! いいね!

 以前からぼくは「ケルアックはまだイケる」と言い張っていたんだけど、この新訳でようやくそれが証明されたと思う。ケルアックは良くも悪くもハ シカのように若いころにかぶれるものだと思われていて、そんなものは大人の読み物ではないから「今さらケルアックでもないだろ」と決めつけられて、そのまま読まれずじまいになっているような気がする。で も、そうじゃないのだ。たしかに『オン・ザ・ロード』に描かれている世界は過去のものとなったかもしれないが、その魂は今もなお有効だ。

 これまでの翻訳があまりにあまりだったので、単なる幼稚な自意識の垂れ流しとして理解されてしまったのかもしれないが、今回、青山南氏 の翻訳ではじめて、ケルアックがいかに繊細で生彩に富む文章をものにする優れた文章家だったかもわかるし、サルとディーン・モリアーティ(ニール・キャサ ディ)のせつない愛憎関係は腐女子のハートをわしづかみだろう。願わくば、すべての若者がこれを手にしてヒッチハイクの旅に出ますように(そう、ハシカと しての効果もやっぱりあるのだ)。

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2007-12-02

鹿島3-0清水@カシマ

2007.12.01 Kashima vs Shimizu

「代表ゼロで優勝」 「オズの魔法使い」 「映画化決定」

とさまざまなフレーズが飛び交う奇跡の逆転優勝劇。本当はサポーターも他会場の経過を知ってはいけなかったらしいんだけど、こっそりラジオで聞きながら観戦していた。10冠のかかったゲーム、何度か観戦したけどことごとく敗退していた。ついに目の前で達成とは実にめでたい。

試合の方は開始早々押されまくり。清水の出足の良さに中盤を完全に封殺され、小笠原が孤軍奮闘するも中盤のバタバタがCBにまで伝染する嫌な流れ。それがほとんどはじめての攻撃がPKになるラッキーで、一気に落ち着いた。後半、本山のスーパーゴールが決まったあとはほぼ完勝ペース。押し上げがなくなって最終ラインではねかえし続けたのも含めて鹿島のペースと言えないこともない。今日は本当、小笠原デーでしたね。青木はフェルナンジーニョのマークかな。

終わってみればいいことばかりの一年だった。「浦和がこけたせいだ」と言われるでしょうが、勝ち点は去年の優勝チームと同じ72なんだから、立派な優勝です。それにしてもMVPは誰になるんだろうね? やっぱオリヴェイラかな? 個人的には岩政にあげたいところだが。

携帯サイト「速報サッカー24」に鹿島優勝おめでとう文を依頼され、寄稿させていただきました。オレなんかでいいのかと思いながらも、ま、サッカー関連の原稿依頼はつい受けちゃうよね。今日のもつ煮はうまかったなあ。

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