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2007-10-30

ソウル忠武路映画祭

The Sentimental Bloke  ソウル忠武路映画祭に行ってきた。

 ソウル随一の繁華街、明洞を通っている忠武路。映画祭はその周辺の映画館10スクリーンを使って開催される。韓国の映画祭と言えばもはやアジア 映画の新作ショーケースとなった釜山映画祭があるわけだけど、ここは釜山に対抗してか映画史的視点を強く押し出した映画祭になっている。だもんで映画保 存協会の「映画の里親プロジェクト」にお金を出して旧作の復元までしているのだ。韓国の映画祭が日本映画の復元をするのである。えーと、東京国際映画祭って、何か役に立つことしたことあったっけ?

 レトロスペクティヴはパトリック・タムとかジョン・ブアマンとか。あまり滞在時間も長くなかったので、ブアマンのレトロスペクティヴで『殺しの分け前/ポイント・ブランク 』だけ見る。

 連日野外上映があるというのも素晴らしい。ソウルのど真ん中で野外上映なのである。本日は清渓広場(長年どぶ川としてソウルの汚濁の代名詞だったが、最近になって再生された清渓川にある公園)でオーストラリア の無声映画The Sentimental Bloke(1919)の上映(生演奏つき)だったのだが、これが素晴らしかった! オーストラリア訛りの一人称の字幕、「そこでおいらは言ったんだよ。『こんばん わ』って。それ以上は喉につまっちまって、一言も出てきやしねえんだよ」みたいな調子で語られる物語も独特で素晴らしかったが、さらに素晴らしかったのは 演奏。三人グループなのだが、それぞれ三つぐらいの楽器をあやつり、全員が次々と楽器を取り替えて演奏するのだ。バイオリンを弾いていたと思えば縦笛にな り、かと思うと歌をうたう。最後は観客も含めてのsing-a-longで大盛り上がり。感動の一夜であった。

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『ヒミコさん』トークショー

Himikosan 10/27(土)よりポレポレ東中野で公開される藤原章監督作品『ヒミコさん』の上映にあた中、トークショーをさせていただきます。

11/5(月) 高橋洋(脚本家/映画監督)×吉行由実(女優/映画監督)×柳下毅一郎(映画評論家) [上映後 22:40~]

人は孤島ではないと言ったのはジョン・ダンだが、
藤原章の映画も一本一本が孤立した作品ではない。
藤原映画はすべてがひとつになった大いなる物語なのである。
柳下毅一郎(映画評論家/翻訳家)

その他情報は公式サイトで!

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2007-10-26

上野毛サファリパーク

 ぼくが講師をつとめている多摩美大上野毛校舎の学祭「上野毛サファリパーク」が11/2(金)~3(土)の日程でおこなわれます。ぼくも講師の義務として、学祭でトークショーをすることになりました。
東京学生映画村」というイベントで 11/2(金) 17:30~ 山本政志監督の作品上映に引き続いて監督とトークします。 なんの話をするかは今のところ未定ですが、山本監督の昔の話など聞ければいいなと思います。

 なんか他にもいろいろクラブイベントとかファッションショーとかあるようなので、お近くにおいでのさいはのぞいてみてください。学祭なのでもちろん入場無料です。ぼくも学生の映画なぞ見にいくつもり。

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2007-10-25

いのちの食べかた (2005)

1131278738587498x280topleft 公式サイト 日本版サイト 森達也の本ではなくて、大規模集約農業の世界を描いたドイツのドキュメンタリー。最近、ドイツのドキュメンタリーばかり見ている。

ニワトリが、牛が、豚が、まるで工場のようにオートメーションで育成され収穫され解体されるまでがナレーションも何もないまま淡々と写されていく。画面がとても美しい(撮影はかなり凝って構図を決めている)おかげもあって、まるで工場製品を作る工場のようである。

これを見て、工場のように管理される大規模集約農業の現状について疑問を抱く人も多いのだろうと思うけど、ぼくは逆に人類文明の進歩ってすごいな あ……と思っただけだった。唯一、人力が手放せないのは果物や野菜の収穫。キュウリやトマトは相変わらず労働者がひとつずつもいでいる。これからの課題は野 菜の収穫の機械化だよなあ。

11月上旬よりシアター・イメージフォーラムにて公開予定

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2007-10-22

ビデオ判定なんかいらない

Bf57af8abb5048990c0f4758a97ff6df  ラグビー・ワールドカップ決勝戦だが、イングランドは残念だった。後半入ってすぐのトライがビデオ判定で取り消されなければ、勝敗はどっちに転んでいたかわからなかっ たのに。安全第一の南アよりも、イングランドの方がはるかに魅力的なラグビーをしていた。すばらしい集中力を見せつけていたウィルキンソンに勝たせてやりたかった。

 今日のMLB アメリカン・リーグの優勝決定戦、5回にレッドソックスのレフトのラミレスがフェンスからのクッションボールをノーバウンドで素手で受けて二塁に送球、アウトにする凄いプレーがあった。まさにメジャー級のスーパープレー。

 だが、テレビのリプレイを見ると、どうもあれはセーフだっぽい。たぶんビデオのリプレイ判定があったらセーフになってたと思う。

 でも、あれはベースボール的にはアウトで正しいんだと思う。ラミレスのスーパープレーを見た瞬間に、球場全体がこれはアウトだな、と思ったんだか ら。プレーの美しさの前では公平性など何ほどのことか。公平性を求めてビデオ・リプレイを導入すると、プレーの衝撃がどんどん弱まってしまう。ワールド カップ決勝だって、その前のイングランドの13番の素晴らしい突破と、ウィルキンソンの見事なタップ・パスを見た瞬間に、みなこれでトラ イと思ったはずなのだ。だったら、それでいいじゃないか。

 ビデオ判定はスポーツをつまらなくする。公平性がなんだ。公平であることなんかよりも、もっと重要なことがスポーツにはある。どうかフットボールにだけはビデオ判定が導入されませんように。

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2007-10-21

高麗葬 (1963)

1049193690e473cf44df5e6d15d6 金綺泳監督 東京国際映画祭にて鑑賞

韓国の「怪物」と言われる金綺泳監督作品だったがこれは凄い! 物語自体は『楢山節孝』みたいな韓国の姥捨て山伝説なのだが、ともかく描写が濃く、人間の醜さをこれでもかと描き出す。

主人公のグリョンは子供のころに義兄(十人兄弟)に毒蛇をけしかけられ、片足が不自由になってしまったために一生「ビッコ」と蔑まれる人生を送ることになる。グリョンは足を引きずりながら一人、母を養うために働きつづける。だが好きになった女カンナキには「片輪者の嫁にはなれない」と振られてしまい、やっともらった嫁は聾唖者。しかもその嫁は十人兄弟に誘拐され、強姦されてしまう。嫁は復讐のため、十人兄弟の長男を誘い出して殺すが、その代償としてグリョンは嫁の命を差し出さなければならなくなる。そして十五年……

すでに三年続く干魃で、村は飢えきっていた。水場を独占している十人兄弟は芋と水の交換を要求するなどやりたい放題。グリョンが不自由な足で井戸を掘り当てると、死体を投げ込んで水を腐らせてしまう。カンナキはついに娘たちを飢えさせまいとグリョンに身を売る決心をする。一方、村を支配する巫堂の女は神におうかがいをたてるための人身御供を求める。子供を殺してその魂をセト様にすれば、神のお告げを聞けるというのである。カンナキの娘、アバタ面の醜いヨンは「飢えるくらいなら死んだ方がマシだ」と巫堂の元に向かう。巫堂のお告げははたして「孝行息子のグリョンが母を背負って捨てに行けば、神は雨を降らしてくれる」と告げるのだ……

ついに到達する姥捨て山の壮絶な光景。執拗に描写される母と子の別れ。人々の差別と心の醜さ、そして残酷さ(グリョンもまったく善人ではなく、十人兄弟への恨みは決して忘れることがない)。強烈すぎるスプラッター描写。何もかもが濃厚な大傑作。

人々は厳しい大自然の中で飢えに苦しみ、宿命に縛られて生きる。ウィリアム・トレヴァー短編集の読後感を思い出した。

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2007-10-20

スピルバーグとイーストウッドの10年

boidの樋口泰人氏と会って対談。実は〈エスクァイア〉の連載をまとめて、年末ぐらいにエスクァイア・マガジン社から単行本にしようという話があるの で、それに載せるためにおねがいした対談。およそここ10年ほどのアメリカ映画の動向についていろいろ話す。

んで結論は、やはりここ10年のアメリカ映画はスピルバーグとイーストウッドに尽きるということに。あと『デスプルーフ』がなんであんなに素晴らしいのか、なんとなくわかったような気がする。それとチャーリー・カウフマン問題。

問題は肝心の本の方で、スピルバーグもイーストウッドも全然論じてないってことだな。

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2007-10-16

極右と極左は通じあう

2642740standard 山形ドキュメンタリー映画祭で見損ねたドイツ特集〈交差する過去と現在〉をドイツ文化センターに見に行く。

本日は『あるドイツ人テロリストの告白』と『反逆者』の二本立て。これが組み合わせの妙もあり、非常に面白かった。

『あるドイツ人テロリストの告白』は国際テロリスト、カルロスとともにOPEC本部襲撃事件を起こしたドイツ人極左テロリスト、ハンス・ヨアヒ ム・クラインについてのドキュメンタリー。彼はパレスチナで軍事訓練を受けてテロに参加するが、エンテベ空港襲撃事件の際にバーダー・マインホフ集団の残 党がユダヤ人とそれ以外を選別して人質にしていたというのを知り、「これじゃナチスと同じじゃないか」と疑問を抱いて運動を離脱する。

『反逆者』の方は米軍に爆弾テロ闘争をしかけて多数の死傷者を出したケッヘル=ヘップ集団のリーダーであるネオナチ、オットフリート・ヘップについ てのドキュメンタリー。ヘップはもともとネオナチとして活動していたのだが、バイエルンで活動していた極右カール=ハインツ・ホフマンとかかわったことか らホフマンの国際運動に抜擢され、レバノンに渡ってベイルート郊外の軍事キャンプでPLOから都市ゲリラの訓練を受けるのだが、キャンプで内ゲバ殺人が あったことからほうほうのていで脱出し……ヘップはその後反米爆弾闘争をやったり東ドイツに理想のファシズム世界を見出して東ドイツ秘密警察のスパイに なったりと波瀾万丈すぎる人生を送るのだが、それはさておき

この二つ、まったく同じではないか! 極右も極左もPLOの訓練を受けてユダヤ人を殺すのがドイツのテロリズムなのか! となると、ここでの「右」とか「左」とかってなんなの? 質疑応答でもそういう話で大いに盛り上がる。

ちなみに連合赤軍ばりのネオナチ内ゲバ殺人なんだけど、なぜそんなことになったかというと、原因は喫煙。ナチだから禁煙禁酒の健康志向なのだ。これが本当の禁煙ファシズムだ!

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2007-10-10

神様で湯浴み

mummy temple  山形ドキュメンタリー映画祭に参加。途中で山形を離れ、湯殿山に来る。山形からはバスで一時間半ほどの旅である。当然湯殿山にはお参りしたのだが、古来湯殿山は出羽三山の奥宮であり、 「語るなかれ」「聞くなかれ」と戒められた神秘清浄の地なのである。そういうわけで、何を見たかはお教えすることはできない。以下は湯殿山に行ったことある人にはわかる話。

 今回、せっかくなので湯殿山ホテルに泊まってきた。キノコづくしの食事もだが、ここの売りはなんといっても温泉。この温泉、神域に湧いてる温泉と成分同じ、というか同じ温泉らしい。 神様にたっぷり浸かって朝湯までして、斎戒沐浴して心身ともにすっかり毒が抜けたよ。

 翌日は鶴岡へ。途中、大網というところにある大日坊注連寺というふたつのお寺に参拝する。ここ、往時は湯殿山の別当として栄えた寺で、どちらも湯殿山で修行した行者の即身仏があるので有名なのである。今回はミイラ尽くしということで、鶴岡でも南岳寺というミイラ寺におまいりしてきた。しかし街中にいきなり「ミイラ仏」って書いてある風景は凄い。

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