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2007-08-29

Life~天国で君に逢えたら (2007)

Family 監督 新城毅彦 主演 大沢たかお、伊東美咲 公式サイト

 実話の映画化でよくあるのが、映画の最後、クレジットのところで本人の写真が出る奴だ。あれを見るとたいてい、まあ映画だから美化されてるよなあ、と思うことになる。『俺は、君のためにこそ死にに行く』みたいなどうしようもない映画だって、ただの食堂のおばさんが岸恵子だ。だいぶ美化されている。それで、この映画の場合、クレジットで本物の飯島夏樹の写真が出たとき、「あ、この人って魅力的な人だったんだろうなあ」と思った。すごくいい顔してるんだよ。同時にそこまで二時間見せられてきた大沢たかおと伊東美咲はなんだったんだという思いに……

まあ伊東美咲の演技があまりに壮絶でね……実際、客もとくに入ってる様子がないわけだが、いったい誰がなんのためにこういう映画を作ってるんだろうなあ。電通様はこの映画を作ってどんだけ儲かったのだろうか。

その後『伝染歌』を見てさらに死亡。伊勢谷の出る映画に凡作なし(それ以下の駄作しかない)の法則は健在だった。

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2007-08-25

〈グラインドハウス〉USAバージョン

Deathproof_003 〈グラインドハウス〉の米国公開版第一回上映を見るため悪の塔ロポンギルズへ向かう。入りはちょぼちょぼ。絶望した!本年ナンバー1の傑作が一週間しか見られないというの百人ほどしか集まらない映画マニアに絶望した!

 まあ木曜日の深夜12時からの上映では人が来ないのもしょうがない。しかし公開初日にみんな集まって大騒ぎ、みたいな習慣ももうなくなってるってことなんだろうね。来ているのは知り合いばかり。別に示し合わせたわけでもないのに来ている鷲津義明とかも含め、半分近くが友人知人だったような気がする。映画の世界は狭いなあというか、タランティーノが閉じてるだけなのか…

 しかし映画は素晴らしかった。『デスプルーフ』は、実は単独公開版(『デスプルーフinグラインドハウス』)とは編集もまったく違っていて、ほとんど別の映画になっている。出来はあきらかに締まった編集になっている〈グラインドハウス〉版の方が上だろう。でもぼくは単独公開版の方が好きだ。タランティーノの女性への優しい(助平な)視線がより強く出ていて、バタフライのキャラがちゃんと立っているからだ。

 ところで『デスプルーフ』については、ぼくのような人間が素晴らしさを語れば語るほど客を遠ざけてしまうのではないかというジレンマを感じずにはいられない。『デスプルーフ』の面白さを語るとなると、どうしてもダッジ・チャレンジャーが出てきたりフィルムに汚しを入れたりFeature Presentationの音楽を聴いただけで泣けてくるというようなフェティッシュな部分を語ってしまうわけだけど、あの映画はそれだけではない。『デスプルーフ』が素晴らしいのはどこか映画の魂に触れてしまっている部分があるからなのだ。驚異のアクションからゾーイ・ベルが箱乗りして「いっけー!」とおたけびをあげ車が走りだす瞬間の高揚、あの場面は何度見ても泣けてしまうのだが、それはなぜなのか。これは決して「フェティッシュな部分もあるが、それだけではなくて映画の魂に触れている」のではなく、「フェティッシュを突き詰めたがゆえに映画の魂に触れてしまった」ということなのだと思う。あくまでもグラインドハウス映画ゆえの感動なのだ。

 グラインドハウス映画の奥底、低予算とひどい演技とやっつけの演出の底には映画の魂が潜んでいる。『キル・ビル』でも一瞬つかみかけていたのだが、今度こそタランティーノは見事それをつかみとって見せたのだ。

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2007-08-23

北京五輪予選 U22日本1-0U22ベトナム@国立霞ヶ丘

 試合開始が遅い時間だったので、ふと思い立って見に行った。当日券を買って(バックスタンド二階席)はいると、入場時に青い旗をもらう。

 一般的に言って、引かれた相手を崩すやりかたはふたつある。ひとつは運動量によってマークを攪乱する。もうひとつは一対一で相手を抜いてフリーになる。煎じつめればこの二つだ。しかるにこの五輪代表チーム、見事に運動量がない。中盤の選手がボールをもって前を向いたらディフェンス・ラインの後ろに飛び出す動きとかをするのが普通だと思うんだが、FWは戻ってきて足元にもらおうとするばかり(たぶん、そういう風に指示されているんだと思われる)。じゃあサイドで一対一で勝負……するのは水野だけ。水野はちゃんと仕事をしていたけれど、それ以外の選手は本当に立ってるだけ。あるいはマークをはりつけたままうろうろするだけ。

 で、水野のボールが飛んでゆく先、平山くんの決定力がと言われていたけれど、見たところ、あれではどうしようもないなという感じだった。いかに背が高かろうと、ぴったりマークがついていたら、そうそうヘディングが決まるもんじゃない。でも、平山くん、まったくマークをはずそうとする動きがないんだもんなあ。飛びこむ前にマーカーに当たってふっとばすとか、マークをはずすフェイントを入れるとか、そういうことを原から教わってないんだろうか?

 だからセットプレーくらいしか点が入らないというのは見事に理に敵った結果であった。で、さらに理に適ったことを言えば、グループで最弱のチーム相手にホームで一点とるのがやっとというていたらくでは、とうていカタール、サウジ相手に勝ち抜くことなんて不可能だろうなあ。

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2007-08-19

童貞オールナイト

041031  シネマ・ロサの『童貞。をプロデュース』公開記念〈童貞オールナイト〉に呼ばれてトークする。上映作品中では自然『パンツの穴』について多くを語ることになったんだけど、『アイデン&ティティ』について大事なことを言いそびれてしまった。つまりあの映画が童貞映画なのは、麻生久美子が童貞の考える理想の女性像だ、ということである。公開時も「あんな都合のいい女いるわけない」という批判が散見されたけど、最初からいるわけないんだって! あれは理想化された女性像なのだ。麻生久美子はそういう空っぽな理想像を演じさせたら最高なのであって、オタクの女神様たる麻生久美子のベスト・パフォーマンスだと言える。東の麻生久美子、西のパトリシア・アークェットと言われるゆえんだ。

 それ以外は、『童貞。をプロデュース』における松江くんの童貞へのまなざしの変化(つまり、あの映画は松江くんの成長小説として読むべきなのだ)も指摘したし、まずまず満足のいくトークだったんじゃないかな。朝まで映画を見るという人々と別れ、一人終電で帰宅

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2007-08-18

ヘアスプレー (2007)

Travolta_hairspray  ジョン・ウォーターズの1988年作品がミュージカル舞台になり、その映画化作品。ちなみにぼくはミュージカル舞台は見ていない。10月公開 公式サイト

 映画はというとすっかり今のミュージカルになっていて、歌も踊りも全然レイト・フィフティーズ風じゃなかった。あとカットが細かく、やたらとバストアップとク ローズアップばっかりで、下半身がうつらない。だから全然ステップ踏んでるように見えない。今風のミュージカル映画ってこういうものなのか? ミュージカルというと ミドル・ショットで全身を入れてワンカットで撮るものだろうと思っている老人にはちょっと厳しい。

 そのせいなのか、主役の子も全然踊れてるように見えない。なんだかリッキー・レイクの方が踊れてたような気がした。でも、もちろんそんなはずはない。だって、この子はミュージカル女優なんでしょ? リッキー・レイクは、当時、たんなるタレント志願の小デブちゃんだったわけだし。

 気になったので帰ってからオリジナル版を見直したが、どう見てもオリジナル版の方がちゃんとミュージカルである。リッキー・レイクもちゃんと踊れていた。ジョン・ウォーターズって本当に立派な人だと 思うんだけど、どうしてもカイエ派の人には認めてもらえないね。ぼくの今後の目標は蓮實重彦にジョン・ウォーターズを認めさせることだな。

 全体に真面目で、茶目っけが少なすぎる。おかしかったのはクリストファー・ウォーケンとジョン・トラヴォルタが踊るとこくらいかなあ。ジョン・ ウォーターズ本人の出演には笑ったが、本当にウォーターズにオマージュを捧げるならペニーの母親役をミンク・ストールにやらせるべきではないかとも思った。

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2007-08-14

痴漢電車 びんかん指先案内人 (2007)

Binkan 監督:加藤義一 出演:荒川美姫、なかみつせいじ PGのあらすじ

『痴漢電車 快感!桃尻タッチ』他コメディの快作を連発し、オーピーの若手エース的存在となった加藤義一監督。林由美香がいなくなったあと、ちょっと迷いを感じることが多かったのだが、脚本に城定秀夫を迎えた本作は必見の傑作。舐めるように荒川の局部をアップにする濡れ場のキャメラが素晴らしい。

荒川美姫演じるヒロ子は引っ込み思案の性格と嫌なことを断れない気の弱さのせいで、どんどん転落の人生を歩むことになる。いわば『嫌われ松子の一生』なのだが、その彼女が駄目サラリーマン(なかみつせいじ)に痴漢されてはじめて自分を見出すというお話。風俗で働いても「サービスは真面目にやるが人見知りして愛想がない」ので人気は出なかった……というあたり、『嫌われ松子』にはないリアリズムの力である。

役者は全員好演だが中でも目につくのはサラリーマンの妻を演じる佐々木基子。いつも山崎邦紀作品で快刀乱麻な口上を述べる役ばかり見ていたが、これは無口な、生活に疲れた妻の役。真面目で、ちょっとくたびれた専業主婦で、夫の浮気にもひたすら耐えている。普段は女を封印してるだけど、濡れ場になればちゃんと色気もかもしだす。こういう役に佐々木基子を持ってくるところが抜群。

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2007-08-08

SとMと故郷と里菜子 (2006)

2a96e58es 監督・撮影・編集:松江哲明 出演:平沢里菜子

アップリンク・ファクトリーの〈松江哲明のセキララで嘘つきなドキュメント選集〉にて鑑賞

楽しく見た。楽しくは見たんだが、まあこれは松江くんもわかってると思うんだけど失敗作である。なぜかというと平沢里菜子に出会ったところで終 わってしまうから。松江くんが手練のかぎりを尽くして勝負をかけたら、いきなり相手の手札からエースが三枚出てきて、残り二枚はまだ晒してもいない、みた いな。

いろいろ喋ったんだけど、やっぱりそこで引いて平沢里菜子の登山をドキュメントするだけじゃいけないような気もするんだよな。松江くんには負ける とわかっていてももう一度里菜子山脈登攀に挑戦していただきたい。無事頂上をきわめたとき、そのときこそついに松江くんは童貞スーツを脱ぎ捨てることがで きるだろう。松江くんは「何気楽なこと言ってるんですか!」と文句をいうんだろうけど、やはり登攀に挑戦できる身なんだから登るべき。まあもちろん入山拒否の可能性はあるわけですが。

打ち上げでは松江、平沢、ナヲイらと楽しく飲み、大いに笑う。上映には切通理作さんもいらしてましたが、やはり里菜子ストか。

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2007-08-06

さよならジュピター (1983)

4988102261238 フィルムセンターの〈逝ける映画人を偲んで 2004-2006〉で25年ぶりくらいに再見。

あのころ、ぼくはこの世でいちばんダサイものは日本のSF映画だというくらいだったので、こんな映画が作られること事態が国辱だと思っていたけれど、まあそれからいろいろダメ映画も見尽くしてちょっとやそっとのことでは驚かなくなったし、キャンプなものへの理解も深まったし、最近のSF映画のダメさと来たら底なしだし、今見たら結構見られたりして…と思って行ったが……

…ジュピター教団のダサさだけはガチだった(しかもユーミンの歌が!)。いつ見ようと何度見ようとダメなものはダメだということを再確認しただけであった。いちばん古びてないのがミニチュアワークだったような気がする。

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2007-08-05

狂気の海 (2007)

186354857_116  佐藤佐吉プロデュース『そんな無茶な!』の試写を見る。完成度的には井口昇の第二話「おばあちゃんキス」がダントツ。安定して見られる(まあノ ンケのおばあちゃん同士のレズものを「安定して見られる」ってのは凄い話だが)。インパクト的には真利子哲也監督の「アブコヤワ」が一番か。いやまあどう考えても反則なんですが。

 終わって帰ろうとしたら、ちょうど来ていた中原翔子さんに呼び止められて、高橋洋監督作品『狂気の海』を見てかないか、と誘われる。渡り に船で映画美学校の編集室で作業中の高橋洋氏のところへ殴りこみ、編集中の作品を見せてもらう。いやこれは凄い! 高橋氏の「太平洋の亡霊」への妄執が こんなかたちで炸裂するとは思いもよらなかった。今年見た邦画では『ラザロ』に匹敵する社会派エンターテイメントの傑作である。早く完成品を見たい(9月頭の美学校映画祭で上映予定とのこと)。なお、富士帝国の女王コスプレの中原さんはなかなかに素晴らしく、誰かフィギュアとか作ってくれないかと思った。

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2007-08-02

21世紀の警察

7月最後の土日は尾道に花火を見に行くことになっている。毎年恒例なので、最近はオプショナルツアーをつけることにしている。今年は岡山旅行。といっても観光したわけではなく、図書館に直行して本を読んでいただけ。きれいで広い岡山県立図書館には岡山県警察の機関誌『後楽』が所蔵されているので、そのバックナンバーを朝から延々と読みつづけていたのである。残念ながら膨大すぎてとうてい一日でのチェックは不可能。昭和50年くらいまで行ったところで時間切れになってしまった。

もちろん事件関係の記事を中心にチェックしていたわけだけど、警 官向け社内報のようなものなので、漫画とか俳句・短歌の投稿といった普通の雑誌にありそうな記事もある。小説だって載っている。なんと「二十一世紀の警察」という未来予 測SFまであった! テレビ電話とかモノレールとか動く歩道とかがある真鍋博な感じの二十一世紀岡山を舞台にした警察小説なのである。

もっとすごいのは眠狂四郎と拝一刀と木枯らし紋次郎とカムイと赤銅鈴之助が戦う同人小説みたいなもので、なぜかこの人たちが魔神に導かれて吉備路 (岡山)に集結するのだ。作者は昭和24年生まれの東大法学部の学生(たぶん父親か兄弟かなんかが岡山県警に勤めていた)らしい。岡山警察おそるべしとしか。

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