キース・キャラダインのこと
PFFのアルトマン特集。『ボウイ&キーチ』を見に出かけると佐々木浩久監督とばったり。個人的にはアルトマンの中で(『ナッシュビル』を除いて)どれ か一本となると『ボウイ&キーチ』なのだが、それは佐々木監督も同じだったらしい。なぜなんだ? という話になったんだけど、ぼくの理由はわりとはっきり していて、ひとつにはキース・キャラダインが好きだったからである。
キース・キャラダインのファンになったのは『北国の帝王』を見てからである。え? 『北国の帝王』のキース・キャラダインは脇役ではないのか? そのとおりだ。あの映画を見て、ぼくがしたたか打ちのめされたのは、 「ぼくはリー・マーヴィンではない!」ということだった。ぼくはキース・キャラダイン演じる若造の方だった。わかったような気になって、口だけは 達者な小生意気な若造。最後には河に叩き込まれて「おまえは何もわかってねえ!」と怒鳴られる小僧。あれこそがぼくだ。ぼくはリー・マーヴィンにはなれない世代だっ たのだ。あの中途半端さ、乗り遅れた感じこそが自分のものだった。
アルトマン映画も、だからキース・キャラダインがいちばん好きだった。キース・キャラダインのあの軽み、ニューシネマ的と言えば言えようが、ニューシネマの自己陶酔した悲劇は一切無縁の軽みが自分にはいちばんぴったり来たのである。久しぶりに見た『ボウイ&キーチ』はやっぱり悲痛なラブストー リーで、でも悲劇になりきれないところがたいへん好ましく、シェリー・デュヴァルのおどおどした感じが実にいい。悲劇になりきれない世代の悲劇という意味で、自分にとっては『地獄の逃避行』と並ぶ一本なのである。
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