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2007-05-31

山野浩一に取材

 現在調査中の『オスパー』問題でついに山野浩一氏に取材!  …いつかは会いに行くことになると思っていた山野浩一だけど、まさかこんなネタで会うことになろうとは。

 取材はまあ一歩前進しつつ一歩後退という感じだけれど、当時のSF界とアニメ界の雰囲気がなんとなく感じられたのが収穫かな。第一世代のSF作家って、ほとんどみな草創期のTVアニメにかかわっていたわけで、どんな感じだったのか興味の持たれるところではある。

 ちなみにこの取材を申し込んだとき「ダービーまでは忙しいけど、終わったあとならいいよ」と言われていたのだけれど、結果を聞いてみたら「ウオッカの単勝は取った」とのことだった。さすがだ。

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2007-05-28

中原昌也大生誕祭!!

6/4(月) 新宿ロフトプラスワンにて中原昌也くんの誕生会イベントが開かれます。みんなプレゼント持って大集合! プレゼントない人も気持ちだけ持って集合!

新進気鋭作家、前衛音楽家、映画評論家、ダジャラー…数多くの顔を持つ中原氏も遂に37歳! 多業種に渡る幅広い交友関係が一堂に会する誕生祭! プレゼント絶賛受付中!

【出演】中原昌也
【Guest】柳下毅一郎、高橋ヨシキ、他アッと驚く豪華ゲスト勢揃い!

Open18:30/Start19:30
¥1000(飲食別)

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2007-05-25

D坂の殺人事件 (1997)

監督実相寺昭夫 原作江戸川乱歩 出演真田広之、吉行由実、嶋田久作
Xunwnojdy シネマヴェーラ渋谷にて10年ぶりに再見。

 友人でもある吉行由実さんの女優としての代表作なんだけど、あらためて見直しても真田広之のすがすがしいほどに徹底した変態ぶりの前には影が薄い。則文特集に引きつづき、シネマヴェーラの裏テーマは 真田広之変態特集なのだろうか? 則文映画を見ていた当時は「真田広之ってゲイなのか?」とずっと思っていたのだが、あらためてまとめて見るとむしろゲイというより極めつけのナ ルシストなのかなあ、という気がする。家でひたすら鏡に見惚れているタイプか。

 ほとんど嶋田久作と岸辺一徳の会話だけで話を説明してしまうほどで、演出的には決して出来のいい映画とは言い難いんだが、映画の魅力がそれだけではないのだってことを教えてくれる作品でもある。 劇中の責め絵を前田寿安が描いているのだが、あの絵がもう少し吉行由実に(あるいは真田広之に)似ていたらお宝になったのになあ。

 最後、三輪ひとみ演じる小林少年が「ボクには……あの人の気持ちがわかるような気がします」と言うのは実相寺の変態カムアウトなのだろう。 なんでも実相寺翁は「わしの若いころに似ている」と三輪ひとみを可愛がっていたそうなのだが、いったいどういう変態を遂げればあの美少年があんな怪物になる というのか。変態だからか。合掌。

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2007-05-23

鬼火 (1956)

28onibi ラピュタ阿佐ヶ谷の「添え物映画百花繚乱 SPパラダイス!」にて。

 このころの日本映画を見ていつも驚かされるのがハードコアな貧乏描写である。格差社会とかいうけどしょせんは相対的貧困。絶対的貧困の前には顔色なし。同時にその貧乏を 描く映画の圧倒的な豊かさがある。貧乏長屋をすべてセットで作ってしまう、今では絶対に不可能な贅沢。矛盾というかねじれというか、この奇妙さにはいつも打たれ る。

 映画の黄金時代は凄い。本作なんか40分ほどの短篇なのに、脚本菊島隆三、音楽伊福部昭である。ガス料金徴収人の加藤大介がふすまから ちょいと伸びた女のふくらはぎに目をつけてじりじりと廊下にあがりこもうとすると、伊福部調のサスペンス音楽が……やがて中古智が建てたものすごく美しい あばら屋で暮らす、宮口精二と津島恵子夫婦のところに加藤大介が料金徴収に行ったことから……加藤大介がいつも汗を拭いている、あの「暑さ」の描写が圧倒的だ。昔の日本は暑かった。

 場内は満員。映画オタクが集まるのはわかるんだが、普通のおばはんとか来ていたのはなぜなのか。併映の宮城まり子主演作を見に来たのだろうか?  ちなみに宮城まりこはバラックに住むくず屋の娘で「一九才なのに鼻に煤がついてるから誰もわたしを見てくれない~」とか歌っていた。

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2007-05-20

吉行組撮影


  Kaoru Sakurako 
  Originally uploaded by Garth Yanashita.

 吉行由実さんの新作ピンク映画「ノワイエ(仮)」の撮影を覗きに行く。さる文芸誌を舞台にした「愛ルケ」な作品ということで、写真は〈月刊さざなみ〉の看板娘である女編集者・薫桜子嬢。〈さざなみ〉編集部のロケ地として洋泉社を紹介した関係で、なぜかぼくも編集部員としていたたまれない感じの演技をすることになってしまいました。

 監督・出演吉行由実 主演薫桜子、なかみつせいじ 脚本をざっと読んだ感じでは、わりと女の怖さが出ている好きなタイプの映画のようでしたよ。晩夏全国オーピーチェーンで公開予定。

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ラストラブ (2007)

出演伊東美咲、田村正和 原作Yoshi 監督…知らん 公式サイト

 巨匠Yoshi、韓流メロドラマに挑む!ような気がする。いやオレも韓流メロってよく知らないけど、最後にセントラルパークの大木の根元で伊東美 咲と田村正和が寄り添ってる絵を見て、なんかそういう映画があったような気がしたもんで。まあ、Yoshiの韓流理解もオレと似たり寄ったりだろう。

 まあ凄かったね。何が凄いって、伊東美咲の演技がまともに見える。それくらいまわりの演技が酷い。田村正和なんか黄金時代の映画俳優じゃな かったのか? なんだこのセルジオ越後みたいな顔して一言セリフを言うたびに「ふふん」と鼻で笑うじいさんは!? 日本映画の最低水準を見た。気がする。 たぶん。これ以下のものはない。だろう。ないといいな……

 伊東美咲と田村正和の出会いのシーンが笑える。田村正和がゴミだししてると、清掃員の伊東美咲が「ちょっとじいさん! 瓶や缶と燃えるゴミ一緒に 捨てちゃだめじゃない! ちゃんと持って帰ってよ!」と近所の風紀委員おばさんみたいなことを言ってゴミを持ち帰らせる。そこで「あ、仕事に遅れちゃ う!」と清掃員の制服を脱ぎすてると、スーツ姿で颯爽と歩きだす。唖然と見送る田村正和(そして観客)。

 そんな感じのお笑いシーンがてんこ盛りの傑作コメディ。 6/16公開

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2007-05-19

俺は、君のためにこそ死ににゆく (2007)

監督新城卓 脚本&製作総指揮石原慎太郎大元帥閣下 公式サイト

 新城卓ってイマヘイの弟子なのね。イマヘイの門下生が慎太郎の指揮下でこんなキチガイ映画を作るっていうんだから世も末だな。

 冒頭、伊武雅刀演じるところの大西中将が特攻作戦の意義を説明する。
「日本は負ける。だが日本の国体を守るためにはただ負けるわけにはいかない。日本が白人の手から東南アジアを解放するために戦ったという信念を示すためには、国家の名誉のために若い者に死んでもらわなければならない!」
 これ意味わかる? いくら考えても意味がわからない。負けるってわかってるんだったらできるだけ損耗を少なくして負ければいいじゃないか。 だいたい特攻作戦が無意味だってことは最初からみんな知ってるわけ。効き目があったのは最初だけで、新兵をボロ飛行機に乗せて飛ばすようになったら、特攻はお ろかひたすらグラマンに叩きおとされるだけになる。飛行隊の指揮官は
「あいつらは沖縄までも行きつけない。ただの犬死にです」
 って抗議するんだけど
ともかく、一人でも多く散ってもらうことが肝心だ
 慎太郎的にも完全に犬死にだっていう描写なわけ。でも特攻隊員は我先に死ぬ順番を争って
「俺が先に行く!」
 と飛行機の取り合いをするは、女子挺身隊員たちは歓び組のような満面の笑顔を顔に張り付けて
「お国のために死んできてください!」
 って送り出す。

 完璧に狂ってる。ていうか完全にキチガイの国っていう描写だよこれ。北朝鮮にだって負けてないぞ。死んだら神になれるって迷信を信じてどんどん自殺していくカルト国家。これこそが特攻隊員の名誉を回復すると考えてる慎太郎閣下が書いてるんだから、すべて本当のことなんですよね? ああ、こんな国に生まれないでよかった。

 岸恵子が「今、世界では自爆テロの走りが日本の特攻であると混同する風潮がありますが、これは哀しいことです」と言ってるんだけど、この映画を見るかぎりどう見ても宗教テロです。本当に(ry)

 なお、CGはなかなか良くて、戦闘シーン(CGとミニチュアの組み合わせ)は迫力あった。『男たちのYAMATO』よりもいいんじゃないか?

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22才の別れ (2006)

8 監督・脚本・編集大林宣彦 公式サイト

きみたちの大好きな、気持ち悪い大林宣彦が帰ってきた!(笑)

いや、普通に考えると、これこそ年取った大林宣彦が撮りそうな映画である。これ、実質的には『はるか、ノスタルジィ』のリメイクなんだけど、どうにもやたらと不能感ばかり感じさせる映画で、でも大林特有のべったりした感触だけはそのまま。まあこれだけ見ると「大林も年取った かな……」という印象が出てくるのもしょうがないのだが、このあとに『転校生』撮ってるわけだからな……

それにしても、大林映画ってなんでこんなに気色悪いんだろう?と見ながらしみじみ考えていたんだが、それはたぶん映画の中で人称の区別がついてな いからだな。この映画、筧利夫のナレーションで「こんな奇妙な物語はどうだろう?」てな感じではじまる。この時点では筧のナレーションは観客に向けられ たものである。つまりメタレベルのナレーションだ。でも、それ以外に劇中でも筧の呟きとか心象表現のナレーションとか鈴木聖奈への呼びかけとかいろいろ あって、それがすべて同じレベルで語られているんだよね。物語の語りのレベルがごっちゃにされているんで、なんだか大林宣彦本人の脳内を覗かされているよ うな気がするのだ。それがあの大林特有の観客との距離感のなさを生んでいるんじゃなかろうか?

あと、大林映画ってものすごくテクニカルなんだけど、大林ファンってそこんところを真似する人がほとんどいないのは残念だね。というか、あれだけ 細かくカット割って、なおかつひとつひとつのカットであれだけ細かくもの動かして人動かしてカメラ振って……みたいな撮り方する人いないよ、今時。

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2007-05-16

転校生 (2007)

Intro_ph3Intro_ph2 監督大林宣彦 脚本大林宣彦他多数 公式サイト

 なんじゃこりゃあああああ!?!

 恥ずかしながら告白するが、『転校生』(1982)っていうのは、オレにとってのジ・大林映画なのである。当然最初に尾道行ったときは神社の階段に行った りしたものだ。だからそのリメイクを見るというのはそれなりに覚悟が必要だったわけである。そういう映画じゃないらしい、という話は聞いていたわけだが、それでも ……それでもこんな映画だとは思ってもみなかった!

 いやあ驚いたなあ。乳首が死守されているという一点を持って「大林老いたり」とか言ってる人もいるようだが、そんなものではない。あの年にして、観客よりもはるかにラジカルなのである。はっきり言うが、その気にさえなれば、大林は今でも普通に『転校生』(1982)みたいな映画を作って観客を泣かすことはできるのだよ。これを見ると、そのテクニックはきちんと保持されているのがよくわかる。

 だいたいこれだって十分脱がしてるしな! これだけ旧作に決定的に訣別しつつ、それなり に感動的だったりするのが恐ろしい。 これを見てしまうとアニメ版『時かけ』はまだまだ甘いな、という気になってしまう。大林宣彦の凄味を再認識した。ラストのセリフは恐いよ。

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2007-05-15

吉祥天女 (2007)

監督・脚本 及川中  公式サイト
 
 ぼくの見たところ、この作品を改善するのはそれほど難しくない。再編集、それもごく簡単な編集を加えるだけである。具体的には最後の三十分をカットするだけでいい。一時 間半くらいのところで終わっていれば普通の駄作で済んだだろう。だがそれからあとの三十分間の蛇足につぐ蛇足のおかげで [原作の陵辱] [観客への侮辱] [最低最悪のダサさ] と罵られるような映画になってしまった。もう本当に見ているあいだ辛かった。及川中という監督は、なぜ小夜子が天女の化身なのかという根本のところが何 もわかっていない。

 誰もが危惧するだろう小夜子=鈴木杏はやっぱりダメ。頑張ってはいるんだけど、基本可愛い娘ちゃんだから、可愛い娘ちゃんが頑張って虚勢を張ってるようにしか見えない。もとより小夜子というのは人外の魅力をたたえた大人びた少女が、ときどき可愛らしさも見せるって存在だったはず。今の映画界には吉田秋生の実写化としかいいようのない三白眼の美女がいるではないか。どうして栗山千明にやらせないのか、オレには理解できないよ。

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2007-05-14

『学校の階段』スペシャルトークショー

 現在絶賛公開中、黒川芽衣主演、佐々木浩久監督の『学校の階段』上映中のシネマート六本木でトークショーに出演します。佐々木監督でぼくが出るというからには、そうです、あれです。

一夜限りの怪談?『学校の階段』スペシャルトークショー!

佐々木浩久監督×三輪ひとみ×柳下毅一郎×中原昌也による夢のコラボ レーションが一夜限り実現!

日 時:5月18日(金)18:10の回上映終了後/19:30開始予定
場 所:シネマート六本木 B2F スクリーン1

登壇者:佐々木浩久監督、三輪ひとみ、柳下毅一郎、中原昌也(予定)
*登壇者は変更になる可能性もございます。

三輪ひとみさんは、いわずと知れた「発狂」シリーズで佐々木監督ワールドのヒロインを務めた方。「学校の階段」では、「発狂する宇宙」の役のまま映画を飛び越えて出演、青春部活アクションムービーなのに、一人だけ呪われた存在を、美しくも怪演されています。

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2007-05-06

爆音!成層圏の映画 オールナイト

 5/12(土) 吉祥寺バウスシアターの〈成層圏の映画 オールナイト爆音上映〉で上映前にトークします。お相手は恐れ多くも黒沢清さんということで、ぼくはあくまでも聞き役です。上映作品は以下の通りですが、やはり『悪魔のいけにえ』の爆音は聞き物でしょう。『断絶』もエンジン音がどう聞こえてくるのか気になるところ。

上映作品
『悪魔のいけにえ』(デックスエンタテインメント提供)
1974年作品/ 84分/監督:トビー・フーパー/出演:マリリン・バーンズ、ガンナー・ハンセン

『ラブレス』(キングレコード提供)
1982年作品/ 85分/監督:キャスリン・ビグロー、モンティ・モンゴメリー/出演:ウィレム・デフォー、ロバート・ゴードン

『断絶』(キングレコード提供)
1971年作品/ 102分/監督:モンテ・ヘルマン/出演:ジェイムズ・テイラー、デニス・ウィルソン、ウォーレン・オーツ

『Helpless』(WOWOW提供)
1996年作品/ 80分/監督:青山真治/出演:浅野忠信、光石研、辻香緒里、斉藤陽一郎

※『Helpless』のみ35mmフィルム、その他の作品はDVD上映となります

料金 当日:2,800 円/ネット予約:2,500 円 
上映:21:30スタート
開場:21:15

場所:吉祥寺バウスシアター
お問い合わせ 吉祥寺バウスシアター(0422-22-3555)
詳細  http://www.baustheater.com

ネット予約受付アドレス  bakuon@boid-s.com

<ご予約方法>
ご予約をご希望の方は上記アドレスまで、メールにてご連絡下さい。
件名を<5/12成層圏の映画 爆音上映>とし、お名前・ご予約枚数・お電話番号をお送り下さい。
追ってご予約確認と、予約番号を記載したメールをお送りいたします。

チケットの受け渡し及び、ご精算はイベント当日吉祥寺バウスシアターのチケットカウンターにて行います。ご予約の旨と、お名前・予約番号をお申し付け下さい。
入場はご予約の方から順番に行います。開場時間後にご来場いただいた場合、満席の際にはご予約をいただいても入場いただけない場合もありますので、なるべく時間までにご来場下さい。

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ヴェネツィア激震!

17469778_213s_1  新宿レッドクロスドラびでおpresentsヴェネツァ・ヴィエンナーレ プレコンサート。
今年度のヴェネツィアビエンナーレに招待された日本人アーテスト5名

 ドラびでお、山川冬樹、MASH、Optrum!)!)の四組が出演。個人的にはドラびでおが興 味の中心だったんだけど、アヴァンギャルド・ホーメイ歌手という山川冬樹がたいへん格好良かった。胸にピックアップをつけて鼓動を拾い、そのリズム に合わせて電球を明滅させる仕組みを作ってるんだけど、その状態で歌ったりギターをノイジーにかき鳴らしたりしながら、心拍を自在にコントロールして見せ るわけ。

 Optrum!)!)は蛍光灯をギターみたいに抱えて弾いてみせるノイズ・バンドで、これも良かったんだけど、なんかビデオで見た方が効果的なんじゃないか?と思える部分があり、いささか考える。 つまり、人間の目はたいへん性能がいいので、蛍光灯がつくとすべてがありありと見えてしまうのである(一方、ビデオ画面だとまるで光の棒を抱えているように見える)。とりあえず、ビデオがあったら見てみたいね。

 ヴェネツィアではほぼ同じようなセットでやるようですな。

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2007-05-02

スパイダーマン3 (2007)

Sm3_0629  試写を見た方のあいだではあまり評判が芳しくなかった『スパイダーマン3』。初日、映画の日に出かける。いや、これ、全然悪くないじゃないか。大いに楽しむ。

 そもそもサム・ライミの童貞スパイダーマンにとって、コスチュームをかぶっての活躍がオナニーの快感なんだというのはすでに言い尽くされたことなわけだけど、そのアナロジーに従うとブラック・スパイダーマン=ヴェノムは当然セックスの快楽ということになる。
 黒いコスチュームを着て
「なんか……ちょっと感じちがうけど、これ気持ちいいじゃん!」
 とピーターが言うのは、もちろん、はじめてセックスを味わった感想なのである。 さらにサンドマンを殺す=童貞を捨てると髪型が変わって、どんどんイケメンになっていく。

 そう思うと、脚本の流れとしてはいささか違うのでは?と思われる節があり、正しくは
 「オレって人気じゃん!?」とピーターが調子こく
 →ユニフォームがどんどん黒くなっていく
 →グウェン・ステイシー相手に浮気
 となるべきではないかと思うのだが。

 ブラック・スパイダーマン=ヴェノムは「本人の攻撃性を増強する性質がある」とか言われ、映画のコピーも「自分の内なる敵と戦う」みたいな雰囲気になっているわけだが、もちろん、本当にサム・ライミが言いたいのはイケメンのプレイボーイ=悪 という意味である。セックスばかりしている奴は悪だというサム・ライミの童貞喪男思想が発揮されているわけ。セックスすればするほど、人はヴェノムになるのだ。

 その意味でイケメン=悪思想に忠実なホブゴブリンの活躍ぶりには泣けた。この三部作、ある意味古いタイプのお笑い悪役になっていたグリーン ゴブリン/ホブゴブリンをスパイダーマンの正しいライバルの位置に据えなおしたという意味でも、いい映画化だったんじゃないかな。

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