日本エッセイストクラブ賞
『サッカーの上の雲』(小田嶋隆 駒草出版)読む。
小田嶋隆のサッカー・コラム集。小田嶋隆の愛読者であり、サッカー・マニアであるぼくとしては文句なく楽しんだ一冊。唯一、欠点があるとしたら……著者が浦和ファンであることかな。
いや、別にぼくは「レッズのくせに生意気だ」とか「ビッグクラブとか寝言言ってるんじゃねえ。点入れて喜んでる最中にキックオフされてゴールされる映像があるかぎり、浦和なんざ永遠の格下だ」とかそういうことを言いたいわけじゃない。いや少し思ってるけど、だからこの本がむかつくとかそういうことじゃない。そうじゃなく、著者が浦和サポで、コラムがここ数年のあいだに書いたものが中心だということである。つまり、浦和が強くなった時期に書いたものが多いということだ。
誰もが知っているとおり、チームが弱ければ弱いほど、サポーターは純化され、サポート心は深まる。そしてコラムは悲哀の調子を帯びるがゆえに面白いものになる。面白いサッカー・コラムのほとんどが負けているチームについて書かれたものであるのは偶然ではない。だって、勝利については書くことなんてほとんどないからね。勝利は喜ぶものだからな。
だから、小田嶋コラムが充実し、日本エッセイストクラブ賞を受ける日が来るためにも、レッズにはもうちょっと弱くなって欲しい、と切に願うものである。そのかわり今年こそ鹿島が十冠を達成してくれると、ぼくも嬉しい。それでぼくの書くものがつまらなくなったとしても、もともとたいしたもんじゃないんだから、人類文化の損失はほとんどないし。
『ねにもつタイプ』(岸本佐知子 筑摩書房)も読む。
いやー、すばらしい。ぼくがとりわけ気に入ったのは「くだ」という奴。爆笑エッセイとしてはじまりながらどんどんホラーになっていく当たりの呼吸が絶妙。何度も読み返したい名品ですね。「住民録」もいい。ぼくは岸本さんとは酒の席でしか会ったことがないので、ほとんど「見知らぬおじさん」しか知りませんが。
是非とも日本エッセイストクラブ賞を取れるよう、微力ながら努力したい。と言ってもぼくには「とれますように」って星に祈りを捧げるくらいしかできませんが。
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