白蝋城の妖鬼(1957)
シネマヴェーラ渋谷にて鑑賞。
今回の丹波哲郎追悼特集でいちばん見たかった映画である。新東宝の監督の中でも個人的にはいちばんと言っていいくらい興味がある曲谷守平監督作品。曲谷守平というのは基本的には有能な職人監督である。ただ、ときどきその枠をはみ出してしまうほどに見世物性、というか異形の怪物への偏愛を見せてしまい、その結果『九十九本目の生娘』のようなとてつもない怪作が生まれてしまったりもする。
本作でも短いカットを積み重ねてアクションを築きあげていく職人性(これは本当に見事なもので、二騎が追いつ追われつ山中を走る超ロングのショットとか、贅沢でありつつ機能的な素晴らしい場面がある)を発揮しながら、なぜか趣味性をも発揮してしまい、もっぱらアルビノの明智十三郎と対決するのがせむし男の丹波哲郎で、二枚目のヒーローはまったく無能に右往左往するだけ(ヒロイン最大のピンチのあいだ、昼寝してたりする!)だったりするというあたりが変なのである。
もちろん、映画は素晴らしく面白い。丹波も大いに生き生きしてます。
同時上映は『パレンバン奇襲作戦』。 『特攻大作戦』みたいなはぐれ者たちが決死隊で突入する話なんだけど、決死隊ですら綿密な計画も現地調査も何もなしで、「しかしやるしかない! 精神力をもってすればなんとかなる!」とか言ってるあたりに日本軍精神を感じずにはいられない。もちろん丹波は「そんなこと言ったってできないもんはできないよ」などとぼやく民間人の役。
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