2017-01-18

[この殺人本がすごい] 西村望『無宿人の墨縄』

  西村望の1981年作品は明治時代に愛媛県を荒らしまわった強盗殺人犯「強盗亀」こと池田亀五郎の生涯を小説化したもの。小説内では「山内勘三郎」として登場する。「強盗亀」というのはすばらしく面白い人物で、愛人を三人同時に抱えて同居させ、警察に逮捕されそうになったときには懐中から取り出した六連発拳銃を乱射して切り抜ける。三人の“妻”は刀を振りかざして暴れまわるというわけで、それってどう考えても『チャーリーズ・エンジェル』ではないか! 明治の日本は凄かったなあ。

 小説なのでもちろん名前だけでなくいろいろ改変されているが、西村望だけにすらすら読めて面白い。西村望の殺人ものというともちろん『丑三つの村』がいちばん有名なわけだが、それ以外にも実録小説はいくつもあり、どれもおもしろい。西村兄弟というとどうしても寿行のほうが注目されてしまうんだけど、西村望研究もちょっとやっていきたいと思っている。

 なお、「強盗亀」の実像については朝倉喬司が『怪盗疾る』というノンフィクションを書いている。興味のある人はこちらもぜひ。亀は捕縛後に自伝を書いているのだが、それ読みたいんだよね。

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2017-01-11

[この殺人本がすごい] 高田耀山『仁義の報復』

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 関根元の「埼玉愛犬家殺人事件」といえば風間博子の無罪主張とか、共犯者山崎永幸の証言とか、いろいろ謎の多い事件として知られているが、これに関して新しい本が出た。なんと関根に「透明にされた」ヤクザの組長による暴露本である。高田耀山『仁義の報復』(竹書房)である。いきなり開くと

「実はわたしは座禅と瞑想を続けたおかげで、チャクラが覚醒している。チャクラが覚醒した者のみが見える眼で関根の犯行がわかったのだ」

 とか書いてある。第三の目が開いたヤクザなのか! しかもこの高田組長(稲川会の直参で、本部づとめもしているかなりの大物である)、アフリカケンネルからライオンやトラを購入し、関根とは直接面識もあったというのだから期待はさらに高まる。十人以上殺しているという関根の真実ははたして暴かれるのか?
 高田によれば、遠藤(殺された組長代行)の失踪後、第三の目で関根が怪しいと見抜いた高田は、部下に命じて関根とつながりのあった新井良治をさらわせ、関根との電話による会話を録音する。そのやりとりで関根の関与を確信すると、さっそく報復に出ようとするが、それを察知した警察からの圧力で動けない。そこで逆にその会話の盗聴テープを警察に提供し、捜査を大いに進めたという。
 それ以外にも山崎を問い詰めたり、警察よりも早く事件の概要を掴んでいたとする主張多数。でもそのわりには公表されている以上の情報はないんだよなあ(十人以上殺していると書きながら、関根の犠牲者の名前が四人以上あがるわけではない)。チャクラ開いてるわりには関根にかまかけたり脅したりしてるばかりで、公表されてる以上の話がないんだよなあ……ただし共犯者山崎が警察と実質的な司法取引をして罪を逃れたという点はきっちり書いており、そのために暗躍した検事のその後の話まで書いてあるのは、まあ、警察には書けないことである。瞑想したり滝で水垢離したりしている高田組長の写真が満載されたとってもキュートな本である。なお、高田組長のブログはこちら

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2016-09-29

なんの映画になりたい?

 岡田秀則さんの著書『映画という《物体X》』(立東舎)を読む。われわれが当然のように見ている「映画」を「保存」するとはどういうことなのか、フィルムの物質的側面はもちろん、その外へと縦横に考えが広がっていく気鋭の書である。

 この本の元になった連載を読んでいたときに、いろいろ無駄なことを考えたことを思い出した。mixi日記からサルベージ。

 未来社のPR誌『未来』の3月号に載っていた岡田秀則の原稿(「草を食む映画」)が面白かった。映画フィルムに使われる乳剤の原料はいまだ合成されておらず、牛骨や牛皮から取れるゼラチンを使わなければならないのだという。「私たちがこれまで映画館のスクリーンに見てきたのは、どれもこれも牛の体内物質を通過した光の跡なのである」

 あるいは常識なのかもしれないが、ぼくは知らなかった。こういう話を聞くといろいろな夢想が進む。牛骨からゼラチンがとれるというなら、人骨からはどうなのだろう? たぶん量が足りないから映画は作れないだろうが、もし作れるとしたら?

 遺言に「ぼくの骨からは映画フィルムを作ってくれ」と書いておいたら、骨からフィルムを作って、それをみんなで見てくれないだろうか? これはいいね。少なくとも千の風になって漂ってるよりはずっといい。

 もしそれが可能なら、どんな映画になりたい? やはりファスビンダー(『十三回の新月のある月に』あたりがいいね)と言いたいところだが、コメディでもいいな。生きているあいだは他人への嫌がらせみたいなことばかりしていた身としては、せめて死んだあとくらいは笑ってほしい。ブニュエルで『小間使いの日記』とかどうかなあ。ぼくから作ったブニュエルを見て、みんな笑ってくれるなら、これほど楽しいことはないよ!

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2016-09-27

J・G・バラード短編全集1

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 東京創元社よりJ・G・バラードの全短編を集成した〈J・G・バラード短編全集〉が刊行になります。創元推理文庫から出ていた短編集も、さすがに翻訳が古くなってきたところもあり、あらためて新訳決定版を出そうということになりました。発表順に収録した全五巻での全集ということになります。

 装画にはエドゥアルド・パオロッツイを使用しています。バラードと伴走したポップ・アーティストの作品とともに、バラードのキャリアを走り抜けてください。

 なお、10/8(土)に京都SFフェスティバルにて「いまこそ、バラード。」と題してトークがあります。お近くの方は是非。


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2016-07-10

宇宙ヴァンパイアー

41t6xepvv5l_sx349_bo1204203200_ コリン・ウィルスンの『宇宙ヴァンパイアー』が新潮文庫の村上柴田翻訳堂で復刊されて、その解説がアレだという話を聞きこみ、そういう話には目がないのでさっそく買ってきた。巻末に村上春樹×柴田元幸の対談がついているわけだが。


村上 そうだと思う。この小説は、ぼくが割と好きなトビー・フーパー監督で映画化されてるんですよ。
柴田 面白い映画ですか?
村上 これがひどい映画でね(笑)。僕はその昔ホノルルの場末の映画館で見たんだけど、まあ、とんでもない映画で。
柴田 たしかに、「映画では原作の真の精神を生かし切れていない」とわざわざ原書ペーパーバック版の裏表紙に書いてありました(笑)。
村上 作品の雑多性を映画が表しきれなかったんですね。

 村上春樹おまえはなにもわかってねえ!てか村上春樹が何もわかってないことはよくわかっていたが、ここまでひどいとは。ちなみにこの前には

柴田 ほかにSFで特に惹かれる作家は誰かいるんでしょうか。
村上 ロバート・シルヴァーバーグとか……。フィリップ・K・ディックも割に好きですね。
柴田 J・G・バラードはどうですか。
村上 読みます。でも、ディックやバラードに深い思想や哲学などは求めないし、SF小説で深く考えてゆくということはないです。

 なんて会話もあって、あんたはドストエフスキーでも読んでてくださいよ本当に。しかし「割と好き」なトビー・フーパーっていったい何を見て言ってるんですかねえ……

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2016-06-05

三人目を探せ

Action 双葉社の〈漫画アクション〉、2016年11号(6/7号)から「三人目を探せ」っていうコラムを連載しています。なんと見開きのコラム。それも自由に書いていいと言われているのでオピニオンです。いやまあもちろんぼくの書くことなんで政治経済の話じゃあないわけですが……
 自由にさせてもらっているのを幸い、およそ読者のことを考えないコラムを書いています。いや、もちろん読者にはついてきてほしい。けれど今のアクションの読者の九割にとっては何を書いてあるのかちんぷんかんぷんなコラムでしょう。でもそれでも、ちょっとでも違和感を、ひっかかりを覚えてくれる人がいればいいなあ、と思って書いてます。まあそれがぼくを見込んでくれているアクションの新編集長Hくんへのせめてもの返礼かな、と。だから、とりあげるネタもいっさい妥協抜きで趣味に振り切ってます。ここまでまかされて、つまらないものは書けないですからね。隔週火曜日発売ですので、ぜひ目を通してください。第二回は6/7(火)発売の6/21号。ジャック・リヴェット監督『アウト・ワン』の話を書いています。

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2016-06-04

皆殺し映画通信 冥府魔道

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  ブログ『皆殺し映画通信』の書籍化シリーズ第三弾、2015年のダメ邦画をまとめた『皆殺し映画通信 冥府魔道』が発売になります。ずいぶん時間がかかってしまって、おまたせして申し訳ありません。今回はモルモット吉田さんをお迎えして総括対談などやっております。

なお、来る6/23(木)に渋谷のHMV&BOOKS TOKYOにて発売記念イベントも予定しております。お相手は篠崎真紀さんにおねがいしました。

【日時】2016年6月23日(木) 開場19:00 イベント開始19:30 【会場】HMV & BOOKS TOKYO 6Fイベントスペース 【内容】 シリーズ三作目となる、映画評論家・柳下毅一郎さんの毒舌邦画レビュー本『皆殺し映画通信 冥府魔道』の発売を記念してトークイベント&サイン会を開催します。 ゲストには、イラストレーター・ライターとして活躍されている篠崎真紀さんが登壇。 2015年公開作品を中心に、最新の邦画もメッタ斬り!柳下毅一郎氏が日本映画をメッタ斬り!  ここでしか聞けない、タブーなき映画トークは必見です!

【参加方法】
6/11発売の新刊『皆殺し映画通信 冥府魔道』(KANZEN)、
若しくは「皆殺し映画通信」シリーズ既刊2点、
いずれかをお買い上げの方に先着で参加整理券を差し上げます。
※整理券は6Fレジカウンターにてお買い上げ時にお渡しいたします。
※電話でのご予約・お取り置きも承ります。

【対象書籍】
『皆殺し映画通信 冥府魔道』(6/11発売)
『皆殺し映画通信 天下御免』
『皆殺し映画通信』
(以上すべてKANZEN)

詳細はこちら

ということなんで、書籍をお求めの予定のかたはこちらでご購入いただけますと……みなさまふるってご参加ください。

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2016-03-01

『ロデリック』刊行記念  柳下毅一郎×円城塔(ゲスト)トークイベント

 ジョン・スラデック『ロデリック』(河出書房新社)の刊行を記念いたしまして、解説をいただいた円城塔さんとトークをさせていただくことになりました。場所は高円寺の文禄堂(旧あゆみbooks)です。ふるってご参加ください。

3/23『ロデリック』刊行記念  柳下毅一郎×円城塔(ゲスト)トークイベント

日時:3月23日(水)午後7時~ 会場:文禄堂高円寺店イベント会場

ご予約方法:入場料一律500円(ドリンクは含まれていません)
当日書籍をご購入していただいた方には柳下さん・円城さんのサイン可。
※当店で事前購入された方は書籍と一緒にレシートをご持参下さい。
①店頭 ②電話 ③Peatix(後日)にてご予約を承ります。※定員40名

 当日はおまけも進呈しようかなどと思ってますので、ふるってご参加を。

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2016-02-26

ロデリック(または若き機械の教育)

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 河出書房新社より、ジョン・スラデックの『ロデリック(または若き機械の教育)』が発売になりました。スラデックの最高傑作であるロボットSF長編、発売予告を出してから××年……本当にお待たせいたしましたが、ようやく完成いたしました。待った甲斐はあった、と思っていただける……といいなあ。なお、発売記念のイベントも予定しております。正式に決まりましたら告知させていただきますので、みなさまご参加いただけますよう。


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2016-02-24

柳下毅一郎の特殊な本棚

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 本の雑誌に連載していた書評コラムが『柳下毅一郎の特殊な本棚』と題して電子書籍にまとまりました。完全版ではありません……というのは連載初期の分は『新世紀読書大全』のほうに収録してしまったからです。なお、電子書籍オリジナルで、紙の本というのはありません。中身は諸々ですが、まあだいたい殺人に関するほんの邪悪な紹介です。各電子書籍サイトからご購入ください(発売日とかがはっきりしないので、ダウンロード可能になりしだい順次追加してゆきます)。

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